健康管理と健診後のフォローについて

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Transcript 健康管理と健診後のフォローについて

22.4.23
NPO法人R
勉強会
職場における健康管理と
健診後のフォローについて
独立行政法人
大阪労災病院
保健師
労働者健康福祉機構
勤労者予防医療センター
米山 貴子
本日の内容
 労働衛生の動向
参考資料
 特定健康診査・特定保健指導
-制度の目的と意義-
 労働安全衛生法
-定期健康診断を中心に-
 健康診断に係る裁判例の紹介
 定期健康診断の事後指導について
 健康づくりの事例紹介
労働衛生の動向
生活習慣病有病者の状況
○糖尿病
・強く疑われる人:890万人
・可能性が否定できない人:
1320万人
○高血圧症
・有病者:3970万人
・正常高値血圧者:1520万人
(H18)
←糖尿病が強く疑われる人が
10年間で200万人増
可能性が否定できない人を
合わせると、840万人増
厚生労働省:平成19年・18年国民健康・栄養調査
大阪労災病院勤労者予防医療センター
肥満の出現率の推移(20歳以上、性・年齢階級別)
男性:全ての年齢階級において、肥満者割合が20年前、10年前と比べて増加傾向
①20年前(昭和62年) ②10年前(平成9年) ③平成19年
厚生労働省:平成19年国民健康・栄養調査
大阪労災病院勤労者予防医療センター
メタボリックシンドローム該当者・予備群の状況
メタボ該当:
約1,070万人
予備群該当:
約940万人
合わせて約2,010万人
と推定された。
←40~74歳でみると、
男性の2人に1人、女性
の5人に1人が、メタボが
強く疑われる又は予備群
と考えられる。
(厚生労働省:
平成19年国民健康・栄養調査)
大阪労災病院勤労者予防医療センター
国民医療費と対国民所得比の年次推移
生活習慣病に係る医療費は、
国民医療費(約33兆円)の約3分の1
(約10.7兆円)
厚生労働省
大阪労災病院勤労者予防医療センター
定期健康診断の実施率、
常用労働者の受診率
および有所見率
厚労省:H19労働者健康状況調査
がん検診実施の有無及び種類別事業所割合
厚労省:H19労働者健康状況調査
異常の所見があった労働者の有無、定期健康診断等の結果に
基づく健康管理のための事後措置の有無及び内容別事業所割合
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
厚労省:H19労働者健康状況調査
特定健康診査・特定保健指導
-制度の目的と意義-
厚生労働省
大阪労災病院勤労者予防医療センター
毎日の生活習慣を見直して、メタボ氷山を縮めましょう
一見バラバラに見える症状も内臓
脂肪が共通の原因です。
大阪労災病院勤労者予防医療センター
重症化予防と医療費適正化のイメージ
厚生労働省:生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会
大阪労災病院勤労者予防医療センター
定期健康診断と特定健康診査の違い
定期健康診断・保健指導
特定健康診査・保健指導
健診・保健
指導の関
係
健診に付加した保健指導
内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病予防の保健指導
が必要な者を抽出する健診
特徴
プロセス重視の保健指導
結果を出す保健指導
目的
個別疾患の早期発見・早期治療
内臓脂肪型肥満に着目した早期介入・行動変容
・リスクの重複がある対象者に対し、医師、保健師、管理
栄養士等が早期に介入し、行動変容につながる保健指導
を行う
内容
健診結果の伝達・理想的な生活
習慣にかかる一般的な情報提供
自己選択と行動変容
・対象者が身体のメカニズムと生活習慣との関係を理解し、
生活習慣の改善を自らが選択し、行動変容につなげる
保健指導
の対象者
健診結果で「要指導」と指摘され、
健康教育等の保健事業に参加し
た者
健診受診者全員に対し、必要度に応じ、階層化された保
健指導を提供
・保健指導の必要性に応じて優先順位をつける
方法
一次点の健診結果のみに基づく
保健指導・画一的な保健指導
健診結果の経年変化及び将来予測を踏まえた保健指導
・データ分析等を通じて集団としての健康課題を設定し、
目標に沿った保健指導を計画的に実施
評価
アウトプット(事業実施量)評価
→実施回数や実施人数
アウトカム(結果)評価
有病者・予備群の減少等
実施主体
事業所・市町村
医療保険者
特定健康診査・保健指導って?
