シナリオに影響を与える要因を抽出しその影響を各用途ごとに検討した

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Transcript シナリオに影響を与える要因を抽出しその影響を各用途ごとに検討した

長周期地震動により建物内部で発生が
想定される事象の建物用途ごとの整理
福井
planners architects engineers
潔
(㈱日建設計)
検討の概要
検討の概要
オフィスビルのシナリオ
平成20年度本研究成果
集合住宅のシナリオ
ホテルのシナリオ
2009年度学会大会研究協議会
今年度検討
各シナリオの比較
シナリオに影響を与える要因を抽出しその影響を各用途ごとに検討した
構造
設備
:エレベータ、給水、排水、電気、ガス、通信
仕上げ :内外装、扉、電気錠
その他 :家具転倒、緊急地震速報、備蓄、地震火災、地震発生時間
ホテルのシナリオ
ホテルのシナリオ
ホテルの概要
30階
レストラン
・30階 高さ105m 鉄骨造
・客室 600室
・所在地 神奈川県小田原市
・エレベータ
客室
低層/高層 各4台
非常用2台
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
想定地震
・東南海+東海地震の連動
・マグニチュード 8.1
・震度
名古屋市内 震度6弱~6強
ホテル建設地 震度6弱
・発生時刻 午後10時
東南海
地震震源
東海
地震震源
ホテル建設地
ホテルのシナリオ
想 定 被 害
■構造被害
■設備
・建物の損傷
小破
・スプリンクラーヘッドの出水
・層間変形角
1/100~1/75
・高架水槽スロッシングにより給水停止
・残留変形角
1/250
・電気設備は無被害
・最上階最大水平変位
・建物の機能
但し停電3日間
±110cm
・1階シャンデリアが落下
機能確保困難
・構内の通信は自家発により可能
■エレベータ
■非構造部材
・全エレベータ緊急停止(地震管制)
・鋼製扉の開閉不良
・1台で閉じ込め発生
・その他被害小
■家具・什器
・作りつけ以外の家具什器は転倒、転落、
散乱
ホテルのシナリオ
シナリオの想定人物
30階レストラン Cさん
神奈川県在住 会食中
30階
レストラン
29階シングルルーム Aさん
福岡より出張
20階ツインルーム B夫妻
群馬より観光で宿泊
老夫婦
客室
1階事務室 ホテルスタッフ
Dさん
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
Aさんのシナリオ
29階シングルルーム Aさん
福岡より出張
30階
レストラン
1階へ階段を使って避難せよと言
作りつけ家具も多く住宅ほど家具
緊急地震速報の放送で地震予告
高層階は長周期地震特有の長い
ホテルの場合地震速報と共に廊
う放送で1階へ避難
什器の転倒、散乱は起こらない
下に出るのが最も安全
周期の大きなゆれで恐怖を感じ
エレベータは緊急停止
る
ホテルの場合在館者は事務所な
安全確認が済んだ低層部の会議
建物の安全が確保されるまで広
どに比べ少なく、階段の混雑は起
室で夜を過ごす
域避難場所で過ごす
こらない
毛布と水の提供あり
客室
朝軽食の提供あり
会社の支社へ移動
残りの荷物は放棄
広域避難場所
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
B夫妻のシナリオ
30階
レストラン
20階ツインルーム B夫妻
群馬より観光で宿泊
夫人が怪我
客室内閉じ込め
電話が通じホテルスタッフによっ
エレベータが動いていないので怪
電話が通じない
高齢者の場合振幅の大きいゆれ
ホテルの場合入り口ドア枠の変形
て閉じ込めから救助される
我をした夫人を1階へ搬送できない
非常電源の燃料がなくなり、夜間に
ホテルの夜間シフトではスタッフも
で客室への閉じ込めが発生し易い
で転倒したり怪我をしたりする可
なったので再び客室へ移動
限られ非常時の対応は手薄になる
能性が大きい
特に高齢者は押し開ける力がない
非常電源があれば夜間でも客室の
非常用エレベータが復旧し1階の
安全が確保されるが、そうでないと
専門家の調査により客室の安全が
会議室へ移動
客室への滞在は不可能
確認され、3階の客室へ移動
群馬の自宅へ戻る手段がないの
十分な燃料の貯蔵が必要
でホテルへそのままとどまること
にする
交通手段が確保されるまで
さらに3日滞在後臨時バスで帰郷
客室
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
Cさんのシナリオ
30階レストラン Cさん
神奈川県在住 会食中
過去に経験したことのないゆれ
厨房火災は起こらない
スタッフの常駐
展望レストランで家具が固定されて
自動消化設備の設置
いないと地震で食器の転落、家具
の滑動などがおこり避難の支障と
ホテルスタッフの誘導で階段を
なる
使って1階へ避難
30階
レストラン
客室
交通機関が止まっているので
徒歩で帰宅
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
Dさんのシナリオ
30階
レストラン
地震発生5日後すべての宿泊客
が帰るまで宿泊客のケアを続け
29階から20階の宿泊客の
る 安否確認
エレベータが復旧したので再度
各部屋の安全確認
20階のB夫妻の閉じ込めを救出
危険箇所の立ち入り禁止表示
怪我をして歩行困難なので、エレ
階段で29階へ移動
ベータ復旧まで待機してもらう
客室
4階でエレベータ閉じ込めの宿泊
緊急地震速報受信と同時に
客を救出
情報を館内放送
会議室の宿泊客に朝食を提供
1階事務室 ホテルスタッフ
Dさん
宴会場・会議室
カフェ・ロビー
店舗
機械室
ホテルのシナリオ
ホテルのシナリオのまとめ
