認知症の人のターミナルケア

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認知症の人のターミナルケア
京都保健会盛林診療所所長
三宅貴夫(老年科)
1.ターミナルケアの基本
1)用語について
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

ターミナルケア Terminal care
終末期ケア Terminal care
緩和ケア Palliative care
ホスピスケア Hospice care
エンドオブライフケア End-of-Life care
看取り
2)ターミナルとは
いつから、どのような状態か

何時から

どのような状態か
3)ターミナルの定義
病状が不可逆的かつ進行性で,
その時代に可能な最善の治療により病状の
好転や進行の阻止が期待できなくなり,
近い将来の死が不可避となった状態
(日本老年医学会)
4)認知症の人のターミナルの定義(狭義)




認知症である。
意志疎通が困難か不可能な状態である。
認知症の原因疾患に伴い嚥下が困難か
不可能な状態である。
上記の状態が非可逆的である。
(三宅)
4)認知症の人のターミナルの定義(広義)
狭義のターミナルの状態である。
または
 治癒しない認知症であり、認知症とは直接
関係ない身体疾患がターミナルの状態で
ある。
(三宅)

5)ターミナルケアとは
その人中心に
身体・精神・生活をみる
多職種による
死に向かうより高いQOLの生の支援
6)QOLとは



人生の質
より健康で幸福な人生の質
生活の質
より苦痛が少なくより自由な生活の質
生活環境の質
より自由な生活を保障する生活環境の質
7)ターミナルケアに関わる意思確認

認知症の人

家族

介護職・医療職

その他
8)ターミナルケアに関わる意思の妥当性

意思決定をする人

意思決定の過程

意思決定の妥当性の判断
9)認知症の人と家族の関係
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理性的
情緒的
倫理的
法的
経済的
文化的
宗教的
10)ターミナルケアと死生観
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
認知症の人
家族
医療職・介護職
ボランティア
その他
10)ターミナルケアとその他の課題

尊厳死または安楽死

倫理的課題

法的課題

宗教の役割
2.認知症の人のターミナルケアの実際
1)ターミナルへの経過
認知症の原因疾患による場合

アルツハイマー病

脳血管障害

その他の認知症疾患
2)ターミナルへの経過
身体疾患による場合
 がん

心疾患

呼吸疾患

その他
3)身体症状別対応
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


疼痛
呼吸困難
嚥下困難
縟創
排尿障害
関節拘縮
かゆみ
その他の症状
4)精神症状別対応





せん妄
幻覚妄想状態
不穏
うつ状態
その他
5)医療機器・器具による対応

経管栄養:胃瘻

中心静脈栄養法

気管切開

膀胱留置カテーテル

その他
6)ターミナルケアにおける精神的支援

本人の思いとその支援

家族の思いとその支援
3.認知症の人のターミナルケアの場
1)在宅の場合

在宅ターミナルケアの条件

医療の支援

介護の支援

その他
2)病院の場合

総合病院

一般病院

精神科病院

ホスピス
3)介護施設の場合

特別養護老人ホーム

老人保健施設

療養型医療施設

グループホーム

ケアハウス

その他
4)ターミナルケアにおける
専門職の役割と連携
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

介護職
看護職
医師
その他の専門職
家族
ボランティア
その他
5)ターミナルケアのその他の課題



死後の家族へのケア
医療・介護など支援者へのケア
その他
身体拘束の禁止
虐待の防止
成年後見制度の利用
その他
5.事例検討
1)事例
血管性認知症でがんで最期を病院で迎えた事例
脳血管性認知症で訪問診療を行う。「食べにくい」との訴え、食事量
が減り、検査の結果、進行性の末期の食道がんと診断する。家族
(長男)の意見により本人にはがん告知は行わない。食事量が少な
いため週2回の訪問診療、週1回の訪問看護を行うと同時にこれまで
主に入浴目的で利用していたデイサービスは週1回で利用を続ける。
家族からは日々の状態を聞くと共に、診断など医療面の説明をする。
その結果、末梢血管からの点滴は行うが積極的な延命処置は行わ
ないこと、鎮痛は確実の行うこと、できるだけ在宅での生活を続ける
ことを決める。このため訪問看護師のよびかけで家族、医師、看護
師、デイサービスセンターの介護職、ケアマネージャーでカンファレン
スを行い、情報交換と家族の期待を聞き、本人の現状、各専門職の
役割を確認する。食道がんは進行し、口からは全く食べられなくなり、
家族の希望で入院医療に変える。1月後に病院で死亡される。
2)事例
アルツハイマー病で最期を病院で迎えた事例
アルツハイマー病。男性。60才頃、もの忘れが目立ち、仕事に失敗
が多くなる。家族が他の病院に受診させアルツハイマー病と診断さ
れる。家族は、治療を期待して複数の病院に受診させるが、痴呆状
態は漸次進行する。家族は病院での医療はあきらめ、近くの診療所
で医療を受ける。意思疎通が一層困難となり日常生活動作の低下と
失禁等の状態のため通院も難しくなり、保健婦を通して相談がある。
往診して重度のアルツハイマー病との印象である。病院の外来で基
本的な検査を行い、アルツハイマー病と診断する。病状と予後につ
いて家族に説明し、在宅療養の継続の意思決定を行う。その後、訪
問診療、訪問看護、保健婦の訪問を行う。嚥下障害が顕著となり、
経口摂取が少なくなる。家族は最期まで家で看たいと希望される。し
かし経口摂取量が著しく少なくなり、点滴希望などのため入院となる。
1日1000ml末梢からの補液を行う。約1月後死亡される。衰弱死。
発病後の全経過約9年。
6.まとめ
付録:認知症に関するサイト
三宅貴夫編「認知症なんでもサイト」
http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.
htm
 社団法人認知症の人と家族の会
www.alzheimer.or.jp
 認知症を知るホームページ
www.e-65.net

おわり
第28回滋賀認知症ケア・ネットワークを考える会
滋賀県守山市
2006年8月10日