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価値観を利用した
価値の交換システム
木下研究室
学籍番号 200702935
高瀬 智起
■背景・目的
・現代社会では、私たちは様々な情報技術ツールを備えたネッ
トワークを通って、情報資源(例えば知識、著述、個人情報)を
循環させている。
・それぞれの価値観を持ったコミュニティとコミュニティを形
成しない公共の間で情報リソースを循環させる必要がある。
・ネットワーク上で、情報リソースやサービスを提供する際
には、一元的な金銭価値に置き換えて決済を行うか、別の収
入源と引き換えに無料で提供するしかない。
地域通貨では効率よく取引相手を発見したり、コミュニティ
の範囲を越えた流通を行うことが困難である。
・以上を踏まえて情報リソースやサービスを、地域通貨的な
価値であるそれぞれの価値観で評価することでより滑らかに
循環させることができる。
・先行研究では、サービスと報酬の価値をそれぞれの価値観
のまま決定していたため万人に流通させることが困難であっ
た。
・提案する方法では、コミュニティがコンセンサスが得られ
るような価値の指標で価値を表現することにより、流通を容
易にさせる。
■情報コンテンツとサービスに価値を設定する場合の評価尺度の一つと
して、人間関係があげられる。これを拡張した人とリソースの間の関
係を示す。
■取引
総合指標によって要約された価値A、価値Bを以下の式に適用
し、取引を行う。
価値ベクトル:𝐕 = 𝒙𝟏 , 𝒙𝟐 , ⋯ , 𝒙𝒏
取引評価関数:𝑭𝒕𝒓𝒂𝒏𝒔 𝒆 𝑽𝒙 , 𝑽𝒚
(𝑽𝒙 :サービスの価値 𝑽𝒚 :サービスに対する報酬の価値
𝑭𝒕𝒓𝒂𝒏𝒔𝑨 𝑽𝟏, 𝑽𝟐 > 𝟎 かつ 𝑭𝒕𝒓𝒂𝒏𝒔𝑩 𝑽𝟐, 𝑽𝟏 > 𝟎
の場合取引が成立する。
)
𝑽𝑨𝒕 :時刻tにおいてAに蓄積される価値ベクトル
𝑽𝑩𝒕 :時刻tにおいてBに蓄積される価値ベクトル
取引前:𝑽𝑨 𝒕 , 𝑽𝑩 𝒕
取引後:𝑽𝑨 𝒕 + 𝟏 , 𝑽𝑩 𝒕 + 𝟏
取引後の財産量
𝑽𝑨 𝒕 + 𝟏 = 𝑭𝒑𝒓𝒐𝒑𝑨 𝑽𝑨 𝒕 , −𝑽𝟏 , +𝑽𝟐
𝑽𝑩 𝒕 + 𝟏 = 𝑭𝒑𝒓𝒐𝒑𝑩 (𝑽𝑩 𝒕 , +𝑽𝟏 , −𝑽𝟐 )
金銭的価値、達成感、リスクの大きさなど価値の尺度の候補を選定す
る。
多変量解析などにより主因子を抽出し、これより価値ベクトル空間を
設定する。
疲労感、達成感、金銭的価値と
いった複数の変数を多変量解析に
より、価値A、価値Bで表したもの
が右図である。
価値B
疲労感 価値A
達成感
これに基づいて、価値の設定手法
を提案した。
金銭的価値
■主成分分析による抽出
価値の表現には、多変量解析である主成分分析を用いる。
主成分分析とは複数の変数を少ない総合指標で要約する統計指
標である。
価値の尺度として疲労感、達成感、親切心を選びこれを各変数
とする。
■主成分分析による抽出
各サービスに対して各自が疲労感、達成感、親切心の各変数を評価
する。この評価は各自の自己評価なのでデータを基準化する。
基準化の式:(変数-その平均値)÷(不偏標準偏差)
ここでは10人分の3つのサービスに対する例を述べる。
■データの基準化
■主成分分析の流れ
基準化したデータを用い第一主成分、第二主成分を求める。
この第一主成分、第二主成分がそれぞれ価値A,価値B である。
疲労感を𝒙𝟏 、達成感を𝒙𝟐 、親切心を𝒙𝟑 とする。
Z=𝒂𝒙𝟏 + 𝒃𝒙𝟐 + 𝒄𝒙𝟑 で定義される変数Z を導入し、その不偏分散が
最大となるように定数a,b,c を定める。このように定めた変数Z
を第1 主成分とする。
第二主成分を求める際は第一主成分と無相関にする。第一主成分
