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職場における受動喫煙曝露濃度の実態
産業医科大学 産業生態科学研究所
健康開発科学研究室 教授 大和 浩
「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会
報告書(平成22年5月26日)」より
「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会
(平成22年5月26日)

報告書」
過半数の職場で受動喫煙に常時曝露
曝露の指標は粉じん濃度で評価(アメリカ)
1987年以降、直径10μm以下の粒子(PM10)
1997年以降、直径2.5μm以下の粒子(PM10)
日本の基準=吸入性粉じん(約10μm以下)とタバコ煙(PM2.5)
の
測定値はほぼ同じ(室内には2.5ミクロン以上の粒子は少ない)
タバコ煙による室内汚染はほぼ同じ結果が得られる
タバコ煙
0.1〜0.4μm
PM2.5
<2.5μm
土埃
数μm
花粉
30μm
|
|
|
|
0.1μm
1μm
10μm
PM2.5:2.5μm以下(WHO)
人体に吸入
されない
100μm
微小粒子状物質(PM2.5)
化石燃料、木材、タバコの燃焼
吸入性粉じん:Respiratory Particules
RSP:約10μm以下(日本)
日本の労働衛生上、7.07μm以下
土石の粉砕で発生、肺胞に浸入し、
じん肺の原因となる
粒子状物質(PM10)
PM10:10μm以下(WHO)
従来の指標、土石の粉砕などで発生
WHO, 空気環境基準=人体に影響のないレベル
微小粒子状物質(PM2.5):2.5μm以下の粒子
(化石燃料、木材、タバコの燃焼で発生)
 年間平均10μg/m3、24時間平均25μg/m3

WHO Air Quality Guidelines. Global update 2005
年間曝露で人体に影響のない濃度:PM2.5は10μg/m3
WHO Air Quality Guidelines. Global update 2005
短時間(24時間)曝露で人体に影響のない濃度:PM2.5は25μg/m3
日本の室内の粉じん濃度の基準
労働安全衛生法(1972年:昭和47年)
 浮遊粉じん:直径約10μm以下の吸入性粒子(RSP)
 大気汚染防止法:公害による気管支喘息の防止

0.2mg/m3(1時間値)
0.1mg/m3(24時間値)
中間値を
室内基準
0.15mg/m3
=150μg/m3
 建築物衛生法(ビル管)も同様
問題点:
1)デスクで喫煙がおこなわれていた当時、タバコ汚染が
このレベルを超えないようにというレベル
2)室内が禁煙化された今日、評価基準が高すぎる(甘い基準)
参考資料:入江建久. 「室内環境と健康」の歴史的回顧:室内環境基準の誕生まで. 室内環境. 10. 129-135, 2007.
室内で喫煙した場合の
受動喫煙
喫煙コーナー
職場の53.6%の状況(厚生労働省)
日本の評価基準
0.15mg/m3=150μg/m3
WHOの評価基準
25μg/m3
ガイドラインに沿った
つもりでも喫煙室からは漏れる
→受動喫煙症の原因に


排気風量不足
ドアのフイゴ様作用で煙を外に追い出す
この喫煙室は漏れを証明し、
安全衛生委員会で検討後、廃止ずみ。
喫煙室内部は劣悪
外部への漏れ
サービス産業4業種22店舗のPM2.5の曝露実態(H20年度実施)
居
酒
屋
で
5
回
喫
茶
店
で
7
回
娯楽産業:
パチンコ、
ボーリング、
ゲームセンター
で5回
ファミリー
レストラン
で5回
測定の一例:
全席喫煙の喫茶店
日本の評価基準
150μg/m3=0.15mg/m3
WHOの評価基準
25μg/m3
サービス産業の受動喫煙
(放っておけないサービス産業の受動喫
煙)某ファミリーレストランの微小粒子状物質
(PM2.5)濃度
日本の評価基準
150μg/m3=0.15mg/m3
WHOの評価基準
25μg/m3
アジア7ヵ国の室内公共空間の受動喫煙曝露濃度の比較
Secondhand smoke exposures in indoor public places in seven Asian countries(Int J Hyg Environ Health. 213, 348-351, 2010)
中国
インド
日本→
韓国
マレーシア
パキスタン
スリランカ
受動喫煙防止法のない国は全て高濃度、
日本のサービス産業のPM2.5濃度は平均160μg/m3→日本はワースト3(韓国と同レベル
)
3
海外では受動喫煙防止法が
施行され、受動喫煙曝露はゼロに
法律施行前後、ボストン
市内の7つのバーを同じ
スケジュールで訪問(は
しご酒)
 遵守していなかった1店
舗を除き、受動喫煙の曝
露はゼロに。

