未来の医師・医療像を探る

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Transcript 未来の医師・医療像を探る

未来の医師像を考える
ー地域住民・国民とともにー
姫路内科医会臨床懇談会 2004/08/21
石川県医師会理事 小森 貴
誇るべき日本の医療システム
WHO:World Health Report 2000で191カ国中、
最高水準の評価
健康達成度 1位(米国 15位)
平等性 3位(米国 32位)
誇るべき日本の医療システム
WHO:World Health Report 2000で191カ国中、
最高水準の評価
健康達成度 1位(米国 15位)
平等性 3位(米国 32位)
Impartiality (総ての人に平等な医療モラル)
Access (受診医療機関選択の自由)
Quality (医療技術・機器・医薬品の先進性)
Cost (公的国民皆保険制度での抑制)
Reliability (国民の81%が医師を信頼)
何が問題かー国民の不満 1ー
プライバシーの無い外来:他人に聞こえるじゃない!
長い待ち時間:いつまで待たせる気!
短い診療時間:もっとちゃんと話を聞いて!
不十分な説明:きちんと説明して!
傲慢な医師、看護師の態度:私を誰だと思ってるの!
狭い病室・風呂・トイレ:これじゃ家にいたほうがまし!
食事時間とメニュー:家で食事したほうがよほど良いわ!
入院費の選定医療化:病気なのに追い出すのね!
何が問題かー国民の不満 2ー
医師の高額な所得:ベンツに乗ってゴルフしてるでしょう!
利益しか考えない医師会:多額の献金してるんでしょ!
身内に甘い処分:覚醒剤でもたった1ヶ月の医業停止なの!
生涯有効な医師免許:遊んでばかりでも咎められない!
そのうえ事故を隠すなんて!
許せない!
ここに原因が
診療現場は過酷な労働条件(応招義務)
厚生省健康政策局
ここに原因が
診療現場は過酷な労働条件(応招義務)
あまりにも貧弱な医療関連予算
国民医療費への低い公費投入額:10兆円
ここに原因が
診療現場は過酷な労働条件(応召義務)
あまりにも貧弱な医療関連予算
国民医療費への低い公費投入額:10兆円
公共事業費は米英仏独伊加の総計を越す!
公共事業費(対GDP)
出典:OECD、1996年、ナショナルアカウント
公共事業費(対単位面積)
出典:OECD、1996年、ナショナルアカウント
抜本改革論議の行方
1999年2月:経済戦略会議「最終答申」
2001年6月:経済財政諮問会議「骨太の方針」
2002年4月:診療報酬本体引き下げ
2002年10月:健康保険法・老人保健法「改正」によ
る患者負担大幅引き上げ
2003年3月:医療制度改革基本方針(閣議決定)
2003年3月:規制改革推進3ヵ年計画(閣議決定)
2003年6月:「骨太の方針2003」
2004年6月:「骨太の方針2004」
2004年8月3日:規制改革・民間開放推進会議「中
間とりまとめ」
経済戦略会議「最終答申」
1999年2月
セーフティ・ネットとは不運にも競争に敗れた人たち
に対して敗者復活の道を用意すること
自己責任を前提にシビルミニマムを保障するセーフ
ティ・ネットが必要
医療や介護については、社会的な必要最低限の
サービスをあまねく国民に保障
このレベルを高くしすぎると、モラルハザード
経済戦略会議「最終答申」
1999年2月
「日本版マネージド・ケア」を導入
保険者機能を抜本的に強化
支払基金による独占的なレセプト審査廃止
企業による病院経営の解禁
薬価制度は自由価格制へ移行
経済財政諮問会議
「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する
基本方針(骨太の方針)」
2001年6月閣議決定
株式会社方式による経営
保険診療と自由診療との併用(混合診療)
保険者と医療機関との(直接)契約
保険者機能の強化
適正な患者自己負担(負担増)
目標となる医療費の伸び率を設定し伸びを抑制す
るための新たな枠組みを構築(医療費伸び率管理
制度)
骨太の方針2002
2002年6月閣議決定
保険者の統合・再編
新しい高齢者医療制度の創設
診療報酬体系の見直し
公的医療機関のあり方
(マネジドケア導入論の消失・2001から)
医療保険制度体系及び診療報酬体系
に関する基本方針について
2003年3月閣議決定
将来にわたり国民皆保険制度を堅持
(重大な再確認)
特定療養費制度の見直し (=拡大)
