体外診断用医薬品のリスク

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体外診断用医薬品
リスクマネジメント事例
2011年3月17日
(社)日本臨床検査薬協会
QMS委員会
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目次
1.体外診断用医薬品のリスク
2.リスクマネジメント
2.1 リスクアセスメント
2.2 リスクコントロール
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1.体外診断用医薬品のリスク
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体外診断用医薬品におけるリスクマネジメントの必要性
体外診断用医薬品は、直接取り扱う操作者や体外診断
用医薬品を使用して得た検査結果によって診断等
を受ける患者に対して危害が想定される。
体外診断用医薬品に対しても
リスクマネジメントが必要である。
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体外診断用医薬品が関る危害の事例
 患者に対する危害
不正確な結果(検査値の異常)に基づく誤診
断や、緊急時に検査結果が遅延することによ
る診断機会の遅れによって、患者に健康被害
が発生する。
 操作者に対する危害
臨床検査技師など体外診断用医薬品を直
接使用する者に対して、容器の割れによる怪
我や薬品が目に入るなどの危害が発生する。
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体外診断用医薬品のリスクモデル~患者に対する危害~
体外診断用医薬品
の不具合等
・不正確な結果
・遅延した検査結果
ハザード
・不適切な処置
・処置の遅延
危害
危険状態
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2.リスクマネジメント
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リスクマネジメントプロセス
リスク分析
リスク評価
・意図する使用及び体外診断用医薬品の安
全に関する特質の特定
・ハザードの特定
・各々の危険状態のリスクの推定
リスクアセスメント
リスクコントロール
全体的な残留リスクの
受容性の評価
・リスクコントロール手段の分析
・リスクコントロール手段の実行
・残留リスク評価
・リスク/効用分析
・リスクコントロール手段から生じるリスク
・リスクコントロールの完全性
リスクマネジメント報告書
製造中及び製造後の情報
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2.1 リスクアセスメント
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リスクアセスメント
~意図する使用及び体外診断用医薬品の
安全に関する特質の明確化~
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安全に影響する特質の特定のために
すべての関係者の観点から考察
体外診断用
医薬品
ハザードがどこにあるか全体像が見えてくる
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意図する使用及び体外診断用医薬品の安全に関する特質の特定
特質の特定は、ハザード特定に
不可欠な第一歩
次のような視点で考察し、文書化する
意図する使用の識別
あり得る誤使用の特定
不正確な使用
不適切な使用
文書化
特質の特定
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
安全に関する特質の識別
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意図する使用の識別
使用者
使用環境
臨床的意義
 性能に対する
要求事項
•患者(自己血
糖測定)
•操作者
使用者の不注
意による誤操
作を誘発する
ような環境で
使用されるか
• 使用、輸送、
保管時の環境
的影響の受け
易さ
安定性に影響
する要因
廃棄物
(有害物質、
危険物質)
廃液、検査後
検体
使われ方

測定システム
自動測定装置
を使用するか

検査手順

検査技師
医師、看護師
液量、反応温
度、反応時間、
洗浄操作など


•医療提供者
医師、看護師
検体種
全血、血清、血
漿、尿など
測定の種類
定量、定性、半
定量
環境との
相互関係
使用目的
新たな製造工
程を確立導入
する
必要性
使用者の特
別な訓練、特
殊技能の
必要性
使用期限の制
約(表示)
注)この資料において、「操作者」とは、臨床検査を行なう者をいい、「医療提供者」とは、検査結果を受け取
り、それに基づいて医学的な判断又は処置を行なう者をいう。
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ありえる誤使用の特定
操作者、医療提供者、患者における
“ありえる誤使用”の事例
不適切なキャリブレーター、分析機、検体種と
の併用
指定された操作条件の変更、省略、簡略化
使用期限切れ試薬の使用
検体量が不十分
指定された保管条件以外での保管
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安全に関する特質の識別
化学的
生物学的
信頼性特質
毒劇物・危険物含有
感染性物質含有
迅速性
(適時の結果)
性能特性

