Justice What*s the Right Thing to DO? by M. J. Sandel

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Transcript Justice What*s the Right Thing to DO? by M. J. Sandel

1
『世界市民』 by 矢根 真二 ([email protected])
資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/water/
<9>
「仮想水」輸入大国日本
⇒ Y <第2章>
本日の課題
■ 安い牛丼を食べて良いのか?
1 仮想水(ヴァーチャルウォーター)で見た日本
2 水の不足と仮想水輸出
3 自由貿易の相互利益
例題 最大多数の最大幸福?
2
 水問題の解決(無駄遣いしない??)は,最大多数の最大
幸福である  Y(10, p.36) & サンデル(10)
1. この考え方は,何主義? どんな原理?  <4>
2. アナタは,この原理に賛成?
3. マンションに爆弾を仕掛けたテロリストの拷問に賛成?
4. 白状しないテロリストの弱みである娘の拷問にも賛成?
1 「仮想水」で見た日本
3
ヴァーチャル・ウォーター(仮想水)
1.

= 輸入財を自国生産したと仮想した場合に要する水量
∴ 食料等を通じた「水の輸出入」
2.

∵ <7> 農業が水の用途の7割
日本は,世界最大の仮想水輸入国
3.

∵ 日本は農産物の輸入国  食糧自給率 ≒ 4割

ただし,カロリーベースの日本固有の「特殊な指標」
参考: 不思議な農林水産省の食糧自給率
4
カロリーベースの食糧自給率の問題
1. 日本の農林水産省だけの指標
 卵でも10%(飼料) but 肥料は考慮外,野菜・果物は低評価,
食品廃棄後の摂取カロリーなら上昇,当局の計算法自体も
閉鎖的
2. 必ずしも国民の健康を反映しない
 輸入ゼロ ⇒ 飢餓? but 自給率100%
3. 食料安全保障策としても無意味
 不可欠なエネルギー自給率は4%
食品廃棄物の仮想水
5
日本の食品系廃棄物 ⇐ Y(09, p.33)
食品総量の2割
=仮想水=年間2400億トン
=国民1人1日当たり500ℓ > 生活使用量
食品系廃棄物の削減 ⇐ Y(09, p.33)
1.
2.

食べ残しをしないこと? (p.33,36)
But 「食品流通・販売マネジメントの改善」こそ重要?
例: コンビニ  フランチャイザー(本部)  法
牛丼一杯で2トンの仮想水
6
穀物と肉の仮想水 ⇐ 中村(04, 8章)
穀物1kgの仮想水 (m3 =1000ℓ = トン = 1000kg)
 とうもろこし:1.9, 小麦:2, 玄米:3.3
2. 肉1kgの仮想水 ⇐ 必要な飼料
 鶏肉:4.5, 豚肉:5.9, 牛肉:20.7
3. ファーストフードの仮想水
 ハンバーガー1個:1, 牛丼1杯:2
1.
Q1 仮想水の基礎知識と規範的判断
7
1. 仮想水の量は?
1. 玄米1kg: 330g, 33kg, 3300kg, 33t
2. 牛肉1kg: 200g, 20kg, 2000kg, 20t
3. 牛丼1杯: 200g, 20kg, 2000kg, 20t
2. 仮想水の最大輸入国民として,牛丼は控えるべきだと思
うか? なぜ?
A1 事実判断と規範的判断
8
1. 3300kg, 20t, 2000kg
2. 仮想水の輸入は,水の節約 vs. <2>市民派
1. Q2 ⇒ もしバーロウのように途上国が国際機関の圧力
によって輸出を無理強いされていたとしても,日本の輸
入先は米・加・豪だから,No?
2. もちろん自発的取引なら積極的に,No
  2&3 自由貿易の利益: 両国の余剰&同感↑
 ∴ 事実判断力によって,価値判断も異なりうる
2 水の無駄遣いと仮想水の輸出
9
水の無駄遣い? ⇐ <2> バーロウ(08, pp.35-8)
1.
湛水(たんすい)灌漑による農業
水の半分以上が漏出・蒸発
2.
バイオ燃料(エタノール)
とうもろこしもエタノールも水集約的
仮想水輸出への疑問
1.
2.
インドやタイ ⇐ 世界銀行等の圧力
では,米国やオーストラリアは???  事実説明力への疑問
水不足の先進国が仮想水輸出する理由
10
米国の場合 ⇐ <1> ミラー (10, 2,8,23章)
1.
農業用水は,補助金漬けで安価
 他の用途の1/50 の価格 (p.90)
2.
農業自体も,年$400億の補助金漬け