 この特定健診・特定保健指導では、内臓脂肪型肥満に
着目し、その原因となっている生活習慣を改善する
ための保健指導を行い、生活習慣病有病者・予備群の
減少(病気の予防)を目的としています。
 生活習慣病は自覚症状がないまま進行するため健診は
皆様に生活習慣を振り返っていただく絶好の機会と
位置づけ、生活習慣の見直しに向けた保健指導を行い
ます。
 この特定保健指導は、決められた検査項目に基準値を
設けて、その基準値から高い方または低い方に対して
行います。
STEP1:内臓脂肪型肥満と、
非内臓脂肪型肥満を分類
1) 内臓脂肪型肥満
腹囲:男性≧85cm 女性≧90cm
(内臓脂肪が蓄積している可能性のある方)
2) 非内臓脂肪型肥満
腹囲:男性<85cm 女性<90cm
かつBMI≧25
(この状態も肥満といいます)
STEP2:動脈硬化を早める危険因子を数える
1)
血糖(いずれかに該当)
①空腹時血糖:100mg/dl以上
②ヘモグロビンA1c:5.2%以上
2)
脂質(いずれかに該当)
①中性脂肪:150mg/dl以上
②HDL-cho:40mg/dl未満
3)
血圧(いずれかに該当)
左記が1つでも
あてはまる場合
+ 4) 喫煙歴
①収縮期血圧:130mmHg以上
②拡張期血圧:85mmHg以上
例)血糖値が120mg/dlで、中性脂肪が160mg/dl、加えて喫煙
する場合、危険因子は3つ
STEP3:STEP1,2から、保健指導の
必要レベルをグループ分け
危険因子
1)腹囲:男性≧85cm
女性≧90cm
2)腹囲:男性<85cm
女性<90cm
かつBMI≧25
3個以上
積極的支援
積極的支援
2個
積極的支援
動機づけ支援
1個
動機づけ支援
動機づけ支援
※既に高血圧症・脂質異常症・糖尿病について治療中の方(服薬中)は、
主治医の指導があるため、特定保健指導は対象外となります。
特定保健指導は
メタボリックシンドローム予防!
脂質異常症
肥満
↓
身体の変化が検査に現れる
↓
「高め」または「低め」が
続き、かつその危険因子が
複数あると、動脈硬化を
招いてしまう
↓
放っておくと脳梗塞や心筋
梗塞などの循環器病を引き
起こす危険性が高まる!!
メタボリックシンドローム予防=まず減量
★メタボそのものに効く薬は今のところありません。
筋肉量を維持してリバウンドの少ない減量をするために
2に食事
1に運動
しっかり
禁煙
最後に
クスリ
1~3をしても検査数値が悪くなる場合
労働安全衛生法
-定期健康診断を中心に-
労働安全衛生法の目的と事業者・労働者
の責務
<労働安全衛生法の目的>
 労働災害※防止(危害防止基準の確立、責任体制
の明確化、自主的活動の促進)
→労働者の安全と健康を確保
→快適な職場環境の形成を促進する
※労働災害
・労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、
粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、
労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること、と
定義されています。
事業者・労働者の責務
 事業者は、労働災害防止基準を守るだけでなく、職場
環境と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康
を確保しなければならない。また、国が実施する労働
災害防止に関する施策に協力しなければならない。
 機械・器具・原料・建設物等を、設計・製造・輸入・
建設する者は、これらの物の使用による労働災害防止
に資するよう努めなければならない。
 仕事を他人に請負わせる者は、安全衛生を損なうおそ
れのある条件を付さないよう配慮しなければならない。
 労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守る
ほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防
止に関する措置に協力するよう努めなければならない。
事業者に求められる安全配慮義務
 安全配慮義務は、もともと判例の積み重ねに
よって確立されてきた概念
→2008年3月に施行された労働契約法
第5条において、
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がそ
の生命、身体等の安全を確保しつつ労働す
ることが出来るよう必要な配慮をするもの
とする」と既定され明文化が図られた。
労働衛生の三管理と労働衛生教育
 作業環境管理
…化学的・生物的・物理的因子の管理、一般衛生対策、作業環境測
定、作業環境の改善、施設や設備のメンテナンス、喫煙環境対策
等
 作業管理
…作業方法の改善、労働負荷対策、保護具等
 健康管理
…業務起因性の疾病予防、健康支援活動を通じた健康の保持・増進
☆これらを円滑に進めるために管理監督者及び労働者が、
衛生管理の重要性について認識し、積極的に産業保健活動を
行うことが大切
労働衛生教育を実施することが不可欠
労働衛生教育の種類
 労働安全衛生法による教育
…「雇入れ時および作業内容変更時における教育(第59条第1項,
第2項)」「職長等の教育(第60条)」等
※詳細は労働省(当時)通達「安全衛生教育推進要綱」をご覧ください。
 行政指導による教育
