若林直子 「地域環境評価における心理尺度 検討事例」

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Transcript 若林直子 「地域環境評価における心理尺度 検討事例」

2002.07.15 環境心理尺度ファイルWG資料
地域環境評価における心理尺度
検討事例
港区芝浦・港南地区における調査より
若林直子 (生活環境NPOあくと)
1.調査事例の概要
(対象地域:港区芝浦港南地区/調査時期:2002年9~12月)
手法
■キャプション評価法
回答者 居住者・大人(25名)
(有効 居住者・小学生(53名)
回答) 通勤者・大人(3名) 他
■アンケート調査(配票)
居住者・大人(292名)
通勤者・大人(107名)
1 : 自由に歩いて「気になるところ」を発見
○ = 「いい」「好き」「おもしろい」など
× = 「悪い」「嫌い」「つまらない」など
?! = 「○」でも「×」でもないけれど気になる
2 :場所を撮影、マップにチェック(大人のみ)、下記を記入
①「気になる場所の名前」(+訪問頻度3段階) :大人のみ
②「※※ということについて」→ ③「※※と思うので」
→ ④ 「○・×・?!」
3 : フェイスシート等への記入
■アンケート調査 主な調査項目
注) ★:片側4段階
★★★:MA
いわゆるオプション項目の
フェイス。共通項目の個人
地域との関わり(フェイス項目)
【項目選択式】
属性等はこの表では省略。
生活年数,外食率,地域活動参加経験
など
生活実態
地域利用度★
★★:両側5段階(SD法)
よく行く-行かない (21地区別)
環境評価
不満・不安度★
【項目選択式】
交通事故,買い物等の便,緑,街並み,高層建物 など
印象評価★★
安全性,利便性,衛生,活動性,景観,美観など
総合評価★★
住みよさ,好ましさ,愛着,「土地柄」が合うか
地図記入式設問とほぼ同じ
環境評価
尺度を用いて作成。
【地図記入式】
○評価★★★
安全,便利,きれい,活気,景観がよいなど
×評価★★★
危険,不便,不潔,さびしい,景観がよくないなど
関心・意見
自由記述つき。
【項目選択式】
関心度★
景観,防災,文化や歴史,自然環境,将来
意見★★
整備の方向性・主体,開発への期待など
0%
5%
10%
15%
20%
25%
●
●
美しい - 美しくない
きれい(清潔) - 汚い
●
●
便利 - 不便
●
● ×評価
景観がよい - よくない
くつろげる - ない
●
●
アンケート
キャプション
全体評価
歴史情緒を感じる-ない
0%
5%
10%
15%
20%
キャプション×アンケート(地図)×印象評価(アンケートSD法,両側5段階を○と×に
分解して度数で表示)
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
25%
個性のある - 平凡な
30%
30%
25%
20%
●
安全 ‐ 危険
活気がある - さびしい
○評価
15%
5%
●
10%
(居住者大人)
■評価語の傾向
0%
30%
2.キャプション評価法とアンケート調査の比較
全般的な傾向
キャプションとアンケート(地図)の傾向は似ている!
印象評価(対象は全域)では評価が平均化する傾向
あり。
キャプション評価法
地図アンケート
評価語
の特徴
「その他」が非常に多い。
(全体の半数以上)
「くつろぎ」「歴史情緒」
「個性」等、当該地域で指
摘されにくい項目がクロー
ズアップ。
「さびしい(人通りが少ない等)」
「美しい(桜、ライトアップ)」「景
観がよい(レインボーブリッジ)」
等の指摘が多い。
「便利・不便」の指摘が多い。
手法の
特徴
多様な視点・語彙が抽出
できる。
個人の価値観が把握でき
る?
時空を越えた評価が抽出できる。
(調査誤差が少ない)
評価は撮影のしやすさによらな
い。
■評価対象の分布
(キャプション評価法×地図アンケート)
全般的な傾向
○、×の分布状況は似ている!(宗方氏梗概図参照)
キャプション評価法
地図アンケート
対象の 指摘される範囲が狭い。
特徴
(局所的な個所や事物に
偏る傾向あり)
歩いた範囲以外の場所
の指摘はない。
指摘される範囲がバラエティに
富んでいる(狭い~広い)
地域全体に指摘が分布してい
る。
手法の 局所的、刹那的な景観
特徴
資源を得やすい。
地域全体の傾向がよく把握で
きる。
キャプション評価法
覚え書き
定型自由記述文について
「※※ということについて」「※※と思うので」
という記述は、とくに高齢者にとって非常に困難。
対象への思い入れが強い人、論理的な思考に慣れ
ていない人(?)にも不適な印象。
子供(小中学生等)は難無くこなす!
