Transcript コンパクト星連星形成過程における共通外層進化の取り扱い

コンパクト星連星形成過程に
おける共通外層進化の取り扱い
鴈野重之
九州産業大学
「コンパクト連星合体からの重力波・
電磁波放射とその周辺領域」研究会
＠京都大学 2015年2月
(1)HMXB
NS=NS連星の形成
(2) Common envelope
• 大質量星連星から進化
RLOF or Darwin Instability
CEの開始／終了条件は？
(3) He star-NS binary
Dynamical mass ejection
放出される質量は？
(4) SN type IIb/c
Wind mass loss
He星の初期質量は？
(5) NS-NS binary
SN kick
キックの分布関数は？
GW radiation
共通外層進化のモデル化
• 連星の軌道運動エネルギーがMS外層へ
– 外層の束縛エネルギー
surface
𝐸bind = −
core
𝐺𝑚1 𝑚1,𝑒
(𝜑 + 𝜀)𝑑𝑚 ≅
λ𝑅1
• λは星の中心集中度
– 軌道運動のエネルギー損失
∆𝐸orb
𝐺𝑚1,𝑐 𝑚2 𝐺𝑚1 𝑚2
=
−
2𝑎𝑓
2𝑎𝑖
– エネルギー輸送過程については目をつぶる
αλ formalism
• 失われた軌道エネルギーの内，ある割合α
（0＜α＜1）が外層の放出に使われるとする
𝛼∆𝐸orb = 𝐸bind
– CE前後の軌道変化だけを考える
𝑎𝑓 𝑚1,𝑒
2𝑚1,𝑒
=
1+
𝑎𝑖
𝑚1
𝛼𝜆𝑅1 𝑚2
−1
Webbink 1983
• αλの値は不明なので，「えいや」と1にする
– 主星が大質量の場合，λ≪1となる
– NS表面での核燃焼などがあるとα＞1となり得る
– WD=WD連星を作りにくい
γ formalism
• 失われた外層質量が，ある一定の割合γの角
運動量を持ち去るとする
Nelemans+ 2000
∆𝐽
∆𝑀
=𝛾
𝐽
𝑀
– CE前後の軌道変化だけを考える
𝑎𝑓
𝑚1,𝑐 + 𝑚2
=
𝑎𝑖
𝑚1 + 𝑚2
𝑚1
𝑚1,𝑒
2
𝑚1,𝑒
1−𝛾
𝑚1 𝑚2
2
• WD連星の観測とあわせると，γの値は1.6程度
がよいとされる
– NS連星の場合に適応してよいかは後述
Wind Mass Loss
• CE進化後に残るHeコアは激しい星風を放出
𝑀 = 5 × 10−8 𝑀2.5 𝑀sol /yr
• Langer 1989
– 質量放出による軌道変化
𝑎𝑀total = const.
• Bagot 1997
– Heコアの寿命（大質量の場合）
−0.6
𝑀
6
τHe = 2.4 × 10
yr
𝑀sol
• Francischelli++ 2002
SN Kick
• 超新星爆発時のキックにより，軌道が大きく
変化し，場合によっては系が崩壊
Kalogera 1996
GW Radiation
• NS=NS連星形成後は重力波放出で軌道進化
• Peters 1964
73 2 37 4
𝑃
3 1 + 24 𝑒 + 96 𝑒
=−
∙
𝑃
𝑡𝐺𝑅
(1 − 𝑒 2 )7/2
19 121 2
𝑒
1 6 + 96 𝑒
=−
∙
𝑒
𝑡𝐺𝑅 (1 − 𝑒 2 )5/2
𝑡𝐺𝑅
5
𝑐 5 𝑎4
=
∙ 3 2
32 𝐺 𝑀 𝜇
連星進化のモデル計算
• CE進化段階でのαλ形式とγ形式の違いを検証
• MS=NS連星からの進化を計算
– 条件を変え，2000万モデルずつ計算
– CE後のHeコア質量は固定
– キック速度と方向は均等に分布
• とくにγ形式について
– 実在のNS=NS連星を形成するγの値は？
– αλ形式とγ形式の違いは？
• 宇宙年齢で合体できるNS=NS連星系成率
γの値？
• WD=WD連星形成には1.6程度がよい
– Nelemans++2000,2005
• NS=NS連星形成の場合？
軌道半径（Rsol）
– 1.6は実際の系は困難
– 1.1～1.3程度が妥当
γ＝1.6
γ＝1.2
主星質量（Msol）
PSR B1913+16
質量：1.39+1.44
軌道周期: 0.323d
離心率: 0.617
年齢：110Myr
合体時間: 2.45Gyr
軌道半径（Rsol）
•
•
•
•
•
αλ=0.5
γ=1.2
主星質量（Msol）
PSR B1534+12
質量：1.35+1.33
軌道周期: 0.421d
離心率: 0.274
年齢：250Myr
合体時間: 22.5Gyr
軌道半径（Rsol）
•
•
•
•
•
αλ=0.5
γ=1.2
主星質量（Msol）
PSR B2127+11C
質量：1.36+1.35
軌道周期: 0.335d
離心率: 0.681
年齢：100Myr
合体時間: 2.2Gyr
軌道半径（Rsol）
•
•
•
•
•
αλ=0.5
γ=1.2
形成パスが異なる？
主星質量（Msol）
宇宙年齢で合体するNS=NS形成率
αλ=0.5
• γ=1.2 : 6.5×10-3
γ=1.2
– 近接MS=NS連星から出発
– 1.4MsolのNS同士
– Heコア質量一定
– キックは一様分布と仮定
主星質量（Msol）
軌道半径（Rsol）
• αλ=0.5 : 1.3×10-2
まとめと議論
• 共通外層進化の取り扱いを検討
– αλ形式とγ形式では，見た目上大きな違い
• NS=NS合体率もファクターで変わる可能性
– NS=NS形成をγ形式で計算するにはγ=1.2程度？
• 非現実的な仮定はただす必要
• 全ての系を単一のαλ / γパラメタで記述できるのか???
• いくつかの仮定をはずし，連星系の分布関数を導入す
れば，定量的議論が可能に
– CE物理過程解明の鍵に???
• 異なるモデルを検討することは重要