公共図書館のあり方

Download Report

Transcript 公共図書館のあり方

1046623c 向井友梨
目次
【1】導入
【2】現状
【3】提言
【4】論点
問題意識
・大阪府立中ノ島図書館閉館をめぐる動き
貴重な資料が
府立中ノ島図書館ー1904年(明治37年)開館
たくさんある
んやぞ!
蔵書数約55万冊、職員数27名、重要文化財
利用者にとっては
橋下市長の意見
あの場所がベスト
なんや!!
中ノ島図書館を廃止して、観光拠点へ
「あんなところに図書館がある意味はない」
図書館の種類
国立図書館
公共図書館 ←今回のテーマ
大学図書館
学校図書館
専門図書館
公共図書館(Public library)とは
地域住民に無料でサービスを提供する図書館。
日本では「図書館法」を根拠法とする。
自治体が設置する「公立図書館」と、
法人等が設置する「私立図書館」をがある。
(ただし、私立図書館は主に専門図書館同様規模が
小さく、会員制をとっているため、今回は公共図書館
≒公立図書館として扱う)
公立図書館とは
公立図書館は自治体の規模によって、
• 都道府県立図書館
• 市区町村立図書館
に分けられ、同一の自治体内でも
住民にきめ細かく図書館サービスを届けるために
分館が多く設置されている。
公共図書館の主な図書サービス
主な図書館サービスとしては
• 図書だけでなく視聴覚資料等の貸出
• 地域に関する情報の提供
• ビジネスや学習の支援
• 各種の研修やお話会などのイベント
などがあり、
地域の人々のニーズに応じて広く展開されている。
ユネスコ公共図書館宣言
• 公共図書館のサービスは、年齢、人種、性別、宗教、国籍、
言語、あるいは社会的身分を問わず、すべての人が平等に
利用できるという原則に基づいて提供される。
• いかなる年齢層の人々もその要求に応じた資料を見つけ出
せなければならない。蔵書とサービスには、伝統的な資料と
ともに、あらゆる種類の適切なメディアと現代技術が含まれ
ていなければならない。質の高い、地域の要求や状況に対
応できるものであることが基本的要件である。
• 蔵書およびサービスは、いかなる種類の思想的、政治的、あ
るいは宗教的な検閲にも、また商業的な圧力にも屈してはな
らない。
公共図書館の現状(1)
(千人)
320,000
全国の公共図書館数の変化
(館数)
3,300
3,200
300,000
3,100
280,000
3,000
2,900
260,000
2,800
240,000
2,700
2,600
220,000
2,500
200,000
2,400
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
来館者数
図書館数
(日本図書館協会統計より)
公共図書館の現状(2)
(冊)
公共図書館の購入冊数
19,000
18,000
17,000
16,000
15,000
14,000
13,000
12,000
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
(日本図書館協会統計より)
公共図書館の現状(3)
(万円)
図書費(経常)予算
350
340
330
320
310
300
290
280
270
260
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
(日本図書館協会統計より)
公立図書館の職員数の推移(1990-2007)
1990年
1995年
2000年
2005年
2007年
正規専任職員
13,225
14,997
15,175
14,206
13,489
嘱託・臨時職員
1,040
6,342
9,859
13,257
14,240
2,360
4,247
委託・派遣職員
逆転!!!
出所:『日本の図書館』
委託・派遣職員は2003年から調査開始
平成20年度では、1館当たり平均約10.3人の職員が配置されているところ
であるが、専門的職員である司書は1館当たり平均約4.6人の職員しか配
置されていないのが現状(文部科学省HPより)
問題提起
図書館数は増加する一方なのに対して、
購入冊数・図書費は減少傾向にある。
• 地域の図書館が増える→アクセス◎
• 蔵書数の量・質の低下、専門職員数の減少
→図書館規模の零細化
なぜ図書館は増加しているのか?
→利用者数の増加
•
•
•
•
•
•
無料で快適な空間
土日祝も開館している
全面禁煙の実施
生涯学習の拠点
バリアフリー設備の充実
インターネットも使用できる
公立図書館のコンピューター設置状況
利用者が利用できるコ
ンピューターの設置施
設数
(施設数に占める割合)
インターネットが接続で
きる利用者コンピュー
ターの設置施設数(施
設数に占める割合)
違法・有害措置の排除
を行っている利用者コ
ンピューターの設置施
設数(施設数に占める
割合)
2,844
(89.9%)
1,967
(62.1%)
1,695
(53.6%)
※施設数は3,165
平成20年度文部科学省「社会教育調査」より
利用者
自治体
もっと図書館
よくしろーー!!
我々としても増加する利用者のニーズに応えたいのだ。
でもお金ないの・・・(´・ω・`)
指定管理者制度とは
公の施設の管理を、市議会の議決を経て指定された
民間事業者を含む幅広い団体(指定管理者)に委ねる
ことができる制度
• 新自由主義的改革の流れ 「官から民へ」
• 平成15年9月 地方自治法の一部を改定する法律
の制定によって導入される
「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための
施設である公の施設について、
民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民
サービスの質の向上を図っていくことで、
施設の設置の目的を効果的に達成することを目指す」
(総務省HPより)
指定管理者制度導入の現状
• 2009年度の導入自治体数-220
主な管理者-民間企業、NPO法人など
