Transcript 社会システム論
社会システム論
第2回 システム論の基本概念
1.機械モデルと有機体モデル
あるシステムを考える上で、
機械をモデルとして考えるか
有機体(生物)をモデルとして考えるか。
機械モデル
全体は、部品あるいはユニットから成り立っ
ている。
ユニット(複数の部品から構成される単位)
機械モデルの特徴
それぞれの部品またはユニットの個別の動
きを組み合わせると、全体の動きとなる。
全体の動きは、部分の動きの積み重ねとし
て予測可能である。
部品あるいはユニットは交換可能である。
分解して組み立て、再び動かすことが可能
である。
有機体モデル
全体は、細胞あるいは細胞から構成され
る器官から構成されている。
有機体モデルの特徴
各部分が双方向的に連絡しあって存在す
る。
全体の動きは、各部分の動きからは予測
不可能である。
外部の環境の変化に応じて、自分を適応
させ、存続させる。
各器官は多くの場合交換不可能である。
アナロジー(比喩)としての
有機体モデル
社会のさまざまな現象を、一つの有機体と
して捉える見方
企業
社会
国家
地球 ガイア仮説
生物の特徴(機械との対比)
自律的であること
外部からの指示・制御なしでも機能する。
自己を維持する
恒常性(ホメオスタシス)の維持
ホメオスタシスの例
体温調節
体温上昇
汗をかく
皮膚欠陥の拡張
生物の特徴
エネルギー変換能力
外部から資源を取り入れて、それを自らの活
動のためのエネルギーに変換することができ
る。
自己増殖的であること
自己を再生産する 子孫を作る
生殖能力
生物の特徴
自己調整能力
環境に適応して自己を変化させることができ
る。
自己修復能力
何らかの原因で、一部の器官に損傷が起きた
場合に、自らそれを修復することができる。
有機体モデルとしてのシステム
システム論においては、さまざまなシステム
を有機体モデルとして捉える考え方が主流で
ある。
外部や内部に環境の変化が起きたときに、シ
ステム内部のさまざまな構成要素が互いに
調整しあって、ある一定の状態を維持しようと
する。
ホメオスタシス(恒常性)
ホメオスタシスとは
生物の内部や外部の環境の変化に対して、
生体の内部の状態が一定に保たれている
性質
体温調節
免疫機能
傷の修復
サイバネティクス
生物、機械、社会の事象を共通する機構
で捉えることを目的として、情報通信と制
御という概念を用いることで説明しようとす
る学問
「舵を操る技術」が語源
なぜ恒常性が維持されるかを、フィード
バックという概念を用いて説明する。
フィードバックの例
サーモスタット(一定の温度を保つ)
スイッチを切る
センサーが感知
温度上昇
設定温度超過
センサーが感知
スイッチを入れる
設定温度まで下が
る
温度下降
フィードバックの例
自転車の運転
右に傾く
左へ体重移動
センサーが感知
中央へ戻る
右へ体重移動
左に傾く
フィードバックシステムの
基本要素
①受容器
システムの均衡を感知する
②伝達器
感知された情報を効果器に伝える
③効果器
伝達された情報に基づいて変化を生み出す
フィードバックシステムの例
生態系
狼(捕食者)と羊(被食者)
ともに数量が一定に保たれる。
経済
価格メカニズム
需要と供給の調整メカニズム
均衡価格
企業経営
貸借対照表
経営上の数値を見て、経営判断を変化させる。
地球環境
大気の温度が上がったときに
たくさんの赤外線を宇宙空間に多く放出す
ることで、大気を下げる働きがある。
負のフィードバックと正のフィード
バック
今までの事例は、変化に対して逆の方向
に向かうことで、均衡へ向かおうとするもの
である。
負のフィードバック
正のフィードバック
変化の方向をさらに加速するよう
に力が働く場合
例)景気の下降
地球温暖化と南極の氷
正のフィードバックと
負のフィードバックの関係
正のフィードバックが強い場合
均衡状態から一段と離れる傾向が
あり、破局が生じる可能性がある。
人為的な歯止めが必要となる。