介護保険まちかど相談所支援事業について

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Transcript 介護保険まちかど相談所支援事業について

在宅における
薬剤師の役割
(社)静岡県薬剤師会
介護保険委員会
1 在宅支援の時代背景
高齢者の一人暮らし世帯の増加
高齢者薬物療法の特性と問題点
・加齢とともに複数の疾患を合併することが多くなる。
このため、多剤併用が多くなり、重複投薬、薬物間
相互作用のリスクが問題となる。
・視覚や聴覚機能の低下、嚥下障害などにより、服薬
の自己管理や服薬自体に支援が必要。
・腎機能・肝機能の加齢による低下、体成分組成
(肉量減少・体脂肪比率増加等)の変化による体内
動態の変動がある。
・こうした生理機能の個人差に対応した処方、調剤、
服薬の管理が必要。
※後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(平成19年2月5日)より
2 服薬支援とは
薬局窓口で、よくある出来事!!
●代理人(患者家族、ヘルパー等)の方が受け取り
に来られたが、患者本人がきちんと服用しているか
把握していない。
●処方された薬の服用方法を説明しても理解度が
落ちており心配になる。
●処方された薬を先日お渡ししたのに、既に薬が
ないと来局された。
●飲み残した薬が増えていくと相談された。
●受診医療機関が多く、使用薬剤の状況が確認で
きない。
患者宅へ出かけて服薬状況を
確認する必要があります。
服薬支援とは
1 薬剤師の在宅訪問による服薬支援は、介
護保険施行前から医療保険制度の中で実施
されてきた。
2 現在はそれに加え、医師の指示、介護支援
専門員の居宅介護支援計画の中で「居宅療
養管理指導」を実施している。
在宅訪問に至る 3つのパターン
A:医師指示型
医師・歯科医師
からの指示
薬剤師訪問
訪問の意義・目的
説明
患者同意
B:薬局提案型
薬局窓口で薬
剤師が疑問視
薬剤師訪問
訪問必要性調査⇒
必要とあらば意義・
目的説明
重要
C:他職種提案型
ケアマネージャー、ナースなど
他職種、そして家族からの依
頼
期間限定訪
問の提案も
ひとつの手
患者同意
医師・歯科医師から
の指示が得られるよ
うに依頼⇒指示有
訪問開始
薬剤師訪問
訪問必要性調査⇒
必要とあらば意義・
目的説明
患者同意
医師・歯科医師からの
指示が得られるように
依頼⇒指示有
居宅療養管理指導とは
1
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薬の飲み忘れ・飲み間違い防止を工夫する
薬を飲みやすくする方法の相談にのる
服用している薬の副作用を説明する
飲み残した薬・以前処方された薬の処理を手伝う
薬の保管方法の相談にのる
薬の飲み合わせ食べ物との相性を確認する
薬が正しく服用されているか確認する
日常生活で気をつけたいことを説明する
薬の管理・服薬支援方法 例①
個々の患者の状態に合わせた管理方法を
探っていくことが重要です。
ホワイトボ-ドの使用
薬の管理・服薬支援方法 例②
一包化、カレンダー、日付記入
【お薬手帳】 その日の残
注)日付の記入を患者宅
でいっしょに月日を確認しな
がら書いていく場合もある。
薬剤師が何もかも手出しし
すぎると、患者の能力が落
ちていく場合もある。
薬数、服用の注意点、新し
い薬の説明、そして家族や
介護者への伝言などを簡潔
に記入しておくと、連絡ノー
トとしても活用できます。
お薬手帳のおすすめ活用法
お薬手帳記入例
2006/05/10 山田花子さんのお薬
医療機関名:○○医院内科
担当医師名:△△先生
メイアクト錠100mg3錠
1日1回 毎食後 ×3日分
ゼスラン錠3mg 2錠
1日2回朝・夕食後 ×3日分
ロキソニン錠 1錠
発熱時・疼痛時 ×10回分
メリット
◎症状や飲み方をメモしておくと
薬局で記入又
はシール印刷
する部分*
◎医師に聞きたいことをメモしておくと
かぜをひいた。熱37.7℃。鼻
水出る。5/12鼻水は少なく
なった。ロキソニンを3回飲んだ。
ロキソニンを飲むと、熱は下がる
が、胃が痛くなった。薬のせい?
