患者塾様

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患者図書室の現状と課題
東京医科歯科大学附属図書館
石井 保志
患者塾2005報告会
2006年4月23日 (日)
1.医学図書館の利用者と役割





研究者
医師・歯科医師
研修医
学部生・大学院生
看護師・薬剤師
検査技師・放射線技師
etc...
医学図書館の特徴







看護専門図書の収集・提供
看護・医学雑誌の講読
相互貸借制度(ILL)が発達
医学文献が一番重要
二次資料・索引誌が充実
電子媒体(データベース、電子ジャーナル)利用大
市民が利用しにくい
2.医療情報の特徴
・口頭によるもの 普段の会話や申し送り。
・新聞などの印刷物やインターネットによるもの。
・学会での資料や情報交換。
・目的,方法,データに結果や考察が加わると…
研究発表
研究論文 → 文献情報
研究の成果は多くの場合,雑誌論文(記事,会議録含む)と
して発表される。
評価の定まった成果が一冊の図書として発行。
データベースの充実
医学中央雑誌
日本の医学文献を調査するときに欠くことの
できない情報源。(採録は医学・歯科学・看護学ほか)
※1903年(明治36年)創刊。
MEDLINE(メドライン)
米国国立医学図書館が作成する医学文献データ
ベース。収録は4,500誌以上。
PubMed (パブメド)
1997年からインターネット上で公開された無料のメドライン
医学文献の世界
読者
(論文の消費)
研究・診療活動
研究活動
論文執筆
(論文の生産)
学術論文はなぜ信頼度が高いか
質を保持するための査読システム
(質のフィルター)
雑誌掲載され
読者のもとへ
論文投稿
(著者)
論文審査
(雑誌編集者)
(専門家)
採用
不採用
(1)市民の情報検索
一般の人が検索すると・・(NACSIS Webcatの場
合) キーワード「便秘」 90件ヒット
1.あなたも治る冷え症・便秘・生理痛 : カイロを貼るだけ、なわとび
を3分間す るだけでも効果あり 気楽にできて、体の中からキレイに
なれる! / 高橋順子 著. -- 永岡書店, 1999
2.おなかすっきり便秘予防料理読本 / ベターホーム協会編. -- ベタ
ーホーム協 会, 2000. -- (月刊ベターホーム ; 臨時増刊)
3.おなかをこわした!どうしたらいいの? : げりと便秘の原因と対策 /
須田都三 男著 ; まつながあき絵. -- ポプラ社, 1999. -- (元気なお
なかで元気なから だ ; 2)
(2)専門データベースの検索
医師が検索すると・・(医学中央雑誌の場合)
キーワード「便秘」 の検索結果・・・ 1372件
①温罨法による便秘傾向緩和への援助 ホットパックを
使用した腰背部温罨法による股関節術後患者の便秘
傾向緩和への援助(原著論文)
Author:平野晴美(秋田大学医学部附属病院), 畠山かづみ, 伊藤恵理子
Source:整形外科看護(1342-4718)8巻9号 Page819-824(2003.09)
②全身化学療法が著効した大腸癌術後再発多発肺転移
の1例(原著論文)
Author:本山展隆(新潟県立がんセンター新潟病院 内科), 船越和博, 秋山修宏,
稲吉潤, 小堺郁夫, 新井太, 加藤俊幸, 瀧井康公, 太田玉紀, 斎藤征史
Source:日本消化器病学会雑誌(0446-6586)100巻8号 Page1002-1005(2003.08)
3.健康の知識や情報の収集方法
あなたが病気の時の情報源は?
①書店の実用書(健康本)の棚
②書店の健康雑誌の棚
③公共図書館の医学書の棚
④インターネットで調べる
⑤その他
厚生省 平成8年度保健福祉動向調査の概況より
73.0
テレビ
43.6
新聞
一般雑誌
(週刊誌等)
23.4
15.6
友人など
13.8
医師の指導
11.7
ラジオ
9.9
特に収集していない
5.2
健康専門雑誌
家庭医学書など
の専門書
4.3
0
10
20
30
40
50
60
70
80
%
意外に信じやすいテレビの健康情報
社会背景

