Transcript 証券会社の収益構造
第2章(1)証券会社の業務 ○証券会社の収益構造 • その他手数料、トレーディング収益、募集手 数料、委託売買手数料の割合が大きい – その他手数料:投資信託の信託報酬(事務代行 手数料) 、M&A手数料、 顧客資産の投資アドバ イス・一任運用からの手数料 – 委託売買手数料の割合は、規模の小さい証券会 社程大きい • 引受手数料の割合はそれ程大きくない – 大手証券会社程大きい 1 % 証券会社の収益構造 40 35 その他手数料 30 トレーディング 損益 募集手数料 25 20 委託売買手数 料 金融収支 15 引受手数料 10 5 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 東京証券取引所「東証総合取引参加者決算状況」 2011 2 ・ 株式の委託売買手数料率の推移 % 0,25 0,2 0,15 0,1 0,05 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 東京証券取引所「東証総合取引参加者決算状況」 3 ・ 兆円 投資信託残高(公募・私募)推移 140 120 100 80 60 40 20 0 投資信託協会 4 ○インサイダー取引の摘発体制 • 証券取引等監視委員会が取引の審査、不公正取 引の摘発、課徴金納付命令の勧告(内閣総理大臣 及び金融庁長官に)を行う。 「証券取引等監視委員会の活動状況」 ・上記審査案件の中で課徴金納付命令勧告が行われた件数 22年度:20件、23年度:15件 5 ・証券取引等監視委員会の審査とは別に(の前に)証券 取引所が常時売買取引を監視している。 インサイダー取引 ① 調査 銘柄抽出 ・法令上の重要事実が公表された銘柄 ② 調査 株価操作 ・株価・売買高の動向に不自然な形態が 認められた銘柄 ・関係各部署等から情報がもたらされた 銘柄 ・株価、売買高の推移状況の分析 ・売買手口の偏向性の有無の調査 ・委託者名の把握(取引参加者等への照会) ・上場会社に重要事実の公表に至る経 緯を照会 ③ 審査 銘柄抽出 ④ 審査 ・更に詳細な調査が必要であると判断される場合 ・注文の受託・執行の経緯等、委託者の詳細な内容(属性・取引内容、発行会社との関係) について照会・分析 ・会社関係者等の取引の有無を調査 ⑤ 処理 ・不公正・不適正行為の有無の判断 ・処分・注意喚起等 ・証券取引等監視委員会へ報告 東京証券取引所 6 ・東京証券取引所の売買審査件数 7 (2)証券業の再編と新規参入 ①大手証券会社の再編 • 戦後~1997年まで大手4社(野村・大和・日興・山一)体制 – 97年11月:山一証券経営破綻 – 98年6月:日興・トラベラーズ(後のシティグループ)提携 • リテール:日興コーディアル証券、ホールセール:日興シティグループ証券 – 98年7月:大和証券・住友銀行提携 • リテール:大和証券、ホールセール:大和証券SMBC(大和と住友の合弁) – リーマン・ブラザーズの破綻 • 英銀バークレイズと野村証券が分割して買収 – ベアー・スターンズとメリル・リンチはそれぞれ、大手銀行のJ.P.モルガ ン・チェースとバンク・オブ・アメリカに救済され、吸収される。 – ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは独立を維持しているが、 銀行持株会社に転換 8 • 98年の再編で、日興も大和も財務基盤強化と • 野村証券: • 2008年1月:不正会計問題による日興の信用不安という状 況の下で、シティが日興を完全子会社(株式交換方式) • 08年9月:野村証券、リーマン・ブラザーズの欧州・中東部 門とアジア太平洋部門を買収 • 09年5月:シティ、経営危機により日興証券を売却、三井住 友銀行が5450億円で買収(SMBC日興証券) – 日興コーディアル証券と日興シティグループ証券の株式・債券引受 部門を買収 • 09年9月:三井住友銀行、大和証券は大和証券SMBCの合 弁解消 9 • ホールセール業務: • リテール業務: • ホールセールとリテールとの分離 – アメリカではホールセール専門の証券会社(インベストメン ト・バンク)とリテール専門の証券会社に伝統的に分かれ ている • ホールセールとリテールとが分かれている理由 – 業務・報酬体系・組織構造の違い→文化の違う組織を1つ に統合することのデメリット – ホールセール:専門性が強く商品(業務)別縦割り組織、フ ラットで機動性の高い組織、実績主義の報酬体系 • cf. 加野忠『金融再編』文芸新書 第6章ウォール街文化をどう迎 えるか 10 • ホールセール業務とリテール業務 – 外資系証券:日本では基本的にホールセールのみ – 日系大手証券: • 大和:ホールセールとリテールを分離していたが、住友銀行 との提携解消に伴い、2012年4月に両部門を一体化 • 野村:これまでは一体、リーマン買収に伴い専門職向け人事 報酬体系を導入 – ホールセール部門・管理部門の社員は人事報酬制度に関し、 従来型かグローバル型社員(業績連動型報酬、部門間人事異 動なし、企業年金なし)かを選べる – 銀行系証券: • みずほ、SMBC日興は共に一体 – 銀行系+外資 • 三菱UFJモルガンスタンレー証券:一体 – 但し、機関投資家向け証券売買とトレーディングはモルガンス タレーMUFG証券が担う(世界的に一体運用するため) 11 ②ネット証券 • ネット取引による格安手数料の提供 – ネット証券の登場による手数料率の急低下 • 売買代金の 0.03~0.1% • 野村での取引:売買代金100万円で1.16%(野村ネット&コール 取引:0.1%) • 個人の株式売買: – ネット取引比率の急上昇、現在、個人取引では90%超 • ネット証券以外の証券会社の対応策 – 資産管理型営業:顧客の資産状況・投資目的に合わ せた資産運用アドバイスの提供 – ラップ口座:証券会社が顧客の大まかな指示(要求利 回り、リスク許容度)に基づき預けられた資金を運用、 手数料は取引金額とは関係なく残高の一定比率 12 ・ % 株式の委託売買手数料率 の推移 0,25 0,2 0,15 0,1 0,05 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 日経06.11.18. 東京証券取引所「東証総合 取引参加者決算状況」 13 ・ ・ ・信用取引:投資家が証券会社から株式の買付資金(売付株券) を借りて、売買すること。 ・ネット取引の62.5%(11年度、過去4年平均で62.6%)が信用取引 cf. 個人の株式取引全体の中での信用取引の割合:59.4%(11年) ・ネット証券会社の金融収支比率 (ネット証券の場合、金融収支のほとんどが信用取引関連) 松井 楽天 SBI 証券会社全体 2007年度 09年度 40% 26% 10年度 30% 11年度 31% 29 28 7 22 23 7 20 24 7 22 22 5 14 – 5社に集中、アメリカでも同様 – 寡占化の理由 • 一旦知名度の高いネット証券会社ができると、 – 09年10月マネックス証券とオリックス証券が合併発表:システ ム統合効果 • 野村証券は系列のネット証券会社ジョインベスト証券(06年設立) を09年11月に吸収合併:ネット証券としての生き残りの難しさ • 株式売買サービスの差別化: – 定額手数料、無期限信用取引、少額取引の手数料無料化(松井) – PTSによる夜間取引サービスの提供 → 2011年には撤退 • 提供サービスの多様化 – 投信販売、為替証拠金取引FX、海外ETF(指数連動型上場投信)の販 売 15