(混合診療否定)
患者の視点から高質で最適の医療が効率的に提供
(必要最低限・シビルミニマム否定)
保険者は、レセプト点検等の取組を更に強化
(トーンダウン)
骨太の方針2003
2003年6月閣議決定
構造改革特区における株式会社の医療への参入に
ついて、自由診療の分野において、高度な医療
(株式会社解禁の限定)
特定療養費制度の見直し(混合診療解禁の否定)
(保険者と医療機関の直接契約についての三条件
:保険局長通達2003年5月)(個別契約の制限)
規制改革・民間開放推進会議
(中間取りまとめ)2004年8月3日
いわゆる「混合診療」の解禁
株式会社等の医療機関経営への参入
地域医療計画(病床規制)の見直し
混合診療を認めない現状にあっては、民(たみ)が家族の
「いのち」を救うべく大きな経済的支出を決意した場合、保険
が適用されないために、更に重い経済的圧迫を加えることに
なる。これはもはや「人道」にもとるものと言わざるを得ない
医療保険制度改革の三つの潮流
新自由主義的改革
財務省・財界
規制改革・民間開放推進会議
グローバルスタンダード
市場原理主義
公的国民皆保険制度から民間保険制度へ
財源を消費税主体へ
医療経済を株式会社の手へ
医療保険制度改革の三つの潮流
厚生労働省
国民皆保険制度堅持
公的保険給付範囲縮小
特定療養費拡大
参照価格制度
医療費伸び率管理制度
医療保険制度改革の三つの潮流
医師・医師会・医療団体
公的医療保険・社会保障費の総枠拡大
医療は投資である
医療は経済波及効果の高い優良産業
↓
主人公は国民
国民の総意・支持は得られるのか
私達、医師は
↓
社会が変革しているのに
このままでは国民と乖離
自己改革こそが国民とともに歩む道
医療者の自己改革
医師として能力・適性の育成・維持・向上
医療・経営の効率化・標準化
保健・福祉とのネットワーク
医療・経営情報公開
医療法人制度改革
専門職能集団としての自己規制・自浄
今、医師会員として
何をなすべきか
日本医師会第Ⅲ次未来医師会ビジョン委員会
自らの責任と自由意志において
自らが信じる最善の治療を
患者に為すこと
地域住民・国民によって負託された
我々の義務である
自らを厳しく見つめなおすことによって
今一度、国民から負託されなおしたい
私たちは約束します
医師として何をなすべきか
病者を全人的な存在として
診療にあたります
視て、聴いて、触って
五感を研ぎ澄まし、診察の基本に返る
病を癒すのではない
人を癒すのでなければならない
障害や病気と称されることもある
特性を含めて、
人はかけがえの無い尊重すべき個性
を持つ個人であることを
常に意識します
出来る限りの努力をして、ひとりひとりの世界
を感じ取り、理解したい、ともに生きたい
医師の基本的な態度である
Health Care Ethics(医療倫理)を
再点検します
医師は「患者チーム」の一員である
透明であること、責任を持つこと、虚偽の無い
こと、絶望させないこと
患者の自己決定権と医師の裁量権は相互補
完的な概念
同意でも選択でもなく合意が必要
喜びの医療を追求することを
約束します
専門職能者としての技術・科学性・人間性を
高めるために弛まず努めなければならない
医療はサービス業ではなく人類愛に奉仕する
ものである
患者に喜んで頂き、患者から喜びの心を頂き、
喜びを分かち合える医療
診察室から出て自分を、
世界を語ります
医師は医師である前に人間である
人間として「遊び」の意味・価値を知る
診察室から出て、市井の人間として
人と遊び、自分と遊び、世界と遊ぶ
自分を、世界を語る
地域で小さいながらも
確実な一歩を踏み出すことを
約束します
多様な社会資本との協働
良質なチーム医療体制を構築
地域医療体制全体での医育
相互扶助・セルフメディシンの拡充
往診の推進
医師会員として
何をなすべきか
高い臨床能力を維持し続けます
訪問医師制度
医師免許更新制
保険医資格更新制
保険医定年制
専門医認定制度
標榜科目の制限
医師の裁量権
ー改めて国民から負託されるためにー
客観的医師評価制度の研究
真のフリーアクセスとは
国民に見える医療システム
応招義務の在り方
医師の持つ諸権限の再検討
透明で説明責任を果たすということ
医師の任務遂行とは関係の薄い
既得権益の放棄
租税特別措置法による4段階税制廃止
医師国保組合廃止・統合
医療法人持ち分放棄
姫路市医師会 空地顕一委員担当
医師会として
何をなすべきか
医師会強制加入制度
医師会の自治