定量検査
感度、正確性、同時再現性
 妨害物質、妨害薬剤


定性検査
感度、カットオフ値
 偽陽性、偽陰性

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リスクアセスメント~ハザードの特定~
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ハザードの特定~想定される不具合状態~
 体外診断用医薬品の想定される不具合を考慮してハ
ザードを特定する
 性能特性(例えば、正確さ、精密さ、特異性など)を
満たさない状態
•
•
•
•
•
性能不良
バイアル差
ロット差
非特異性(例えば、妨害因子による)
安定性の欠如(保管、輸送、使用中)
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ハザードの特定~正常状態~
 製造業者の意図する性能特性を満たす正常な使用の場合でさ
え、患者の危険状態に結びつくかもしれない「不正確な結果」が
生じ得る。
 定性的検査における陽性陰性区分の不完全さ
• 定性的検査は設定されたカットオフ値に基づき、固有の偽陰性率、偽
陽性率を示す。
 定量的検査における測定の不確かさ
• 例えば、測定結果の95%がある許容基準(例えば±15mg/dlとか、
±15%とか)を満たすよう設計された場合、5%ははずれ値がある。
 患者サンプル中の妨害因子の想定外の影響
• 例えば新医薬品、サンプル中の薬物・代謝物質・異好抗体等
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危険状態の事例
患
者
が
危
険
状
態
に
お
か
れ
る
ケ
ー
ス
医療提供者が不正確な結
果を受取り、死亡を招く不
適切な診療行為をする
抗がん剤治療を受け腎機能が低下している
がん患者のクレアチニン測定結果が、正常値
として報告されたので、医師は抗がん剤の投
与を続行した。
医療提供者が不正確な結
果を受取り、疾病や死亡を
防ぐ適切な診療行為を怠る
あるHIV感染妊婦の血液検査の結果がHIV
陰性と報告されたので、子供への感染防御策
はとられなかった。
自己検査の場合は、患者
が不正確な結果を得たり、
必要な時点で結果を入手
できない
ある低血糖の糖尿病患者が自分の血糖値を
測ったところ、血糖濃度が高かったので、イン
シュリンを注射した
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リスクアセスメント~リスク評価~
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リスク評価
安全性:許容できない
リスクが存在しないこと。
リスク
=
リスク:危害の発確率
度及びその危害の重
大さとの組合せ
危害の発生確率
×
危害の直接原因の
発生確率
と
危害発生を回避でき
る可能性
危害の重大さ
使用者への危害
と
患者への危害
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危害の重大さの推定
 製品性能、測定装置不良又は誤使用によることを含み、不正確
な結果が患者に与える危害または操作者に対する危害の重大さを
推定する。
– 例えば危害の重大さのレベルは以下のとおり。
判断の事例
極めて重大
重大
中程度
死亡
重篤な傷害
専門的医療の介入を必要とする傷害
軽微
一時的な負傷
専門的医療の介入を必要としない傷害
無視できる
不便、一時的な不快
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危害の発生確率の推定