★メリット
• 行政側にはない専門知識やノウハウを活かせる
-開館時間の延長
-創意的なイベントの導入
-多様化するニーズへの対応
-司書以外の専門職(技術・運営職など)の確保
• 民間企業のコスト感覚を導入できる
-経費削減
指定管理者制度のデメリット
• 図書館の継続性、安定性、蓄積性を守ることができ
ない。
• 図書館の自立性、独立性の確保が保障されず、「図
書館の自由」が脅かされる。
• 制度導入が経費削減を目的としているため、図書
館で働く人々の一層の低賃金化が進行し、不安定
雇用が拡大する。
• 住民要望に基づくサービス改善を図ることが難しく
なる。
• 他の自治体や類縁機関との連携が妨げられる。
「指定管理者」側の主なメリット
• 委託料
(NPO団体などにとって固定の収入は重要)
• 社会的プレゼンスの向上
• 自治体と「つながり」を持つことができる
(後々役立つコネになるかも…)
指定管理者制度導入例(1)
• 北九州市立図書館の例
中央図書館は市直営のまま→官民連携!
平成18年度
市立図書館6館中、中央図書館を除く5館に導入
• 取り組みの効果
1. 開館時間の1時間延長
2. 新しいサービスの提供
3. 司書資格を保有する職員の比率向上(60%→75%)
4. 経費削減…年間1億1千万円の削減達成
5. 市職員及び嘱託職員の削減
指定管理者制度導入例(1)
北九州指定管理者制度導入の結果…
• 貸出冊数、利用者が年々増加!
• 年間コストの削減に成功!
• 利用者アンケートでは各館90%以上「満足」
「指定管理者制度の成功例」の呼び声高い!
しかし・・・
司書の職員はほとんどが契約社員
→職員アンケート「労働条件が悪化した」館ー36%
将来的なサービスの質の低下の可能性
指定管理者制度導入例(2)
・佐賀県武雄市の例
来年4月よりツタヤを展開するCCC(カルチュア・コンビ
ニエンス・クラブ)に市の図書館の運営を委託する方針
★委託により見込まれるメリット
• 運営費削減(1割減を目標とする)
• 開館時間を4時間延長/365日営業
• 雑誌や文具の販売スペース、蔵書持込可のカフェ
の設置
• 貸出カードとして「Tカード」使用(ポイントも貯まる)
• 貸出履歴に基づき新刊情報を提供
「ツタヤ委託」の問題点
• 貸出履歴を民間企業が保存、活用することへの疑問
1949年図書館協会「図書館の自由に関する宣言」
ー「利用者の読書事実を外部に漏らさない」
↑戦後における閲覧履歴による思想調査が背景
⇒閲覧履歴は重要個人情報!!
利便性の向上だけでなく、
公共図書館の本質にあった内容が必要
提言
財政悪化と利用者のニーズのバランスをとるために、
指定管理者制度の導入は有効である。
但し、
全面委託ではなく、あくまで自治体が主導権を持ち、
企業から「運営アドバイザー」として専門者を招く!
⇒「公共図書館」の本質を守る目的
あくまで利用者のための改革を可能にする
(公共図書館の目的は利益をあげることではない)
提言
雇用面:正規社員を短時間で雇う
また、正規社員のうち専門職を雇う割合を制定する
(指導系職員約1万5千人のうち1万2千人(85.1%)が女性)
「ボランティア」の活用
(児童サービス、図書館レクリエーションにおいて)
論点
• 指定管理者制度の是非
• “公共”図書館とはどのようにあるべきか
(開かれた場所としての図書館と利用者のモラル)
• 公立図書館の有料化はありえるのか
• IT化、情報化社会における公共図書館の役割
参考文献
•
•
•
•
•
•
•
•
Current Awareness Portal:http://current.ndl.go.jp/ca810
総務省HP:http://www.soumu.go.jp/menu_news/snews/01gyosei04_01000004.html
しんぶん赤旗:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-1227/2010122713_01_0.html
図書館問題研究会HP:
http://www.jca.apc.org/tomonken/apeal20060711-1.html
文部科学省HP:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06072602.htm
社会教育調査:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06072602.htm
北九州市取り組み報告:
http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/070328_4_12.pdf
中之島図書館ニュース:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=2012062000000004-jct-soci
• 佐賀県武雄市の事業委託ニュース:
http://www.asahi.com/culture/update/0606/TKY201206060238.html
• 高鷲忠美の研究室便り:
http://blog.study.jp/ygutakawashi/2009/01/post_355.html
• 長岡市HP:
http://www.city.nagaoka.niigata.jp/shisei/shitei/shiteikanri.html
• はてなワード「図書館の自由に関する宣言」:
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%DE%BD%F1%B4%DB%A4%CE%BC%AB%C
D%B3%A4%CB%B4%D8%A4%B9%A4%EB%C0%EB%B8%C0
• 日本図書館協会HP:http://www.jla.or.jp/
• ユネスコ公共図書館宣言:
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/yunesuko.htm
(最終閲覧はいずれも7月9日)