第八回 - 筑波大学図書館情報メディア系|図書館情報メディア研究科

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公共サービス論(2014.12.1)
第八回 指定管理者制度と
図書館
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1.制度導入経緯と概要
平成15年 地方自治法改正により導入
<地方自治法改正前>
管理委託制度
地方公共団体の管理権限の下で、公の施設の具体的
な管理の事務・事業を以下の管理受託者が執行
・公共団体(土地改良区など)
・公共的団体(農協、生協、自治会など)
・地方公共団体の出資法人のうち、一定要件を
満たすもの(1/2以上出資等)
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<地方自治法改正後>
指定管理者制度(平成15年9月2日施行)
地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」が、
公の施設の管理を行う。管理の主体に制約はなく、
株式会社などの民間事業者も可。
→地方公共団体が、地域の実情を踏まえ、自主的
な判断と責任により制度を活用
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図表出典:(株)三菱総合研究所. 図書館・博物館等への指定管理者制度導入に関する調査研究報告書. 2010年3月, p.3
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(参考)管理形態の多様化
-PFI、市場化テスト等ー
①PFI(Private Finance Initiative)
・公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間
の資金、経営能力及び技術的能力を 活用して
行う手法。
・「民間資金等の活用による公共施設等の整備等
の促進に関する法律」(PFI法)に基づき実施。
―2011年法改正 民間事業者による提案制度導入
内閣府HP
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(特徴)
・契約期間が長い(15~30年)
・VFM評価:Value For Money
・多様な運営方法
・・・サービス購入型、独立採算型、混合型
・建て替え時でなければ導入しにくい、企業に
とって見通しが立てづらい等の問題点
<導入事例>
三重県桑名市立中央図書館
東京都府中市立中央図書館 等
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②市場化テスト
・ 「官」が独占してきた「公共サービス」について、「官」と「民」が
対等な立場で競争入札に参加し、価格、質の両面で最も優れ
た者がそのサービスの提供を担っていくこととする制度。
・根拠法令:「競争の導入による公共サービスの改革に関する
法律」。「公共サービス改革基本方針」に対象として選定される
公共サービスの内容等が定められる(毎年度閣議決定)。
規制改革・民間開放推進会議HP
<導入事例>
・JETRO アジア経済研究所 専門図書館
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③業務委託
・私法上の契約関係契約に基づく個別の事
務又は業務の執行の委託。
「公立図書館の業務委託などに関する調査」
(図書館政策企画委員会)2010年4月現在 416館対象
・契約形態(回答334館)
業務委託契約 86.2% 労働者派遣契約 2.9%
その他 8.7%(直営・指定管理者・PFI)
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・「業務委託など」を導入した目的・理由(回答304館・複数回答可)
人件費が圧縮できる 58.2% 専任職員の定数削減 52.6%
・「業務委託など」を導入した主な目的・理由(回答290館)
専任職員の負担が時間的に軽減され、専門性の高い業務に
集中できる 20.1%
開館時間や開館日数の拡大によって利用者へのサービス
向上が図れる 18.1%
専任職員の定数削減 15.1%
⇒行財政改革とサービス向上の二分化
・業務委託内容(回答304館)
その他(資料装備、移動図書館者の運転、資料搬送)
奉仕業務Ⅰ(貸出・返却、利用者登録等の窓口業務)
資料管理(選書、資料発注、督促、配架)
奉仕業務Ⅱ(レファレンス業務、資料複写、児童サービス)
260館
258館
245館
189館
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2.図書館への指定管理者制度
導入状況
平成17年度
平成20年度
平成23年度
図書館
(同種施設含む)
指定管理者
導入施設数
公立の施設数に
占める割合
2,955
3,140
3,249
54
203
347
1.8%
6.5%
10.7%
文部科学省 社会教育調査
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(参考)制度導入の検討結果について
・都道府県立図書館は2013年までに4館導入済,2015年度までに1館導入予定
(出典)日本図書館協会「図書館における指定管理者制度
の導入の検討結果について2014年調査(報告)」
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種類別指定管理者別施設数(抜粋)
文部科学省 社会教育調査
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司書数の推移
司書の数は年々増加しているが、平成20年度に初めて非常勤職員数が専任・兼任
数を上回った。 平成23年度は、非常勤と指定管理者の割合が司書全体の63.
