システムアプローチでは

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2章 システムの問題定義と概念化
2章 システムの問題定義と概念化
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2章 システムの問題定義と概念化
問題の設定
4501021 大野治宣
2
2章 システムの問題定義と概念化
2.1A 問題と問題定義

問題定義
システム工学は問題解決を目指す。
↓
解くべき問題の明確化。
•何をどう定義すればいいのか?
•問題とはなにか?
3
2章 システムの問題定義と概念化
問題の概念
図1,問題のモデル化
状態の集合をS,状態を遷移させる作用素をA(S×A→S)
とすると,これに初期状態si,目標状態sg(si,sg∈S)を
加えた4つの要素からなる組<S,A,si,sg>を問題と呼ぶ。
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2章 システムの問題定義と概念化
問題定義で明確化するべき要素
システム工学の問題定義では,以下の項目を
明確化する必要がある。
①目的・目標
②制約
③評価基準
④現状
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2章 システムの問題定義と概念化
①目的・目標
目標状態を定性的または定量的に
表現したもである。
定性的:性質や成分に注目すること
定量的:量や数値に注目すること
問題状況の中から目的を顕在化させることは難しい。
長期的な視野に立って目標や目的を設定するときは,
立てた目標・目的が達成される将来での状況を予測
するべきである。
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2章 システムの問題定義と概念化
②制約


作用素の集合Aや状態の集合Sの枠で
問題定義中では完全に把握する必要は無く,
システムの概念化の中で明らかにするだけ
でよい。
問題解決において許容できない,または
考慮する必要が無い状態・作用素・作用素
の系列は,明確にする。
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2章 システムの問題定義と概念化
③評価基準


複数ある作用素の系列(「代替案」と呼ぶ)
同士の価値や優劣を判定するための尺度となる。
現状と理想との差を測る尺度となる。
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2章 システムの問題定義と概念化
④現状


初期状態siについてで,自明な時もあれば,調
査分析を行わなければならないときもある。
利用可能な問題解決の作用素の調査も含まれる。
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2章 システムの問題定義と概念化
問題の認識




問題を認知には個性が発揮される。
1つの問題状況でも無数に問題定義が
可能である。
問題解決の最中に新しい情報が
追加されてゆく。
問題に対する認識の変化から,
目的自体も変化する
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2章 システムの問題定義と概念化
グループでの問題定義


メンバーは個人の問題について取り組
んで,全体の問題定義がなされにくい。
①~④の項目を最初から完全に定義で
きるとは限らない。
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2章 システムの問題定義と概念化
まとめ
実際にはシステムアプローチを何回も
繰り返す中で徐々に問題定義が明確に
なってゆくことが多い。
システムアプローチでは,問題の再定義を
可能とする立場を忘れてはいけない。
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2章 システムの問題定義と概念化
2.1B 問題の分類

システム工学では対象とする問題が
多種多様であるために,全ての問題を
同等に取り扱うことは出来ない。
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2章 システムの問題定義と概念化
①「やさしい問題」・「むずかしい問
題」
むずかしい問題について考える。
⇒手間が大変
時間量計算(計算に要する時間)や領域計算(計算
に要するメモリ)が膨大である。
例)
行列の加算・乗算:多項式オーダー
彩色可能性問題(列挙法):指数オーダー
図2,発散の速さ
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2章 システムの問題定義と概念化
②-1


良定義と悪定義
問題状況は境界を設定しにくい開いた
世界であることが多いため人の認知のに
応じて問題の意味合いが異なってくる。
問題状況を把握すれば初期状態・目標状態を
明確に規定できるものを良定義問題と呼び,
明確に規定できないものを悪定義問題と呼ぶ。
「問題定義が明確でない」=悪定義問題
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2章 システムの問題定義と概念化
②-2


良構造と悪構造
問題解決の手順をアルゴリズムとして明示
(プログラムやマニュアル化)できる問題を良
構造問題と呼ぶ。
アルゴリズム化しにくい問題やアルゴリズム
に出来ない問題を悪構造問題という。
「問題解決の手順が明確でない」=悪構造問題
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2章 システムの問題定義と概念化
③分析型と合成型
表1,分析型と合成型の比較
表1に示したように分類される。
分析型は探求型・保全型,合成型は開発型と呼ばれること
もある。
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2章 システムの問題定義と概念化
④その他の分類