…「有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育(昭和59年6月29
日基発第337号)」「VDT作業に係る労働衛生教育(昭和61年3月31
日基発第187号)」等
他にも様々な労働衛生教育が行政指導されています。
 企業ニーズによる教育
…法規で定められていたり、行政指導されているわけではない
が、事業場の産業保健活動を推進するために必要不可欠な労働
衛生教育
経営トップに対する情報提供・管理監督者に対する啓発等
各事業場の一般的衛生管理組織
選任対象事業場または作業
職務
総括安全衛生
管理者
(法第10条関係)
・建設業等屋外産業的業種100人以上
・製造業等工業的業種300人以上
・その他1,000人以上の事業場
安全管理者・衛生管理者を指揮し、次
の業務を統括管理する
①労働者の危険または健康障害を防止
するための措置に関すること
②労働者の安全または衛生のための教
育の実施に関すること
③健康診断の実施、その他健康の保持
増進のための措置に関すること
④労働災害の原因の調査および再発防
止対策に関すること
⑤その他、労働災害を防止するために
必要な業務
衛生管理者
(法第12条関係)
常時使用する労働者が50人以上の
事業場
・50~200人
:1人以上
・201~500人 :2人以上
・501~1,000人 :3人以上
・1,001~2,000人:4人以上・・・
上記①~⑤につき、衛生に係る技術的
事項を管理する
安全衛生推進者
衛生推進者
(法第12条-2関係)
常時10人以上50人未満の労働者を使 上記①~⑤を担う
用する事業場
※衛生推進者にあっては、上記の職務
のうち衛生にかかる事項
各事業場の一般的衛生管理組織(続き)
選任対象事業場または作業
作業主任者
(法第14条関係)
産業医
(法第13条関係)
職務
・高圧室内における作業
・工業用のX線装置などにかかる作業
・ガンマ線による撮影の作業
・有害な特定化学物質などを製造する
作業および取り扱う作業
・鉛業務に係る作業
・四アルキル鉛等業務に係る作業
・酸素欠乏危険場所における作業
・有機溶剤業務に係る作業
・石綿業務に係る作業
作業者の健康障害を防止するための作業指
揮、その他を行う
常時使用する労働者が50人以上の
事業場
・50~3,000人以下:1人以上
・3,001人以上:2人以上
専属産業医の選任
①1,000人以上の事業場
②一定の有害な業務従事者500人以
上の事業場
・次の事項で医学に関する専門的知識を必要とす
ることを行う
①健康診断の実施およびその結果に基づく労働者
の健康を保持するための措置に関すること
②作業環境の維持管理に関すること
③作業の管理に関すること
④①~③のほか、労働者の健康管理に関すること
⑤健康教育、健康相談、その他労働者の健康の保
持増進を図るための措置に関すること
⑥衛生教育に関すること
⑦労働者の健康障害の原因の調査および再発防止
のための措置に関すること
・上記①~⑦につき、事業者または総括安全衛生
管理者に対して指導、助言する
・毎月1回の職場巡視を行う、衛生委員会の委員と
しての任務を果たす
安全衛生推進者・衛生推進者
安全衛生推進者
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の
加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、
通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸
売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売
業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、
機械修理業
衛生推進者
上記以外の業種
●選任すべき事由が発生した日から、14日以内に選任することが必要
●選任すべきものの資格要件
・・・安全衛生推進者(衛生推進者)の業務を担当するのに必要な能力を有すると
認められる者〔昭和63年9月5日 労働省告示第80号「安全衛生推進者
等の選任に関する基準」を参照〕
●安全衛生推進者(衛生推進者)を選任したときは、事業場内の見やすい箇所に
推進者の氏名を提示する等により周知する必要がある。
(労働安全衛生規則第12条の4)
健康診断
 労働安全衛生法
第66条 健康診断
→事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるとこ
ろにより、医師による健康診断を行わなければならない。
労働安全衛生法では、労働者の健康状態を把握し、
適切な健康管理を行っていくため、健康診断の実施を
事業者に義務付けている。
 健康診断は大きく分けて「一般健康診断※」「特殊健康
診断」がある。
※一般健康診断:定期健康診断・雇入れ時健康診断等
☆定期健康診断は、「常時使用する者」に対して行う。
労働安全衛生法による定期健康診断の目的
☆健康診断の目的
 労働者が自覚していない病気の早期発見をして治療に結び
つけることや、生活習慣病のリスクを評価して発症の予防
をすること
☆労働安全衛生法による定期健康診断の目的
 健診結果に基づき、事業者が適切な措置を講じることに
より、労働者が健康を確保しながら就業できるようにす
ること!
