[日本農業・食料自給率の現状とこれからについて]

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Transcript [日本農業・食料自給率の現状とこれからについて]

日本農業の
現状とこれからについて
経済学部
国際経済学科
坂井健治
新保博彦ゼミ
寺尾文孝
笹田哲矢
目次
第1章:はじめに
第2章:農業生産の動向
第3章:日本の農産物の輸出入
第4章:日本農業の問題点と対策
第5章:食料自給率について
第6章:まとめ
第1章 はじめに
私たちの全体のテーマは「農
業」について、その中で日本の農
業生産の動向、農産物貿易の日本
と世界との比較、日本農業の現状
について調べ、いま問題といわれ
ている食料自給率についても調べ
て、まとめました。
第2章:農業生産の動向
1.(1)世界の穀物収穫面積、単収、人口、1人当たり穀物面積の推移
○穀物収穫面積は、農地開発を行う一方で砂漠化が進
行していることから、1981年をピークとしてやや減少
傾向となっている。
○最近は6億5千万ha前後で推移しており、人口の増加
に伴い1人当たりでは減少している。(表1)
表1[1]
穀物収穫面積
単収
人口
1人当たり穀物収穫面積
[1]
1961~63年平均
6.5億ha
1.4トン/ha
31億人(1962年)
20.8a/人(1962年)
http://www.jaicaf.or.jp/news/lecture_6_2007-1.pdf
2002~04年平均
6.7億ha
3.2トン/ha
63億人(2003年)
10.7a/人(2003年)
(2)日本の農産物生産量
○農産物の生産量=単収(単位面積当たり収
穫量)×収穫面積で表すことができる。
○日本の農産物生産量は1960年では5100万t
が、2005年には5500万tに増えており、一人
当たりの生産量で見てみると1960年には
4.3tが、2006年には26tとなっている。
○日本の農産物生産量は1960年よりも近年
の方が増えている。
2.農業生産全体の動向
○現在日本の農業生産は減少傾向となっており、日本の農業総産出額
は、生産量の減少や価格の低下等により、昭和59年(1984年)の
11兆7千億円をピークとして、減少が始まり、平成20年(2008年)
には8兆5千億円となった。(図1)
図1[1]
単位(億円)
農業総産出額等の推移
150 000
農業総
産出額
米
100 000
野菜
50 000
果実
16
20
12
8
4
63
59
55
51
47
43
39
35
昭.31
0
・農業総産出額=Σ(品目別生産数量×品目別農家庭先販売価格)で表されます。
[2]
http://www.maff.go.jp/j/tokei/pdf/sansyutu_gaisan_09.pdf
○平成2年度(1990年度)から平成17年度(2005年
度)にかけての減少要因をみると、生産要因が
52%、価格要因が48%となっています。
○品目別には価格低下と生産減少が大きかった米が
全体の減少額の3分の1を占め、次いで、野菜、果実
等の減少が大きくなっています。(表2)
品目別国内生産額の減少要因(1990~2005年度)
表2[1]
農業全体
価格要因
生産要因
[1]
48%
52%
米
70%
30%
野菜
19%
81%
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21/zenbun.html
果実
44%
56%
3.主な品目別の動向
○米:食生活の多様化等により、消費量が年々減少し、全体
の需要量も800万t 程度へと大きく減少しています。消費量の
大幅な減少に伴い、国内生産も減少を続けて、平成21年で
は、生産量は847万tとなっています。
○野菜:食生活の多様化・簡便化等により、根菜類を中心に
消費量が減少しており、国内生産は、農業従事者の減少・高
齢化等により、根菜類、葉茎菜類、果実的野菜を中心に減少
し、平成20年では、生産量1,265万t となっています。
○果実:近年、需要は800万t 程度とほぼ横ばいで推移してい
ます。国内生産は、生鮮果実の需要量の減少、農業従事者の
減少・高齢化等により減少傾向にあり、平成20年では、生産
量は341万t となっています。
4.結論
○平成2年(1990年)から平成20年(2008年)に
かけて国内の農業生産額は3兆円程度減少し、農
業所得は全体でほぼ半分も減少し、農業生産に
大きく影響が出ています。
○また、農産物の価格低下は消費者には大きな
便益をもたらしますが、農業者の経営にも大き
な影響を及ぼします。
○将来的には、国産農産物の生産減、価格上昇
を招く可能性があり、国民全体が不利益を被る
おそれがあります。
第3章:日本の農産物の輸出入
1.農産物輸出入額の推移
日本の農産物輸入は、円高の進展や世界的な貿易自由化の流れの
なか、食生活の多様化等を背景として、加工食品類が平成15年
(2003年)~平成20年(2008年)にかけて増加傾向にあり、平成20年
(2008年)では穀物価格の上昇もあって、6兆円程度へと大きく増加
した。なお、平成21年(2009年)の農産物輸入額については、円高ド
ル安の進行や穀物価格の低下等により前年に比べ2割減少してい
(億円)る。輸出も輸入に比例している。 (億円)
輸入
輸出
3500
70000
3000
60000
2500
50000
2000
40000
