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平成24年基礎微生物学
第2回
平成24年4月18日
担当;前田伸子
微生物とヒトとの関係は?
ヒト;宿主、Host
宿主と寄生体の関係
常在微生物
●共生関係
●偏共生関係
●寄生関係
病原微生物/病原体
宿主と常在微生物の関係
●共生関係
●偏共生関係
原則としてヒトに有利に働くが
しかし、例外もある!
→日和見感染
感染症の成立
寄生体側;病原性、ビルレンス、毒力、菌力
微生物
寄生体
ヒト
宿
主
宿主側;生体防御力、免疫力
感染と発症の違い
●感染;微生物が宿主に付着し、その場
に定着、増殖した状態
*感染と汚染との違いは?
●発症(発病);感染後に宿主に病的な
変化や不都合が生じた状態
*不顕性感染とは?
感染が発症に至る経緯
潜伏期
侵
入
経
路
病
原
体
感染経路
発
症
*治療
*免疫
死
亡
治
癒
*症状
*排菌
感染の成立
不
顕
性
感
染
慢
性
化
健
康
保
菌
者
病
後
保
菌
者
感染と発症に関わる因子;
宿主側
●感受性;年齢、性、種(人種)
●生体防御力
非特異的 : 自然免疫
特異的:獲得免疫
宿主の生体防御力
ヒトを含めた全ての多細胞生物はもとも
と微生物が存在する環境に生まれた
その過程で自分自身(自己)を守る
システムを作りあげた
2年生後期;基礎免疫学
4年生前期;生体防御の仕組み
宿主の生体防御力の種類
非特異的感染防御機構;
第1のバリア
●体表および体腔表面のバリア
*皮膚組織/粘膜上皮の物理的バリア
*涙、尿、唾液などの洗い流し作用
*気道粘膜の繊毛による排除作用
*常在微生物叢による排除作用
非特異的感染防御機構;
第2のバリア
●自然免疫
*細胞性因子;食細胞
*液性因子;体液中の抗菌/殺菌物質
自然免疫の細胞因子
●おもに外来から侵入した異物に対応す
る;食細胞
*白血球;好中球、好酸球、好塩基球
*マクロファージ
●内部で異物化した細胞に対応する;
*ナチュラルキラー(NK)細胞
*γθT細胞
貪食細胞
リゾチーム
ラクトフェリン
ディフェンシン
自然免疫の液性因子
●体液中の抗菌/殺菌物質
*補体
*リゾチーム
*ラクトフェリン/トランスフェリン
*ディフェンシン
補
体; complement
血清中に存在する9種(C1~C9)と
11成分、合計20種類のタンパク
●特異的、非特異的の両面から生体防に
関わる。
●病原体などを殺したり、炎症反応を起
こす。
獲得免疫
非特異的感染防御機構を突破した
微生物に対して、それを特異的に
認識し、排除するシステム
●細胞性免疫
● (体)液性免疫
獲得免疫に関わる
細胞性/液性因子
●細胞性因子;
・樹状細胞/マクロファージ
・リンパ球(T細胞、B細胞)
●液性因子;
・抗体
・サイトカイン
細胞性免疫
細胞が中心となる免疫反応
ターゲット;寄生虫、真菌、ウイルス感染細胞、
結核菌などの細胞寄生性細菌、移植片
・比較的大きな微生物
・異物化した宿主の細胞
・細胞寄生性細菌
(体)液性免疫
抗原に対応して産生された抗体が中心と
なって起こる免疫反応
ターゲット;細菌毒素や酵素、細胞外寄生細菌(結核
菌、チフス菌、リステリア菌など以外のほとんど全
ての細菌)
・低分子可溶性抗原
・細胞外寄生細菌
抗体=免疫グロブリン
