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1.背景・目的 目的 1-①:全国の河川敷における問題 河川敷の 樹林化 河原固有の生態系 の消失 礫河原の 消失 •根粒細菌と共生する植物の生育環境要件の解明 •各地点におけるクズの生育領域の変遷及び窒素利用形態の解明 要因 2.調査方法 つる植物の大繁茂 Fig1. Change in riverside 2-①:調査地 多摩川は,関東を代表する都市河川の一つである. 河原固有の植物が衰退する一方で,クズ,アレチウリなどの つる植物が侵入,優先している. 本研究では,多摩川の中流域を調査対象地とし,土壌環境や 繁茂状況の異なる3地点において調査を行った. • 現地調査 本研究は,現地調査を2008年6月~2009年 1月, 2010年4月~11月にかけて,月1~2 回の頻度でサンプリングを行なった. • 屋内分析 1ー②:研究対象としたつる植物 アレチウリ(Sicyos angulatus),クズ(Pueraria lobata)を研究対象とする. Site F (府中四谷付近) 東京都 Site K (狛江付近) Site O(大栗川合流点付近) Fig5 .Riverside in Tamagawa 東京湾 神奈川県 Fig6. Study area(1) Fig.2 S. angulatus 2-②:調査内容 Fig7. Study area(2) Fig3 . P. lobata 根粒菌との共生 マメ科であるクズは,空気中の窒素を固 定する根粒菌と共生している. クズは根 粒菌から窒素を得ることにより,貧栄養土 壌においても繁茂することが考えられる. Fig4 . Nodule Site F Site O Site K ・クズが繁茂する一方、 アレチウリはごくわずか ・クズ,アレチウリともに 繁茂 ・粗粒、細粒の土壌が 混在しており,Site Oと 同様にクズ,アレチウ リがともに繁茂 1. クズ・アレチウリとその周辺植生の変遷の調査 2. 両植物の生長の観測 3. 両植物と土壌サンプルを,屋内分析用に採取 1. 土壌分析 • 含水率 • 粒度組成 2. 植物分析 • 採取した両植物の形態を記録 • 植物のバイオマスの測定 3. 植物および,土壌 • 全窒素,全炭素の分析(elementar社製Vario MICRO CUBE使用) 4. 安定同位体比N15の分析(MICROMASS社製Isoprime使用) 5. 安定同位体比δ15Nを用いた,クズにおける根粒菌由来の窒 素の比率の計測 4.2010年度 TN % 0.500 0.450 0.400 0.350 0.300 F 0.250 O 0.200 K 0.150 0.100 0.050 0.000 100528 100702 100806 100921 Fig.9:クズ生育土壌の窒素含有率 2010 5 4.5 4 soil-15N(‰) 3.5 3 2.5 F 2 K 1.5 O 1 0.5 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 soil-TN(%) Fig.10: それぞれの調査地点の窒素含有率 と土壌中の15Nの関係 クズ生育土壌の窒素含有率は昨年の分析と 同じような傾向が見られた。 Fig.10 は府中、狛江に比べて大栗だけ違 う傾向がみられるのは、大栗は他の二ヶ所 に比べて標高が高く、洪水の影響を受けに くいためだと考えられる。 5.まとめと今後の展望 この研究により,アレチウリの生育には富栄養な土壌環境が必要であり,土壌が富栄養であるほど大きく繁茂する事が確認された.一方で,クズは大 気中の窒素固定を行う根粒菌との共生により,土壌環境に大きく左右されず繁茂することが分かった.今後は他の植物との比較を行う事でクズ,アレチ ウリの生態をより詳細に明かすとともに,実際に現地でどのように在来種を駆逐し繁茂していくかの観察を行う事で,両植物の繁茂を抑制する対策に結 び付けていきたいと考える. ※2011年度は、アレチウリ以外の非根粒菌共生植物のサンプリング(50cm×50cmのコドラートを設置)を行い、同様に分析を進めている。今後は分 析結果より、根粒菌と共生する植物と共生しない植物の比較から、窒素循環における窒素総収支量を算出することを目的とする。より定量的に窒素利 用形態を把握することで、多摩川だけではなく、他の河川における樹林化対策にも役立つと考える。