食欲あまりない
・先生に聞き忘れがなくなる
◎災害時に飲んでいた薬が早く手に入
る
自分で書き込
む部分
*お薬手帳は1回0~50円の負担があります
・薬の効果が確認できる
・飲んでいる期間中の様子が医
師や薬剤師に正確に伝わる
・以前の薬を見返し、自分にあっ
た薬を出してもらえる
薬の管理・服薬支援方法 例③
服用時点ごとに区切った箱を活用
85歳女性の患者
失明はしていないが、強度の弱視のため
うっすらとしか見えない。手触りや位置を
説明し、うっすらと見える赤い線などで区
別できるようにしている。
弱視の方の場合、前スライドのカレン
ダーを使うと、どれを取っていいのか
わからなくなり、よけいにコンプライア
ンスが落ちることがある。
あえて、分包せず錠剤のシートのまま箱に
入れている。位置と錠剤の大きさで何の薬
か把握している。
高齢者の服薬支援
薬を飲ませることが、目的ではない。
服薬支援の目的は、期待される治療効果を
得ること副作用などのリスク回避である。
そのためには、一時的に服薬を中止すること
もある
個々の患者に合わせた対応が重要である。
在宅介護での薬剤師の具体的活動
1 ケアカンファレンス(介護保険におけるサービス担当者
会議)に参加する
2 高齢者が使用している全ての薬剤を把握する
・重複投与や相互作用のチェックをして薬を整理する
・薬剤師1人では、難しい
3 決められた通りに薬を服用しているかを確認
・訪問看護師やホームヘルパー、デイサービススタッフから服薬
情報を得る
4 薬の服用が生活機能やADLに影響を与えているか
確認する
・副作用などの情報を共有する
3 服薬支援事例
事例1 医師から感謝された服薬指導
(問 題)【70代
女性 介護度1 デイサービス1回/週】
・めまい、頭痛などが頻回に起こり、その都度電話対応、また、
服用時点の確認や、降圧薬の頓服用法を指導した。
・自宅での服薬方法の確認の必要性を感じ医師に連絡し、居
宅療養管理指導を実施した。
・正しく服薬出来ていない事がわかり、医師に連絡した。
(改善策)
・服用時点毎の薬袋を作り、本人の理解力にあわせての服薬
指導を継続した。
(結 果)
・本人は規則正しく服薬することの必要性を理解でき、血圧コ
ントロールも改善し、残薬も整理された。
事例2 こまめな管理でコンプライアンス改善
(問題点)
【60代 女性 介護度1 デイサービス利用】
・窓口では、一時的に理解はするものの、忘れやすく、複数医
療機関受診。一包化したが残薬あり、訪問開始
(改善策)
・食前も含め、服用時点毎7日分ずつにわけ、用法を十分に説
明した。他院の薬は、曜日と服用時点毎の薬箱を作り管理し
た。
・毎回訪問ごとに、残薬チェックをし、規則正しく服用する意義、
夜間の不眠への対策なども指導した。
(結果)
・訪問3回目で、だいぶ改善。訪問4回目で残薬包数も合うよう
になり、コンプライアンス(服用遵守)も改善した。
事例3 処方薬以外の手持ちの残薬管理
でコンプライアンス改善
(問題点)
【70代 男性 要支援 認知症あり一人暮らし】
・シップ薬を過剰に貼付する
・多種類のぬり薬の使用部位・用法が理解できず放置されて
いる。
(改善策)
・処方されたシップ薬の使い方を細かく指導した。
・処方された沢山の種類のぬり薬を病院に問い合わせ、使用
部位・用法を確認し、あらためて指導を行った
(結果)
・コンプライスも改善し、管理も出来るようになった。
事例4 医師と連携しQOL改善
(問題点)
【80代 女性 介護度3 主疾患:心臓病、高血圧症】
・本人より夜間に「息苦しい」との訴えが度々あり、介護者も困っ
ていた。
(改善策)
・医師に情報提供し往診同行、在宅酸素の導入、ニトロダーム
TTS処方を実施。
(結果)
・その後症状一変し、改善した。
・ニトロダームTTS使用による副作用もなく、その後も状態安定し、
2週間毎の定期訪問となっている。
・現在では、短い間の会話だが、薬局の訪問服薬指導を楽しみに
待ってくれている。
事例5 患者との信頼関係とは
(問題点)
【80代 女性 介護度5 認知症】
・認知症である妻は、自分の体調を訴える事が出来ないため薬
剤管理を介護者であるご主人がしていた。
・プルゼニド錠について便通の具合を見ながら、ご主人が調節し
ていた
・妻に鼻水が出るとご主人に処方されていたPL顆粒を服用させ
ていた。この事を医師には内緒にしてほしいと相談があった。
(改善策)
・プルゼニド錠については、細かく指導
・PL顆粒の件は、医師に情報提供し、妻にアレグラ錠が処方され
た。
(結果)
・便通、鼻水とも症状良好。信頼関係も良好。
事例6 薬の変色について
(問題点)【60代
男性 介護度5 脳梗塞後寝たきり胃ろう造設の為粉砕調剤】
・粉砕調剤事例で訪問服薬指導の患者家族より「薬が変色し
ているが、調剤ミスではないか?」との問合せ
(改善策)
・問題薬を回収後、医師に状況報告し、製薬企業から安定性
データを取り寄せ、調剤時の調査を実施。
・医師と協議しながら、吸湿など安定性向上の目的で、「簡易
