2015年6月2日(福田 俊輔)(4.6MB)

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聖マリアンナ医科大学 救急医学
福田 俊輔
背景1(肺塞栓の診断方法)
2014 ESC guidelines on the diagnosis and management of acute pulmonary embolism
背景1(肺塞栓の診断方法)
2014 ESC guidelines on the diagnosis and management of acute pulmonary embolism
背景1(肺塞栓の診断方法)
2014 ESC guidelines on the diagnosis and management of acute pulmonary embolism
背景2(肺塞栓の診断方法)
肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
序 論
 肺塞栓(PE)は多彩な疾患。
 原因不明の呼吸困難、胸痛、失神、ショック/低血圧、心停止の
鑑別として考慮
 PEの検索
 検査前確率[低]+D-dimer陰性:安全に除外可能
 検査前確率[高] or D-dimer高値:検索が必要
 診断におけるMultidetector CT pulmonary angiography(MCTPA)
 PEの診断数は向上↔非PE患者への施行
 一部の患者で慎重使用(妊娠、腎不全 etc.)
 診断における超音波
 肺・心臓・下肢静脈:単一では比較的感度[低]
→除外に不十分
目 的
 PEを疑う症状のある患者に複数臓器にわたる超音波検
査(Multiorgan US)を施行し診断精度の検討した。また、
超音波結果と臨床評価またはDダイマー値を統合した診
断モデルを作成し、安全性を担保しながら、MCTPAの施
行数を減らせるかの評価を行なった。
方 法 1
 研究期間:2012年6月~2012年12月
 研究デザイン:multicenter prospective accuracy study
 研究施設:3病院のED(イタリア)
2つ大学附属病院(120,000 and 50,000 visits)
1つの市中病院(50,000 visits)
 対象症例
EDに来院したPEを疑う症状のある症例
 除外項目:
Wells score ≦ 4 かつ D-d <500ng/ml、 妊婦、MCTPA禁忌
方 法 2:超音波判定法
 施行時期
 MCTPA施行前3時間以内
 施行者:
 13名の救急医うち1人
肺超音波専門の救急医(1)
5年以上の救急超音波歴のある救急医(8)
救急超音波レジデント(4)
 肺→心臓→下肢静脈の順番に施行
 Multiorgan USにおけるPE診断基準
以下のうち一つでも陽性
肺:少なくとも1つの subpleural infarctの所見
心:右室拡大 or 右心系血栓
下肢静脈:DVT
方 法 3:肺超音波
 4- to 8-MHz linear or 3.5- to 5-MHz curved array probe
 胸郭の前面・後面を縦走査・斜走査: subpleural infarctを検出
※肺炎、胸水、間質病変を示唆するconsolidationも評価
方 法 4:心臓超音波
 2- to 5-MHz phased-array probe
 右室拡張:以下の少なくとも1つ
 RVEDD/LVEDD>0.9 心尖部四腔像 or 剣状突起下四腔像
 RVEDD>30mm 傍胸骨像
※右心系の血栓、心嚢液、大動脈解離の所見があれば評価
方 法 5:下肢静脈
 4- to 8-MHz linear probe
 総大腿静脈・浅大腿静脈・膝下静脈:短軸で圧迫
静脈が完全に潰れなければDVTと判断
方 法 6:standardized form
肺USのalternative US diagnosis の基準は
International recommendations on point-of-care lung ultrasonography
方 法 7:最終診断とサンプル数
 最終診断
 MCTPA
 2人の放射線医による判断
 臨床データ、超音波結果について盲検
 不一致→第3の放射線医の判断
 サンプル数
 Type 1 error(偽陽性率)(multiorgan USの) : 5%と設定
 90% of power
 multiorgan US で90%の感度を見出す
(過去の研究ではsingle-organ USの感度の最高値は約80%)
 n=330
結 果 1
結 果 2 : Study population
結 果 3: Final diagnosis
結 果 4 : Table 3
Multi-organ USの感度はsingle-organ US単独よりも優れていた。
Negative Multi-organ + alternative diagnosis は感度100(96.7-100)
考 察 1
 Multi-organ US
 ほぼ全ての患者に施行可能であった
 Single-organ US単独に比べ高い感度であった
→Wells score やD-dの結果を補完し、MCTPAを施行するかの判断
に有用かもしれない。
 MCTPA
 PE検索の標準的方法
 使用が拡大し、被爆・造影剤S/Eが危惧される
 MCTPA施行患者のうちPEの有病率:
アメリカ:5-10%、ヨーロッパ:20-30%
→本研究では30.8%であり同様であった
考 察 2
 Single-organ US
 過去の研究での感度/特異度:
肺:70-98%/50-99%, 心臓:31-72%/87-98%,
下肢静脈:39-55%/96-99%
 本研究でもsingle-organ USの感度は低く、PEを除外するには限界が
ある
 Combination of vein and heart US
 Grifoni S at al.