★労働者が自分の健康状態を確認して早期治療や予防に役
立てること
★事業者が、労働者の健康状態に応じた配置を行い、健康
障害の悪化を予防する
⇒産業保健活動の目的を実践するために活用!!
健康診断の重要性
 労働者が、年に1回健康診断を受けることは
法律で義務付けられている。
 検査の意味や結果・見方を理解し、自分の
体の変化を知る良い機会と捉える。
 健康診断は健康状態をチェックするために
とても重要である。
健康診断を活かす
 食生活の偏りや運動不足、ストレスなどによって生活
習慣病(肥満・脂質異常症・高血圧・糖尿病・脂肪肝
など)にかかる人が急増している。生活習慣病は重症
にならないと自覚症状が出ないものが多く、気付いた
ときは病状がかなり進行していることも少なくない。
 そのような気付きにくい生活習慣病を早期発見するた
めに大切なのが“健康診断”である。しかし診断結果の
見方を知らなければ、せっかく受けた健診も意味がな
い。検査値の見方を理解して、
生活習慣病の予防に役立てることが必要!
健康診断で病気を早期発見する
 健康診断では、血液検査や尿検査、X線検査など
様々な検査が行われる。それらの検査から、様々
な体の健康状態を知ることが可能である。
 検査結果の数値によって病気がないかをふるい分
ける。(病気は様々な検査の結果から総合的に判
断をして診断されるので、この検査値が正常だか
ら大丈夫ということではない)
健康診断の実際 実施から事後措置まで
健康診断の実施(安衛法第66条第1項、安衛則第44・45条)
・常勤労働者に対し、1年以内毎に1回実施(特定業務従事者は6ヶ月以内毎に1回)
健康診断結果の労働者への通知
(安衛法第66条・安衛則第51条の4)
保健指導の実施(安衛法第66条の7)
・医師、保健師による保健指導
(努力義務)
健康診断結果の保存(安衛法第66条の3、安衛則第51条)
・健康診断個人票を作成し、5年間保存
労働基準監督署への
医師等の意見聴取(安衛法第66条の4、安衛則第51条の2)
結果報告(安衛則第52条)
・健康診断の結果に基づき、健康を保持するために
・常時50人以上の労働者
必要な措置について、医師等から意見を聴取
を使用する事業者に、
健康診断結果報告義務 就業上の措置(安衛法第66条の5)
・医師等の意見を勘案し、必要と認めるときは就業上
の措置を講じる
定期健康診断と事後措置の現状
 健康診断の実施率は全事業所で78.5%(1,000人以上の
事業所は100%)、有所見者に対する医師等の意見聴取は
39.0%(同90.6%) 労働安全衛生基本調査(H17 厚生労働省)結果
☆健康診断の実施から事後措置までを、努力義務である
保健指導まで確実に行うと、様々なメリットがある。
例)基礎疾患(高血圧・糖尿病等)がある場合、治療を行う
よう受診を勧奨して、病気をきちんと管理する
⇒動脈硬化、その先にある循環器疾患の予防ができる!
