Transcript 地域メディア論の理論
地域メディア論の理論 地域メディア論の系譜と新しい視点の提起 ■初期地域メディア論 1980年代以降のマスメディア批判の学問 田村紀男(東京経済大学コミュニケーション学部) 『地域メディア〜ニューメディアのインパクト〜』 (1983) 『【新版】地域メディア』(1989) 『現代地域メディア論』(2007) ■初期地域メディア論 6つの論点 ①マスメディア研究からの系譜 ※契機として、「北米日系新聞の発達史研究」というローカル 新聞(マス媒体のローカル版)の発見。 「マス(大衆)コミュニケーション」があるなら、 「地域コミュニケーション」があるはず。 マス= ブロードキャス ティング ナロウキャスティング 地域コミュニケーション ■初期地域メディア論 ②「非マスコミ」の発見 ※ミニコミなど、ジャーナリズムを掲げる知識人のミニコミ以外 の、大衆的な読者のための地域ペーパー ミニコミ(知識人) ジャーナリズム 非マスコミ 「無思想の思想」 例:マメ新聞、ローカル新 聞、商業メディア ■初期地域メディア論 ③コミュニケーション・ひろば思想 コミュニティ・メディア=省資源・反公害の時代のコミュニケーション思想 (広義の)ひろば(の思想) (オープンスペース=都市余白) ひろっぱ 計画的な広場・公園 ひろば:コミュニケーションの一つの手段=チャンネル ひろば:コミュニケーションの機能 ①娯楽の機能 ②情報伝達の機能 ③教育の機能 ○組織化・安全・自然保護の機能 人びとが結びつき、協力し語り合うオープン・スペース コミュニケーション・メディアとしての空間占有 ■初期地域メディア論 ④背景としてのコミュニティや地域の焦点化 1970〜1980における、地方自治、地域主義、コミュニティ政策 のブーム 玉野井芳郎『地域主義の思想』(1979) 松原治郎『コミュニティの社会学』(1978) 東京中野区の住区協議会構想(1975) コミュニティ・ターン (都市における新しい 共同体・家郷の創出) 基本的内容 ①共同性の醸成 ②コミュニティ形成 ③共属感情 (We-feeling) ■初期地域メディア論 ⑤近隣・自治体のコミュニケーション・メディア 近隣 基礎自治体 県域 「中間媒体」(マスと個人の中間) 情報メディア媒体 ローカル紙・行政広報・PR紙 フリープレス・タウン紙 有線放送・CATV・アングラ新 聞・住民運動機関誌 歩行者天国の都市公園 劇場・映画館 盛り場・ターミナル ■初期地域メディア論 ⑥ニューメディアへの期待 CATV=Wired City 「有線都市」 内容:①地域チャンネル・②双方向・③参加型 事例:アメリカの先進事例 難視聴対策の 共同アンテナ テレビ= おらが町のテレビ ケーブル= 多チャンネル ■初期地域メディア論 ⑦地域メディアと文化変容(創造)の視点 白水繁彦:ハワイのオキナワンの研究 ナショナル (文化的標準化) ローカル メディア 文化 ローカル・アイデンティティ 文化変容 例:宮古人→沖縄人 地域:「複数の人間が存在するある一定の空間的単位であること。そして その個人がたがいにその空間的単位に“所属意識”をつか、または“連帯 感”をもつこと。」 「地域文化とは、ある地域社会の全員または特定の人びとによって、世代 をへて学習され、共有される思考様式・行動様式のこと」である。 地域文化の「固有性」「これがわれわれの文化だ」「心のよりどころ」 ■初期地域メディア論 まとめ (a)ナショナルなものへの対抗図式(地方主義=ローカリズム) (b)ジャーナリズムに対する、生活・風俗文化メディア (c)コミュニティ社会学的フレームのマスコミュニケーション研究への導入 (d)CATVへの期待 ■地域メディア論の展開 『新版 地域メディア』(1989) コミュニケーション・メディア スペース・メディア 地理的範域 自治体広報、地域ミニコミ タウン誌、地域キャプテン CATV、県紙、県域放送 公民館、図書館 公会堂、公園 ひろば 機能的共同性 サークル紙、グループ会報 各種運動団体機関誌 パソコンネットワーク クラブ施設 同窓会館 研修所 ■地域メディア論の展開 「地域メディアの機能論」(清原慶子) ①マスコミュニケーションとしての基本的機能(地域版) ②コミュニティ形成・地域アイデンティティ形成機能 「地域コミュニケーション論」(大石裕) 歴史的経緯 ①有線都市論 ②地域主義論 ③CATV自主放送論 ④地域情報化論 ■地域メディア論の展開 『現代地域メディア論』(2007) 市民本位 市民の立場 市民所有のメディア (メディア産業) 例: コミュニティFM (NPO放送局の登場) 住民の自生的な メディア活動 日常的メディア実践 (ネット表現・発信) 情 報 の 流 れ ・ 生 成 ■地域情報化論の系譜 『ウェブが創る新しい郷土』(2007) 「地域メディアは、住民に地域アイデンティティを、地域には歴史を再生する 機会を提供するのである。」 無線系、輸送系、空間系、人間系 自己の準拠点 パトリ(郷土) 地域再生の物語 「地域メディアを失ってしまうと、住民は、地域の歴史や他の多くの人々の生 活に思いをめぐらす機能を失い、目前に拡がる空間的な広がりだけを地域 と認識するようになる。」 ■地域メディア論への問題提起: ■3つの要素 ●思考の起点をどこにとるか。 従来の 地域メディア 論 メディア の種類 地域 文化 (1)ある地域内ではどれくらいのメディアが作動しているのか。 (2)多様な文化がメディアによって媒介される。 ■地域メディア論への問題提起: (1)〈地域メディアの総過程論〉の視点の必要性 地域の自己語りの総体 (オープンな構造) マスメディア事業 ネット事業 表出の螺旋モデル メディアの垂直構造 専門職事業 市民自生型 地域内コミュニケーション 地域外コミュニケーション 「地域」という リアリティをつくり出す ■地域メディア論への問題提起 (2)〈地域メディアの文化媒介的機能〉の視点の必要性 地域という 自己を仮託する文化装置 (地域の自己物語のリライト) 文化 (資源・アイテム) メディア 文化媒介者 伝承と創生 地域 (自己=物語) 文化概念 ■地域メディア論への問題提起 〈文化媒介者としての地域メディア〉 情報の 容れ物(メディア) の類型学 ※マスコミ類型 情報発信= 地域の 文化の伝承と創生 メディエーション(実践) 文化媒介者 (アクター・プロジェクト) 文化はメディアによって伝承・創生される。=メディエーション(プロセス) そのメディエーションを担う文化媒介者を拡張地域メディアとして捉える。 例:文化教室・レーベル・イベント・自生的プロジェクト ■地域メディア論への問題提起 文化媒介者とは ※放送事業、マスコミ事業(に関わるプロジェクト・人)だけではない 広義の地域メディア論=文化の伝承と創生の機能という地平がある。 例 島唄教室、歌謡曲の担い手、カラオケ文化、から食、クラフト 文化を掘り起こし、伝承し、創生する人びとの営み(プロジェクト) それは広義の地域メディアの実践そのものといえる (拡張地域メディア論→地域メディア論の文化論的転換) ▽ それが、地域という文化的リアリティ(情報的現実)をつくり出す