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422111 無機化学2(農学部・応生化) ○出席: 10回以上 ○レポート: 5回程度 ○期末試験:授業+レポートより 4/8/2013 ●授業内容・教科書はHP(暫定)に掲載 http://saitolab.meijo-u.ac.jp/index.html ●予習・復習を ●無機化学1の復習以外は板書で行う 無機化学1 復習 どこが理解しにくいかチェックする 1 2章 原子、元素の成り立ち ●質量(mass) 電子(electron)静止質量(me = 9.1091031 Kg) 陽子(proton: 1.67261027 Kg)や中性子(neutron: 1.67491027 Kg) の1/1836・・・原子の質量はほとんど原子核(atomic nucleus)が決定 ●同位元素また同位体(isotope):陽子の数が同一で、中性子の数が 異なる元素。 水素の場合 1)質量数が1の1H(hydrogen) 2)一個の中性子が加わった重水素(2HまたはD:deuterium)、 3)さらに一個の中性子が加わった三重水素(3HまたはT:tritium) Dは自然の水素中に1/3500~1/5000含まれている。Tは自然界にも存 在するが、主に核反応により人工的に作られる放射性(radioactive)元 素である。1 – + 陽子 2 3 – – H – + 水素 H(D) + 電子 H(T) + 1H、重水素 2H(D)、三重水素3H(T)の構成 原子核 中性子 2 電子の軌道(s軌道、p軌道、d軌道、f軌道) 図2.15 s軌道 図2.16 p軌道 図2.17 d軌道 3 アルカリ金属元素とハロゲン元素のイオン化 イオン化 (ionization) s軌道 H, Li, v K, Na, Rb, Cs H, Li, v K, Na, Rb, Cs s軌道 – 水素、アルカリ金属元素 電子構造は不活性ガス型 電荷は +1価 陽イオン(cation) イオン化 F, Cl, Br, v I, At F, Cl, Br, v I, At + p軌道6e で満席 ハロゲン元素 p軌道 電子構造は不活性ガス型 電荷は –1価 陰イオン(anion) 4 電子式 例 L殻電子(n=2)の元素 s軌道、p軌道を考えず、元素記号の周囲に 8電子までを記す。一個の丸は不対電子を示し、2個揃うと電子対を形 成したとする(共有電子対、非共有電子対)。 Li Be O +2H B C N O Ne F H H + H OH H O H H O+ ヒドロキソ H2O 共有結合(covalent bond) N +3H H + H NH H NH3 3 ニウム 配位結合(coordination bond) H HNH H NH4+ アンモ ニウム 共有結合、配位結合は、結果として、等価である 5 3章 1) CsCl(caesium chloride)型:配位数8 陽イオンの半径と陰イオンの半径に大きな違いがない 時(r/R>0.73 であると)、主に塩化セシウム型: CsX(X = Cl, Br, I)、NH4X(X = Cl, Br, I)など、約50種の化合物があ る。配位数8。 2r R 2 2 1 1 2 1 (2R+2r)/2R=3 r/R=0.732 全 て の 原 子 が 同 種 な ら 体 心 立 方 格 子 (body centered cubic, bcc, 占有率68%, 全てのアルカ リ金属、Ba, 多くの遷移金属が属す。 6 2)岩塩(rock salt)型: 配位数 6 陽イオンが小さくなり0.73 > r/R > 0.414ならば岩塩型:上 記CsX(X = Cl, Br, I)を除く全てのハロゲン化アルカリが 属す。200種以上の化合物がある。配位数6。 1 1 2r 1 (2R+2r)/2R=2 r/R=0.414 2R 陽 イ オ ン 、 陰 イ オ ン は 各 々 面 心 立 方 格 子 (face centered cubic, fcc, 占有率74.1%)、全てが同種原子な ら単純立方格子(simple cubic, sc, 占有率52%, Poの低 温相)である。 7 3)閃亜鉛鉱(zinc-blend)型 陽イオンが小さくなり、陰イオン が大きくなると(0.414 > r/R)( 閃亜鉛鉱(ZnS)、CdS、ハロ ゲン化銅(I)など40種近くの化合物がある。配位数4)。 