1500
輸出
30000
1000
20000
500
10000
0
0
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
輸入
2 日本と主要国の
農産物輸出入額の比較
世界の主要国では・・・
EU 諸国では、域内で様々な農産品・食料品の貿易が多く、輸出入とも多
い。
米国では、バナナ等の熱帯産品や肉類の輸入が多い一方で、穀物等の輸出が
非常に多い。
豪州、ブラジルでは、輸入が非常に少ない一方で、穀物等の輸出が非常に多
くなっている。
中国においては、農業者1人当たりの農地面積が日本に比べてはるかに小さ
く、人口増や所得増等により、大豆等の輸入が多くなっている。
→この結果、平成19年(2007年)の中国の農産物輸入額は約5兆3000億円と日本
を超え、世界第4位となっている。
日本では・・・
農産物輸出額が非常に少ない一方、輸入額は多いことから、農産物
の輸入額から輸出額を差し引いた額は約4兆8000億円と、世界一の
輸入相手国別にみると
日本の主な輸入相手国(2009年)
(農産物)
その
他
30,6%輸入額
米国
28.5%
カナ 4兆5609億円
EU
ダ
豪州
中国 15,4%
6,5%
7,8%
11,1%
日本の農産物輸入総額を
輸入相手国別にみると、
米国、EU、中国、豪州、
カナダの上位5つの国・
地域からの輸入が7割を
占めている。
日本の輸出を品目別にみると
平成20年に比べ平成21年の輸出は8.5%減少している。
畜産品以外の品目すべてで減少している。
品目別にみると、野菜・果実等が前年に比べ19.8%と大きく減少して
いて主にりんご、
いちご、ももがそれぞれ26.6%、20.6%、7.3%と減少してい
る。
日本の輸出量は平成20年に比べ平成21年では減少傾向にありますが、
野菜・果実等の輸出を増やすことにより
→日本の農産物の輸出量を伸ばすことができる。
(億円)
加工食品 畜産品 穀粉等 野菜・果実等 その他
平成20年
1308
342
245
205
784
平成21年
1225
351
195
164
702
http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/yusyutu/pdf/100319-01.pdf
日本の農産物の輸出入の特徴
農林水産物の輸入は、02年に約7兆円。増加
傾向が続いている。また、輸入の特徴と
しては、先にも取り上げたように、特定
の国への依存がとても大きいといえる。
近年、価格の高さなどから国際競争力が低
いとされる日本の農産物を、本格的に輸
出しようとの動きが目立ち始めた。
その理由としては、日本の農産物の品質の
高さが他国でも評価されてきており、需
要が伸びてきているためである。
また、02年の輸出額は約3500億円。国内市場
を奪われる分、海外への売り込みを増やした
い、というのは農業関係者の願いである。し
かし、東南アジアでは、日本で開発された果
物や野菜の現地生産が広がっている。
日本の法令では、品種の開発者には一定の権利
が認められ、他人は無断で栽培できないが、
種苗を違法に持ち出して現地で栽培されてい
る「コピー」農産物も出始めた。安いうえに栽
培技術も年々向上し、競合している。
第4章
日本農業の問題点と対策
1.日本農業の問題点
○ 一つ目は、農業者の高齢化、若者の減少、農業
経営者の育成の遅れ、新規就農者数も少なく、農業
を継ぐ後継者確保が不十分である。
○ 二つ目は、農業や農村の衰退、農地面積の減
少、耕作放棄地や不作付地が年々増加している。
○ 三つ目は農村地域の過疎化や高齢化、集落を維
持できなくなっている地域があるなど、農村地域の
活力の低下。
2.農業就業人口
○農業就業人口とは、15歳以上の自営農業と、兼業農家のうち農業
に従事した日数が多い者の合計のこと。
年齢別農業就業人口
図4
7000000
(単位:人)
6000000
5000000
60歳以上
50~59歳
40~49歳
30~39歳
20~29歳
15~19歳
4000000
3000000
2000000
出所:農業白書
平.16
平.15
平.14
平.13
平.11
平.10
平.9
平.8
平.6
平.5
平.4
平.3
平.元
昭.63
昭.62
昭.61
昭.59
0
昭.58
1000000
http://www.estat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001061909
3.農村地域の活性化
○農村地域の活性化を図るには、
二地域居住や定住などを通じて人材の確保が必要
都市からの移住や交流者を受け入れた地域の住民は図5からプラス面の
影響を与えたことがわかる。
移住・交流者が地域に与えるプラス面の影響
0
図5
10
20
30
40
50
(単
60
63,8
人口減少に歯止めがかかった
産業・経済が活性化した
55,1
コミュニティが活性化した
54,3
29,5
新しい文化が流入した
24,5
地域雇用の担い手が増加した
15,8
地域の伝統文化が継承された
その他
出所:農業白書
70
1,0
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21/pdf/z_1_4_4.pdf
○都市部から農村への定住などの促進を図るには、地方
の受け入れ体制や交通アクセス、環境整備などを推進さ
