職務発明 - 日本知的財産協会

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Transcript 職務発明 - 日本知的財産協会

最近の職務発明を巡る動向
と
JIPA職務発明制度ガイドライン
JIPA副理事長/職務発明プロジェクトリーダー
凸版印刷株式会社 法務本部
副本部長 萩原 恒昭
1
主な職務発明の譲渡対価を巡る訴訟
金額は、概略で記載
A氏
B氏
原告
(1995.3(控訴 (1998.7(控訴
(提訴日) 1999.4、上告 2002.12、上
2001.6))
告2004.2))
被告
オリンパス
ビデオディスク
対象技術 装置のピック
アップ装置
会社が支
払った額
請求額
判決結果
備考
21万円
日立製作所
C氏
D教授
(2002.12(控
E氏
訴2003.9、上 (2001.8(控訴
(2002.9)
告2004.5))
2004.1))
日立金属
日亜化学
味の素
F氏
(2003.10)
G氏
(2003.10)
キャノン
三菱電機
H教授
(2004.3)
東芝
I氏
(2004.6)
J氏
(2004.6)
デンソー
シャープ
高精細画像
鉄・希土類・
自動車用電
光ディスクの読
青色発光ダイ 人工甘味料
記録技術
半導体フラッ 半導体フラッ
液晶画像表示
窒素系永久
動式燃料ポ
み取り装置
オード
「アスパルテーム」 (レーザービーム シュメモリー シュメモリー
技術
磁石粉末
ンプ技術
プリンター)
230万円
2億円
9.7億円
(二審で5200 (二審で2.5
万円に減額) 億円に減額)
104万円
9千万円
2万円
200億円
1000万円
20億円
85万円
500万円
10億円
2億円
(対価の一部 (対価の一部
として)
として)
数百万円
10億円
53万円
77万円
10億円
5億円
(本来受け取 (本来受け取る
るべき対価2 べき対価115
6億円の一 億円の一部と
部として)
して)
250万円が
604億円が
1億6285万 1265万円
相当の対価
相当の対価 1億9935万
円が相当の が相当の対
(東京地裁・
(200億円支 円が相当の対
対価(東京高 価(東京高
高裁・最高
払命令。東 価(東京地裁;
裁;
裁;
裁;
京地裁;
2004.2.24)
2004.1.29) 2004.4.27)
2003.4.22)
2004.1.30)
確定
一審判決:
3474万円、
上告中
一審判決:
1129万円、
上告中
東京高裁で
和解 和解金
6億円
2005.1.11)
東京高裁で和解
那覇地裁→
和解金1億5000
東京地裁係
東京地裁係 東京地裁係 大阪地裁係属
東京地裁係
万円
属中
属中
属中
中
(2004.11.19)
属中
日本知的財産協会作成
2
特許法35条4項と5項の関係
特許法35条4項に基づく対価の支払い
対価を決定するための基準の策定に際して使用者等
と従業者等との間で行われる協議の状況
策定された当該基準の開示の状況
手続きの三大要件
対価の額の算定について行われる従業者等からの
意見の聴取の状況
その他手続的要件、実体的要件(金額など)の状況
不 合 理
特許法35条5項に基づき
対価の額を定める
不合理でない
補足的に考慮
決定された対価の
支払いを総合的に
判断
使用者と従業者で定め
た対価の額を尊重
3
改正特許法第35条
特許法第三十五条(職務発明)
(1項、2項は省略)
3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使用者等
に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施
権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4 契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対
価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われ
る協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について
行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところに
より対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならない。
5 前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払
うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の額は、
その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等
が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければな
らない。
4
職務発明制度改正へのJIPAの取り組み
・H14.9~H15.12 産業構造審議会知的財産政策部会特許
制度小委員会への参画、意見提言
・H16.7 JIPA「職務発明フォーラム」の開催とフォーラム宣言
・H16.7~H16.9 特許庁の「新職務発明制度における手続き
事例集」策定に参画
・H16.10 JIPA「新職務発明制度に基づくガイドライン」の
策定・公表
5
ガイドラインの位置づけ
• 企業が職務発明規程を作成するに当たり、最低限
やるべきミニマム・スタンダードと望ましい対応につ
いて示した。
• 各企業における具体的な施策は、社内での議論、
他社との情報交換、弁護士等への相談などを通じ
て、各企業の責任において決定していただきたい。
• このガイドラインは、企業実務の観点から、企業に
おける職務発明規程を作成するに当たっての留意
事項を取り纏めたものであり、あくまで社内検討の
一助としての位置づけ。
6
ガイドラインのポイント 協議の状況 (1)
【ミニマム・スタンダード】
「…協議の状況…」の「協議」とは、対価を決定するための基準を策定
