結核病・ヨーネ病

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Transcript 結核病・ヨーネ病

結核病(tuberculosis)
人獣共通
対象家畜: 牛、水牛、しか、山羊
原因: ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)またはヒト型結核菌
(M. tuberculosis)。1882年、細菌学者ロベルト・コッホが発見。
細胞壁にミコール酸と呼ばれる脂
質を多量に含有し、通常のグラム染
色では染まりにくく、発育が遅いことと
相まって、発見が遅れた。また、酸、
アルカリ、熱(80℃、5分)、消毒薬、
治療薬に抵抗性が強い。
病状: 肺結核の
外に、結核性髄
膜炎、腸結核、
皮膚結核など
がある
600
ツベツクリンとBCG
400
300
結 200
核
死
亡 100
率 80
(
人 60
口 40
10
30
万
人 20
当
り
) 10
8
BCGは牛型結
核菌を13年間、
230代経代する
ことで弱毒化した
(1921年)
抗
結
核
剤
の
開
発
6
日本における結核流行の推移
発生率
(牛飼養100 万頭対)
25
2010 大阪 1件8頭
2009 千葉 2件2頭
20
2006 愛媛 1件1頭
2005 青森 1件1頭
15
発生率(%)
5
畜牛結核予防法 明治34年公布
4
3
2
1
0
10
5
0
牛結核病制御の経過
家畜伝性病予防法
昭和26年施行
肺
の
粟
粒
性
病
変
腸腸
間管
膜の
リ結
ン核
パ
節性
乾潰
酪瘍
変と
牛乳の加熱殺菌法は、L.
Pasteurによって開発され、結
核菌を殺し、クリームラインを損
なわない条件を求める。「乳お
よび乳製品の成分規格に関す
る省令」で、「62~65℃、30分、
またはそれと同等以上」と定め
られている。
乳脂肪球を超音波で破砕し、
高温の金属プレート内を通過さ
せ時間調整する技術が確立し、
高温短時間殺菌(HIST;72℃。
16秒)、超高温瞬間殺菌
(UHT;120℃、2秒)が主流と
なっている。
結核菌を殺す条件で大腸菌
やブドウ球菌などの病原菌は
死滅するが、芽胞を持つ菌は
生残する。
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
牛結核のOIEへの通知(2010年1~6月)
2010年には70ヶ国、2011年には49ヶ国が牛集団における牛結核
を報告した。発展途上国だけでなく、欧米でも複数個所での発生が
報告されている。WHOによれば、2011年に推定870万人の新規結核
患者が発生し、140万人が結核で死亡した。子供たちの結核は50万
人の新規患者と64,000人の死亡が推定されている。
米国における農場の結核清浄認定の仕組みと現状
区分
清浄化認定
結核の流行状態
牛とバイソンでの
発生なし
該当地域
米国の46州、プエルトルコ、
バージン諸島
直近2年間における
改良修正認定 牛とバイソンの総数の
0.01%未満
テキサス、カリフォルニア、
ニューメキシコ、およびミシ
ガン州の大半の地域
修正認定
牛とバイソンの総数の
0.1%未満
南部ミシガン州の北側11地
域およびその他の2地域
認定準備
牛とバイソンの総数の
0.5%未満
該当なし
未認定
牛とバイソンの総数の
0.5%以上または不明
該当なし
英国における2003年と2004年の結核患者数
イングランドと
ウェールズ
菌種
M. Bovis(ウシ型)
北アイルランド
2003
2004
2003
2004
2003
2004
13
15
1
2
2
3
4885
291
307
38
62
8
0
0
0
0
M. Tuberculosis(ヒト型) 6518
M. africanum
スコットランド
0
牛結核:地域別牛群統計
(2005年1月1日―12月31日)
イングランド
ウェールズ
スコットランド
移動制限群の割合
13.9
13.7
2.3
新規発生群の割合
9.1
8.5
1.2
「自然界の病原巣=アナグマ」が問題だが、自然保護活動の反対で対策がない
スコットランドにおける生乳と関係した食中毒の発生状況
年
事故 患者数
件数 (死亡数)
年
件数
患者数
年
件数
患者数
1980
3
98(4)
1987
5
30
1994
0
0
1981
8
782(3)
1988
1
4
1995
報告なし
1982
14
539(1)
1989
0
0
1996
0
0
1983
7
29
1990
2
6
1997
0
0
1084
5
27
1991
4
17
1998
0
0
1985
8
74
1992
2
6
1999
1
3
1986
2
10
1993
0
0
2000
1
2
スコットランドにおいては、飲用の生乳と生クリームは、1983年以降、加熱殺菌が必
須要件となった。しかし、それ以外では「ナチュラル」志向が強く、議員が動けない。