2 O Q Q O 1 2r P L L R P r/R =0.225(R/(R+r)=2/3) 全原子が同種でダイヤモン ド(diamond)型構造 (4配位、Si,Ge,灰色Sn,占有率は34%) 元素記号(symbol of element) 原子記号(atomic symbol) 13C 炭素(carbon) 12 C, 6 6 原子番号(陽子数) 質量数(陽子数+中性子数) atomic number mass number 8 ボルン-ハーバー サイクル ●格子エネルギーを直接測定することは不可能である。 ●実験により得られる標準状態(常圧、298 K (25℃)なので0 Kでの値 より2.48 kJ mol-1だけ大きい)の熱力学データを用い、イオン結晶の格 子エネルギー(Hc: エンタルピー)を求める方法としてボルンとハーバ ーが独立に提案した循環過程をボルン-ハーバー サイクルという。図 に塩化ナトリウム結晶の例を示す。 ΔH (1 / 2 ) ΔH Na(固体) + 1/2Cl2(気体) Na(気体) + Cl(気体) Hf ↓ ↓ + Ip – EA Hc NaCl(固体) Na+(気体) + Cl-(気体) sub d Hf: Na(固体) +1/2 Cl2(気体)からNaCl(固体)への生成熱 Hc: 格子エネルギーU、Ip:Naのイオン化電位 EA:Clの電子親和力、Hsub: Naの昇華熱、Hd: Cl2の解離熱 昇華: sublimation、解離: dissociation、電荷:electric charge 誘電率:dielectric constant 9 ΔH (1 / 2 ) ΔH Na(固体) + 1/2Cl2(気体) Na(気体) + Cl(気体) Hf ↓ ↓ + Ip – EA Hc NaCl(固体) Na+(気体) + Cl-(気体) sub d 上図は、一回りすると元に戻る(ゼロ)なので A → B ↑ ↓ D ← C A+B+C+D=0 ー Hsubー (1/2)Hd +Hf(NaCl 固体)+Hc = Ip – EA Hc = –Hf(NaCl 固体) + Hsub + (1/2)Hd + Ip – EA (3.13) 10 4章 17族元素:ハロゲン元素(halogen) 分子間 相互作用はファンデルワールス力 非金属:フッ素、塩素、臭素、ヨウ素 非金属と金属の中間か?・・・アスタチン(不明元素) ●フッ素(F2, F, fluorine) 淡黄緑色の気体、反応性 極めて高い、猛毒、電気陰性度最大の元素 フッ化水素酸HF:腐食性強い、 ガラスのエッチング フロン:炭素との化合物、沸点が高くエアコン冷媒 ・・・・オゾン層の破壊(オゾンホール) テフロン:フッ素樹脂 耐熱性、耐薬品性、摩擦係数 低い 11 ●塩素(Cl2, Cl, chlorine) 黄緑色の気体、反応性極 めて高い、猛毒、不快臭、殺菌(プール、浄水場)、 漂白作用(さらし粉 Ca(ClO)2) Cl2ガスを用いずに、次亜塩素酸ナトリウムNaClOを 使う(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。強アルカリ性 である。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ば れる) 2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO + H2O 特異な臭気(いわゆるプールの臭いや漂白剤の臭い と言われる臭い)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌 作用がある。 12 ●家庭用の製品の「混ぜるな危険」などの注意書 きにもあるように、漂白剤や殺菌剤といった次亜塩 素酸ナトリウム水溶液を塩酸などの強酸性物質(ト イレ用の洗剤など)と混合すると、黄緑色の有毒な 塩素ガスが発生する。浴室で洗剤をまぜたことによ る死者も出ているので取り扱いには注意が必要で ある。 NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2 ●有機塩素化合物 DDT, BHC, PCB, ダイオキシン ・・・人体に有害 ●ポリ塩化ビニル(塩ビ) 13 ●臭素(Br2, Br, bromine) 赤褐色、重い液体(全元素 中HgとBr2のみ液体)・・・取扱に注意(ドラフト使用) ピペットから落ちる・・蒸発しやすい・・赤色気体・・吸引 しないこと、猛毒、刺激臭、性欲減、皮膚に臭素が触 れると腐食を引き起こす 臭化銀(AgBr) 銀板写真の原料 ●ヨウ素(I2, I, iodine)黒紫色固体、高い昇華性、毒物 AgI: 人工雨、でんぷんの検出:ヨウ素でんぷん反応、 ●消毒薬:ヨウ素のアルコール溶液がヨドチンキ、ヨウ 素とヨウ化カリウムのグリセリン溶液がルゴール液 ●放射能汚染が起きた場合、放射性でないヨウ素の 大量摂取により、あらかじめ甲状腺をヨウ素で飽和さ せる防護策が必要である。 