117症例。感度:89%、特異度:74%
validation studyがされていない
 Mansencal N et al.
76症例。感度:87%、特異度:69%
右心不全を評価する複雑なパラメーターを用いており、
ERのルーティーン検査としては難しい
考 察 3
 Bedside Lung Ultrasound in Emergency(BLUE)
 Lechtenstein and Meziere
 重症急性呼吸不全患者に対するプロトコル
 静脈US陽性所見と他の疾患の除外によりPEを診断可能
 PEに対する感度:81%
 本研究におけるalternative US diagnosis
 超音波診断でPEの所見がなく、かつ他の診断が見つかったものは全
体の3分の1
 その中で最終診断がPEの症例なし
 肺超音波と心臓超音波の有用性を示している
 Multiorgan US 陰性+ D-d 陰性
 最終診断がPEの症例なし
 Wells score陽性の患者でMCTPA施行前の検査として有効かも
考 察 4
 本研究でどの程度MCTPA症例が減らせたか
 国際ガイドラインでは、PEを疑う症状があり、DVTがUSで検出された
症例はさらなる診断の検査は必要ないとしている。
 本研究におけるDVTと診断された割合(17%)+
multiorgan US陰性 かつ alternative US diagnosis or D-d陰性(37%)
→約50%の症例で安全にMCTPAを避けることができたかもしれない
 PEを疑う症例に対するmultiorgan USのアルゴリズムを提案。
今後検証する必要がある。
考 察:Limitation
 本研究では、超音波施行者は少なくとも2年以上の超音波経験の
ある救急医であった。
 もっと経験の浅い医師による施行では安全性・正確性を下げる
かもしれない。
 Multiorgan USの正確性は外来や病棟など異なる場所で施行され
た場合、本研究と異なるかもしれない。
 MCTPAが禁忌である患者は本研究から除外されている
考 察:Conclusions
 Multiorgan US はベッドサイドで施行可能であり、PEを疑う救急外来
患者のほぼ全例で施行でき、MCTPAを受けるべき患者を効果的に
選別できるかもしれない。
 MCTPAが施行できない状況において、Multiorgan USはsingle organ
USよりもより効果的で信頼できる代替手段である。
考察(個人)
 Multiorgan US陰性のみでは、PE除外の安全性が十分ではない
感度 90(82.8-94.9)
・ Negative multiorgan+alternative US diagnosis:
感度 100(96.7-100)
→超音波の質が担保できれば積極的に利用できるのではないか
・ Negative multiorgan+Negative D-d
本研究では感度 100であるが 95% CIの記載なし
→現時点で実臨床に利用するにはリスクが高い
今後さらなる検討が必要
 超音波施行者の質の担保
・ 本研究のプロトコル実施だけでなく、超音波は救急領域に必須の
診断ツール。(低侵襲、point-of-care、unstable patient)
今後、救急超音波を体系的に学ぶプログラムが求められる
聖マリアンナとしての方針
 PE診断におけるMultiorgan US
Multiorgan USはPE診断において比較的高い感度 90(82.8-94.9)・特
異度86.2(81.3-90.3)を持つ。しかしながら、致死的疾患であるPEを除
外するには安全性は十分ではなく、現時点では肺塞栓を疑う症例では
確定診断としてのMCTPAの立ち位置は揺るぎない。
 PE診断におけるNegative multiorgan+alternative US diagnosis
本研究ではNegative multiorgan+alternative US diagnosisで高い感度
100(96.7-100)を示した。
MCTPAが禁忌・慎重使用となる症例(造影剤アレルギー、腎機能障害、
妊娠、unstable patient) では、 Negative multiorgan+alternative US
diagnosisを用いてPEを除外することは可能かもしれないと考える。
引き続き、当院での救急超音波の研磨が求められる。