せ、地域の情報を都市部へ発信していかなくてはならな
い。
○食料自給率の低下や農業・農村の将来への危機感、不
況による雇用への不安や就職難などをきっかけに、若者
の間でも農業への関心が高まりつつあり、さまざまな形
で農業にかかわる動きが出てきて取り組んでいる。
○取り組みの内容としては、自ら就農する、農村に赴き
活性化に協力、農産物販売の支援、雑誌を通じて農業や
農村の魅力について伝えるなどいろいろな取組が行われ
ている。
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21/pdf/z_1_4_4.pdf
○農業者個別所得補償制度:農作物の販売コストと販売金額の
差額にたいして交付金を交付する
●メリット
●デメリット
食料の国内生産の確保、食料自給率の向上
農業の多面的機能を確保
「赤字額を補てん」する仕組みである
健全な競争原理が働かない
赤字農家が増加する
○参考にした筆者、浅川芳裕(月刊『農業経営者』副編集長)さんが考えた
「農業者個別黒字化優遇制度」:補助金を黒字農家または現在赤字から
黒字を目指している農家を対象に支給、助成金から融資に変え、融資条件は
利益計画、赤字農家は黒字化計画を出すことだけにする。
○期限は5年、黒字化に成功すれば返済を免除、赤字の場合は全額
返済、審査は民間の金融機関にし、地域バンカーとして中長期的に
維持、農産業の育成伸長していく役割を担ってもらう。
○黒字化をめざし創意工夫するインセンティブを働かせる。
○狙いとして、経営努力し、黒字営業者が増えれば、農場とし
て持続的な経営ができる人が増える。
「返済しないといけないならいらない」という辞退者を出す。
○今の農業界の問題は、
農業者の経営課題、国民の農業界の期待の低さの
根底である赤字の改善
○これらを解決するために、
農業者の黒字化、黒字を促す政策、健全な農業としての農業
の自立的な発展に向けた枠組みの整備がこれからの日本の
農業には必要である。
○赤字を補てんするのではなく、黒字化を目指すことで競争
力が高まり、農業が活気にあふれ、若者も目を向ける。
また、農業を活性化することで、地域経済の活性化につなが
り、そこから日本経済の活性化にもつながる。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/colu,mn/20091127/197829/?P=9
第5章:食料自給率
1.食料自給率とは
○食料自給率:国内で消費される食料のうち、国内の生産で供給される
食料の割合。
2.日本と世界の比較
○日本の食料自給率は、主要先進国中、最低の水準。比較すると、日本の食料自
給率は年々低下し、2001年では40%、それに比べ主要先進国はいずれも高い水準
。 (表3)
○また、世界173の国・地域の穀物自給率2001年を試算すると、日本の28%は130
番目。OECD(経済協力開発機構)の加盟国の中では、30か国中28番目。人口1億人
以上の国の中では最下位。(表4)
主要先進国の食糧自給率(2001年)表3[1]
人口1億人以上の
主な国の穀物自給率(2001年)表4[1]
穀物自給率
人口
中国
95%
12.9億人
ブラジル
87%
1.7億人
食料自給率
日本
アメリカ
122%
イギリス
61%
インド
107%
10.3億人
フランス
121%
ロシア
106%
1.4億人
99%
アメリカ
127%
2.9億人
28%
1.3億人
ドイツ
オーストラリア
[1]
40%
http://www.vege-labo.com
265%
日本
3.日本の品目別食料自給率
○米と野菜は1965年には100%、2008年には維持できなく
なり、果実は86%から37%と大幅な減少。
○1965年~2008年にかけて、自給率は全体的に減少傾向。
○理由として、農産物価格の低下や農業所得の減少、農業人口数、耕地面積減少
、耕地利用率も低下など、国内の食料供給力の弱体化と、食糧需要の広がりから
、食生活の変化が起きたためと考えられる。
図6[1]
日本の品目別食料自給率の推移
100%
米
80%
小麦
60%
大豆
40%
野菜
20%
果実
0%
1965年
[1]
1985年
2008年
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21/zenbun.html
第6章
まとめ
○食料自給率の面では、
食料自給率向上のために、生産面での取り組みは元より消費面での取り組
みも不可欠だが、食料生産を支える農村では、過疎化、高齢化が止まらず、極
めて厳しい状況。このような課題を農業者や政治家だけではなく我々消費者も
一体となって解決していかなければなりません。
○農産物の輸出入の面では、
食料輸入国である日本は輸出規制を自粛するよう主張しても、制限すること
はできなく、反論を受ける。輸出国、輸入国とも主張すべきことは主張し、輸
入国である日本はある程度、国内農業と輸入とをうまく組み合わせる仕組みを
構築していかなければならないだろう。
輸出に関しては、日本の農産物の品質の高さが海外で注目されてきているの
で、これを機に生産体制を確立させて輸出していかなければならない。
○日本農業は今後、この食料自給率と農産物の輸出入の二つの面について考え
取り組んでいかなければなりません。
http://kouhukujitugentou.seesaa.net/article/145465830.html