する場合において、その基準の策定に関して、基準の適用対象となる職
務発明を行う従業者等(又はその代表者)と使用者等との間で行われる
話合い全般を意味する。
① 改正法第35条4項の適用を受けるには、対象となる従業者等(又は
その代表者)と協議を行うことが必須。
② 従業者等との協議にあたっては、対象となる従業者等全員と協議す
る方法と、従業者等の代表者と協議する方法とがある。協議は何回
かに分けて行うこともできるし、社内イントラネットを利用することもで
きる。
③ 協議に当たっては、基準の内容を従業者等(又はその代表者)に十分
理解してもらえるよう必要な説明をした上で進めることが肝要。
④ 後日に紛争が生じる場合を想定して、誰を対象に、どのような資料で
どのように説明したか、また、誰から何についてどのような質問が出
て、どのように対応したかについて、記録を残しておくべき。
7
ガイドラインのポイント 協議の状況 (2)
【考慮すべき事項】
1.協議の対象者
・全員か、研究・開発部門か。
・正社員、役員、嘱託、アルバイト、パート、契約社員、派遣社員、出向社
員等。
・従業者等の代表者と協議する場合、協議の相手となる代表は、労働組合、
管理者組合の代表、研究者を代表する者等。
・その他
2.協議の方法
・協議において、実質的に協議が尽くされたと思われる状況になっていれ
ば、合意が得られなくても、協議を終了することができる。
・ 「協議が尽くされたと思われる状況」とは、意見・質問がほぼ出尽くし、そ
れについての回答がなされている場合、十分に時間をかけて協議を行っ
ているが、意見がどうどう廻りをしている場合等をいう。
8
ガイドラインのポイント 開示の状況 (1)
【ミニマム・スタンダード】
「…開示の状況…」の「開示」とは、対価を決定するための基準を策定し
た場合において、その基準を基準の適用対象となる職務発明を行う従業
者等がその基準を見ようと思えばいつでも見られる状態にする(提示す
る)ことを意味する。
・ 原則的には、他の社内規程と同様の開示方法により行います。例えば、
次のいずれかの方法、またはこれらの併用で従業者等全員に開示をす
ることが考えられる。
① 従業者等がアクセス可能なイントラネットのホームページに掲載
② 小冊子に記載して全員に配布
③ 誰でも閲覧できる形で勤務場所に常備
・ 後日に紛争が生じる場合を想定して、どのようにして開示したかについ
て、記録を残しておくことが大切である。
9
ガイドラインのポイント 開示の状況 (2)
【考慮すべき事項】
1.対価を決定するための基準は、従業者等がその開示内容から、対価の
算定の仕組みが理解できる程度まで開示されていることが望ましいと考
えられる。
・ 新入社員、中途採用社員等に対しては、採用時に基準を開示し、納
得して入社してもらうことが望ましい。
􀂾 ・必ずしも入社前に開示する必要はなく、入社後、発明の承継時までに
基準を開示し、説明する必要がある。
􀂾 ・試用期間がある場合は、できるだけ試用期間内に説明することが望ま
しい。
􀂾 ・新入社員や中途採用社員からは、各種の社内規則に従うことの同意
を取る時に、他の社内規則と一緒に同意を取ることが妥当と考える。
2. 優秀な社員確保などのために、基準を社外に開示することは、各社の
判断であるが、第35条との関係では、社外に開示する必要はない。
10
ガイドラインのポイント 意見の聴取の状況 (1)
【ミニマム・スタンダード】
「…意見の聴取の状況…」の「意見の聴取」とは、職務発明に係る対価
について定めた契約、勤務規則その他の定めに基づいて、具体的に特
定の職務発明に係る対価の額の算定を行う場合、その算定に関して、当
該職務発明の発明者である従業者等から、意見、不服などを聴くことを
意味する。
・ 個々の発明について、対価算定に当って発明者から意見の聴取を行
わなくても構わないが、対価を算定し、支払いを行った後に意見・不
服を聞くことは必要である。
・ 後日に紛争が生じる場合を想定して、誰から何についてどのような意
見・不服が出て、それに対してどのように対応したかについて、記録を
残しておくべきである。
11
ガイドラインのポイント 意見の聴取の状況 (1)
【考慮すべき事項】
1. 意見の申立期間を設定することが望ましい。期間としては、1~6ヶ月
程度が考えられる。
2.意見を聴取する組織としては、必ずしも社外の第三者機関なくともよい。
3.不服申立に対しては、根拠を示して説明するが、必ずしも合意しなけれ
ばならない訳ではない。
4.説明に必要な実施料率などが当事者間で秘密事項とされている場合
は、開示できない場合もある。但し、守秘契約を締結した上で、開示す
ることは可能。
5. 複数発明者の1人から不服申立が提出された場合、客観性を高めるた
めに他の発明者から意見の聴取をすることも考慮する。
12
ガイドラインのポイント その他
1.社内制度の名称
補償、報償、褒賞、その他。
2.外国出願の取り扱い
外国出願についても第35条が及ぶかどうかは結論が出ていない。
3.社員のインセンティブ
第35条の相当の対価とは別に、インセンティブとしての報奨制度を設定することは重要。
4.新第35条下でのさらなる基準の改定
協議の必要性。
5.退職者への対応
対価の支払いについて、退職時に連絡先の通知や取り扱いについて合意しておくことが重要。
6.旧第35条下の発明への遡及
新第35条に適応した規程を遡及させる。訴訟に至ったときの裁判所での新第35条の趣旨に
そった解釈を強く期待。
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今後に向けたJIPAの取り組み
• 職務発明プロジェクトを中心に、新35条施行下での
各企業の状況や訴訟の動向の把握を継続する。
• 必要であればガイドラインの改訂を行い、企業にお
ける職務発明問題のリスク軽減をサポートする。
• 訴訟が減らない、もしくは裁判所において新35条の
精神が尊重されないといった場合には、更なる35条
の改正を求めて行動する。
その場合、状況によっては35条の全部削除や法人
発明制度なども考慮の範囲に入れる。
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