ブルセラ病・出血性敗血症

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Transcript ブルセラ病・出血性敗血症

ブルセラ病(brucellosis) 人獣共通
対象家畜: 牛、水牛、しか、めん羊、山羊、豚、いのしし
原因菌: Brucellacella abortus(牛)、B. melitensis(山羊・羊)、
B. suis(豚)、B. ovis(羊)を原因とする。グラム陰性、通性細胞内寄
生菌小桿菌で菌種毎に宿主特異性が高い。
臨床: 流産が主体で、時に精巣炎による不妊。種畜が感染する
と繁殖群全体に広がる。妊娠していない雌、性成熟前の雄は感染し
ても無症状。豚では関節炎・脊椎炎も多い。B. ovisではヒツジの精
巣上体炎が主。
予防・治療: 国内の牛は現在清浄であり、分離培養または血清反
応で患畜とされた動物は法律に基づき殺処分する。わが国では搾乳
牛、種雄牛、同居牛については5年に1回以上の抗体検査が義務づ
けられ、急速平板凝集反応によるスクリーニング後、試験管凝集反
応と補体結合反応を組合わせて診断する。汚染度の高い国ではワク
チンの接種と摘発淘汰が併用される。通常治療はしない。
前駆症状を伴わないで、突然、妊娠6
~8カ月に生じる流死産。流死産胎子、
胎盤、悪露、汚染した敷料などにより、
経皮・経口感染する。交尾感染もある
1955
着色した死菌を乳汁に
加えると抗体と反応し
てリングができる。陽性
牛の摘発淘汰により、
1972年を最後に日本で
発生していない。1950
年代の有畜農業政策
で輸入したジャージ牛
からホルスタインへと
広がった。
ヒトのブルセラ症: 感染症法で「五類感染症」に指定
ヒトの感染は、罹患動物との接触(農家、獣医師)、汚染畜産物
の摂取によって発生する。低温の乳汁や水では数ヶ月間生存する。
潜伏期間は通常2~8週。発熱(波状熱、弛張熱)、脾臓・リンパ節・
関節の腫脹、筋肉痛がある。男性では睾丸炎で無精子症になること
がある。マルタ熱(B.melitensis感染)では、約70%の患者に肝腫
大が認められる。本感染による致死率は一般的には2%以下と低い
が、心内膜炎を併発している場合には致死率は上昇する。細胞内
寄生菌なので、薬物が細胞内へ届き難く、治療に長期を要する。ヒト
に対する病原性は、B. melitensis(山羊・羊) 、 B. suis(豚) 、 B.
abortus(牛)、B. ovis (羊)、 B. canis (犬)の順。
野外
急速平板凝集反応
試験管凝集反応
補体結合反応
B. melitensis の感染家畜は国内での発生報告はなく、B. suis 感染
豚は1940年より後は報告がない。
リ れり ブ
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の 。検 病
牛 平疫 は
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摘 にの 国
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摘し
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。ラ お
さ
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
:現在流行中
B. abortus; 2012/1-6
B. melitensis; 2012/1-6
米国における牛罹患頭数, 1979 – 2009
Class Free は清浄、Class A
は感染率が0.25未満、Class
Bは1.5%未満に分けて州境
検疫を強化してきた。その
結果、全ての州がClass
Free となり、その持続年数
で色分けできる状態にまで
達した。
米国では1934年に成牛の11%が
感染しており、集団予防接種、陽
性牛の淘汰、環境浄化、州境に
おける検疫による清浄化計画が
始まった。1947年に6300頭、1966
年に252頭まで減少した。
Feral Swine, wild swine, wild pig, "hogzilla"
米国に豚が最初に輸入さ
れたのは1539年スペインから
とされ、放し飼いに近い状態
で飼育され、一部は逃げ出し
た。その後、ハンターによって
ヨーロッパ野生イノシシが輸入
されて山に放たれた。野生化
豚とイノシシとの交雑によって、
家畜の豚やイノシシとは違う
外貌の野生豚が誕生した。
ブタのブルセラ症
野生豚群には、養豚業に重大
な脅威となる様々な病原体が潜
伏する恐れがある。この地図は
1998年時点であるが、オーエス
キー病とともにブルセラ症の浸潤
が明らかになっており、養豚業者
のみならず、ハンターに向けて仕
留めた野生豚の取扱と喫食の際
の注意事項を広報していた。
出血性敗血症(hemorrhagic septicemia)
原因菌: 牛、水牛、しか、めん羊、山羊、豚、いのしし
原因菌: Pasteurella multocida の特定の血清型が原因であ
る。本菌は細胞外性寄生であり、免疫反応は液性である。
疫学: 病原菌は乾燥、日光に対する抵抗性が弱く、空気中では
長期間生存でない。発症牛あるいは保菌牛との接触により、あるい
は本菌で汚染された牧草、敷わら、飲水などから、経気道感染また
は経口感染する。一年を通じて発生するが、乾期の終わりから雨期
にかけて多発する。これまで、日本での発生はない。
予防治療: 発生国では不活化ワクチンが使用されている。治療
法はない。病原菌が清浄地に侵入した場合、致死率は非常に高い。
原因となる型の菌は牛、水牛はもとより山羊、めん羊、豚、象などか
ら分離されているので、これらの動物とともに本病が日本に持ち込
まれないように輸入動物の検疫が重要である。
臨床: 甚急性または急性に経過する。甚急性例では突然死する。
急性例では動きが鈍くなり、元気消失、発熱、反芻停止、流涎、流涙、
粘液様鼻汁などがみられる。咽喉頭部、下顎、頚側、胸前などが腫
脹する。咳、呼吸促迫に続き呼吸困難になり横臥する。体温下降し、
発症後、概ね数時間から2日間の経過で死亡する。若齢牛の死亡率
は高いが、成牛群における流行は7~10日で終息し、流行地では高
率に健康保菌牛が存在する。
発症直後の水牛。発熱、元気消失、落
ち着きなし。翌朝死亡。
肺漿膜下の点状出血
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
2011/7-12
2012/1-6
日本、オースト
ラリア、ニュー
ジーランド、カナ
ダ、西ヨーロッ
パにはない。
東南アジアの
谷間やデルタ地
帯において、稲
作に使役される
水牛の間で最も
多く発生し、B:2
型が多い。アフ
リカではE:2型
が多い。中近東
では両血清型
が混在する。