(与えられたルールの中で素直に考えてくれる)
子供(小学生)の特徴
大人に比べ、×評価や希望が極端に少ない。
男女差が大きい。
男の子:建物等のサイズに感心
女の子:植物の美しさに興味
4.通勤者と居住者の意識比較
利便性・人通り
歴史・緑・建物
安全・衛生・音
■不満・不安度 (片側4段階)
不満・不安度
交通事故
通行量の多さ
防犯
地震・火災等
路上駐車・駐輪
空気や路上の汚れ
音
歴史的建物等
緑
高層建物
建て込み
文化的なまずしさ
まち並み
広場等の不足
通勤・買い物等の便
人通りの少なさ
飲食店等の不足
スーパー等の不足
人が多い
固有値
寄与率
F1
.81
.72
.69
.63
.59
.50
.48
-.08
.13
.27
.22
.07
.11
.31
.18
.41
-.12
.30
.20
3.50
18.40
F2
-.03
-.17
.05
-.14
-.15
-.34
-.31
-.75
-.74
-.69
-.63
-.56
-.54
-.45
.00
-.06
-.28
-.08
-.27
3.22
16.95
F3
.17
.13
.36
-.05
-.01
.00
.09
.13
.01
-.05
-.20
.44
.32
.08
.67
.62
.60
.51
-.42
2.18
11.48
全くない
1
「安全・衛生・音」
傾向は似ている。
居住者の方が全てに不満。
「歴史・緑・建物」
差が小さいが、歴史や緑で
は通勤者の方がやや不満。
あまりない
2
ややある
3
←居住者
←通勤者
「利便性・人通り」
バラバラ。
生活実態を反映した結果。
居住者・通勤者別の平均値
■印象評価/総合評価 (両側5段階)
生活感・自然
活動性・
利便性
雰囲気・個性
F1
.72
.65
.64
.58
.52
.52
.30
.10
.05
.30
-.03
.32
.25
.53
.25
.19
-.13
.45
.44
.17
32.98
F2
.15
.22
.34
-.07
.14
.24
.73
.73
.60
.47
.25
.11
-.31
-.08
.01
.06
.17
.06
.12
-.16
9.68
F3
.24
.13
.29
.09
.23
.15
.07
-.05
.22
-.13
.74
.68
.61
.54
.45
.03
.28
.09
-.10
.30
8.25
どちらかといえば左に近い
2
F4
.26
.10
-.01
.46
.39
.42
.17
-.29
.41
.28
.12
.16
.07
.00
.49
.77
.71
.68
.62
.40
5.81
雰囲気のある
個性のある
おもしろい
景観がよい
調和した
しゃれた
活気がある
にぎやかな
開放的
便利な
生活感のある
あたたかい
自然が豊か
歴史情緒を感じる
くつろげる
きれい(清潔)
安全な
美しい
整然とした
災害に対し安全
殺風景な
平凡な
つまらない
よくない
していない
無骨な
さびしい
落ち着いた
閉鎖的
不便な
ない
つめたい
人工的
感じない
くつろげない
汚い
危険な
美しくない
雑然とした
危険
住みよい
好ましい(好き)
住み続けたい
土地柄が合う
愛着がある
住みにくい
好ましくない
引っ越したい
合わない
愛着がない
衛生・安全・美観
安全・危険を除いて差はない。
寄与率
総合評価には差あり。
総合評価
3
どちらかといえば右に近い
4
※平均値では差がなくても「どちらでもない(3)」率では差が‥
60%
←
率
居住者
←
通勤者
+
側
40%
+
側
(
左
)
比
側
率
)
比
安全
(
左
側
20%
0%
0%
生活しやすさ
にぎやか‐落ち着き
愛着
利便性
好ましさ
20% 景観
10%
30%
40%
整然‐雑然
→
くつろぎ感
→
-60%
-80%
-100%
雰囲気‐殺風景
生活感
歴史や情緒
自然豊か‐人工的
50%
個性‐平凡
60%
永住意向
-20%
-
-
側
側
(
(
右
右
側
側
)
)
比
比
率
率
横軸が異なる
=「どちらでもな
い」率が異なる
清潔さ
活気‐さびしい
-40%
開放的‐閉鎖的
縦軸がほぼ同じ
=平均値が同じ
土地柄
調和
美しさ
おもしろさ
あたたかい‐冷たい
しゃれた‐無骨な
災害に対する安全性
→「どちらでもない」率
→「どちらでもない」率
利便性
生活感
歴史・情緒
活気
-さびしい
個性-平凡
永住意向
好ましさ
等
「どちらでもない」とは…?
