「すざく」衛星搭載X線CCDカメラ(XIS)の時刻較正

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W09c
「すざく」衛星搭載X線CCDカメラ(XIS)の時刻較正
○ 松田桂子(総研大、ISAS/JAXA)、堂谷忠靖、尾崎正伸、馬場 彩(ISAS/JAXA)、鶴 剛、松本浩典、小山勝二
(京大)、林田 清、常深 博(阪大)、森 浩二(宮崎大)、北本俊二、村上弘志(立教)、幸村孝由(工学院)、他XISチーム
本研究では、「すざく」衛星搭載X線CCDカメラの時刻較正を行った。今回は、Burst オプションを使用した場合の時刻付けを高い精度
で
較正することに成功したので、その結果について報告する。X 線連星パルサー Her X-1 を、XISに 0.1秒 Burst オプションを用いて観測
することで、1.24秒のパルス波形を検出した。HXDのパルス波形と比較して、XISの時刻付けがHXDに対して約0.08秒遅れていることが
判明した。これは、従来より1桁高い精度である。この遅れは、Burst オプションがないときにも共通に存在すると考えられ、原因を
調査中である。
1、X線天文衛星「すざく」 搭載検出器
XIS
XIS (X線CCDカメラ)
HXD (硬X線検出器)
• 4台のX線CCDカメラから構成 (XIS0、1、2、3)
• 視野:18分角×18分角
• エネルギー帯域:0.2 - 12 keV
• 時間分解能 8 sec (Normal Mode)
•エネルギー帯域:10-600 keV
•高感度・低バックグラウンド
•時間分解能 61μsec
•カニパルサーを観測し、0.36 ms の精度で絶対時刻較正済み
3、本研究の目的
2、XISの観測モード
Normal mode
①Normal mode + Burst オプション の場合の時刻較正を行う
②さらに時刻較正の精度を上げる
– CCDのすべてのピクセルを読み出すモード
– 蓄積領域で全ピクセルを読み出す間に撮像領域で露光
– 露光時間=時間分解能は8sec
– 銀河中心方向のX線バーストの観測 (1A1742-294)から、
8秒以下の精度で時刻較正済み
⇒0.1s Burst オプションをつけた観測で時刻較正を行った
4、観測天体 Hercules X-1
 強磁場中性子星+恒星からなるX線連星パルサー
 固有の3つの周期をもつ (Nagase 1989)
Normal mode + Window オプション
– CCDの特定の領域のみをくり返し読み出すモード
– 1秒以下の精度で時刻較正済み
Normal mode + Burst オプション
– 露光の途中で一度撮像領域に蓄積した電荷を捨て、再度露光
– パイルアップを防止するために用いる
– 今回は、0.1s Burst オプションつき観測
実行的な時間分解能 0.1s になる (8秒毎に7.9秒分のデータは破棄)
 パルス波形にエネルギー依存性ほとんどなし (Soong et al. 1990)
観測 : 2008/2/21-22
Exposure : 64 ksec
5、Normal mode + Burst オプション の時刻較正
②パル
HXD
10-12keV
χ2
(Larsson. 1996, Leahy. 1987 より誤差を求め
た。)
⇒時刻較正がすでになされ、統計の
良いHXDの周期を基準にする
Best Period
→周期の違いは誤差の範囲内
Period (sec)
 畳み込み解析とは…
いろんな周期でライトカーブを区切って重ね合わせることを繰り返し、重ね合わせた
波形の一定値からのずれ(χ2)が1番大きい周期(Best Period) を探す解析方法
ずれ
XIS
ピーク
XIS
10-12keV
HXD
ピーク
HXD
10-12keV
1.237748 s
Pulse Phase
• XISとHXDで共通の周期 P = 1.237748 s で畳み込み
• XISの波形は、時間分解能が悪いためHXDに対して波形がなまっている
⇒XISとHXDでパルス到来のタイミングがずれている
⇨ずれの大きさを見積もるため、相互相関関数を計算
③時刻付けのずれの見積もり
XIS、HXDのパルスプロファイルについて、相互相関関数を計算
その結果、XISの時刻づけが 0.08 ± 0.01 sec (10-12 keV)
だけHXDに対して遅れていることが判明
(このずれには、原理上周期の整数倍の不定性が含まれるが、過去のXISの時刻較正との
整合性を考えると、この不定性は考えなくてよい)
cross-correlation
【Best Period (10-12 keV) 】
XIS : 1.23774815 s ± 7.1×10-5 s
HXD : 1.23774874 s ± 1.7×10-6 s
XISとHXDで検出した
パルス波形の比較の
ため、パルス
プロファイルを作成
Best Period
過去のすざくの観測
χ2
(2005年、2006年 Enoto et al. 2008)
から推測される周期を中心に、10-6 s
刻みに畳み込み解析を行い、パルス
周期を求めた。
XIS
10-12keV
ス波形の比
較
counts/sec
スの周期決
定
 1.24 sec(自転周期) → このパルスを検出して時刻較正を行う
 1.7 day(連星運動の周期)
 35 day(自転軸の歳差運動)
counts/sec
①パル
HXD
議論&まとめ
 Burst オプションにより、XISの時間分解能を0.1sec にし、P〜1.237748 s のパルスを検出した。
 相互相関関数の計算から、XISとHXDのパルスピークの到来時刻のずれ (0.08 ± 0.01 s)があることが
判明した。
 このずれの原因については別途調査中。
HXDが
遅れている
XISが
遅れている
relative shift (phase/16)
References
Enoto et al. 2008, PASJ, 60, S57
Nagase. 1989, PASJ, 41, 1
Soong et al. 1990, ApJ, 348, 634
Larsson. 1996, A&A suppl, 117, 197
Leahy. 1987, A&A, 180, 275