ヨーネ病(Johne's disease-paratuberculosis)
対象家畜: 牛、水牛、しか、めん羊、山羊
原因: ヨ-ネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis) は抗
酸の仲間であり、発育にはマイコバクチンと呼ばれる特別な成分を
必要とし、コロニー形成には2ヵ月以上を要する遅発育菌である。
臨床: 発症牛の糞便中に、発病数ヵ月前から多量に排泄され、糞便
またはこれに汚染された乳汁や飲料水によって経口感染する。慢
性の頑固な間欠性の下痢、乳量の低下、削痩等を引き起こす。妊
娠や分娩などのストレスが発病の誘因とされている。
予防・治療: 現在、実用的なワクチンはなく、化学療法も困難である。
本病の防疫対策には、患畜及び保菌牛の摘発・殺処分及び汚染
物の徹底した消毒が有効である。
検査: 血清学的検査としてELISA法、補体結合反応。感染牛の細
胞性免疫を指標とする検査として、ツベルクリン検査と同様な遅延
型過敏反応を検出するヨーニン皮内反応が行われる。
間歇性の難治性泥状・水様性の
下痢、急激な削痩、泌乳停止が
認められ、栄養状態は悪化する。
重症例では下顎の浮腫が認めら
れることもある。
下: 牛の腸粘膜 (肥厚してワラ
ジ状)
右下: 羊の腸:粘膜表面が粗く、
肉芽腫で敷石状
牛のヨーネ病の発生状況
平均: 737
平均: 386
牛結核が激
減した中で、
同じく抗酸菌
でありながら
ワクチンがな
いため清浄化
が遅れている。
1件当たり2頭
と発症例は少
ないものの不
顕性感染が
広がっている。
農水省は「牛のヨーネ病防疫対策要領」を定め、適切な飼養衛生管
理、牛の移動の際の証明書、発生確認時の防疫措置、まん延防止
対策、自主とう汰の推進が行われてきた。
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
2011/7-12
2012/1-6
全世界で発生
している。米国
では乳量低下
だけで年間15
億ドル損失して
いる。
オーストラリア
から日本への
輸入牛が平成
19年11件、20
年6件ヨーネ病
で差し止めに
なっている。
非結核性抗酸菌症
伝染病ではない
抗酸菌(ミコバクテリウム)の主な仲間達
結核菌群
非定型抗酸菌
(感染力は低い
が治療が困難
であり、健康弱
者は要注意)
人型結核菌(M. tuberculosis)
1950年頃までは、日本における死因の第1位を占めていた。
ツベツクリンとBCG、および化学療法剤の普及により激減
したが、近年、増加傾向にある。
牛型結核菌(M. bovis)
BCGは牛型結核菌を230代経代することで弱毒化した。
M. avium-intracellulare complex (患者の83%)
かつてはトリ型結核菌と称していたものを含み、結核菌に
効く薬にも抵抗性であり、ヒトの感染治療に困難を伴う。
M. kansasii (患者の8%)
上記の菌種より感受性であるが、結核よりも治りにくい。
M. scroforecium
上記の菌種より感受性であるが、結核よりも治りにくい。
M. marinum :魚類に多い菌種であり、漁業関係者が罹る。
かつて「非定型抗酸菌症」と呼ばれていた。人から人には感染せず、結核の様に急
速に悪化することも稀である。土や水などの自然環境に広く存在している。
肺に認められた白色結節
肝臓に認められた白色結節
腸管膜リンパ節の乾酪結節
本病の発生率は全国平均で0.5%前後であるが、汚染のすすん
だ豚群での感染率は60〜80%にも達することもまれではない。感染
豚は病気の症状を示さないので、食肉処理場での内臓検査で摘発
される。肥育出荷齢時の感染豚の腸間膜リンパ節には黄色の粟粒
大から小豆大の結核性病変ができるので容易に見分けがつく。
リンパ節に病巣ができても豚の増体率や繁殖成績には殆ど影響
を受けない。豚への感染は経口的におこる。最も危険な感染源は感
染した母豚である。感染母豚は分娩前後の2〜3週間に集中して、
扁桃で一時的に増殖を再開した菌を唾液や糞便中に大量に排泄す
る。糞便に汚染した母豚の乳房をなめたり、汚染オガクズを摂食す
ることにより感染菌は口腔、扁桃、腸管などの粘膜表面から侵入す
る。そのため哺乳を受けている子豚の大部分は感染することになる。
オガクズ堆積養豚場(糞便処理が不要だという理由で普及した)
での発生が多く、飼養形態としては好ましくない。オガクズの原木と
なる輸入針葉樹材が汚染されていることもあり、事前検査が望まし
い。
糞便の混じったオガクズ床敷中で旺盛な増殖を示すので、こまめ
に交換するようにする。また、野菜畑への汚染厩肥の還元は避ける。
豚の抗酸菌症は全部廃棄処分となる。豚や環境に
分布する抗酸菌が患者に感染したという証拠はな
いが、ほぼ同様な遺伝子学的特徴を有している。
平成18 年度のデータでは、10 月で60%であった発生率が、複数臓器で乾
酪壊死が認められた11 月以降80%に増加していた。