問題の発生による分類
(天降り型,自発型,事故発生型,
本末転倒型)
因果関係による分類
(順問題,逆問題)
数学の概念からきた分類
(良設定問題,不良設定問題)
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2章 システムの問題定義と概念化
2.1C 問題解決モード
4400097 藤岡和生
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2章 システムの問題定義と概念化
目的
システムズアプローチでは,
問題の目的の達成の仕方に
ついて厳格なレベルがある。
2.1.Cでは,問題解決のレベル
(問題解決モード)の
問題の分類を考える。
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2章 システムの問題定義と概念化
(1)最適/満足/可能解の探索
代替案の評価基準をfとする。
制約を満たし問題の目的Sgを達成する
ことができる代替案の探索には,
次の3つの問題解決モードがある。
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2章 システムの問題定義と概念化
3つの問題解決モード

最適解(optimal solution)探索モード
最高のf値をもつ代替案を求める。

満足解(satisfying solution)探索モード
あるレベルf*以上のf値をもつ代替案を求める。

可能解(feasible solution)探索モード
f値を考慮せずに代替案を求める。
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2章 システムの問題定義と概念化
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2章 システムの問題定義と概念化
例2.2では・・・
目的Sg:
整数1から100までの和を求める
プログラムをつくること
評価基準f:
行数が少ないほど良い評価
評価基準f*:
4行までなら満足する
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2章 システムの問題定義と概念化
A-C案の問題解決モード



A案の場合
1行⇒最高のf値をもつ
⇒最適解探索モード
B案の場合
4行⇒あるレベルf*以上のf値をもつ
⇒満足解探索モード
C案の場合
10行⇒f値を考えていない
⇒可能解探索モード
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2章 システムの問題定義と概念化
最適解探索モードの注意
評価者の数や評価属性の数が
単一の場合と複数の場合とでは,
その取り組み方が異なってくる。
このことに注意せねばならない。
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2章 システムの問題定義と概念化
(2)システム/構造/要素の探索
問題解決の代替案は,
ソフトウェアの場合もあれば,
ハードウェアの場合もある。
それらをシステムと認識すれば,
要素と相互関係(構造)の観点から,
次の3つの問題解決モードが存在する。
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2章 システムの問題定義と概念化
3つの問題解決モード



システム探索モード:
制約を満たし目的を達成するシステムの
構造と要素を求める。
構造探索モード:
組み込む要素は所与であるとして,
構造を求める。
要素探索モード:
構造は所与であるとして,
組み込む要素を求める。
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2章 システムの問題定義と概念化
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2章 システムの問題定義と概念化
海外ツアーのスケジューリングでは・・・
旅行スケジュールをシステムと考える。
日数は構造,
都市名は要素となる。
?1-?3までの企画の分類は
次のようになる。
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2章 システムの問題定義と概念化
?1-?3の問題解決モード



?1 ヨーロッパ・ツアーの場合
日数と都市名が未決定
⇒構造と要素を求める。
⇒システム探索モード
?2 パリ・ローマ・ロンドン・ツアーの場合
都市名は所与だが,日数が未決定
⇒構造を求める。⇒構造探索モード
?3 10日間ヨーロッパ・ツアーの場合
日数は所与だが,都市名が未決定
⇒要素を求める。⇒要素探索モード
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2章 システムの問題定義と概念化
その他の問題解決モード
問題解決を放棄してしまう「回避」,
目的や制約を変え問題を無くす「解消」
なども問題解決モードと考えられる。
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2章 システムの問題定義と概念化
まとめ
問題解決モードはシステムズアプローチの
サイクルを支配する重要なファクターであり,
早い段階でそれを規定しておかなければならない。
問題定義では,
問題解決モードも明確にしておく。
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2章 システムの問題定義と概念化
2.2 システムの概念化
A.
創造
4401028 金川 貴一
4401052 竹田 宣広
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2章 システムの問題定義と概念化
システムの概念化
問題解決するための中心的なアイディアや
基本構造を打ち出す。
↓
問題解決に直接結びつく最も重要なステップ
① 問題構造の把握
② 代替案の作成
「システムの概念化」=「代替案の作成」
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2章 システムの問題定義と概念化
創造について
創造: ①紙が宇宙や人間,動物の祖先を作り出すこと
②新しいものを自分で考え作り出すこと
模倣:
今までにあることや既に出来上がった物を
そのまま踏襲し創意工夫を示さないこと
三省堂「新明解国語辞典 第五版」より
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2章 システムの問題定義と概念化
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2章 システムの問題定義と概念化
システムの認識を明白化する
①
②
③
④
⑤
⑥
対象の全体の認識
対象の部分の認識
対象の要素間および全体との
相互関係の認識
対象の階層構造の認識
対象の境界を通しての物のやりとりの認識
対象および要素のもつ機能の認識
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2章 システムの問題定義と概念化
創造の判断
モチーフという絵の要素は既存のものであっても,
要素間の相互関係は新しい
↓
創造であるか否かの判断に,
システムの認識を用いることができる。
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2章 システムの問題定義と概念化
数学では
ある少数の定義や公理から多数の定理が
導き出される
既存の知識の組み合わせの妙自体がすばらしい
創造である!
「創造とは既存の知識や要素の新しい組み
合わせである。」
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2章 システムの問題定義と概念化
2.2B 問題構造の把握
(1)スキーマ,(2)要素の認識
4401028 金川 貴一
4401052 竹田 宣広
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2章 システムの問題定義と概念化
(1)スキーマ
問題構造の把握は認知科学用語での
「スキーマ」と呼ばれる概念と関係がある。
 「スキーマ」とは・・
構造化された知識の単位のことであり,
個々の具体的事例を一般化したものである。
 私たちは状況に応じて各種スキーマを活性化
させさまざまな認知活動を行っている。