超高齢化社会への突入

医療不信

患者主体の医療

疾病構造の変化
死因順位の状況(15年)
その他
22.2%
悪性新生物
30.5%
老衰
2.3%
自殺
3.2%
不慮の事故
3.8%
肺炎
9.3%
脳血管疾患
13.0%
心疾患
15.7%
患者図書室理解のキーワード
・慢性疾患の時代
・患者主体の医療
・科学的根拠のある情報(EBM)
・医療事故
・情報公開
・医療消費者としての意識
4.専門性を揺るがす時代背景
・健康への関心増加(健康日本21)
・情報公開法(カルテ開示)
・病院選び・医師選び
・インフォームド・コンセント
(説明と納得したうえでの同意)
患者主体の医療の時代へ突入
5.医療情報の社会化
・医療事故
・ドクターショッピング
・セカンドオピニオン(別の医師に受診)
・病院機能評価と情報公開
・インターネットの普及
・医学図書館の開放(国立大学法人化)
6.市民への医療情報提供
1.医学図書館(大学図書館)
2.病院図書館(医療スタッフ向け)
3.患者図書室(病院内設置)
※司書・看護師・MSW・ボランティアなど多くの
人がかかわる。
4.公共図書館
※医療情報コーナー、病院への出前
7.館種を超えての連携
公共図書館
 患者図書室
 医学図書館

東京都立中央図書館 医療情報コーナー
医学図書館
患者図書室
病院内での巡回サービス・団体貸出し
アウトリーチサービスとは
1.意味
「手を差し延べる」という意味
2.定義
「図書館サービスが今まで及ばなかった
人々に対してサービスを広げること」
3.公共図書館では当たり前の概念
(いつでも・どこでも・だれにでも)
例:自動車図書館(BM)
障害者サービス etc…
参考文献
「からだと病気の情報をさがす・届ける」
健康情報棚プロジェクト編
2005年(読書工房)
ひと息ついて、事例報告です。
ご質問・ご意見
E-Mail: [email protected]
健康情報棚プロジェクト
-情報を必要とする人へ届ける仕組み作り-
健康情報棚プロジェクト代表
石井 保志
2006.2.9
プロジェクトの概要
1.目的
2.特徴
市民・患者へのわかりやすい
健康・医療情報を届ける
患者の視点に立った情報提供
Narrative Based Medicineに着目
患者の自己学習施設の社会基盤整備
棚プロジェクトとは
1.棚=書棚・本棚(書架)
2.図書館(器)ではなく、資料提供(内容)重視
3.棚による情報提供(最小のスペース)
4.健康情報ステーションの設置
(全国の公共図書館、保健医療施設等を活用)
健康情報棚プロジェクト メンバー
構成:医学図書館員、公共図書館員、大学図書館員
闘病記研究者、ジャーナリスト、患者当事者
看護学研究者、患者会理事・大学院生、etc..
協力者:情報学研究者、EBM研究者、医師、看護師
NPO団体、その他プロジェクトへの賛同者
患者の視点に立った情報提供
医療情報
生活情報
(病態的情報)
(生き方情報)
東京都立中央図書館の闘病記文庫
1.
2.
3.
4.
5.
6.
闘病記とは何か
闘病記への偏見
闘病記の活用
都立への寄贈
配架方法の工夫
カバーと帯
闘病記の特徴
1.書名ではわかりづらい
2. 何の病気について
書かれているか不明
3.ロケーションがバラバラ
4.流通にのりづらい
どんな病気の闘病記か
わかりますか?
各図書館で闘病記が見えなかった理由


公共図書館 → 分類がない
患者図書室(病院)→
間違った治療法を患者さんが信じたら責任がとれない
内容が玉石混交(民間療法、宗教的だからやめた方が・・)

医学図書館 → 収集の対象外(非専門書だか
ら)
看護学校図書館 → 昔から読まれてる
闘病記の特徴
・書名から推測困難
・流通ルートに乗りづらい
・図書館の分類(家庭医学・ノンフィクション・文学)
・患者の物語(ナラテイブ)が書かれている。
(読まれ方)
・孤独感からの解放を求めて
・ロールモデルとして
・患者の全体像を知る手がかり
・ナラティブ(患者の物語に耳を傾ける)
闘病記の時代
山崎賢二氏作成
公共図書館における闘病記の扱い
1.分類が様々
2.配置が様々
3.「闘病記」というテーマで配架してない
4.玉石混交なので収集しない
闘病記寄贈のねらい
1.医療社会資源として認知させたい。
2.図書館の闘病記への偏見をなくす。
3.資料研究・ニーズの必要性を訴える。
4.テーマ配架を提言する。
5.健康情報のモデルケースを設置する。
寄贈の内訳

闘病記約1000冊

分類 220疾患
(がん・脳・心臓・その他難病など)