●IgA;体液(唾液、乳中、涙など)に多い
●IgE;花粉症などのアレルギーに関係する
●IgD;働きが明確でない
●IgG;血清中にもっとも多く生体防御の中心とな
る
●IgM;感染初期に産生され、一部の活性は
IgGより高い
感染と発症に関わる因子;
寄生体(病原体)側
●病原性;微生物が感染症(病気)を起こす性質
・付着/定着性
・毒素産生性
・生体防御に対する抵抗性
・酵素産生性
・その他
●菌 数;実際に宿主に感染症を起こすには病原
性だけでなく、一定以上の菌数が必要となる
発症に必要な菌数
(経口的)
細
菌
菌
コレラ菌
1億個(108)
サルモネラ菌
チフス菌
数
10万〜100万個(105~6)
1000万〜1億個 (107~8)
腸管出血性大腸菌
10個
病原性因子
1)付着/定着に関するもの
2)組織侵入性と寄生性
3)食細胞への抵抗性に関係するもの
4)鉄の獲得能力に関係するもの
5)毒素産生性
6)酵素産生性
1)付着/定着に関するもの
病原性を発揮するためにはまず宿主の
細胞表面に付着しなければならない
付着とそれに続く増殖=定着
●線毛
細菌線毛のアドヘジンと宿主側のレセプター
●線毛以外の細菌細胞表層の物質
●グラム陽性菌のリポタイコ酸(LTA)
● Mタンパク;溶血性レンサ球菌の細胞壁構造の一部。
2)組織侵入性と寄生性
全ての病原体が生体内に侵入するわけではない。
●細胞非侵入性;粘膜表層に定着し、それ以上侵入しな
いもの;毒素や酵素の働きにより宿主に感染症を起こす
●細胞侵入性;粘膜に定着後、上皮細胞の取り込みを利
用し細胞内に入るもの; 上皮細胞に侵入し、さらに上皮
細胞を出て基底膜に達し、おもにそこで増殖あるいは
組織内、血管内やリンパ管内に侵入する。
●細胞内寄生性;食細胞に貪食されず、逆に食細胞を利
用し体のあちこちに移動するもの
細胞内寄生性の例
細胞壁か細胞壁の外側に食細胞の貪食作用に
抵抗する物質がある
3)食細胞への抵抗性に
関するもの
細菌細胞表層に存在する構造物
●莢
膜
●溶血レンサ球菌のMタンパク
●結核菌表層の厚い脂質
食細胞による食菌作用に抵抗
する細菌の表面構造
ないもの=貪食
あるもの=貪食に抵抗
4)鉄の獲得能力
ヒトの血漿中の鉄の総モル濃度は10-6Mだが細菌が
利用できる遊離濃度は10-18Mしかない
これを宿主から奪い取るため『鉄獲得能力』が
重要な病原因子となった!
血球のヘモグロビンはヘム(鉄とプロトポル
フィリン)とタンパク(グロビン)から成る
溶血毒はヘモグロビンから鉄を奪う
5)毒素産生性
①外毒素;細菌が菌体外に分泌し生体に毒性に働く
物質
②内毒素;グラム陰性菌の細胞壁の
構造の一成分(外膜のリポ多糖体)
①
外毒素
タンパクなので一般的なタンパクの性質
を示す
●易熱性(熱に弱い)
●抗原性が強い
●毒性が強い
●毒性の種類;細胞毒、神経毒、腸管毒、
スーパー抗原となる毒素
スーパー抗原;免疫とは無関係にリンパ球を活性化し、
サイトカインを産生する
外毒素の種類とその作用
種類
細菌種;毒素
細胞毒
黄色ブドウ球菌;α/β毒素
化膿性レンサ球菌;ストレプトリジンO
ウエルシュ菌;α毒素
神経毒
破傷風菌;破傷風毒素
ボツリヌス菌;ボツリヌス毒素
腸管毒
コレラ菌、下痢性大腸菌、黄色ブドウ球菌
(エンテロトキシン) ウエルシュ菌
スーパー抗原
になる毒素
黄色ブドウ球菌;毒素型ショック症候群毒素