を係数ベクトル(a,b,c) で表し、第二主成分を係数ベクトル(d,e,
f) で表す、このとき二つのベクトルが直交するようにする。
■具体的な流れ
疲労感を𝒙𝟏 、達成感を𝒙𝟐 、親切心を𝒙𝟑 とする。
Z=𝒂𝒙𝟏 + 𝒃𝒙𝟐 + 𝒄𝒙𝟑
で定義される変数Z を導入し、その不偏分散が最大となるように定
数a,b,c を定める。このように定めた変数Z を第1 主成分とする。
分散の式
𝟏
𝑺𝟐 =
𝒏
𝒏
𝒙𝒊 𝟐 − 𝒙
𝟐
= 𝒙𝟐 − 𝒙
𝟐
𝒊=𝟏
n個のデータの二乗の平均から平均の二乗を引いた値
■主成分分析の流れ(第一主成分)
第一主成分を求める。
主成分の分散が最大になるように主成分の係数を求める。単純に主
成分の分散の値を大きくすると際限がなく、求まらない。
「係数の二乗和が1になる」という制約を設けて最大化を考える。
つまり
𝒁𝟏 = 𝒂𝟏 𝒙𝟏 + 𝒂𝟐 𝒙𝟐 + ⋯ + 𝒂𝒏 𝒙𝒏
という新しい変数を導入し、以下の制限を付ける。
𝒂𝟏 𝟐 + 𝒂𝟐 𝟐 + ⋯ + 𝒂𝒏 𝟐 = 𝟏
■主成分分析の流れ(第二主成分)
第二主成分を求める。
第一主成分と同様に仮の係数とその二乗和が1である条件に、第一
主成分と無相関であるように求める。無相関にするには係数ベクト
ルが垂直、つまり内積を0にすればよい。
𝒁𝟐 = 𝒃𝟏 𝒙𝟏 + 𝒃𝟐 𝒙𝟐 + ⋯ + 𝒃𝒏 𝒙𝒏
という新しい変数を導入し、以下の制限を付ける。
𝒃𝟏 𝟐 + 𝒃𝟐 𝟐 + ⋯ + 𝒃𝒏 𝟐 = 𝟏
𝒂𝟏 𝒃𝟏 + 𝒂𝟐 𝒃𝟐 + 𝒂𝟑 𝒃𝟑 = 𝟎
■各サービスの主成分
達成感、疲労感、親切心といった各変数を第一主成分、第二主成分、
つまり価値A、価値B といった総合指標で表すことができた。
■主成分の解釈
各主成分を解釈するために主成分負荷量を求める。
(負荷量は、主成分の分散の平方根に係数をかけることにより求めるこ
とができる。)
各サービスで第一主成分つまり価値Aは、達成感と親切心が正の値、
疲労感が負の値を示すという傾向が読み取れた。
■ベクトル空間
各サービスの主成分のベクトル空間は以下である。
■結論
今回は取引する際の基準として、各自がサービスに対す
る価値をそれぞれ任意に決め、主成分分析を用いた価値
の総合指標で表すことによって取引を可能にした。
主成分の解釈により3つのサービスではサービス1,2
が似たような結果、3が1,2とは異なった傾向が読み
取れた。多くのサービスで主成分を求めることによって
さらに分類できる可能性がある。
■今後の課題
・今回は3つのサービスで行ったが、これでは不十分
なため、十分なサービスの数で主成分を抽出し、傾向
を読み取る。
・価値を円滑に流通させるための証券化
・地域通貨
地域通貨とは法定貨幣と同等あるいはまったく異なる価値があ
るものとして、特定の地域やコミュニティの範囲で参加者が自
発的に交換し合うためのシステム、またはそこで流通する貨幣
の総称。
法定貨幣から蓄積機能を排除し、価値尺度と交換機能のみ
を機能として生かそうというもの。
・法定貨幣
法定貨幣とは円やドルといった一般に流通している
貨幣のことのこと。
・価値尺度
・交換機能
・蓄積機能
※蓄積機能
価値の保存のこと、物には劣化や腐敗などで価値が下
がってしまうことがあるが、貨幣には価値としての劣化
がなく、いつまでもその価値を維持する。
不偏標準偏差とは?
⇒個々のデータから平均値を引いた値を偏差という。偏差の合計は
0になるので、個々の偏差を二乗する。これを偏差平方といい、そ
の合計を偏差平方和という。
(偏差平方和 ÷ データ数 −
で求めることができる。
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