3.
それでも,EUや日本よりマシ? (p.231)
エタノールにも,年$30億を補助 (p.35)
∴ 水や農産物が安価  政府:補助金
 農家は生産インセンティブ but なぜ政府が補助?A5
Q2 バーロウ vs. ミラー(10)
11
1. 水の無駄遣いに関し,両者に共通する事実判断は?
2. 水不足国が仮想水を輸出する理由の両者の相違は?
3. その結果,対策は異なるだろうか?
4. アナタはいずれの立場に同意する? その理由は?
上記問題は,アナタの判断力(見識)の向上度のチェック
<1,2> 基礎文献: 政策・価値判断 事実判断 現実
A2 環境・市民派 vs. エコノミスト
12
1. 湛水灌漑とエタノールは,かなりの水の無駄遣い
2. バーロウ: 途上国は国際機関の圧力,先進国は???
ラー: 先進国は(人為的な)低価格,途上国も低価格?
ミ
3. かなり異なる ⇒ 予想される政策は?
例  バーロウ: 無駄遣いの禁止,ミラー:水価格優遇の廃止
4. 私見: 事実の「説明力・予測力」でミラー
1. 先進国の輸出理由を説明できない
2. しかも 圧力をかける国際機関に有力な輸出国が含まれている
3 自由貿易による相互利益
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自発的取引 ⇒ 相互の(事前予想)余剰↑ <5>


∵ 「余剰↑」と予想しない限り,取引しない
∴ 情報不足等の結果,(事後的な)余剰↓もありうる
自由貿易 ⇒ 相互利益
1.
2.
3.
国内価格 > 国際価格 ⇒ 輸入誘因
国内価格 < 国際価格 ⇒ 輸出誘因
∴両国共に,社会余剰が増加する(ゼロサムゲームではない)
  自由な取引は,双方に正の余剰(=便益ー費用)
Q3 貿易する理由と利益
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1. 同質の米に,同じ需要曲線を持つ閉鎖的なA国とJ国だが,
各小国内の競争市場価格は200円と400円。いずれの国
の農業が生産的?
2. 国際価格が300円の場合に,両国が自由貿易すると,輸
出するのは?
3. その結果,国民が得をする国は?
A3&Q4 小国の自由貿易の相互利益
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1. 価格の安いA国(Unless 共に補助金等がない)
生産的 = 生産量1単位の費用が低い
2. 国際価格300円で輸出したい: A国 (\200)
300円で輸入したい: B国 (\400)
3. 自由貿易では両国民が得をする
 = 両国共に,社会余剰が増大する = <5> 自由競争市場
 両国民の社会余剰・満足度↑  両国共に効率化
4. ★ 上の1&3を図示すると?
A4-1 貿易前の両国の米市場
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A国の国内価格
J国の国内価格
価
格
価
格
400
400
300
200
J
300
200
A
数量
⇒ <5>各国の消費者余剰&生産者余剰は?
数量
A4-2 自由な輸出入 による社会余剰の増加
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J国の均衡: J⇒E
A国の均衡: A⇒E
価
格
400
300
200
輸出
E
価
格
400
300
200
A
J
E
輸入
数量
⇒ 両国共に社会余剰は増加: 三角形○●●
国際価格
数量
Q5 農産物の輸入自由化に反対する農家
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自由貿易は両国の社会余剰を増加させるのに,輸入自由
化に反対する生産者は少なくない。その理由は?
1.
2.
3.
輸入国の社会余剰の増加では,消費者余剰と産者余剰はどう
変化?
消費者の方が多数なのに,その影響力が小さい理由は?
監督官庁はいずれの味方? なぜ?
 「農産物の輸入自由化に反対する農家」以外に,同様の
論理が妥当しそうな例は?
A5 「政治の経済分析」の基礎
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民主主義の政治経済学 ⇐ <1> ミラー(10,2章)
消費者余剰↑ but 生産者余剰↓
 輸出の場合は逆 ⇒ 輸出国の生産者はむしろ積極的!
2. 多数 but 無関心 (⇐ 合理的無知)
  消費者1人当たりの便益は,費用に比べて小さい
3. 利益団体としての生産者の影響力は,大きい  政府補助
 キャプチャー理論: 集票・献金・天下り
1.
 自由貿易問題以外でも,規制緩和に反対するタク
シー業界等の「自由参入への規制緩和」反対一般
本日の要点&次回の準備
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1. 日本は「仮想水」輸入大国

食料輸入国,牛丼1杯 = 2トン の水
2. なぜ仮想水を輸出(輸入)するのか?
国際価格の方が,高い(低い)から
3. ∴むしろ自由な輸出入は,両国を豊かにする
4. ただし,食品廃棄物(2割)のマネジメントは急務
 次回: 水をめぐる世界の紛争? Y 4-5章
例解 サンデルによる解説
21
1.
2.
3.
4.


<4> 功利主義(ベンサム)  サンデル(10, 2章)
If Yes, 純粋形では,効用の総和の最大こそ唯一の基準
If Yes, 多数の命 > 1人の命
同上(無実であろうと無関係)
ベンサムの貧民管理
 今日の水・所得分配?