・十分に管理ができていない場合は、医師の意見を聞いた
うえで「長時間労働をさせない就業上の配慮」を行う。
医師等の意見聴取と就業上の措置
 健康診断の事後措置で最も重要!
 事業者が労働者の健康状態に応じた配置を行い、健康
障害悪化を予防するためのもの
 医師等に就業上の配慮の要否について聞き、就業制限
や休業が必要であるといった意見の場合、事業者は労
働者の実情を考慮したうえで、配置転換や就業時間の
制限などといった就業上の配慮の内容を決める
☆意見を聞く医師は産業医が望ましいが、産業医を選任して
いない小規模事業所などでは、地域産業保健センターなどの
機関を活用すると望ましい。
具体的な事後措置の進め方
①健康診断結果の受領
…医療機関で実施した結果は通常、本人用と事業場保管用の2種類が
ある。
→担当者が受け取り、受診者本人に返却し、保管用は産業医に確認
依頼するまで鍵つきの棚等に保管する。
※担当者は特定し、個人情報の取り扱いについて理解しておく。
②産業医による結果の確認と、就業に関する意見の記入
…産業医は就業制限や休業を要すると判断した労働者がいた場合、
まず本人と面談を行い、健診結果や受療状況を確認したうえで、事
業場に伝える就業上の意見の内容について同意を得る。その内容を
結果に記載するとともに事業者に伝え、就業上の配慮を検討・実践
する。医療機関への受診勧奨も併せて行う。
※就業制限が必要でも、受診者本人が意見の内容に同意しない場合
は、産業医の職務として意見を述べることが必要であると本人に説
明したうえで、事業者に意見を述べる場合もある。
健診からわかる様々な病気
健康診断受診のポイント
• 自分の健康について考える機会として健康診断を受診する。
• 健康診断は完璧ではなく、あくまでスクリーニングと捉える。
• 持病で通院中であっても、必ず毎年受ける必要がある。自己
判断で受診の中止はしない。
• 健診の直前でも何か自覚症状がある時は早めに受診すること。
• 健診を受けたら終わりではなく、結果を活用し自分の健康に
役立てる。
• 健康診断の受け方、結果について社内の担当者に相談する。
体の変化にいち早く気付くためにも、毎年の健康診断は意味がある。
また、検査値の見方を知ることでさらに有意義なものになる。
体は刻一刻と変化をしているため、自覚症状とともに健診の検査結果を
見て体からの警告を受け止める。
自身の健康のために年に一度の健康診断は必ず受ける。
健康診断に係る裁判例の紹介
帯広電報電話局事件
 頸肩腕症候群の精密検査を受診すべき旨の業務命令に、
労働者が従わなかったことを理由とする戒告処分の効力
が争われた事件
 法定外健康診断の受診義務、医師選択の自由に関する初
の最高裁判決
 判決は、この業務命令は就業規則及び健康管理規程に基
づき、労働契約の内容となっており、労働者は契約上そ
の内容の合理性ないし相当性が肯定できる限度において、
健康回復を目的とする精密検診を受診すべき旨の健康管
理従事者の指示に従うとともに、病院ないし担当医師の
指定及び検診実施の時期に関する指示に従う義務を負う
とした。
愛知県教育委員会懲戒処分取り消し請求事件
 市立中学校において、教職員定期検診の一環として、胸部
X線撮影を実施し、校長は教職員にその受検を命じたが、
病気治療で被ばく量が多く、これ以上の曝露を避けたい旨
の意思を表明し、受診しなかった。
→校長の受診命令に従わなかったことが懲戒事由に当たると
して減給処分
→その処分は違法として、教職員が訴えを起こした
 労働者は定期の健康診断を受けなければならない義務を
負っている(労働安全衛生法第66条5項)
 +上告人が当時、X線検査を行うことが相当でない身体状態
ないし健康状態にあったなどの事情もうかがわれない
→校長の命令は適法との最高裁判決
定期健康診断の事後指導に
ついて
健康診断後のフォローアップと
健康づくり
 体の状態を知ることはもちろん大切ですが、それ
だけでは健康づくりはできない。
 健康診断後の取り組みが大切!