Repace JL, et al.: Air pollution in Boston bars before and
after a smoking ban. BMC Public Health. 6: 266, 2006.
受動喫煙防止法で急性冠症候群(ACS)が17%減少
Smoke-free Legislation and Hospitalizations for Acute Coronary Syndrome
Jill P. Pell et al., N Engl J Med. 2008; 359: 482-91.
スコットランドの9病院、500万人のうち300万人の医療圏
前向き研究、喫煙歴を確認、尿中コチニン検査あり、同一の季節
結果:急性冠症候群による入院患者数3235人→ 2684人で17%減少。
内訳:喫煙者14%減(1176→ 1016=160人)、
元喫煙者19%減(953→ 769=184人)、非喫煙者21%減(677→ 537=140人)
ACSの入院減少の66.9%が元+非喫煙者=(184+140人)÷(160+184+140人)
ここまでのまとめ
わが国の半数以上の職場で受動喫煙防止対策なし
 曝露評価の世界標準は微小粒子状物質(PM2.5)
 日本の評価基準は6倍高い(甘すぎる)
 喫煙室があっても受動喫煙による疾患は防止できな
い
 サービス産業は特に高い濃度の曝露が利用者にも、
そこで働く従業員にも発生している
 受動喫煙防止法が成立した国では曝露が減少し、関
連疾患が減少している