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2章 システムの問題定義と概念化
(2)要素の認識


「問題構造の把握」のためシステムを
構成する要素を抽出する。
一般的な概念を含め,問題解決に
関係する要ををコンセプトと呼ぶ。
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2章 システムの問題定義と概念化
コンセプトの抽出



コンセプトの抽出には,問題解決を行う
人間が持っている内的知識に頼る方法と,
それ以外の外的支援を利用する方法がある。
内的支援→KJ法
外的支援→「道具」,「他人」
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2章 システムの問題定義と概念化
KJ法とは





問題に関係あると思われるコンセプトを列挙。
それらをいくつかの集合にまとめる。
類似したコンセプトからなる集合は,
一般化された1つのコンセプトを表すことになる。
各集合をさらに少数個の集合にまとめていくと
より一般化されたコンセプトが得られる。
内省を通してスキーマを意識化させ
明示する技法である。
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2章 システムの問題定義と概念化
ブレインストーミングとは


コンセプトをグループで抽出していく。
作業中は決して批判をしない。
KJ法やブレインストーミングがうまく機能した場合,
メンバー全体の内的知識がメンバー個人の
内的知識に還元される
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2章 システムの問題定義と概念化
2.2C 代替案の生成
4401024 小倉 将
4401053 田島 紀幸
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2章 システムの問題定義と概念化
代替案の生成


入出力や機能の認識は問題構造の把握に
つながる
それらの認識は代替案の生成に強く関連
してくる
→入出力および機能の認識を手がかりに,
合成型問題の代替案を生成していくこと
を考える
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2章 システムの問題定義と概念化
(1)機能の認識による概念化
機能の認識はシステムの概念化の中で重要
 設計は代表的な合成型問題
→設計の中で,機能がどのように
取り扱われるか

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2章 システムの問題定義と概念化
①一般設計学での機能
一般設計学とは・・・
 設計を理論的に取り扱う学問
一般設計学では,設計の対象となるハードウェア,
ソフトウェアなどのモノを「実体」と呼ぶ
 人間は1つの実態に対し,
頭の中で1つの「実態コンセプト」を対応させる

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2章 システムの問題定義と概念化
機能空間から属性空間への写像

機能に関する設計目標が与えられた場合,
設計は機能空間から属性空間への写像
(関連付け)と理解することができる。
携帯用点火器具についての例を図2.19として示す
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2章 システムの問題定義と概念化
機能から属性への写像が
わかっている場合
類似設計の経験や知識があるなら,
あとは属性および属性値の値を工夫して,
実体を実現していく。
しかし,実現された実体に,
目的とした機能が実際にあるとは限らない。
→実現された実体を分析してみる必要がある。
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2章 システムの問題定義と概念化
まったく新しい実体を
設計する場合
機能から属性への写像は未知である
→見通しの悪い設計問題では,
属性空間上の点(設計代替案)を
数多く生成していき,それらが目的機能を
もつかを検査する生成検査法(generate and
test)がとられたりする
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2章 システムの問題定義と概念化
②価値分析
価値分析とは・・・
 機能から属性への写像を得る方法のひとつ
 もともと製品の再設計のための技法を
体系化したもの
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2章 システムの問題定義と概念化
再設計/設計のプロセス