 健康診断結果から、事業所の健康づくりの課題を
見出し、目的に応じた健康づくりを一歩ずつ始め
てみる。
地域産業保健センター
 従業員50人未満の事業場は、産業医の選任義務がない!
→定期健診後の保健指導や健康相談、職場巡視などの産業
保健活動を十分にできないことがある。そこで!
☆各地域の医師会では大阪労働局からの委託により
「地域産業保健センター」を運営し、このような事
業場に産業医を派遣して労働者に産業保健サービス
を提供している。
☆健康相談窓口・個別訪問指導・産業保健情報の提
供等の業務は無料!
相談内容や指導内容などについて知り得た情報は、個人情報
保護法に基づき、秘密厳守で取り扱われる。
産業保健推進センター
 小規模事業場産業保健活動支援促進助成金
…労働者数50人未満の小規模事業場の事業者が、他の事業
者と共同して産業医の要件を備えた医師を選任・契約し、
職場巡視や健康診断の結果に基づく保健指導、長時間労働
者への面接指導、健康教育、健康相談等の産業保健活動を
実施した場合、その費用の一部を3年間にわたって助成する
制度
→平成20年4月に産業医共同選任事業が改正され、従来申請
が不可能であった単独の事業場でも申請が可能になり、労
働者数で異なっていた助成額も定額となった。
※詳細は産業保健推進センターへお問い合わせください。
http://www.osakasanpo.jp/jyosei/j_00.html
中央労働災害防止協会
中小企業安全衛生推進センター
 小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業(たんぽ
ぽ計画)
…厚生労働省から委託を受け、小規模事業場の労働災害防止、 労働
安全衛生水準の向上を目指し実施。
 本計画は、小規模事業場の安全衛生活動を支援するための
システムで、 安全衛生のタネをまき、育てていくことを目
的とする。
 本計画が支援する事業所は、厚生労働省が選定し、中災防
の登録団体である。 登録団体は、専門家の助言を基に安全
衛生活動計画を策定し、実施する。 その費用は予算の範囲
内で中災防が負担する。
※詳細は中央労働災害防止協会中小企業安全衛生推進センターへ
お問い合わせください。
http://www.jisha.or.jp/tanpopo/outline.html
健康づくりの事例紹介
健康づくり事例①A工場の場合
 製造業
従業員数45名 平均年齢42.5歳
 定期健康診断実施後、以下の点に注目した。
①メタボリックシンドローム該当者が増えているこ
と
②腰痛や肩こりを訴えるものが多いこと
③50歳以上の従業員のつまづきによるアキレス腱断裂
などの労災が重なったこと
→高齢化による体力低下と運動習慣の減少が影響して
いるのではと考えられた。
そこで!
☆50歳以上の従業員に対して独自の項目による体力テ
ストと体力アップの運動指導を実践することにした。
健康づくり事例①A工場の場合 内容
 体力テスト→転倒・挟まれ・腰痛などが中高年層
に多いこと、また業務に支障の内容に効率的に実
施したいという現場の要望を踏まえ、THPの運動機
能検査(全身持久力(運動負荷心電図)・柔軟性・平
衡性・敏捷性・握力・筋持久力)を実施した。
 アンケート調査
→運動習慣・作業中の意識について
 体力テストの結果はその場で評価し、体力アップのた
めに手軽にできる運動や腰痛予防体操の方法を個々に
応じて指導
健康づくり事例①A工場の場合 意識づけ
 体力テスト結果とアンケート結果
 第一回目体力テスト
→参加者の体力は全国平均よりも上回ったが、上半
身の筋力は強いものの、下半身の筋力が弱く、つま
ずきや転倒・腰痛のリスクを高めている原因ではと
考えられた。
→アンケート結果では、持久力や柔軟性に関わる質
問で自信のない人が多く、肩や首・背中が凝りやす
いとの回答が半数以上あった。運動不足や作業姿勢
に問題があることが窺えた。
健康づくり事例①A工場の場合 意識づけ
 第二回目体力テスト(半年後)
→数値が改善するも、下半身の筋力の弱さは目立つ。
→アンケート結果では、運動習慣者が増加した。この
ことから、健康づくりへの意識づけができたと考えら
れる。
→「運動指導を受けた後、作業中の姿勢や作業方法で
労災予防のために気を付けた」との回答が
増え、多くの従業員に意識の上で大きな
変化があったことが窺える結果となった。
→併せて、メタボリックシンドロームの
保健指導対象者が減少した!