3%にのぼった。
0
2,000
平成8年度
4,000
7,179
平成11年度
7,552
平成14年度
7,485
平成17年度
7,122
平成20年度
6,941
平成23年度
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
1,423
16,000
18,000
(単位:人)
2,272
3,492
司書 (指定管理者)
*H20年度までは
非常勤職員として
カウント
5,659
7,655
6,219
2,203
8,501
司書(専任・兼任)
司書(非常勤)
司書(指定管理者)
割合逆転
○割合の推移
平成8年度
専任・兼任
非常勤・指定管理者
(出典)社会教育調査
83.5%
16.5%
平成11年度 平成14年度 平成17年度 平成20年度 平成23年度
76.9%
23.1%
68.2%
31.8%
55.7%
44.3%
47.6%
52.4%
36.7%
63.3%
3.制度導入後の国の動向
〇総務省関係通知…
資料1 参照 (略)
○文部科学省関係通知…
資料2 参照(略)
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(参考)「社会教育法等の一部を改正する
法律案に対する附帯決議」
平成20年6月 参議院文教科学委員会
指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮
して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと。
⇒「望ましい基準」改正(平成24年)
管理者との緊密な連携
・事業の継続的かつ安定的な実施の確保
・事業水準の維持及び向上
・司書及び司書補の確保,資質・能力の向上等
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4.制度と図書館をめぐる論点
(日本図書館協会 松岡 要氏の指摘)
①図書館は収益の生じない事業であること
②民間には、図書館の管理運営のノウハウは希薄である
③指定管理期間の設定は図書館事業の蓄積を困難にさせる
④図書館事業の全面的展開が難しい
⑤図書館協議会はどのように位置づけられているか
⑥指定管理者にゆだねる業務の範囲を限定すること
(日本図書館協会の見解)
「公立図書館の指定管理者制度について」
(平成20年12月)
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/kenkai/200812.pdf
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<反対論の例>
①社会教育法(又は図書館法)の理念に反する
②コストカットが最大の目的となってしまい、
サービスの水準が低下する。
③民間企業に公共のものを任せられない
④「市民」の施設という意識を失わせる。
⑤同じ教育委員会所管のもとで学校教育と
連携ができる
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⑥地域の独自性が活かせない
⑦3~5年の契約では、事業の継続性が担保できない
⑧企業としての採算性に無理がある
⑨指定管理者の指定の公平性・適切性に疑問がある
⑩職員の身分が不安定になる(パート雇用の増加等)
⑪民間の独自性・創意工夫を発揮しにくいタイプ
の施設である
⑫経営努力を引き出すインセンティブがない
(収益・報酬などが見込めない)
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<賛成論の例>
①サービスの向上
②効率的運用
③経費の節減
・その他、公務員型人事では実現できない高度
な知識・熟練能力を持った専門職確保の可能
性、組織運営の柔軟性 等
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(参考)導入後の状況に関する調査
「公立図書館経営における指定管理者制度導入に関する
現状調査」(2008.12 安藤 友張氏)
2007 年6月現在 回収率 73.6%
導入自治体59団体 導入館 69館
〇指定管理者制度の導入効果
・「経費節減」
(自治体 86.4% 指定管理者 78.3%)
・「利用者サービスの向上」
(自治体 83.1% 指定管理者 75.4%)
・「意思決定の迅速化」
(自治体のみ 13.6%)
・「図書館経営の弾力化」(指定管理者のみ 66.7% )
・「その他」
自治体・・・専門的人材の確保、図書館近隣地域への積極的な宣伝連携
指定管理者・・・司書の資質の向上、司書が司書として働ける
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〇指定管理者制度導入後の問題点
・「図書館経営の安定性の欠如」
(自治体 30.5%
指定管理者 49.3% )
・「長期的な視点に基づく図書館経営ができない」
(自治体 20.3%
指定管理者 44.9% )
・「図書館職員の労働条件の悪化」
(自治体 16.9%
指定管理者 36.3% )
・「その他」
自治体・・・「レファレンスサービスの質」
指定管理者・・・「教育委員会の職員(特に部課長)に図書館を
理解できる人を養成しないといけない」 等
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5.課 題
○(略)制度そのものの是非を一般的に論じる
のではなく、当該図書館・博物館について、制
度導入によって改善が可能な要因があるのか、
むしろ問題解決を困難にする要因となるのか、
という観点で個別事項ごとに検討するのが適当
である (国立国会図書館 柳氏)
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①自治体行政における図書館行政の意義の明確化、
住民等関係者に対して運営方針を提示
②方針を実現するためにどれだけの資源配分
(特に予算と人員)ができるか
③住民のニーズに応えた新しいサービスの開発・
提供を可能にするにはどのような条件が必要か
④どのような種類の専門職員が必要か
⑤コストパフォーマンスの最大化
⑥目標に見合った活動実績をあげるための指標を
どのように設定するか、モニタリングと評価を誰
が行うか
⑦利害関係者との良好な関係の構築と発展
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6.導入後のチェック項目
○「指定管理者制度を検討する視点 - よりよい図書館
経営のために」(試行版)(JLA図書館政策企画委員会)
・指定管理者制度適用後、経費の縮減だけでなく図書館
サービスの向上がどのように図られたかを客観的な視点
で評価を行うことが必要
・評価は当然、議会、住民、利用者に公開されることが重要
・それぞれからの意見を募ることも必要
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チェック項目
(1)サービス目標の達成状況と自治体の総合計画作成への関与
(2)業務日誌などの報告
(3)業務連絡会会議録
(4)業務の執行体制
(5)他機関との連携・協力
(6)利用者要望の受けとめ
(7)職員の育成等
(8)職員の待遇、労働条件等
(9)備品等の確認
(10)利用者の安全管理
(11)指定管理者制度適用の解除
(関係動向)
日本図書館協会「図書館事業の公契約基準について」
(平成22年9月)
資料3(略)
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<参考文献>
・松岡要.“公立図書館の管理運営の外部化”.新図書館法と現代の図書館.日本図書館協
会, 2009,p.224-246
・柳 与志夫. 社会教育施設への指定管理者制度導入に関わる問題点と今後の課題―図書
館及び博物館を事例として. レファレンス. 国立国会図書館調査及び立法考査局, 2012.2,
p.79-91 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3480644_po_073304.pdf?contentNo=1 ,
(参照2013-11-20).
・安藤 友張. 公立図書館経営における指定管理者制度導入に関する現状調査. 日本図書館
情報学会誌. 2008.12, Vol. 54, No.4, p.253-269
http://ci.nii.ac.jp/els/110007087494.pdf?id=ART0009020994&type=pdf&lang=jp&host=cinii&or
der_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1384931565&cp= , (参照2013-11-20).
・米谷優子他. 大阪府立図書館への市場化テスト適用の過程と課題. 大阪市立大学大学院創
造都市研究科 電子紀要, 9巻1号, 2012, p.86-108
・薬袋秀樹. 指定管理者制度と図書館. 図書館司書専門講座講義レジュメ
・他市における図書館への指定管理者制度導入事例(仙台市図書館協議会 資料)
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