Transcript 講義資料
生体物質化学 [教育目標] (1)細胞のしくみを理解する (2)生体物質の構造や化学的性質を理解する (3)生命活動における化学反応について理解する (4)生命活動における情報の流れを理解する。 生命科学の応用 医学への応用 医薬品の開発,遺伝子治療,テーラーメイド医療 人工臓器開発 農業への応用 品種改良(分子育種),遺伝子組換え作物 工業への応用 有用物質の生産,バイオナノテクノロジー 環境保持への応用 バイオレメディエーション,環境調和型物質生産 生体分子の理解 生体分子は有機化合物である 生体内では,化学反応が行われている →生命科学の応用には,化学が大きな役割 →生体分子の化学的性質,生命活動を維持 する機構の理解が不可欠 インフルエンザ治療薬 (http://fps01.plala.or.jp/~Suzunoki/influ.htmより転載) 参考:http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/chem7/pleconaril.html 授業計画 1・2 生命とはなにか 生命を構成する物質 生命の起源 3〜5 炭水化物 6 脂質 7・8 代謝経路の有機化学 9〜11 核酸と遺伝情報 セントラルドグマ DNAとRNA 12・13 アミノ酸と蛋白質・酵素 生命とは 外部との境界をもつ エネルギーを産生する 自己を複製して増殖する 生命の本質 以前は神秘で神聖な「生命力」により生命たりえたと考 えられていた→生気論 生命活動→化学反応の一種 →通常の化学反応とどう違うか →多様な化学反応が秩序だって行われている 複雑で,高度に組織化されている 構造体を持っている →系全体のエントロピーは増大しなければならない(熱力 学第二法則)が,生物は秩序をもち,エントロピーは減っ ているように見える 「負のエントロピーを食べている」(シュレディンガー) 生命は動的定常状態を維持している 代謝を行い,外部にエネルギーや代謝産物を排出すること により,周囲のエントロピーを増大させている 環境からエネルギーを引き出し、それを用いて簡単な素材 物質から自己のこみいった構造をつくりあげ、維持する 自己構造と組織を保っていくために外部のエネルギーを利 用できる ⇔無生物はエネルギーを与えれば一層無秩序になって崩壊 する 常に活動していなければ生命は維持できない → 「動的定常状態」 「老化」→新陳代謝のため増殖が必要 生きている,生きていない? ミトコンドリア リソソーム ペルオキソーム 物質の輸送 核膜 物質の取り込み,排出 (能動輸送) 小胞 ゴルジ体 リボゾーム 細胞構成物質の ターンオーバー 小胞体 細胞では化学反応が適正な場所で,高度に制御された状態で行われ,定常状態を維持している →細胞活動の維持“生きている” 定常状態が崩れると,細胞の構造すら維持できなくなって死んでしまう(破裂して自己分解) 生命の成り立ち 超ひも→クオーク→素粒子→原子→分子→分子集合体→細胞 →器官→個体→集団→生態系 生体分子は基本的に有機物→複雑な高分子をつくれる →生命の根源は「複雑さ」 単位の組み合わせにより、無数のバリエーションが作成可能 生体分子の分子間の認識→秩序の形成に不可欠 生体分子の自己組織化→構造形成を可能にしている 細胞膜、DNAの複製など →ナノテクノロジーへの応用が期待されている 遺伝情報の伝達 単位の組み合わせにより生命が作られている→組み合わせ方 を指定してやれば,生命を複製できる →生命の設計図、プログラム「遺伝情報」 正体:DNA 遺伝情報の全体:ゲノム 遺伝情報→蛋白質のアミノ酸配列に翻訳される 蛋白質が実際に生命活動を担っている →蛋白質がお互いに認識、調節しあい、ネットワークにより 生命活動を維持している →蛋白質の機能の理解が不可欠→ポストゲノム研究 ゲノムプロジェクト、ポストゲノム研究により生命の解明に 挑む→記憶、行動、意識、思考といった脳の働きも明らかに なると期待される 生命の起源 地球の誕生:約50億年前 生命の誕生:約40億年前 原始大気成分の反応により,核 酸やアミノ酸が生成 →化学進化により最初の生命体が 生まれた? http://www.nrc.gamagori.aichi.jp/w_muse/earth/hi story/ ミラーの実験(1953) メタン・アンモニア・水・水素 からなる混合気体に一週間放電→ アラニン、グリシン、アスパラギ ン酸等が生成 理科教育のためのWeb教材集 (岐阜大学教育学部地学教室)より転載 http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/origin_of_life/index.html 現生生物の三つの系統 「分子細胞生物学」(東京化学同人)より引用 現生生物の系統樹 「ヴォート生化学」(東京化学同人)より引用