価値分析が適用される再設計/設計の
プロセスは,図2.20のように表される
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2章 システムの問題定義と概念化
設計の考えかた
再設計のプロセスの図(図2.21)より,
設計とは開発/設計/製造に対する
仕様書の作成であると見ることができる
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2章 システムの問題定義と概念化
仕様書とは・・・
材料,製品,工具,設備などについて,
要求する特定の形状,構造,寸法,成分,能力,
精度,製造方法および試験方法などの規定を
文書化,図面化したもの(JIS Z 8101)
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2章 システムの問題定義と概念化
古典的な大量生産方式
図2.20のプロセスの構造が
そのまま組織の構造に対応しており,
分業化が効率化の原点
しかし・・・
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2章 システムの問題定義と概念化
多品種少量生産方式に
始まる新たな生産方式
分業化ではなくできるだけ少人数の組織が,
情報を共有しながら一体となって,
図2.20の作業に取り組む
→ このための方法論として,
コンカレントエンジニアリング(CE)や
リエンジニアリング(reengineering)が
提唱されている
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2章 システムの問題定義と概念化
問題定義で必要なこと
問題定義の中では,目的や代替案の
評価基準を定める必要がある
設計問題では,
目的=「達成すべき機能」と考えればよい
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2章 システムの問題定義と概念化
価値指数
価値分析の特徴・・・機能中心の考え方
→設計テーマや設計代替案に対する評価基準として
次の価値指数を用いる
価値指数=機能の価値/必要コスト
価値指数の小さいテーマや代替案が再設計の対象であり,
最低のコストで必要な機能を確実に達成できるように努力
していくことになる
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2章 システムの問題定義と概念化
コスト

開発,設計,製造,流通,使用コストだけでなく,
廃棄再生コストをも含んだライフサイクルコスト
(life cycle cost)を考えたい
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2章 システムの問題定義と概念化
基本機能
設計の目的となる達成すべき機能
→斬新な設計/再設計を行うには
基本機能を見直し,それをできる限り
一般化することが必要
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2章 システムの問題定義と概念化
機能的固着
たとえば,「マッチが欲しい」と思うよりも,
「火を出すモノが欲しい」と考えるほうが
目的の達成に結びつきやすい
→機能的固着(functional fixedness)
創造性を阻む要因である
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2章 システムの問題定義と概念化
機能定義
基本機能をはじめ,個々の機能を
定義することを考える
『それは何をするものか?』という問いに
答える機能定義
→ 1つの機能を1つの動詞と1つの名詞とで
表現するもの
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2章 システムの問題定義と概念化
5W1Hの条件
機能定義を完全なものとするには,
5W1Hの条件

When
Where
Who,What
Why
How much,How

How to




いつ
どこで,どんな環境で
誰が,何が(機能の動詞の主体)
何のために(その機能の目的)
many
どの程度(性能記述)
どのようにして(機能を実現する手段)
を明らかにしておくべき
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2章 システムの問題定義と概念化
目的-手段の段階構造


5W1Hの条件のWhyとHow toの関係に
着目すると,目的-手段の段階構造に結びつく
目的-手段の段階構造を得るには,
トップダウン的な方法と
ボトムアップ的な方法がある
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2章 システムの問題定義と概念化
目的-手段の段階構造を得る方法

トップダウン的な方法


基本機能からはじめて,必要となる2次機能,
さらには末端機能を展開していく
ボトムアップ的な方法

目的あるいは機能を思いつくまま羅列し,
それらの関係を整理していく
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2章 システムの問題定義と概念化
機能系統図
目的-手段の階層構造を表す図を
機能系統図(functional diagram)と呼ぶ
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2章 システムの問題定義と概念化
機能系統図
機能系統図が得られたなら,
図2.21のように末端機能に
それを実現しうると思われる
実体を対応させていく
(システムの概念化)
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2章 システムの問題定義と概念化
機能展開の注意点
部分的な機能の単純和として基本機能が
成立する場合,基本機能と部分的な機能との
間に大きな隔たりはなく機能展開がうまくいく
しかし・・・
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2章 システムの問題定義と概念化
機能展開の困難な場合
→機能展開が困難なケース
 単純な機能の統合が予想も機能を
生み出すことがある
 機能をうまく展開できず,しかも経験,
データ不足の場合,機能と実態との
対応付けは難しい
→このとき,『ほかに同じ機能のモノはないか?』
と考えることは有効
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2章 システムの問題定義と概念化
たとえば・・・
文字判別などのパターン認識(pattern
recognition)を行う機会をつくろうと考えた場合,
学習についての機能展開は容易ではない
→ このとき,パターン認識を行っている
脳をモデル化しようと考えることは自然である
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