Transcript 量子ビーム基礎
量子ビーム基礎(石川顕一) 量子ビーム基礎 石川顕一 6月15日 6月22日 6月29日 7月 6日 レーザーとは・レーザーの原理 レーザー光と物質の相互作用 レーザーの生体組織への影響 レーザーの応用 参考書:霜田光一著「レーザー物理入門」岩波書店 M. Niemz, “Laser-Tissue Interactions,” Springer 6/22 No. 1 量子ビーム基礎(石川顕一) 第1章 2準位原子とレーザー光の相互作用 (コヒーレント相互作用) • 半古典的記述 – 原子は量子力学的に取り扱う。 – コヒーレントな光(レーザー光)は古典的電磁 波として取り扱う。 6/22 No. 2 量子ビーム基礎(石川顕一) 時間に依存する シュレーディンガー方程式 2 i 2 (r,t) V0 (r) (r,t) VI (r,t) (r,t) H 0 VI (r,t) (r,t) t 2m 相互作用項 VI がない場合 n (r,t) n (r)e 相互作用(レーザー の効果) 原子のポテンシャル i n t n 遷移振動数(共鳴振動数) 0 2 1 n 2準位系 H 0 n (r) n n (r) C2 2 2 0 C1 2 1 6/22 No. 3 量子ビーム基礎(石川顕一) 2準位系 i H 0 VI (r,t) (r,t) t 2準位系 2準位系 C2 光の振動数が0に近いときは、放射 過程に関与するのは選ばれた二つ の原子状態のみ。 (r,t) C1(t)1(r,t)C2 (t)2 (r,t) C C i 1 1 2 2 VI C11 C2 2 t t 1 ,2 を左からかけて空間積分 C1 C1V11 C2V12 ei t t i 0 i 2 2 0 C1 2 1 ポピュレーション 2 2 C1 (t) C2 (t) 1 C2 C1ei tV21 C2V22 t 0 Vij i VI j V d r i I 3 j 6/22 No. 4 量子ビーム基礎(石川顕一) 相互作用項 レーザー光の電場 波数 k E0 cos(ky t) z 2 波長(数百ナノメートル程度) y 〜 オングストローム程度 y ky 1 E0 cos(ky t) VI ezE0 cos t 長波長近似 E0 cos(ky t) r k y x H0 cos(ky t) E0 cos t 電気双極子近似 6/22 No. 5 量子ビーム基礎(石川顕一) 2準位系+電気双極子近似 Vij i VI j V d r cos t zE d r X i I 3 j 0 i 3 j ij cos t X11 X22 0 X12 X21 2 (実数) C1 i t i 2C2 e cos t t i 0 t i C1 C ei 0 t ei 0 2 t C2 2C1ei t cos t t 0 i C2 i t i C1 e e t 0 0 t 6/22 No. 6 量子ビーム基礎(石川顕一) 回転波近似 i C1 i t i C2 e e t 0 0 t i C2 i t i C1 e e t 0 0 t 回転波近似 i C1 i t e C2 t 0 i C2 i t e C1 t 0 初期条件 C1 1, C2 0 i i 0 C1(t) cost sin t exp 0 t 2 2 C2 (t) i i sin t exp 0 t 2 ( 0 )2 4 C2 2 2 0 C1 2 1 2 6/22 No. 7 量子ビーム基礎(石川顕一) ラビ振動 ポピュレーション C1 (t) 1 C2 (t) 2 2 ( 0 )2 4 2 C2 (t) 2 2 2 sin 2 t C1 (t) 0 0 3.5 2 吸収放出サイクル t C2 (t) 2 吸収 放出 吸収 放出 t 0 0.92 t 6/22 No. 8 量子ビーム基礎(石川顕一) 第2章 光と物質 入射光 • 反射と屈折 • 吸収 • 散乱 散乱 反射 吸収 透過光 6/22 No. 9 量子ビーム基礎(石川顕一) 反射と屈折 誘電体 屈折率 D E 0 E P D 0 E 0 1 E 電気感受率 − r c n v 00 通常 0 電気双極子能率 p E N 0 電気分極率 + P Np NE n N 1 0 20 6/22 No. 10 量子ビーム基礎(石川顕一) 反射と屈折 反射角は入射角に等しい スネル(Snell)の法則 n nsin nsin c 00 p偏光 入射光 E v c/n s偏光 フレネル(Fresnel)の法則 境界での連続性 • DとBの法線成分 • EとHの接線成分 s偏光 sin E s Es sin z 屈折光 E 反射光 E p偏光 n n’ z0 Ep tan E p tan 6/22 No. 11 量子ビーム基礎(石川顕一) 反射と屈折 水の反射率 vs 入射角 反射率 s偏光 2 E sin Rs s 2 Es sin p偏光 2 Rs Rp Ep tan2 Rp 2 E p tan 2 •s波の反射率 > p波の反射率 •p波には反射が全くない特別な入射 角(ブリュースター角)がある。 