追加発言、
WHO Policy recommendations
Protecton from exposure to second-hand tobacco smoke
「受動喫煙防止のための政策勧告」
(世界保健機関
2007年)
○受動喫煙は深刻な健康障害を引き起こす
○喫煙室や空気清浄機の使用では、
受動喫煙を防止することはできない
FCTCの締約国に2010年2月27日までに
建物内を100%完全禁煙とする
立法措置を求めている。
一般事業場だけでなく喫茶店、居酒屋などのサービス産業も
含めて全面禁煙とする受動喫煙防止法が諸外国で成立。
http://www.who.int/tobacco/resources/publications/en/
厚生労働省レベルの受動喫煙対策
平成8年
労働省 「職場における喫煙対策のためのガイドライン」
喫煙室・喫煙コーナー&排気装置、空気清浄機
平成14年 厚労省 分煙効果判定基準策定検討会報告書(旧厚生省)
平成15年 厚労省 職場における喫煙対策のためのガイドライン
喫煙室による「いわゆる分煙」を前提としていた
人事院 職場における喫煙対策に関する指針
全館禁煙を強調しつつも「いわゆる分煙」を容認
平成21年3月 厚労省健康局生活習慣病対策室
受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書
平成22年2月25日 厚労省健康局長通知「受動喫煙防止対策について」
少なくとも官公庁、病院は全面禁煙
屋外であっても児童公園、遊園地、通学路は対策
平成22年5月26日 厚労省環境改善室
「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会 報告書」
安全配慮義務、労働者の健康防止対策
全面禁煙または「いわゆる分煙」
不適切な受動喫煙対策:羽田空港、喫煙室
職場における喫煙対策のためのガイドライン(2003)
非喫煙場所
タバコ汚染のない室内の
粉じん濃度(0.01〜0.02mg/m3)
が上昇しないこと
喫煙室
粉じん濃度
じ
0.15mg/m3
以下
排気装置
厚生労働省
2003年5月
●境界部分の空気の流れ0.2m/秒
問題点:
●禁煙区域に煙が漏れない=不可能
●喫煙室内の粉じん濃度0.15mg/m3以下にするには
大排気量が必要=エコでない
●非喫煙場所も喫煙室と同じ基準値であり、
多少の漏れがあっても許容範囲と誤用される
最新型の喫煙室でも漏れは防止できない
両側
2個
4カ所に6個の喫煙室
両側
2個
のぞみN700の喫煙室:
ドアが閉まっていれば煙は漏れないが、
自動ドアが全開になるときに漏れる
全開状態
ドア
閉
新型のぞみ、N700喫煙室からの漏れの証明
7号車
デッキの
喫煙室
頻繁に開く
自動ドアから
煙が漏れる
デッキと
客席の
粉じん計
喫煙室内
粉じん計
のぞみN700、喫煙室からの漏れを確認:原因その1
自動ドアが閉まっていればタバコ煙は漏れないが、 30分間に20本の喫煙
ドアが開いた時に煙が漏れる→デッキ→客席の汚染 =頻繁に出入口が
開く時に漏れる
(2007年、日本公衆衛生学会で発表)
のぞみN700の喫煙室からの漏れの原因
喫煙終了後にも呼出されるタバコ煙の粒子状成分
喫煙終了後、1呼吸目
2呼吸目
3呼吸目
4呼吸目
喫煙後、数十回分の呼気から粒子状物質を検出
喫煙終了後の呼気からタバコ煙検出
40呼吸=200秒は呼気に煙粒子が含まれる
上気道からの排出
(半減期5秒)
下気道からの排出
(半減期30秒)
さらに、ガス状成分は洋服や口臭から数時間発生
のぞみN700、喫煙室からの漏れを確認:原因その2
自動ドアが閉まっていればタバコ煙は漏れないが、
ドアが開いた時に煙が漏れる→デッキ→客席の汚染
(2007年、日本公衆衛生学会で発表)
デッキの鋭い
ピークは、
喫煙者が煙を
吐き出しながら
喫煙室から
デッキへ移動す
る際に観察。
壁の色から見ても
その無効性は
直感的に分かります
ほとんどの
粉じんとガスは素通り
WHOが否定した対
策=喫煙室+空気清浄
機
・タバコ煙の90%が空気
清浄機を素通り
・喫煙室からの漏れ
・内部が劣悪な環境
空気清浄機の無効性を証明
吸気口
粉じん濃度
CO濃度
臭いの
の測定
排気口
粉じん濃度
CO濃度
清浄機 :1200m3/h
天井排気: 180m3/h
メンテ翌日:粉じんの3割が漏れる
吸気口
0.15mg/m3
評価基準
0.15mg/m3
排気口
0.05mg/m3
メンテ11日後:粉じんの7割が漏れる
(喫煙室内でタバコ3本燃焼) 吸気口
0.17mg/m3
評価基準
0.15mg/m3
排気口
0.11mg/m3
空気清浄機
電機集じん
ユニット
3ヶ月使用
電極にヤニが付着
して集じん効率が
急速に悪化
新品
メンテ14週後:粉じんの88%が漏れる
吸気口
0.14mg/m3
評価基準
0.15mg/m3
排気口
0.12mg/m3
空気清浄機:一酸化炭素は除去不可能
評価基準
吸気口
10 ppm
8.1 ppm
排気口
8.1 ppm
厚さ2mmの活性炭フィル
ターを2m/秒の煙が通過す
る。
→臭いの除去不能
喫煙室:空気清浄機、メンテ3.5ヶ月後
一酸化炭素
粉じん
臭い
清浄機:1200m3/時
換気扇: 180m3/時
吐き出した煙を再度吸わされる、
劣悪な環境下での喫煙ほど
健康に悪いものはありません。
喫煙後の呼気に含まれるガス状物質(TVOC)の測定
目的:喫煙後の呼気に含まれているガス状物質を評価するために、室内空気環境の指標
として測定される総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds: TVOC)
のリアルタイムモニタリングを行った。
方法:TVOCの測定にはリオンテック社製FTVR-01を用いた。
実験1:喫煙する前の呼気、および、屋外で喫煙して室内に戻った時の呼気に含まれる
TVOCの濃度のリアルタイムモニタリングを行った。
実験2:喫煙していない状態で3名が入室した時、および、屋外で喫煙後すぐに室内に
戻った時の室内のTVOC濃度のリアルタイムモニタリング。
喫煙後の呼気に含まれるガス状物質(TVOC)の測定
実験1:喫煙する前の呼気、および、屋外で喫煙して室内に戻った時の呼気に
含まれるTVOCの濃度のリアルタイムモニタリングを行った。
喫煙後の呼気に含まれるガス状物質(TVOC)の測定
実験2:喫煙していない状態で3名が入室した時、および、屋外で喫煙後すぐ
に室内に戻った時の室内のTVOC濃度のリアルタイムモニタリング
喫煙室のランニングコスト削減:1カ所25万円
大排気量が必要=空調された空気を排気(コスト)
換気扇2台
開口部分で
風速0.2 m/s
以上の
空気の流れ=
冷暖房された
空気を1300m3/時
で排気すると
年間の
電気代25万円
H金属食堂
以下は、はみ出したスライド
さらに深刻な
従業員の個人曝露

