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2009/12/7 物理学コロキウム第2 気体を用いた荷電粒子検出器 内容: 1.研究の目的 2.気体を用いた荷電粒子検出器 3.霧箱でのα線の観察 4.今後の予定 5.まとめ 2009/12/7 柴田・陣内研究室 寄林 侑正 1 1.研究の目的 • 気体の電離作用を利用した荷電粒子検出器の原 理を学ぶ。 • 実際に霧箱とスパークチェンバーを作成する。 • 放射線を観察し、荷電粒子と気体粒子の相互作用 について学ぶ。 2009/12/7 2 電圧を印加するもの • 電離箱 • 比例計数管 • ガイガーミュラー計数管 • スパークチェンバー • etc… 集められたイオンの数 2.気体を用いた荷電粒子検出器 1012 1010 電離箱領域 比例計数管領域 108 放 電 106 ガイガー・ミュラー計数管 領域 104 電圧を印加しないもの • 霧箱 • 泡箱 • etc… 102 N 1 0 250 500 750 1000 電圧 [ V ] N:放射線入射によって生成されたイオン対の数 2009/12/7 3 電圧を印加するガス検出器 ◎ MWPC ( Multi Wire Proportional Chamber ),ドリフトチェンバー ( Drift Chamber ) 荷電粒子の位置を測定するためのガス検出器。 z 荷電粒子 ターゲット x y 陽極ワイヤー 入射粒子(z方向) y座標がわかる ( x2,y2,z2 ) x座標がわかる ( x1,y1,z1 ) ◎ スパークチェンバー 電離電子 電極 電子なだれを起 こし最終的にス パークを起こす V -8 kV 20 MΩ Trigger SCR ガス 原子 正イオン 荷電粒子 電極対を重ねることにより荷電粒子の飛跡をスパークとして観測できる。 R 1000 pF - + Q Q C R 20Ω R 220 Ω スパークチェンバー 4 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる アルコール(液体) 2009/12/7 5 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる ②容器内で右図のように上部と下部に温 度差をつける アルコール(液体) 温度高 温度低 2009/12/7 6 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる ②容器内で右図のように上部と下部に温 度差をつける ③液体アルコールが蒸発していく アルコール(液体) 温度高 蒸発 温度低 2009/12/7 7 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる ②容器内で右図のように上部と下部に温 度差をつける ③液体アルコールが蒸発していく ④飽和蒸気圧の高い上部から飽和蒸気 圧の低い下部へとアルコール蒸気が拡 散していく アルコール(液体) 温度高 温度低 :アルコール蒸気 2009/12/7 8 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる ②容器内で右図のように上部と下部に温 度差をつける ③液体アルコールが蒸発していく ④飽和蒸気圧の高い上部から飽和蒸気 圧の低い下部へとアルコール蒸気が拡 散していく ⑤容器内下部で過飽和の層が形成される アルコール(液体) 温度高 温度低 2009/12/7 :アルコール蒸気 :過飽和アルコール蒸気 9 電圧を印加しないガス検出器 ◎ 霧箱 ①容器上部に液体アルコールを含ませる ②容器内で右図のように上部と下部に温 度差をつける ③液体アルコールが蒸発していく ④飽和蒸気圧の高い上部から飽和蒸気 圧の低い下部へとアルコール蒸気が拡 散していく ⑤容器内下部で過飽和の層が形成される ⑥過飽和の層を荷電粒子が通過した際、 電離されて生成したイオンを核として蒸 気が凝結する→霧のすじが生成 2009/12/7 アルコール(液体) 温度高 温度低 :アルコール蒸気 :過飽和アルコール蒸気10 荷 電 粒 子 • 学部3年生の学生実験で用いた霧箱 使用した気体:エチレングリコール蒸気 化学式: C2H4(OH)2 融点: -12.9℃ 沸点: 197.3℃ 動作温度:上部・・・110~130℃くらいに熱する 上部と下部の温度差・・・60~80℃くらい • 今回作成した霧箱 使用した気体:エタノール蒸気 化学式: C2H5OH 融点: -114.3℃ 沸点: 78.4℃ 動作温度:上部・・・室温 下部・・・ドライアイス(昇華温度:-78.5℃)に接触させて冷やす 2009/12/7 11 3.霧箱でのα線の観察 作成した霧箱 8cm程度 液体のエタノールをスポンジに含ませる。 ドライアイスの上に置く。 