Transcript Document
離散数学
2. 関係
五島 正裕
離散数学
関係
関係: いくつかのものごとの間に成り立つか否かを云々
対象とするものごとの集合の直積集合の部分集合として定義
離散数学
二項関係 (binary relation)
集合 X, Y の要素 x, y について,関係 R ⊂ X × Y が成り立つ
x R y ⇔ (x, y) ∈ R
例)
X = {0, 1, 2, 3, 4}
Y = {2, 3, 5, 7, 11}
x R y = 「x は y より 2 小さい」
R = {(0, 2), (1, 3), (3, 5)}
X = Y の場合, R を「X の上の関係」という
離散数学
多項間の関係
集合 X1, X2, ..., Xn について,x1, x2, ... , xn の間に
関係 R ⊂ X1× X2 × ... × Xn が成り立つ
R(x1, x2, ... , xn) ⇔ (x1, x2, ... , xn) ∈ R
離散数学
同値関係
離散数学
同値関係 (equivalence relation)
反射的 (reflexive)
xRx
対称的 (symmetric)
xRy ⇒ yRx
推移的 (transitive)
x R y and y R z ⇒ x R z
例)
x = y
複素数の実部が同じ, 虚部が同じ, 原点からの距離が同じ, ...
同じ国の国民 (二重国籍がなければ)
離散数学
同値関係の写像
X から Y への写像 f : X → Y があるとき
x R y ⇔ f (x) = f (y)
と定義すると,R は同値関係になる.
例)
f (x) = x mod 7
離散数学
同値類 (equivalence class)
R[x] = { y | x R y } ⊂ X
x : 代表元 (representative)
x R y ⇒ R[x] = R[y]
⇒ 同値類は代表元の選び方によらない
異なる同値類は共通要素を持たない
例)
偶数
奇数
7 で割った余りが同じ
離散数学
類別 と 商集合
類別 (classification):元の集合 X をその同値類の直和に分割すること
X1 ∪ X2 ∪ … ∪ Xn = X
i ≠ j ならば Xi ∩ Xj = φ
商集合 (quotient set):類別の結果得られる部分集合の集合
X/R = {X1, X2, … , Xn}
離散数学
同値関係の強弱
X の上のふたつの同値関係 R1, R2 について
R1 は R2 より強い ⇔ R1 ⊂ R2 (より細かく類別)
R1 は R2 より弱い ⇔ R1 ⊃ R2 (より粗く類別)
例) modulo 21 の類別は, modulo 7 の類別より細かい
離散数学
順序関係
離散数学
順序関係 (order relation)
反射的
xRx
反対称的
x R y and y R x ⇒ x = y
推移的
x R y and y R z ⇒ x R z
例)
数の大小関係
集合の包含関係
≦ で表すこともある
離散数学
全順序
全順序 (total order), 線型順序 (linear order)
すべての x, y ∈ X について x ≦ y または y ≦ x
例)
数の大小関係
離散数学
半順序
半順序 (partial order)
全順序ではない一般の順序
半順序集合 (partially ordered set,
po-set)
例)
{a, b, c}
{a, b}
{c, a}
{b, c}
{a}
{b}
{c}
集合 A = {a, b, c} の巾集合 2A
の要素の包含関係
{}
離散数学
擬順序 (pseudo-order)
反射的, 推移的だが反対称的でないもの
x R y かつ y R x かつ x ≠ y なる x, y が存在
例)
x – y 平面上の点の原点からの距離
離散数学
ハッセ (線) 図 (Hasse’s diagram)
b
a
c
e
d
DAG (Directed Acyclic Graph)
f
g
X
h
k
j
i
平面グラフとは限らない ― 例: 3
次元立方体
m
l
n
o
推移律からわかる余分なarcの除
去
p
離散数学
極大元,極小元
上 界,下 界
最大元,最小元
上 限,下 限
離散数学
極大元/極小元
極大元 (maximal element)/極小元 (minimal element)
x ∈ X に対し, x ≦ y かつ x ≠ y という y ∈ X が存在しないとき,
x を X の極大元という
離散数学
上界/下界
上界 (upper bound)/下界 (lower bound)
半順序 ≦ が定義されている集合 S の部分集合 X で、
任意の x ∈ X に対し x ≦ a であるような a ∈ S があるとき
X は上に有界
a を X の上界という
例)
{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6 } の部分集合 {1, 2, 4} の上界は 4, 5, 6
(π, ∞) は下に有界, 上に有界でない
離散数学
最大元/最小元
最大元 (maximum)/最小元 (minimum)
上界/下界 a が X に属するとき,a を最大限/最小限という
max(X)/min(X)
例)
[0, π] の最大元は π
(0, π) には π は属さないので,最大元はない
集合全体の最大元/最小元 (あれば)
T: トップ / ⊥: ボトム
離散数学
上限/下限
上限(supremum, minimum upper bound :最小上界)
下限(infimum, maximum lower bound :最大下界)
部分集合 X の上界/下界の集合の最小元/最大元を,上限/下限という
sup(X), inf(X)
例)
(0, π) の上限は π
上限, 下限は存在するとは限らない
離散数学
実数
極小元
極大元
最小元
最大元
下限
上限
[0, 1]
下界
上界
下限
上限
(0, 1)
下界
上界
離散数学
例題
b
a
c
e
d
f
極大元、極小元
g
X
h
部分集合 X の
k
上
m
l
n
o
p
界、下 界
最大元、最小元
j
i
上
限、下 限
をすべて挙げよ
離散数学
答え
極大元:d, g;極小元:i, j
上界:b;下界: m, o, p
b
a
c
X のどの要素 x についても
x≦b
e
d
X のどの要素 x についても
f
g
X
k
m ≦ x, o ≦ x, p ≦ x
最大元 :なし;最小元:なし
h
j
i
上界,下界はいずれも X の元
ではない
m
l
n
o
p
上限:b;下限:m
上界の集合 {b} の最小限は b
下界の集合 {m, o, p} の最大元
はm
離散数学
例題 2
b
a
c
e
d
f
極大元、極小元
g
X
h
部分集合 X の
k
上
m
l
n
o
p
界、下 界
最大元、最小元
j
i
上
限、下 限
をすべて挙げよ