ホテルの場合は、宿泊客の安全確保がまず優先される。地震後も帰宅できるまで
の宿泊客の滞在を支援しなければならない。
超高層ホテルの場合は、エレベータの停止が怪我人の救助、宿泊客の安否確認に
とって障害となる。 閉じ込めに関してはスタッフが訓練を受け、救出できるようにし
ておくことが好ましい。
長周期のゆれにより家具の転倒、滑動が起こるが、ホテルの場合は比較的家具も
少なく、作り付けの例も多い。什器も限られるので住宅などに比べればそれによる
人的被害は少ない。展望レストランでは家具の滑動、食器の落下などが避難障害
となる。
客室扉まわりの変形で閉じ込めが起こる可能性が高い。
地震後の利用については構造体の被害がなければ、エレベータが稼動しなくても
低層階の客室が使える。水や食料は厨房のたくわえが利用できる。
時間帯では、就寝中あるいは酔っていたりする滞在宿泊客が多く、ホテルスタッフ
が少ない夜間が最も状況として厳しい。避難誘導、安否確認が大変。
長周期地震時に建物用途後ごとの
事象に影響を与える要因について
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
構 造 被 害
シナリオに影響を与える要因
構造設計地震力の設定
オフィスビル
集合住宅
オフィスビル
・損傷大きいほど業務
再開までの時間がか
かる。
・倒壊危険ある場合、補
修まで居住できない。
・倒壊危険がある場合、
宿泊客の仮泊ができ
ない。
・損傷大きいほど、生活
再開までの時間がか
かる。補修工事の合
意取り付けも困難。
・損傷大きいほど業務
再開までの時間がか
かる。
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
エレベータ
シナリオに影響を与える要因
・適用耐震基準の違い(設置年代)
・地震管制装置があるか
ある-閉じ込めが少ない
ない-閉じ込めが多い
・長周期地震対策(ロープ類の引っかかり対策等)がされているか
い る-長周期地震動による停止が少ない
いない-長周期地震動による停止が多い
・被害が大きいほど閉じ込めの危険が高く、救出にも時間がかかる
・停止により高層階のけが人の救出が困難
・復旧まで高層階の使用困難
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
断
水
シナリオに影響を与える要因
・配管や送水設備の適用耐震設計基準
・建物周囲の液状化対策
・高架水槽があるか
ある-送水が停止しても水槽の水が使える
ない-送水が停止すると即断水
オフィスビル
集合住宅
オフィスビル
・飲料水が得られない
・飲料水が得られない
・飲料水が得られない
・水洗トイレが使用でき
ない
・水洗トイレが使用でき
ない
・水洗トイレが使用でき
ない
・入浴ができない
・入浴ができない
・調理ができない
・調理ができない
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
停 電
シナリオに影響を与える要因
・引き込み回線の信頼度(2系等、ループ等)
・自家発電気によるバックアップがあるか(法定設置義務以上で)
通信システム
内線・LANが使える/使えない
エレベーター
エレベーターが使える/使えない(1台/バンク)
オフィスビル
集合住宅
オフィスビル
・夜間等避難がしづらい
・夜間等避難がしづらい
・夜間等避難がしづらい
・業務継続困難
・被災生活に支障
(照明・空調停止)
・業務継続困難
・宿泊客の仮泊困難
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
外 装 材
シナリオに影響を与える要因
外装材の設計用層間変形角
オフィスビル
集合住宅
オフィスビル
・シール破断により降雨
時に内装、什器が漏水
・シール破断により降雨
時に内装、什器が漏水
・シール破断により降雨
時に内装、什器が漏水
・カーテンウォールなど
が落下危険高い
・バルコニーがあり外装
材の落下は少ない
・カーテンウォールなど
が落下危険高い
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
電気錠 の開閉障害
シナリオに影響を与える要因
・電気錠が非常電源にバックアップされているか
い る-非常電源により避難、救助可能
いない-避難、救助に支障がある場合がある
・鍵が停電時開になっているか
い る-電源供給途絶時に避難、救助可能
いない-電源供給途絶時に避難、救助に支障があり
オフィスビル
集合住宅
オフィスビル
・セキュリティ強化に伴い
各所にゲートあり
・電気錠はエントランス
部分のみなので影響
が少ない
・電池式の電気錠により
問題がない場合が多
い
・通行不能の可能性あり
長周期地震時に建物用途後ごとの事象に影響を与える要因について
ま と め
用途ごとの長周期地震後のシナリオは、建物の構造、設備といったハードの部分
の相違より、建物の使われ方、管理体制などソフトの部分の違いによって変わって
くる。
構造被害は、生活の場として使用される集合住宅の場合、補修までの生活の確保
や、補修工事の費用負担に対する合意の取り付けなど大きな影響をもたらす。
断水や排水の途絶は、調理や入浴など水が欠かせない機能を含むホテルや集合
住宅に影響が大きい。
停電時に自家発電設備などのバックアップがあるかがシナリオに影響する。特に通
信、エレベータ、電気錠などで、バックアップの有無がシナリオに影響する。
地震発生時間は、シナリオに大きな影響を与える。オフィスビルは就業時間帯の地
震だと負傷者、帰宅困難者が多く発生する。集合住宅、ホテルでは在館者が多い
夜間の就寝時の地震が、安全確保や避難開始の遅れを生み、負傷者が多く、安否
確認も遅れる。また火気の使用がある食事時間帯は地震後火災発生の可能性が
高くなる。