エタノールを含ませたスポンジテープ 15cm 程度 キャップから吊るした針金(線源を取り付ける) 1cm 程度 2009/12/7 線源(マントル) 熱伝導を良くするため、アルミテープで密封 ドライアイス 12 科学実験教室を準備し、講師を務めました。 「 大学生と学ぶ素粒子物理 身近な放射線について知ろう ー霧箱の作成ー 」 柴田研究室・多摩六都科学館共催 第30回 2009年11月8日(日) 中高生約20名が参加し、ペットボトルで霧箱を作成しました。 2009/12/7 13 用いた線源 野外キャンプ等で使われるランタンの芯(マントル) マントル中には232Thが含まれる 232Th β-:2.127MeV(γ) 1.405×1010y 228Th 1.9131y α:4.083MeV 220Ac α:5.520MeV 6.15h 220Ra 5.75y β-:1.325MeV 224Ra 3.66d α:5.789MeV(γ) 220Rn 55.6s :α崩壊 :β崩壊 α:6.405MeV(γ) 216Po (64.06%) β-:2.254MeV 0.145s α:6.906MeV 212Pb 10.64h 2009/12/7 212Bi (35.94%) α:6.207MeV 208Tl 3.083m 0.298μs α:9.784MeV 60.55m β-:0.574MeV 212Po β-:5.001MeV 208Pb stable 14 今回使ったマントルを3年生の学生実験で用いた霧箱で見てみると・・・ 2009/12/7 15 観測された飛跡 トリウム系列からのα 線 空気中に拡散したラドン気体からのα線(?) 2009/12/7 16 4.今後の予定 ◎霧箱 • 温度勾配や過飽和の度合い等、動作原理を詳しく見る • 232Th系列に沿った連続的な崩壊を霧箱で確認する • 霧箱で宇宙線を確認できるよう調整する ◎スパークチェンバー • 電圧を印加する検出器として学び、完成させる 2009/12/7 17 5.まとめ • 気体を用いた荷電粒子検出器には電圧を印加す るものとしないものがある • 電圧を印加するもの・・・MWPC、ドリフトチェンバー、 スパークチェンバーなど • 電圧を印加しないもの・・・霧箱、泡箱など • 霧箱の動作を詳しく見ていく。 • スパークチェンバーについて学び、完成させる。 2009/12/7 18 2009/12/7 19 飛程 • Bethe-Blochの式 荷電粒子が標的物質中で失うエネルギー m V2 dE z 2e4n ln 2 2 dx 4 0 V m I • 飛程 荷電粒子がエネルギーを失うまでに標的物質中を走る長さ R( E0 ) 2009/12/7 E0 dE 0 dx 1 dE 20 標準温度圧力の空気中におけるアルファ粒子の 飛程は exp[T (MeV )] 1MeV T 4MeV R(mm) 3 0.05T (MeV ) 2.85T (MeV ) 2 4MeV T 15MeV T(MeV):α粒子の運動エネルギー 空気中以外の場合、Bragg-Kleeman則 R1 2 R2 1 A1 A2 R(m m) 0.337 2009/12/7 (kg / m ) i i 1 A i L A実効 A実効 3 Rair (m m) 1 21 α線の空気中での飛程 (mm) 飛 程 崩壊核 エネルギー(MeV) 飛程(mm) 232Th 4.083 25.19761482 228Th 5.52 40.54129249 224Ra 5.789 43.72792758 220Rn 6.405 51.38924206 216Po 6.906 57.98978525 212Bi 6.207 48.87173984 212Po 9.784 102.1920468 α線のエネルギー(MeV) 2009/12/7 22 Bethe-Blochの式と飛程(stopping range)の計算 化合物標的でのBethe-Blochの式は、各元素標的で のBethe-Blochの式の和として決定される。 陽子 入射前の運動 エネルギー:E dE dE i dx 和 dx i m V 2 化合物標的での z 2 e 4 ni ln Bethe-Blochの式 2 2 i 4 V m I i 0 0 E0 dE R ( E 0 ) dx 0 1 R 重荷電粒子の飛程 R 90 (cm) 80 80 70 60 60 40 40 30 陽子 20 20 粒子の入射時の 運動エネルギー 10 00 2009/12/7 標的 陽子、 のプラスチック(CH) 中での飛程 R 50 dE 入射後の運動 エネルギー:E 停止 (ただし、i は各元素の物理量であることを示す) Bethe-Blochの式から、次のように飛程 R が計算できる。ただし E 0 , E はそれぞれ 重荷電粒子の標的物質に侵入する前、 および後の運動エネルギーである。 標的 入射 0 0 50 50 100 100 150 150 (MeV) 200 200 250 7