医療問題捜査権
医師会強制加入制度
自己規制・自己規律
中立委員会
構成メンバー






1)医師(学術代表) 事故標榜科で当該地域以外の大学
教授もしくはこれに準ずる者1名
2)医師(診療代表) 地域医師会長の指名する事故標榜
科の医師会員1名
3)医師(医師会代表) 地域医師会長の指名する他科の
医師会員1名
4)弁護士1名 地域弁護士会の指名するもの。医師会顧
問弁護士は充てない
5)報道関係代表1名
6)地域住民代表1名
国際化に対応出来る医師養成
医療システム開発局の設置
未来医療委員会の設置
国際医療部の設置
地域住民・国民とともに
田中さん
おまたせー
順番がきましたよ
診察室に入って下さいね
田中様
お待たせ致しました
順番が参りましたので
診察室にお入り下さいませ
患者と医師
患者は顧客・消費者でしょうか
患者は可哀想な庇護・保護の対象でしょうか
ともに生きるパートナー
パートナーシップが大切
Partner Relationship Management(PRM)
地域住民・国民とともに
医療政策を立案・実行・評価します
戦略的電子医療政策立案評価システムの構
築
地域住民・NPOとのパートナーシップ
パブリック・インボルブメント(PI)
e-democracy
1994 ミネソタ州 NPO e-democracy
1990年代後半 ミネソタ州政府
1997 藤沢市 市民電子会議室
2002 三重県 三重e-デモ会議室
市民電子会議室イメージ図
市民
ネットワーク上の
コミュニティ形成
市民参加制度
参加
参加
市民エリア
(オープンエリア)
PR活動
市役所エリア
会議室
市民が主催
企画
支援
テーマ設定
意見まとめ
会議室
市民公募による
運営委員会情報提供 市が主催
ルール
ロール(役割)
運営支援
ツール
VCOM
市政反映
市
提案
情報提供
場の提供
※VCOM(ヴィコム)とは、慶応義塾大学の金
子郁容研究室が中心となって実施しているコ
ミュニティ・ソリューションを目指すネットワー
ク・コミュニティ作りの研究プロジェクト
機器管理運用
産業センター
閲覧件数等の推移
地域住民・国民とともに
医療政策を立案・実行・評価します
患者・地域住民・NPOとのパートナーシップ
パブリック・インボルブメント(PI)
Partner Relationship Management(PRM)
戦略的電子医療政策立案評価システム構築
医療・医療制度を地域住民・国民の手に
真のプロフェッションとして
患者を消費者とみることは、医師を医療サー
ビスの生産者とみること
市場は消費者と生産者のセルフインタレスト
(自己利益)を前提
プロフェショナリズムには職業倫理が伴う
医療倫理:患者第1主義・非営利原則・利他
主義など
新ミレニアムにおける医療プロフェッショナリズム:医師憲章2002
アメリカ・ヨーロッパ内科4学会
3つの根本原則
患者の利益追求 : 医師は,患者の利益を守るこ
とを何よりも優先し,市場・社会・管理者からの圧力
に屈してはならない
患者の自律性 : 医師は,患者の自己決定権を尊
重し,「インフォームド・ディシジョン」が下せるように,
患者をempowerしなければならない
社会正義 : 医師には,医療における不平等や差
別を排除するために積極的に活動する社会的責任
がある
自らの責任と自由意志において
最善の治療を
患者に為すこと
地域住民・国民によって負託された
我々医師の義務である
絶望することなく改革を行い
国難を乗り切ろう!
高齢社会は2059年がピーク(65歳以上36%:中
位推計)(国立社会保障・人口問題研究所)
国立社会保障・人口問題研究所 平成14年1月推計
絶望することなく改革を行い
国難を乗り切ろう!
高齢社会は2059年がピーク(65歳以上36%:中
位推計)(国立社会保障・人口問題研究所)
生きがいを持って安心して働ける社会は
総ての国民の願い
日本という国のありよう
長期的なビジョンが必要
国民の支持がなければ何も出来ず、意味もない
これからの医療が持つべきもの
説明責任 :Accountability
透明性:Transparency
↓
総ての国民にとって大切な社会保障システム
↓
真のプロフェッションとして国民から信頼される唯一の道
医師としての能力・適性の絶え間ない向上・維持
医師・医療提供者の厳しい自己改革
医療情報・経営情報の開示・共有・透明性の向上
↓
国民とともに歩む
地域住民・国民とともに
ご清聴ありがとうございました