ブリュースター角 /2 即ち tan n/n 6/22 No. 12 量子ビーム基礎(石川顕一) 光の吸収(absorption) 入射光 透過光 吸収 入射光のエネルギーは、熱運動 や分子振動に変換される。 光の吸収は • 構成原子分子の電子構造 • 光の波長 • 吸収層の厚さ • 媒質の温度・密度 に依存する。 Lambert-Beerの法則 6/22 No. 13 量子ビーム基礎(石川顕一) Lambert-Beerの法則 dz I(z) 十分薄い厚さdzの層による吸収 • 強度 I(z) に比例 • dz に比例 dI(z) I(z) I(z) I(z dz) I(z)dz dz I(z+dz) z z+dz I(z) I0 exp(z) または I(z) I0 exp(z/ L) :吸収係数 L = 1/:吸収長 透過光の強度が入射光の1/eになるような媒質の厚さ 6/22 No. 14 量子ビーム基礎(石川顕一) 水の屈折率と吸収係数 可視光領域 正常分散 異常分散 図:水の吸収係数 図:水の分散関係 • 可視光領域では水の屈折率は、およそ1.33。 • 可視光領域では波長にあまり依存しないが、重要。 6/22 No. 15 量子ビーム基礎(石川顕一) 生体組織による光の吸収 生体組織に関しては、吸収は主に、 • 水分子:赤外線領域 • タンパク質や色素等の高分子:可視光・紫外線領域 • 600nm〜1200nm: 高分子も水も吸収が小さい(治療の窓) 皮膚 メラニン 大動脈壁 カットオフ ヘモグロビン @280nm:タンパク質 角膜 似ている 400nmから600nmでの複雑なバ ンド構造 →生体分子の一般的傾向 角膜と水晶体は可視光に対して透 明だが、赤外に強い吸収を持つ。 クリプトンイオンレーザー(531nm,568nm) → 血液や血管の凝固 6/22 No. 16 量子ビーム基礎(石川顕一) 光の散乱(scattering) レイリー散乱 弾性散乱 粒子サイズ<波長 入射光の波長=散乱光の波長 ミー散乱 粒子サイズ>波長 例:血球 光の散乱 ブリルアン散乱 音波が介在 非弾性散乱 入射光の波長=散乱光の波長 散乱によるレーザー光の減衰は、吸収に対する Lambert-Beer則と同じ形の式で表される。 I(z) I0 exps z ラマン散乱 入射光 光子振動が介在 透過光 s : 散乱係数 散乱 6/22 No. 17 量子ビーム基礎(石川顕一) レイリー散乱 • 光の波長より十分小さいサイズの粒子(原 子・分子)による弾性散乱 • 厳密な導出:量子光学(放射場の量子化) – ラウドン「光の量子論」(内田老鶴圃) • 古典電磁気学による導出(1871年) 6/22 No. 18 量子ビーム基礎(石川顕一) レイリー散乱 光の電場 1 I c02 E 2 2 Eeit p E 振動する電気双極子 電磁波を発生(放射) 放射される電磁波のパワー peit Eeit 散乱光 p 40 Ws 12c 2 散乱原子密度 レイリー散乱の法則 NWs 8 3 N 2 32 3 2 s n 1 I 3402 34 N 6/22 No. 19 量子ビーム基礎(石川顕一) レイリー散乱 屈折率 s NWs 8 N 32 2 n 1 I 3402 34 N 3 2 波長 3 s 1 4 散乱原子密度 赤い光と青い光とでは、散乱強 度が大きく異なる。 空は青い。 夕焼けは赤い。 (レイリー卿、1871年) レイリー散乱の法則 6/22 No. 20 量子ビーム基礎(石川顕一) 自己収束(非線形光学効果) レーザー光の強度 I が高い場合、 n n0 n2 I 光カー(Kerr)効果 一般に n2 0 中心部で強度大 中心部で屈折率大 凸レンズと同じ効果 自己収束 6/22 No. 21