カバー・帯付
闘病記プロジェクトの特徴
闘病記を探す
 一括して配架
 病気別に分類
 カバーを重視
 帯情報も重視

闘病記を必要な人に届ける
自分の経験を役立てたい
先輩患者
患者・家族
・切実な情報要求
・医療知識
・生活の不安
・相談したい
情報の中継地点
共感・孤独感からの解放
不安の軽減
(患者・家族=情報要求者)
・先輩患者から
の情報支援
・患者の視点
(生活情報)
経験者の体験談
(先輩患者=情報発信者)
提供施設
1.公共図書館(対象:市民)
2.患者図書室(対象:患者・患者家族)
3.医学・看護図書館(対象:医療者)
※既存の公共施設を活用
※いつでも どこでも だれにでも
健康情報棚プロジェクトの紹介
キーワードから見る本プロジェクトの視点
インフォームド・コンセント
→ 患者自己学習施設の未整備
診療ガイドライン
→ 提供方法が未整備でフローな情報
医学図書館の一般開放
→ 患者さんは本当に医学書を見たいのか
健康とは単に体が丈夫というだけではなく心に不安がない状態。
守備範囲
館種の違いによる収集資料の違い
標準の種類とレベル
少
高
医学文献
医学図書館
入
手
機
会
医学専門書
闘病記・患者会資料
家庭医学書
多
民間療法・健康雑誌
公共図書館
書店
情
報
の
信
頼
度
低
患者会資料の特徴
(作成動機)
・患者のQOL向上
・当該疾病の正しい知識提供
・セルフヘルフ・グループとして
・孤独感からの解放
・社会的偏見・差別の解消
(情報発信者)めちゃくちゃに寄贈
フローの情報、少数部数の発行
患者会資料へのアクセス
患者会情報の入手困難
 比較検討が困難
 匿名でアクセスできない
 患者会資料の実態が不明
(数量・形態・内容・対象・正確度・・)
(情報要求者)
情報の存在自体を知らない
情報アクセスへの様々な障壁

必要な人に届くシステムの欠如
患者会
患者・家族
・切実な情報要求
・医療知識
・患者会情報
・生活の不安
・相談したい
情報の中継地点
不安を軽減してもらいたい
(患者・家族=情報要求者)
・先輩患者から
の情報支援
・患者エキスパート
の情報蓄積
ピンポイントの情報保有
(患者会=情報発信者)
刻々と変化する患者ニーズ
医学書・医学文献(医学図書館)
病院ランキング・名医探し(書店)
入院費
病気
概要
ボディ
イメージ
治験
情報
社会
復帰
治療法
闘病
生活
上級者
中級者
初級者
自己
実現
患者・家族は情報ゼロから出発する
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
がん
がん
がん
がん
がん
がん
がん
がん
がん
小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
闘病記
(家族視
点)
医療者
の視点
患者会
診療ガイド
ライン
医学・
医療知識
医療過誤
医療訴訟
社会資源
の活用
地域行
政資料
闘病記
(患者本人)
情報
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
難病
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
依存症
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がん
がん
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小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
小児
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
精神・心
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
呼吸器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
消化器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
感覚器
闘病記
闘病記
医療者
の視点
患者会
情報
診療ガイ
医学・
医療知識
医療過誤
医療訴訟
社会資源
の活用
(患者本人)
(家族の視
点)
ドライン
地域行
政資料
がん全般
外科的療法
在宅ケア
概要
取扱規約
検査
訴訟手続
保険
保健施策
乳がん
化学療法
ホスピス
連絡先
EBM
くすり
費用
公的援助
ボランティア
小児がん
温熱療法
セカンドオピニオン
機関紙
治療法
判例
子宮がん
放射線療法
告知
刊行物
病気の知識
弁護士
大腸がん
温存療法
QOL
講演会
胃がん
内視鏡手術
暮らし
相談
脳腫瘍
遺伝子治療
入院生活
セルフヘルプ
治験情報
網膜芽細胞種
代替医療
社会復帰
病院紹介
医療費
闘病記(疾病・障害・治療
法)
患者会
情報
診療ガイ
ドライン
医学・
医療知識
医療過誤
医療訴訟
社会資源
の活用
地域行
政資料
提供施設
1.公共図書館(対象:市民)
2.患者図書室(対象:患者・患者家族)
3.医学・看護図書館(対象:医療者)
※既存の公共施設を活用
※いつでも どこでも だれにでも
プロジェクトの3大目的
棚モデル
DB公開
プロジェクト
疾患・障害別
棚作成
「健康情報棚作成
ガイドラインの」作成
おわりに
健康情報棚の使命とは?
①資料を直接手にとることの意味
(インターネット時代の逆)
②健康情報の救急箱
③すべての人に関係する情報提供
ご清聴ありがとうございました。