発表資料 - 静岡大学

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実践型IT演習による学生の
行動特性向上の評価
湯浦研究室
1
長谷川喜子
目次
1.背景と目的
2.コンピテンシの定義と現状
3.ITコンピテンシ評価の提案
4.評価する授業と評価方法
5.ITコンピテンシ評価結果と考察
6.結論






2
1.背景

高度IT人材の育成



ITが社会に浸透し、経済活動や国民生活に不可欠な基盤となって
いる状況の下で、高度IT人材の育成は緊急の課題となっている
高度IT人材には、広義のコンピテンシ(知識やスキル、行動特性)
が必要不可欠である
特に近年では、狭義のコンピテンシ(行動特性)が注目されてきて
いる


経済産業省 「社会人基礎力」を提唱
経済協力開発機構(OECD)「PISA( Programme for International
狭義のコンピテンシ
Student Assessment
)」を実施



3
(行動特性)の向上が
CPS Skills Frameworkを提唱
IPA 「コンピテンシ評価基準」を公開
求められている!!
文部科学省 「学士力」 大学卒業の学位授与の方針を具体化
1.研究の目的

高度IT人材として社会に求められる人材になるため
に学生のコンピテンシ(行動特性)を向上させる

実践型IT演習における情報系学生の行動特性向上
の過程を明らかにする
4
2-1.コンピテンシとは
単純に言うと…

○○力 と表すもの
ex:社会人基礎力(経済産業省)、学士力(文部科学省)、就職
力(厚生労働省)など
知識
スキル
心理特性
行動スキル
5
技術スキル
行動特性
コンピテンシの定義
コンピテンシのフレームワーク


能力的コンピテンシ=スキル


技術要素、開発技術、管理技術、ビジネススキルなど
非能力的コンピテンシ=人間性

行動特性(狭義のコンピテンシ)
…対人関係力、自己表現力、共感力など
本研究のコンピテンシ領域
6
参考文献:独立行政法人情報処理推進機構:高信頼システム開発のための技術者のコンピテンシ調査
問題点
コンピテンシを向上させるためには「評価」が重要


7
大学における評価は、スキルはテストやレポートによって評価
が行われることが多く、コンピテンシについても何かしらの形
で評価が行われる必要がある
大学の授業におけるコンピテンシ評価の現状
静岡大学情報学部では演習形式の授業が複数
ある


学生のコンピテンシ向上が期待できる
しかし、コンピテンシの評価が生徒に対して十分
に行われているとは言えない

8
3.ITコンピテンシ評価方法の提案

演習形式の授業に対して、コンピテンシの評価を実施


演習形式の授業は、一般的に「目標設定」、「演習」、「成果発
表」の流れで行われる。
そこで、各段階ごとに、学習目標設定、演習、成果物、振り返
りの4段階に分けて学生のコンピテンシを評価する。
目標設定
グループや個人で目
標を定める際にコン
ピテンシが使われる
9
演習
グループで、成
果物を作成の際
に使われる
成果発表
成果物にコン
ピテンシが反
映される
自己評価(振り
返り)でコンピテ
ンシを再認識
コンピテンシ評価と特徴分析
コンピテンシ評価に加えて、演習グループの特徴を分析する。
これらの相関から、コンピテンシが高い班の持つ特徴を考察
特徴分析
コンピテンシ
評価
目標設定
演習
成果物
振り返り
10
相関
ARCS分析
役割発言タ
イプ分析
4-1. 評価対象とする授業

Webシステム設計演習(ISプログラム2年必修)


11
情報システム構築の上流におけるコミュニケーションの
あり方を体験的に学習
利用者や他の設計者と対話して「何を作るか」を段階的
に明確にしていく
4-2. 評価の流れとタイミング

評価対象:学習目標、演習、成果物、自己評価
12
「学習ジャーナル」…授業で元々用いられていたシート(1回目:学習ジャーナル①、2回目:学習ジャーナル②)
4-3. 評価するコンピテンシ

他人と協働し問題を解決する力


PISA(Programme for International Student
Assessment)2015


13
IT人材に求められるコンピテンシ
協働問題解決(CPS:Collaborative Problem Solving)が組み込
まれる予定
CPSフレームワークは学際的な教育の指標として注目さ
れている
PISAのCPS Skills Frameworkを基にした
ITコンピテンシの設定

CPS Skills Framework
(1)共通理解の構築・維持
(A)
探索と理解
(A1)知識獲得力
仲間の考え方と能力を知る
(B1)表象定義力
B)
問題の表象を共有し、
表象と定式化
その意味を協議し取り決める
(C)
計画と実行
(D)
観察と省察
14
(C1)論理的伝達力
実行されるべき行動をチームメン
バーに伝える
(D1)共通認識検証力
共有認識の観察・修正
(2)問題解決への適切な行動
(3)チーム組織の構築・維持
(A2)課題発見力
(A3)役割認識力
目標に向かって問題解決の
問題解決のために必要な役割を理
ための協調的な作用のタイプを知る 解する
(B2)課題分析力
遂行すべきタスクを特定し、記述する
(C2)自己実現力
(B3)役割分析力
役割とチーム構成を記述する(コミュ
ニケーション規約/行動ルール)
(C3)役割実施・協働力
計画を実行する
行動ルールに従う(例:タスクを実行
するよう他のチームメンバーを促す)
(D2)実施検証力
(D3)組織評価力
行動結果の観察、問題解決の達成 チーム構成と役割を観察し、
度を評価
フィードバックを提供し改良する
4-4. 評価方法