14 4.9) プロトン移動と酸・塩基[2] 4.9.1) ブレンシュテッド-ローリーの酸・塩基 酸はH+を供与する分子(HAA-+H+)、塩基はH+を受容する分子 (B+H+BH+)と定義された(1923年)。水中では、H2Oが塩基また は酸として働く。 溶液中 HA + B ⇌ A- + BH+ (4.2) 酸 HA + H2O ⇌ H3O+ + A- (4.3) K a ' [ H 3 O ][ A ] [HA][H O] 2 より , K a K a ' [H 2 O] [B][H 2 O] pKb=-logKb 共役酸・塩基で pKa + pKb = 14.0 である。 [ HA] pKa=-logKa 塩基 B + H2O ⇌ HB+ + OH- [ BH ][OH [ HB ][OH ] より , K b K b '[ H 2 O ] ' Kb [H 3 O ][A ] (4.4) (4.5) ] [B] (4.6) (4.7) 15 水素イオン指数(hydrogen ion exponent) pH = - log10[H+] (1909年の提案) [H+]は水素イオンのモル濃度(mol/dm3) ●25℃, 中性で [H+] = [OH-]=10-7 mol/dm3 pH = 7 酸性 pH <7, 塩基性 pH > 7 pH試験紙 ●強酸 H+を出しやすい酸:塩酸 強塩基 OH-を出しやすい塩基:水酸化ナトリウム 16 ●中和反応:酸と塩基の反応で水と塩が生成する 塩の加水分解:塩と水との反応で酸と塩基が生成 中和 酸 + 塩基 塩 + 水 加水分解 ●生じた塩中に、依然としてH+が存在する塩: 酸性塩:H2CO3 + NaOH →NaHCO3 + H2O ●生じた塩中に、依然としてOH-が存在する塩: 塩基性塩:Ca(OH)2 + HCl →CaCl(OH) + H2O ●塩中に、OH-, H+が存在しない塩:正塩 ●塩の水溶液の酸性・塩基性 中和反応における酸と塩基の内、強い方の性質 NaHCO3(酸性塩)は? NaCl(正塩)は? 17 4.10) ルイスの酸-塩基 ●ブレンシュテッドの酸・塩基の提案と同じ1923年に、八偶説(オク テット則)を提唱したルイスが提案 ●酸は共有結合を形成するため他の物質から一対の電子対を奪い (電子対受容体、ルイス酸)、塩基(電子対供与体、ルイス塩基)は電 子対を与え、ともに希ガス型電子配置をとる。 ●BF3 + :NR3 ⇌ F3B:NR3 を八偶説に沿って図示(図4.5)。 F F F B BF3 図4.5 結合、 F R N R R F :NR3 :最外殻電子、B3個、N5個、 F7個、R1個、 :配位共有原子価結合 R F B N R R F3B:NR3 :正常共有原子価 18 ●オクテット則を満たさない第13族元素(B, Al)の共有結合化 合物は、空の軌道(空軌道, vacant orbital, 非占有軌道 unoccupied orbital)を持つので強いルイス酸で、配位結合 により錯体を形成する。 ●遷移金属元素の多くは共有結合に利用される価電子の 他に空のd軌道などを持ち(空軌道)ルイス酸となり、多くの 種類の金属錯体が配位結合により形成される。 ●非共有電子対が空軌道に入り込む 空軌道 非共有電子対 酸 塩 基 NH3(sp3) NH3BF3 19 混成による非共有電子対と空軌道の形成 非共有(孤立)電子対 不対電子 N 2p sp3 2s 1s 1s B 2p 不対電子 空軌道 sp3 2s 1s 1s 20 Bの電子(sp3電子 3電子) Fの電子(2s22p5電子 7電子) F F BF3 B F 共有結合 2 分 子 構 造 か ら は sp 混成 Fの周りには8電子・・満杯 Bの周りには赤3個+青3個・・・6電子・・2個分余裕あり F F F B BF3 (F上の緑の線が 関与していない電子 を除く) R N B R R :NR3 R N R F3B:NR3 配位結合 21 配位結合(Coordinate bond) ●結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が分 子軌道に提供される化学結合である。電子対供与体(ルイ ス塩基)となる原子から電子対受容体(ルイス酸)となる原 子へと、電子対が供給されてできる化学結合であるから、ル イス酸とルイス塩基との結合でもある。 ●したがって、プロトン化で生成するオキソニウムイオン(3 つの化学結合をもった酸素のカチオンの総称(最も単純なオ キソニウムイオンはヒドロニウムイオン H3O+ 。より正確には オニウムイオン、図4.6)は配位結合により形成される。 図4.6 オキソニウム R2R’O+ 22 ●酸素の6個の最外殻電子(赤丸)に2個のRX(H, Xは不対 電子)が共有結合(covalent bond)で付き、酸素周りに8個 の最外殻電子が存在する(飽和状態)。