本調査の「どちらでもない」の特徴
通勤・居住を問わず率が高い尺度
=調和,にぎやか-落ち着き,開放的-閉鎖的
あたたかい-つめたい, 等
通勤者で率が高い尺度
=永住意向,好ましさ,利便性,安全性
居住者で率が高い尺度 (総合評価を除く全般)
=生活感,歴史情緒,自然-人工,雰囲気-殺風景,
個性-平凡,整然-雑然,清潔さ,等
→(その人・地域に)適さない尺度、多面的な尺度で率が高
い?
→いずれにせよ段階数奇数で「平均値のみの考察」はキケン
■関心(片側4段階)・意見(両側5段階)
居住者の方が全てに関心が高い。
大いに ややある あまりない
1
2
将来
自然環境
防災
景観
文化歴史
関心(各平均値)
F1
知識・
帰属感
F2
生活者主体
近隣づきあ
F3
開発
F4 信頼感
F5 整備
3
「高層ビル期待」「駅前を優先整備」
は通勤者に多い。
F1の帰属感で「どちらでもない率」
に10%以上の差がある。
左に近い
1
2
3
やや右に近い
4
まちをよく知っている
まちは生活のよりどころ
ひと昔前からかなり変わった
生活者の意見をまちに反映すべき
行政・専門家の意見を重視
近隣とのつき合いは必要
高層ビルができるのは楽しみ
開発が進むのは楽しみ
このまちの人は頼りになる
優先整備すべきは駅前など
重要なのは活性化や利便性向上
あまり詳しくない
* たまたま生活している
あまり変わっていない
それほど必要でない
生活者の意見を重視
なくてもよい
* いや
不安
それほど頼りにならない
* 住宅地など身近な場所
良好な住環境づくり
意見(各平均値)
■地図記入設問による環境評価 (MA)
通勤者
港南
男性
【通勤者】
情緒や個性、
活気やくつろ
ぎ等に敏感
通勤者
芝浦
女性
勤港M
活気あり
住港M
居住者
港南
男性
くつろげない
景観悪い
住芝M
良その他
美しい
勤芝M
x
不潔
くつろげる 危険
住芝F
美しくない
清潔
安全
居住者
住港F さびしい
勤港F
女性
不便
悪その他
y
景観よい 便利
歴史情緒あり
古くさい z
個性
勤芝F
個人属性8(住勤2×生活地域2×性別2)×評価語20
対応分析の結果
【居住者】
安全性や
利便性等、
機能的な
側面を重
視
とくに女性
は安全性
を重視
おわりに(私見)
■地域環境評価のムツカしさ = 評価対象が曖昧。人による
•このため、評価に占める主観の割合(個人の解釈の余地
等)が大きいのでは。
複数地域の比較、経年変化の追跡、属性比較等、比較的大規模
な調査が多くなるのは必然。
•なかには主観の入る余地が少ない尺度(より共通化しやす
い尺度)もあるので、そのような観点から整理ができれば役
立つのでは。
「どちらでもない」率も使えるか・・・?
•地図・キャプションでは比較的明確になるが、非常に定量
データ化しにくい。
地図では度数のカウントが難しい。(度数を無視だとOK)
※久野先生の不満・不安度の尺度 (片側4段階)
【環境50要素】
作業場の音・振動
車の接近
家の広さ
街並み
避難場所
自動車の音・振動
ごみ収集
間取り
行事・文化財
買い物の便
近所の音
水道の出
庭
緑の量
銀行
夜間の音
風通し
地震
散歩できる場所
駐車場の不足
飛行機の音
湿気
近所づきあい
公園
子供の遊び場
ノラ犬ノラ猫
冬の日当たり 交通事故
空気の汚れ
幼稚園
清潔さ
悪臭
スクールゾーン
床上浸水
学習塾
下水
圧迫感
夜道の危険
地盤沈下
郵便局
路上駐車
プライバシー
風紀
火事
区役所
駅・バス停
TV映り
急病・夜間診療
危険物
医療施設