(TSST-1)
リポ多糖体(LPS)
P31
リポ多糖体lipopolysaccharaide(LPS)
の
内毒素活性
1
2
3
4
5
6
7
8
発熱因子
シュワルツマン反応
血管の傷害・血圧低下
免疫担当細胞であるB細胞の活性化
炎症/免疫担当細胞であるマクロファージの活性化
補体の活性化=炎症の惹起
抗腫瘍作用
骨吸収作用;歯周病との関連
外毒素と内毒素の比較
外毒素
由来
細菌の菌体内で産生され菌体外に分泌
成分
タンパク質
熱感受性
易熱性
毒性
強い(μg)
菌種により作用異なる
臓器特異性に作用
抗原性
強い
ホルマリン
による無毒化
できる
トキソイド
内毒素
グラム陰性菌の外膜
リポ多糖体
耐熱性
弱い(mg)
菌種による差ない
ほどんどない
できない
トキソイド;外毒素を無毒化し、抗原性のみを残したもので
外毒素による疾病を予防/治療するために使用
6)酵素産生性
病原体が産生し菌体外へ放出する
酵素は宿主の組織を破壊し病巣
を拡大する作用があり、毒素を
区別化できないこともある
病原性細菌が産生するおもな酵素
●ヒアルロニダーゼ;細胞外基質であるヒアルロン酸を分解
●コラゲナーゼ;生体の構成タンパクであるコラーゲンを分
解
●スタフィロキナーゼ;プラスミン活性によりフィブリンを
分解
→組織破壊=病巣拡大
●免疫グロブリン分解酵素;免疫グロブリンを分解すること
により生体防御作用から回避
●DNA/RNA分解酵素;核酸を分解することにより細胞を傷害
おもな感染経路
感染経路による分類①
●感染源からの直接感染=接触感染
*性行為感染症;AIDS、梅毒、淋病など
*飛沫感染;呼吸器感染症
*人畜共通感染症;オウム病、野兎病、
狂犬病など
感染経路による分類②
●介在物による間接感染
*経口感染;消化器感染症すべて
*ベクターによる感染;発疹チフス、
日本脳炎、ペスト
*空気感染;結核、レジオネラ症など
ベクター;吸血昆虫(ノミ、ダニ、蚊)が媒介する
空気感染;空調設備から(レジオネラ菌)
結核菌は直接感染だけでなく、乾燥に強いので、
長く空気中にとどまれる
感染様式①
垂直感染と水平感染
●垂直感染;母親から子供へ
*胎盤経由;梅毒、風疹、AIDS、B型肝炎
*産道経由;AIDS、B型肝炎
*母乳経由;成人T細胞白血病
●水平感染;ヒトからヒトへ
*呼吸器感染症
*消化器感染症 など
感染様式②
局所感染と全身感染
●局所感染;侵入した病原体が限局した
局所のみに定着し感染症を起こす
●全身感染;侵入した病原体が全身に広
がり感染症を起こす
特殊な感染症
特殊な感染症の種類
●内因感染(症)
●日和見感染(症)
●院内感染
内因感染
常在微生物が原因で起こる感染症
●潜伏期が明確でない
●宿主の抵抗力の減弱が引き金となる
●免疫による治癒がみられない
●感染症の原因となる微生物の特定が困難
である
日和見感染
宿主の抵抗力が減弱したことに
つけこんで通常は感染症を起こす
力のない(弱い)微生物が起こす
感染症
日和見感染になりやすくなっ
た宿主を易感染宿主と呼ぶ
免疫機能が健常な場合
Our friendship is going well!
Yes indeed!
免疫機能が破綻すると
HELP!!!
We are not friend any more!
HELP!!!
HELP!!!
HELP!!!