「コンピテンシに対する意識」がコンピテンシの向上につなが
ると考えたので、コンピテンシに対する意識が見られた場合
に、その内容のレベルに合わせて点数付を行う



15
4.4.1 目標設定と演習
4.4.2 成果物
4.4.3 振り返り
4-4-1. 目標設定と演習

学習ジャーナルからCPSフレームワークに対応する
記述を抜粋し分類

学習目標:「学習目標」欄


1 記述 1 ポイント
演習:「学習実績と成果」、「気づき/振り返り」 欄

記述内容によりコンピテンシの「習熟度」を3レベル(低い/中間/高
い)に合わせて判定しポイントを付ける
ラベル
具体例
1
未達自覚、他者行動評価
発表練習を十分にすることができなかっ
たと思う。
2
改善策立案、実行意思、 発表の準備や練習をきっちり行ったこと
改善意思、リフレクション がチームの安心につながったと思う。
3
達成自己評価
ポイント
16
丁寧に説明してみんなが理解できるよう
に上手くやれたと思う。
4-4-2. 成果物

成果物:前半授業終了日の発表後に提出された発表資料


グループごとの成果物の評価をCPSフレームワークに対応させるため、成果物
評価指標を作成
加点(S:+1pt)、減点(W:-1pt)で採点(N:ポイントなし)
(1 )共通理解の構築・ 維持
( A)
探索と理解
(A1)知識獲得力
仲間の考え方と能力を知る
表現力豊か
(B1)表象定義力
問題の表象を共有し、
B)
表象と定式化 その意味を協議し取り決める
(2 )問題解決への適切な行動
(A2)課題発見力
(A3)役割認識力
目標に向かって問題解決の
問題解決のために必要な役割を理解
ための協調的な作用のタイプを知る する
コンセプトの明確さ
(C)
計画と実行
伝える
丁寧さ、まとまりの良さ
( D)
観察と省察
17
(D1)共通認識検証力
共有認識の観察・修正
色々な視点からの読みやすさ
記法や表現の独自性
(B2)課題分析力
(B3)役割分析力
遂行すべきタスクを特定し、記述する 役割とチーム構成を記述する(コミュニ
ケーション規約/行動ルール)
検討アイディアの豊富さ
検討の漏れや不足の回避
(C1)論理的伝達力
実行されるべき行動をチームメンバーに
(3 )チーム組織の構築・ 維持
特徴の位置づけが明瞭
(C2)自己実現力
計画を実行する
資料の量と丁寧さ
(C3)役割実施・協働力
行動ルールに従う(例:タスクを実行す
るよう他のチームメンバーを促す)
特徴の内容の記述が明瞭
(D2)実施検証力
行動結果の観察、問題解決の達成
(D3)組織評価力
チーム構成と役割を観察し、
度を評価
フィードバックを提供し改良する
外からの意見反映
特徴が全体に浸透して記述
4-4-3. 振り返り

アンケート



前半授業終了時にコンピテンシに関するアンケートを実施
質問項目は「役割分担」「共通認識形成」「理解力」「表現力」
 演習で自分が達成できたレベルを1~4の中から選択
各質問項目に対応するCPSフレームワークのコンピテンシ項目を定義
(A)探索と理解
(B)表象と定式化
(C)計画と実行
(D)観察と省察
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(1)共通理解の構築・維持
(2)問題解決への適切な行動
(3)チーム組織の構築・維持
(A1)知識獲得力
(A2)課題発見力
(A3)役割認識力
(B1)表象定義力
(B2)課題分析力
(B3)役割分析力
(C1)論理的伝達力
(C2)自己実現力
(C3)役割実施・協働力
(D1)共通認識検証力
(D2)実施検証力
(D3)組織評価力
5-1. ITコンピテンシ評価結果

評価の各段階において、それぞれの班に対して順位づ
けを行った結果を示す。

出足は好調だが、成果物・自己評価では点数が低い(ア班) 、
また、出足は不調だが、成果物・自己評価では点数が高い班が
見られた(カ班)。
成果物も自己評価も点数が高い班が見られた(オ・カ班)。

順位
学習ジャーナル①学習目標
学習ジャーナル①演習
学習ジャーナル②学習目標
成果物
自己評価アンケート
19
1
2
3
エ
ア
オ
オ
ア
エ
ア
オ
カ
オ イ エ カ -
キ
オ
カ
4
5
ウ
イ
ウ イ キ
エ イ ウキ
-
ウ
ウ
エ
6
カ
-
-
ア
イ
7
キ
カ
-
キ
ア
5-2. ITコンピテンシ評価結果と考察

