二週間前の牛乳さえ飲んだ
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Transcript 二週間前の牛乳さえ飲んだ
日語文法研究
(大学院)
4月23日(木)~
担当 神作晋一
第4章
文の要素のとりたてーー焦点化
ねらい:
とりたて助詞は、文中のある要素に焦点を当て
ることで、文に現れていない他のものについて
何かを暗示する機能を持つ助詞です。
他のものの存在を前提に何かを追加するタイ
プ(添加型)と、他のものの非存在を前提に何
かに焦点をあてるタイプ(排他型)のとりたてに
ついて考えます。
第4章
文の要素のとりたてーー焦点化
キーワード:
暗示、含意、とりたて、焦点、添加(累加)、
排他(限定)型
第4章
文の要素のとりたてーー焦点化
§1 とりたてということ
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
§1 とりたてということ
§1 とりたてということ
とりたて:文中の要素を際立てることで、文
中に現れていない別の要素について何かを
暗示する機能 焦点 スコープscope
(1)コーヒーを飲んだ。
(2)コーヒーも飲んだ。
コーヒー以外も暗示(含意)+コーヒーを(添加)
(3)コーヒーだけ飲んだ。
他の存在はない(排他)+コーヒーに(限定)
§1 とりたてということ
とりたて助詞の2つの種類
表1 添加型と排他型のとりたて助詞
モ、サエ、デモ、スラ、マデ、
添加(累加)型 ダッテ、クライ
排他(限定)型
ダケ、シカ、バカリ、ノミ
§1 とりたてということ
(4)コーヒーは飲んだ。 排他(限定)型
他の存在・非存在には触れてない。
緩やかな対比
「コソ」「ナド」「ナンカ」「ナンテ」
相対的なとりたて
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
(5)彼は、二週間前の牛乳も飲んだ。
(6)彼は、二週間前の牛乳さえ飲んだ。
(7)彼は、二週間前の牛乳まで飲んだ。
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
(5)彼は、二週間前の牛乳も飲んだ。
他にもある + 二週間前の牛乳
例:一週間前のケーキと、二週間前の牛乳
を飲んでおなかを壊した。
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
(6)彼は、二週間前の牛乳さえ飲んだ。
他にもある
常識で考える何かのスケール(基準)の
極端な例
のどが渇いていた。飢餓状態だった?
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
(6)彼は、二週間前の牛乳さえ飲んだ。
条件文の例
暇さえあれば、漫画を読んでいる。
やる気になりさえすれば、よい仕事をする。
⇒最低条件・必要条件
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
(7)彼は、二週間前の牛乳まで飲んだ。
AカラBマデ(起点Aと限界点B)の連続体
インパクト(驚き)?
例:ケーキの皿まで舐めた。
例:ケーキの皿さえ舐めた。
§2 添加型のとりたて助詞
ーーモ、サエ、マデ
Xモ、Xサエ、Xマデ
Xと同様のモノの集合がある
Xマデ 連続体の端から端まで
Xサエ 極端なメンバーに焦点を当て、緊迫
感や意外性を表示
4月23日まで
4月30日から
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(8)
A:日本語がお上手ですね。
B:#まだまだです。一年だけ勉強しましたから。
英語:only one year
(8’)B:まだまだです。一年しか勉強していま
せんから。
否定と共起 シカ-ナイ
全然~ない きっと(必ず)~しなければならない。
きっと~だろう(推量表現)
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(9)
A:週末はどうでしたか。
B:#試験があるので、勉強だけしていました。
(9’)B:試験があるので、勉強ばかりしていま
した。
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(8)
「学生だけ
(が)来た」
「学生しか来
なかった」
事実
学
生
が
来
た
相違点
「来たものの集合」(ここでは
学生)にスポット(焦点)を当
てる。
学生を排除した「空の集
合」(ここでは学生以外)にス
ポット(焦点)を当てる。
空の集合
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(8)B:#まだまだです。一年だけ勉強しました
から。
(8’)B:#まだまだです。一年しか勉強してい
ませんから。否定と共起 シカ-ナイ
否定的な評価「もっと勉強したらよかった」
※一年だけしか勉強していません。
※「だけ」には程度の意味もある 丈(たけ) 長さ
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(10)生徒は大勢いるのに、田中君だけ(が)ほ
められる。
(11)生徒は大勢いるのに、田中君ばかり(が)
ほめられる。
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(9)(10)(11) 事実
相違点
田
田中君だけ
中
(が)ほめられ 君
る
が
ほ
田中君ばかり め
ら
(が)ほめられ れ
る
る
田中君一人がほめられる。
(他は存在しない)
田中君がほめられる頻度
が(圧倒的に)多い。(不満
もある。)
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
(9)
A:週末はどうでしたか。
B:#試験があるので、勉強だけしていました。
(9’)B:試験があるので、勉強ばかりしていま
した。
⇒日常生活の中で勉強に費やした時間が圧
倒的に長い。
※24時間勉強(だけ)は不可能
§3 排他型のとりたて助詞
ーーダケ、シカ、バカリ
Xダケ、Xシカ-ナイ、Xバカリ
Xの他に同様のモノの集合がない。
Xシカ-ナイ:X以外のモノの非存在を前に出
し、否定的評価を与える
Xバカリ
:とりたての回数の多さ(頻度)
により、Xへの偏りを示す。