易感染宿主の背景因子
●血液疾患
白血病、ホジキン病
●先天性免疫不全
無γグロブリン血症、重症免疫不全
好中球減少症、補体成分欠損症
●後天性免疫不全
HIV感染症/AIDS
●代謝異常
糖尿病、腎透析
●医療器具の使用
血管/尿道カテーテル、気管チューブ
●局所の傷害
重度の火傷/外傷、広範囲の外科手術
●その他
高齢者/新生児
易感染宿主の特徴
●日和見感染を発症しやすい
●反復感染しやすい
●感染症が長引きやすい
●感染症が治りにくい
●感染症が重症化しやすい
日和見感染病原体
●細菌;黄色ブドウ球菌/表皮ブドウ球菌、腸球菌、
大腸菌、クレブシェラ、緑膿菌、セラチア、
レジオネラ
●真菌;カンジダ、ニュモシスティス・カリニ、
アスペルギルス
●ウイルス;水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペス
ウイルス、サイトメガロウイルス
●原虫;トキソプラズマ
院内感染
入院患者、外来患者、医療従事者、
病院関係者などが病院内で感染し、
発症すること
これに対し
病院外で起こる感染症は市中感染症
院内感染の種類
●内因感染;患者自身の常在微生物によって起こ
る。
●外因感染;食物、物品、空気や水などに由来す
る微生物によって起こる。
●医原性感染;医療行為が直接の原因で起こる。
●病院内流行;入院患者が伝染力のある病原微生
物感染症を起こした結果、病院内で感染症が流行
する。
院内感染が起こる要因
●入院患者側の要因=易感染性が高まっているか
ら
*基礎疾患;代謝異常症、肝機能障害、免疫不全
*新生児/未熟児
*化学療法;ステロイド剤、免疫抑制剤、抗がん
剤
*広範囲の侵襲;外科手術、外傷/火傷
院内感染が起こる要因
●微生物側の要因
*常在微生物叢の存在
*病院内環境
*抗菌剤に耐性の微生物が集積しやすい
*常用消毒剤に抵抗性の微生物が集積しや
すい
院内感染原因細菌として
特に重要なもの
●メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;MRSA
●バンコマイシン耐性腸球菌;VRE
●Pseudomonas aeruginosa;緑膿菌;
Pseudomonas aeruginosa
● Serratia marcescens
菌交代症/歯性菌血症/病巣感
染;後期の口腔微生物学で講義!
プレ/ポストテスト4/18/12 正しいのはa間違っているのはbにマークしてください。
① ヒトと常在微生物の関係は共生関係である。
② 原則として常在微生物は感染症を起こさない。
③ 感染とは微生物によって病的な変化が起こった状態を指す。
④ 不顕性感染したヒトから他のヒトへ感染は起こらない。
⑤ 健康な皮膚や粘膜は感染防御のバリヤーになりうる。
⑥ 食細胞は自然免疫の細胞性因子である。
⑦ 食細胞には特別な異物認識機構が存在する。
⑧ 補体は獲得免疫にのみ関係する液性因子である。
⑨ 免疫グロブリンには5つのクラス(5種類)がある。
⑩ 感染の成立には一定以上の菌数が必要である。
プレ/ポストテスト4/18/12 正しいのはa間違っているのはbにマークしてください。
⑪ 線毛以外に宿主の付着に関連する物質は存在しない。
⑫ 結核菌は細胞内寄生性細菌である。
⑬ 莢膜は細菌を宿主の食細胞の攻撃から守る。
⑭ 外毒素はホルマリンにより無毒化できる。
⑮ 内毒素は外毒素よりも毒性が強い。
⑯ 垂直感染はヒトからヒトへの感染様式を指す。
⑰ 内因感染は外来の病原体によって起こる感染症の総称である。
⑱ 日和見感染は健康な宿主に起こることが多い。
⑲ 易感染宿主の感染症は治りにくい。
⑳ 病院内で新たに発生した感染症を院内感染と呼ぶ。