健康づくり事例①A工場の場合
今後の展開
 体力テストの結果は蓄積し、本人も指導者も経年
変化を見ることができるようにする。
 飽きないよう、体力テストの検査項目に加えて、
色々な測定を実施する。
例:骨密度測定・体組成
等
 メタボリックシンドロームの予防・改善のため、
さらなる健康意識の向上を狙い、従業員全員の
運動習慣の獲得を目指す。
健康づくり事例①B会社の場合
 運送業
従業員数30名 平均年齢45.5歳
 定期健康診断実施後、以下の点に注目した。
①受け取った健診結果を未開封のままにしている従業
員が多い
②平均年齢が上がり、有所見率も上昇傾向にある
③喫煙率が約70%と高い
→従業員一人一人が健康に対して高い関心を持つことが
できるような支援が必要
→従業員へのアンケート調査の結果、要経過観察項目を
認識している者は39%にとどまっていた。
☆健康への関心および理解を深めるきっかけとして、定
期健康診断実施時の情報提供を実施
健康づくり事例①B会社の場合 内容
 情報提供のルール
①所要時間を最小限に ②従業員の要望や必要性に応じて
③情報の質や量は均一 ④プライバシーが守られるようにす
る⑤費用を最小限にとどめる
 取り組み内容
・健診の流れを見直し、時間待ちの多い診察前の時間の2分を
有効利用することとした
・事業所特性として、男性が多い、平均年齢が上昇している、
喫煙率が高い、肥満、飲酒機会の多さ、がある。このことに
加えて、「健康日本21」の掲げている目標を踏まえながら提
供する情報のテーマは①喫煙②摂取カロリー③飲酒④健康習
慣の4種類とし、希望する情報を選択してもらう。
・何も選択しない従業員には健診結果の味方を説明
・資料や教材は手作り(紙芝居方式)
健康づくり事例①B会社の場合
実施状況
 実施状況
→4テーマのいずれかを選択した従業員は73%
多く選ばれた順で喫煙(22%)、健康習慣(18%)、摂取カ
ロリー(17%)、飲酒(16%)
→選択しなかった従業員の理由としては、「興味のある
コースがなかった」「時間をかけたくなかった」
「知っている内容だった」等が挙げられた
一方で、「今後も続けてほしい」「テーマを増やして
ほしい」等の潜在的なニーズを確認できた。
 評価
→情報提供後の調査
「わかりやすかった」98%!
「役に立った」96%!
健康づくり事例①B会社の場合 実施状況
 調査結果より
→健診時という限られた時間の中で、健康に関心を
持ってもらうための有効な支援となったと考えられ
る。
 今後は、情報提供後のアンケート結果により、新た
に「ストレス」「メタボリックシンドローム対策」
「肩こり」を追加した7テーマで実施予定。
 毎回計画を見直し、実施を評価して、従業員のニー
ズや時代の変化に応じて内容の変更や追加修正を行
い、健康支援活動を充実させることが目標
健康増進は一日にしてならず!
 何から始めたらいいか分からない?
 マンパワーの確保が難しい?
☆大丈夫です、まずは皆様の事業所の課題を見つけ
ましょう!
☆その課題解決をどのようにしたらいいか、分から
ない場合、地域産業保健センター・産業保健推進
センター・当センターにご相談ください!
大阪労災病院勤労者予防医療センター
 働く人々の身体と心の健康をサポートします!
 当センターは勤労者と企業の方へ、生活習慣病や運動不
足・栄養・禁煙・腰痛などの健康管理や、仕事のストレ
ス、対人関係の悩みなどのメンタルヘルスケアを行って
おります。
 事業所に出張いたします!
☆健康測定と結果説明
☆作業による腰痛対策
☆禁煙教室の開催 等
 TEL :072-252-3561(内線3581) 職場の健康管理を医師・
保健師・理学療法士・管
 FAX :072-252-1360
理栄養士がフォローいた
します!
 HP :http://orh-yobou.jp/