コンピテンシの向上の過程を明らかにするために、コン
ピテンシ評価のほかに、ARCS-M分析、役割発言タイプ
分析を行い、コンピテンシ評価結果とそれらの相関を明
らかにする。
特徴分析
コンピテンシ
評価
目標設定
演習
成果物
振り返り
20
相関
ARCS分
析
役割発言タ
イプ分析
5-2-1. ARCS-M分析

ARCS-M分析







21
ARCS-Mとは、アメリカの教育工学者のジョン・M・ケラーが提
唱している「ARCS動機づけモデル」の4つの項目に意欲
(Willing to continuing learning)を加えたもの
この5つの項目についてオリエンテーション時と前半授業終了
時にについてアンケートを実施
注意 (Attention)
「面白そうだな」
関連性 (Relevance)
「やりがいがありそうだな」
自信 (Confidence)
「やればできそうだな」
満足感 (Satisfaction)
「やってよかったな」
意欲(Willing to continuing learning)「もっとやりたいな」
ARCS-M分析とコンピテンシ評価結果の相関

オ班・カ班:最終的にコンピテンシのポイントが高かった班(成果
物と自己評価でポイントの高かった)


S(Satisfaction)の得点が高い
成果物評価,自己評価を満足度の調査で代替することができる
可能性
22
5-2-2. 役割・発言タイプアンケート

役割・発言タイプの評価


グループ演習におけるグループメンバーに対して当てはまる「役割」と
「発言タイプ」についてアンケートを実施
集計結果をもとに、個人の各役割について「グループとしての役割/発
言タイプ認識一致度」を求め、その値が最も高い役割/発言タイプをそ
の個人の役割/発言タイプとする
V
N
L
notL
n(L)
s(L)

定義

計算式

V = ( n(L) + S(L) * 1.5 ) / ( N + 1 )

23
グループとしての役割認識一致度
グループ人数
評価対象者
L(評価対象者)以外のメンバー
Lが他者から第一候補で○○(役割)だと評価された数
Lが自分自身を第一候補で○○(役割)だと役割評価した数
自己評価に重みを付けるために1.5倍する
役割分担アンケートにおける
「役割」と「発言タイプ」

「役割」の選択肢
A:リーダー
全体方針・計画に基づき進捗をチェックし、メンバーに作業を指示した。
B:実務エキスパート 専門的なタスクを、もっぱら一人で専従担当した。
打ち合わせなどで、メンバー間の意見を調整してグループ活動が円滑
C:調整役
に進むように采配をふるった。
作業の一部を担当したのみで、作業や議論にたいしてはあまり積極的
D:作業者
に参加しなかった。
E:フリーライダー
作業や議論にはほとんど関与しなかった。
N:その他
上記5つに当てはまらない。

「発言タイプ」の選択肢
O:検証家
P:直感派
Q:批判家
R:オプティミスト
S:発想家
T:オーガナイザー
24
客観的事実・情報の把握に関する発言。
主観・感情などに基づく直感発想的発言。
厳しい意見や指摘を含む発言。
前向きな意見や提案を含む発言。
新しい発想や視点に基づく発言。
議論全体を俯瞰し統合整理する発言。
役割発言タイプアンケートと
コンピテンシ評価結果との相関

成果物と自己評価でポイントの高かったオ班・カ班の共通の特徴


リーダーのコンピテンシの合計点が高い



リーダーの役割を担うことでコンピテンシの発揮・向上が見られる
詳しく考察した5つの班のうち4つの班においてそのような結果になった
オーガナイザーのコンピテンシの合計点が高い


リーダー候補(他己評価で一人でもリーダーと言われたことがある人)となる人数が多い
詳しく考察した班のうちオーガナイザーが存在する班では全てそのような結果に
なった
役割・発言タイプに関して、自己・他己の評価結果が一致して
いた人のコンピテンシの合計点が高い

詳しく考察した5つの班のうち4つの班においてそのような結果になった

班のメンバーと共通認識を確立することでコンピテンシが発揮されやすくなることが想定される
25
6.結論

「Webシステム設計演習」という授業においてPISAのCPS
フレームワークを基盤としたコンピテンシの評価を試み
た

学習目標設定、演習、成果物作成、自己評価の4つの側
面からコンピテンシにおける評価を行い、それらの合計
点と、ARCS動機づけモデルと役割発言タイプの調査と
の関連性を考察した

複数の知見が得られたことから、コンピテンシ向上の過
程を明らかにするための評価方法が有効である可能性
が示唆された
26
今後の課題と展望

フィードバック


27
本研究では、授業におけるコンピテンシの評価を行ったが、
フィードバックを行うところまで至らなかった
本研究で得られた知見の利用方法を見出し、効率的な評価
方法を提案することが必要
今後の課題と展望

ITPostの拡張

知識項目に関連付けされているがコンピテンシとの関連付けが行われていない

直接対応付けることは困難だが何かしらの方法で関連付け、学生が目標設定を行う際
に、スキル・コンピテンシを含めて考えることができるようになることで質の高いIT人材育
成の手助けになる
人材
像
BOKの知識項目、
PISAのCPS
製品・
技術
BOK
職種
CPS
シラバス
授業科目-BOK-CPS関連表
28
課外
活動
授業
科目
ご清聴、ありがとうございました。
29
30