ここに、R’(電子 対受容体H+)が酸素の電子対に配位し、結合を形成する。 非共有(非結合、孤立) 電子対(lone pair) H+ 図4.7 ヒドロニウム H3O+ H 2O 23 5章 混成と共有結合 5.2.1) 混成(hybridization) ●炭素原子は2s22p2の最外殻電子配置をもち、このままでは2個のp 軌道電子のみが結合に関与した水素との化合物H-C-Hを与えると予 想されるが、実際はメタンを始めとする飽和炭化水素CnH2n+2、エチレ ンやアセチレンのような2重結合や3重結合を持つ不飽和炭化水素を 与える。これは、図5.6に示す混成軌道を用いて説明された(ポーリン グ, スレーター)。 2p 2s 1s 図5.5 炭素原子(C)の軌道エネルギー 24 ●1個の2s軌道電子が2pに励起され、あたかも同一のエネ ルギー軌道(混成軌道)に4個の電子(2s12px12py12pz1)が あり、飽和炭化水素やダイヤモンドに見られる4本の結合を 持つ化合物(sp3混成という、結合角は10928')、3個の電 子が他の3種の元素と結合するとエチレンのような3本の結 合を持つ化合物(sp2混成という)、2個の電子が他の2種の 元素と結合すると2本の結合を持つアセチレンのような化合 物(sp混成という)を与える。 sp3混成 s 2p 2s 1s px p y p z 混成軌道 1s sp2混成 sp混成 図5.6炭素の1s22s22p2電子配置とsp(青), sp2(赤), sp3(緑)混成軌道 25 A) sp3混成 s軌道とp軌道の寄与が1:3である分子軌道の形を考える。軌道の混 成を各軌道の線形結合で表し、4つの独立な(互いに直交している)規 格化された分子軌道を作り、分子軌道への各p軌道の寄与が同等とし て、そのうちの1つの軌道の向くベクトルをxyz面内の第一象限にすると、 分子軌道は5.14式~5.17式である。 1 = (1/2)(s + px + py + pz) (5.14) 2 = (1/2)(s – px – py + pz) (5.15) 3 = (1/2)(s + px – py – pz) (5.16) 4 = (1/2)(s – px + py – pz) (5.17) sp3混成を正四面体混成(tetrahedral hybrid)ともいう(図5.8、各軌道 の成す角は10928')。 図5.8 sp3 混成軌道 26 B) sp2混成 s軌道とp軌道の寄与が1:2の分子軌道で、寄与するp軌道をpx, pyと する。3つの同等で独立な混成軌道は、エチレンやベンゼンのように平 面状で、各々が互いに120の角を成すものを考える。4はpz軌道そ のものである。1をx軸方向の5.18式と定め、2および3軌道の中の px, pyの係数を規格化と直交の条件より得る。 1 = s/3 + 2px/6 (5.18) 2 = s/3 – px/6 + py/2 (5.19) 3 = s/3 – px/6 – py/2 (5.20) sp2混成軌道は3方混成(trigonal hybrid)といわれ、各軌道は互いに 120を成す(図5.9)。残りの4 = pz は、1~3が作る平面(xy面)に垂直 に延びている。 2 図5.9 sp2混成軌道(7.18~7.20式) 1 3 1 2 3 27 C) sp混成 p軌道としてpx軌道を選ぶと、5.21~5.24の4つ分子軌道が得られ、 1と2はxの正、および負の方向に延び、2方混成(diagonal hybrid)をなし、残りの2つの軌道はy、z軸方向に延びる(図5.10)。 1 = (1/2) (s + px) (5.21) 2 = (1/2) (s – px) (5.22) 3 = py (5.23) 4 = pz (5.24) 図5.10 sp混成軌道(5.21,5.22式) 1 2 28 炭素以外でも価数と結合の方向性から、表5.1、図5.7の ような混成軌道が得られている。 表5.1 混成の例 混成 形 sp 直線形 sp2 sp3 sp3 d sp3 d2 角度 180 例 BeCl2 [Be:1s22s21s22s2p], CH CH、CO2 平 面 三 120 ベンゼン、ポリアセチレン、黒鉛 (面内)、BF3, SO2, SO3 角形 四面体 1092 ダイヤモンド、BF4、NH3, H2O 8' 三 角 両 90,1 PCl5、SF4、I3 20 錐形 SF6, IF5, PCl6 八面体 90 29 図5.7 H2O 混成軌道 BeF2(sp), BF3(sp2), メタン(sp3), NH3, 非共有 電子対 BeF2(sp) NH3(sp3) H2O(sp3) BF3(sp2) CH4(sp3) 30