懸濁法」を導入した
(結果)
・安定性データから変色する原因薬剤(テノーミン錠の淡黄色
化、フェノバールのピンク色退色)が判明
・調剤時の調査から他薬剤混入事故もなかった。
・その後、安定的に薬物療法が実施できている。
事例7 重複投薬の改善
(問題点)
【70代 女性 介護度3】
・内科医師の指示で訪問服薬指導をしていた患者には、膝
痛でA整形から痛み止めと胃薬が処方されていた。
・同患者が鎖骨骨折し、近くのB整形へ受診し、痛み止めと
胃薬とシップ薬を院内調剤で重複投薬された。
(改善策)
・B整形医師に、重複投薬の旨情報提供し相談。
・薬局が、訪問服薬指導を行っている事も伝えた
(結果)
・重複した薬剤は中止となる。
・院外処方になり、重複投薬の管理が可能となった
事例8 訪問看護や訪問介護など、他職
種と連携
①蓄尿バッグが紫色に変色
・原因が服薬中の薬ではなく、「紫色尿バッグ症候群」である事
を医師、看護師に情報提供した。
②オムツかぶれや褥瘡の改善
・ヘルパー訪問時に、皮膚の状態を確認し、薬剤の効果的な使
用法を指導した。また、悪化した時はすぐ連絡することにしたと
ころ、オムツかぶれや褥瘡になる事もほとんどなくなった。
③カテーテルチューブの変形
・酸化マグネシウムによるものと看護師に情報提供した。その後、
下剤が変更され、変形しなくなった。
事例9 ヘルパーが居宅療養管理指導
を知り、患者のQOL改善
(状況) 【90代 女性 介護度3】
・日中独居で昼間は、ヘルパーが介護。訪問中は薬局作
成の投薬カレンダーに日付けを記入しセット。
・ヘルパーが薬剤師による居宅療養管理指導を知る。
(改善)
・親しくなり、相談の電話多くなる。「血圧が下がりすぎてい
るようだが?」「下痢をして脱水症状のようだが?」など
(結果)
・電話相談の度に医師に連絡し対処できている。
・今では、ヘルパーが、多数来局しては、色々な相談を受
けるようになった。
事例10 うつ病その他疾患の多い患者で改善
その1
(患者の状況)
【 70代 女性 介護度5】
うつ病、神経因性膀胱、尿閉、SIADH、甲状腺機能低下症、低
ナトリウム血症による意識障害、経口摂取不良、排尿障害、低
カリウム血症、夜間不穏、不眠、便秘症
(問題点)
・多科受診のため重複投薬があり、かかりつけ医が不明
・介護者の夫の判断のため不正確な投薬になっている
・処方された薬の種類が多く、管理できていない
・夜中の頻尿で介護者が不眠になり、一時は離婚も考慮
・在宅で救急車を何回も呼び騒動を起こしている
事例10 うつ病その他疾患の多い患者で改善
その2
(改善策)
・サービス担当者会議を行い情報を共有する
・受診している複数医師に「かかりつけ医」決定を依頼
・往診に同行して残薬や検査値から薬の用法・用量の変更を依
頼
・ケアマネ、患者、介護者の精神科受診に同行し、薬の必要性
を確認
・薬のカレンダー、一包化をしていたが、介護者の管理能力が
優れているので過剰サービスをやめ、薬の内容を説明し服薬
をしっかりしてもらうことにした
事例10 うつ病その他疾患の多い患者で改善
その3
(結果)
・薬でのコントロールができ、顔つき、日常生活が
一変
・バスで歯医者に通院したり、台所の片付け、夏冬物の衣更
えまで出来るようになり、短期間のADL向上が見られた。
・ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー、民生委員、施設の
相談員、包括の相談員等チームとしてのかかわりの大切さ
が再認識された事例でした
薬剤師による服薬指導風景
実際に薬をみてもらい、患者さんと
介護しているご家族に説明
4 お薬出前講座
お薬出前講座のご案内
静岡県薬剤師会介護保険委員会





いろいろな職種の人が患者さん宅で介護サービス
を行っているが、患者さんの病気は知っていても
飲んでる薬までは知らない?
また、なかなか勉強する時間も機会もない?
静岡県薬剤師会は、介護を担う一員として他職種
の人たちと連携することが大切と考えている。
今年度、高齢者のサービス提供を支援するために
「お薬出前講座」を企画した。
出前講座では、薬剤師が各事業所に出向き研修
会を開催する。
出前講座内容
1 薬の基礎知識
医療用医薬品・一般用医薬品、主作用・副作用、
薬が効く仕組み、吸収・代謝・排泄など
2 疾患別薬の知識
高血圧の薬、糖尿病の薬、高脂血症の薬、睡眠薬・安定剤
3 薬の飲み方
服用時間、飲み忘れた時・2回分の薬を飲んでしまったとき
の対処法、飲み忘れ飲み間違い防止の工夫、保管方法他
4 副作用・相互作用・その他
副作用について、のみあわせ(相互作用)、お薬手帳、
在宅訪問服薬指導、健康介護まちかど相談薬局 他
5 在宅における薬剤師の役割
それぞれが1項目30分程度です。1項目でもかまいませんが、2,3項
目でも組み合わせは自由です。出前をご希望の方は、薬剤師会までお
申し出ください。少人数でも お気軽にどうぞ!
健康介護まちかど相談薬局とは?