製品性能、測定装置不良又は誤使用によることを含み、不正確
な結果が患者に与える危害、または操作者に対する危害の発生
確率を推定する。
– 例えば危害の発生確率のレベルは以下のとおり。
判断の事例
しばしば
定常的に発生する可能性がある。
時々
わずかに
起こりそうにない
考えられない
年に数回発生する可能性がある。
数年に1~2回発生する可能性がある。
発生する可能性がほとんどない。
発生することが想定できない。
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患者へのリスクの推定及び評価
 例えば、危害の重大さと発生確率を掛け合わせたマトリックス
表(参考:事例1、事例2)を作成し、その該当リスクが受容で
きるか否かを評価する。
事例1:リスク評価マトリックスの例
(受容できるか受容できないかを二者択一で判定する方式)
重大さレベル
発生確率
レベル
無視できる
軽微
中程度
重大
極めて重大
しばしば
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
時々
受容できる
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
わずかに
受容できる
受容できる
受容できない
受容できない
受容できない
起こりそうにない
受容できる
受容できる
受容できる
受容できる
受容できない
考えられない
受容できる
受容できる
受容できる
受容できる
受容できる
※リスクマトリックス表は、各社のリスクマネジメントポリシーや取り扱う製品
の特性に応じて設定する。
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患者へのリスクの推定及び評価
事例2:リスク評価マトリックスの例
(受容できるか受容できないかの判断の間に、
低減可能性を調査する領域を設定する方式)
重大さレベル
発生確率
レベル
無視できる
軽微
中程度
重大
極めて重大
しばしば
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
時々
低減可能性の
調査
受容できない
受容できない
受容できない
受容できない
わずかに
受容できる
低減可能性の
調査
受容できない
受容できない
受容できない
起こりそうにない
受容できる
受容できる
低減可能性の
調査
低減可能性の
調査
受容できない
考えられない
受容できる
受容できる
受容できる
受容できる
低減可能性の
調査
※リスクマトリックス表は、各社のリスクマネジメントポリシーや取り扱う製品
の特性に応じて設定する。
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リスクアセスメントプロセスのまとめ
プロセス
解説
具体例
考慮する点
特質の
明確化
体外診断用医薬品の使われ方、使用目的、
使用者、使用環境等を文書化する
・腫瘍マーカーの全自動
測定システム
・検体は血清及び血漿
誤使用の場合を含める
ハザードの
特定
特質の明確化に対する情報から、危害(身体
的被害、健康被害)の潜在的な源について
特定する
・不正確な結果
・遅延した結果
危害は限定的か、公衆衛生上の問題
にまで発展するか
重大さの推
定
「無視できる、軽微、中程度、重大、極めて
重大」のように危害の重大さを推定する
・一時的な不快感
・恒久的な障害
入手可能な情報又はデータを用いて推
定
発生確率の
推定
「考えられない、起こりそうにない、わずかに、
時々、しばしば」のように危害の発生確率を推
定する
・不正確な結果を生む
確率
入手可能な情報又はデータを用いて推
定
リスクの
評価
危害の重大さ×危害の発生確率よりリスクが
受容できるかできないか自ら設定
マトリックス表を作成
・既に使用している製品で明らかになっ
ているリスクとの比較
・臨床データ
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2.2 リスクコントロール
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リスクコントロール
 リスクを受容できるレベルにまで低減すること。
 低減手段は以下のとおり
1. 設計による本質的安全
2. 防護手段
3. 安全に関する情報
実施の優先順序は1.2.3.の順
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リスクコントロール~設計による本質的安全の事例~
設計自体を変更することによって、安全性を確保する
<事例>
製品の感度、正確性、再現性、保存安定性等の性
能に関する改良
測定システム(専用機器等を含む)の精度、正確度
の改良
誤りやすい手順の簡易化又は自動化
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リスクコントロール~防護手段の事例~
製品自体または製造工程による防護
(誤った結果を検知する方法を組み込むことを含む)
<事例>
 コントロール血清で精度管理を行い、予め定めた規格値を外れ
た場合は、再試験をするか製品の劣化を疑うなどの処置をとる
ように規定する
 製品にコンタミが発生した場合に液の色が変化し、使用できな
いようにしておく
 尿中成分の測定において、腎機能の影響を減らすためにクレア
チニン補正をする
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リスクコントロール~安全に関する情報の事例~
添付文書等に安全性情報を記載し、使用者に知らせる
<事例>
不正な使用に関する警告文の記載(使用目的、操作方法、判定
方法、保管条件、有効期間)
試料の採取、製品の操作方法の注意事項の記載
測定に影響を与える干渉物質の記載
製品取扱い上の注意の記載
判定上の注意の記載
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参考様式
 リスクマネジメント記録
「意図する用途及び体外診断用医薬品の安全性に関
する特質」・・・別紙1
 リスクマネジメント記録
「リスク評価表」・・・別紙2
参考様式は、あくまで参考であり、各社のリスクマネジメント
ポリシーや取り扱う製品の特性に応じて、リスクマネジメント
を実施してください。
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END
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