装着型の粉じん計により
呼吸領域の曝露濃度を測定
装着型の粉じん計
ファミリーレストラン
1)喫煙席から禁煙席へのタバコ煙の拡散
2)従業員の個人曝露
喫煙席の粉じん計
禁煙席の粉じん計
ファミレス禁煙区域の受動喫煙
喫煙席のタバコ煙が数分後に禁煙区域に拡散
喫煙席
禁煙席
従業員の受動喫煙:区域分けのファミレス
定点測定よりも数倍高い個人曝露
胸元に
センサー
喫煙区域で高い曝露
接客中は特に高濃度
禁煙区域は
低濃度
2010年2月に全席禁煙に改装。今は、空気もきれいなレストランに!
全国*千万人のサービス産業従事者
飲食店
新幹線販売員、鉄道警察
(東海道・山陽)

多くの場面で職業的
で、高濃度の受動喫
煙
娯楽産業
飲食店も従業員にとっては職場:
喫煙室のような劣悪な環境で毎日働く人たちを受動喫煙の被害
から保護するために、防じん防毒マスクを着用させるのは非現
実的。
諸外国のように、飲食店も含めた全面禁煙化を。
全面禁煙!
職場における喫煙対策のためのガイドライン(2003)
非喫煙場所
タバコ汚染のない室内の
粉じん濃度(0.01〜0.02mg/m3)
が上昇しないこと
喫煙室
粉じん濃度
0.15mg/m3
以下
排気装置
厚生労働省
2003年5月
●境界部分の空気の流れ0.2m/秒
問題点:
●禁煙区域に煙が漏れない=不可能
●喫煙室内の粉じん濃度0.15mg/m3以下にするには
大排気量が必要=エコでない
●非喫煙場所も喫煙室と同じ基準値であり、
多少の漏れがあっても許容範囲と誤用され
2003年(現行)の「職場における喫煙対策のための
ガイドライン」に沿った喫煙室:羽田空港
周囲が微妙にタバコ臭い=漏れは防止できないことを意味する
一般の工務店が作ると
ガイドラインに沿った
つもりでも・・
喫煙室内部は劣悪
喫煙室外部への大量の漏れ


排気風量不足
ドアのフイゴ様作用で煙を外に追い出す
この喫煙室は漏れを証明し、
廃止されました。