介護学習資料(2015.05)

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介護学習資料
2015年5月
日本医療労働組合連合会
介護対策委員
介護保険の仕組み
・介護保険制度の目的と原則
☆目的・・・介護の社会化
☆原則・・・自由な選択によるサービス利用
全国一律のサービス(基準・料金等)
利用者が事業者と個別に契約する契約制度(それまでは措
置制度)
・介護保険制度の財源
☆介護保険制度(社会保険方式)は給付が増えれ
ば負担も増える方式。
☆介護労働者の賃金を引き上げるために介護報酬
を引き上げると、保険料負担が増える仕組み。
☆人員配置を引き上げるために介護報酬を引き上
げると、保険料負担が増える仕組み。
+
利用料(現行は1割負担)
☆利用者がサービスを使えば使うほど保険料負担
が増える仕組み。
1.社会保障制度改悪の概要
○税と社会保障の一体改革(新自由主義的改革)
・社会保障の解体(社会保障制度改革推進法)
→「安定した財源を確保」、「受益と負担の均衡」、
「持続可能な社会保障制度」
→「自助・共助・公助の組合せ」、「重点化・効率化」、
「社会保険制度を基本」、「範囲の適正化」
・税制度の転換
→市場化に合わせた法制度への転換
→消費税の増税(基幹税化)、住民税への税源移譲
→「量出制入」から「量入制出」へ
※量入制出:収入(税収)を量って、支出をコントロールすること
→この場合、必要なサービスが費用を理由に制限されかねない

「社会保障制度改革推進法」の中身
Q.「受益と負担の均衡」ってなんだ?
A. サービスの利用(受益)に見合った保険料・利用料(負担)
を払うということ
カイくん:「お金がないとサービスを受けられなくなることにも
つながるんじゃないかな」
Q.「持続可能な社会保障制度の確立」ってどういうこと?
A. 財源が増えることによって制度を維持できなくならないように、
社会保障制度の仕組みを変えていくということ
カイくん:「制度を持続させることが第一義課題になって、国民
の『いのち・暮らし』が後回しにされないかな」

「社会保障制度改革推進法」の中身
Q.「自助・共助及び公助が最も適切に組み合わされる」って
どういうこと?
A. 民間(保険外)サービスやボランティアを活用する制度にするということ
カイくん:「『まず自分達で』が制度に組み込まれれば、それを理由に制度を
使わせないケースも出てきやしないかな」
Q.「給付の重点化及び制度の運営の効率化を同時に行い」ってど
ういうこと?
A. 給付対象を重度に限定したり、民間サービスを活用すること
カイくん:「『保険あって、介護なし』が強まるよね」

「社会保障制度改革推進法」の中身
Q.「年金・医療及び介護においては、社会保険制度を基本」って
どういうこと?
A. 財源の公費・保険料の内訳が明確な社会保険での運営を基本にすること
カイくん:「制度を充実させるためには保険料の引き上げが条件にされるし、
負担増を煽って給付抑制がしやすくなるよね」
Q.「主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てる」ってどういうこ
と?
A. 消費税を社会保障の目的税にするということ
カイくん:「保険料のほかにも、国民の負担が増えるってことだよね」
逆進性の強い消費税を社会保障の財源にすれ
ば、庶民の負担はさらに増えることに

「社会保障制度改革推進法」の中身
Q.「介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービスの範
囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る」ってどうい
うこと?
A. 今回の制度改正で特養の利用条件を重度者に限定(要介護度3以上)したり、
要支援サービスの予防訪問介護・予防通所介護を保険給付から外したみた
いに、保険給付の対象を狭めるということ
小夏:「これからも、使えるサービスがどんどん減らされるって
ことでしょう?政府は、2025年にむけて『改革』をしよ
うとしているんですものね?」
2.介護保険制度の改悪
○介護保険法の改正
・2014年6月「医療・介護総合法」の成立
→19本の法律を一まとめにして強行
→5年に一度の「法改正(=制度見直し)」を前倒し
・「制度見直し」と2つの柱
→給付抑制と負担増
→「地域包括ケアシステムの構築」と「介護保険制度の
持続可能性の確保」
介護保険制度 の構造的改悪
●要支援者の訪問看護、ディサービスを縮小・打ち切り
国から市町村に丸投げ「総合事業」への移行
「専門的サービス」から「多様なサービス」への移行は介護削減がねらい!
ボランティアによる
「多様なサービス」に
「給付」から「総合事
業」へ移し替え
新たな振り分けで介護外し
出典:中央社保協資料
介護保険制度 の構造的改悪
●特養からの要介護1・2を締め出し
出典:中央社保協資料
介護保険制度 の構造的改悪
●根拠のない利用料の2割負担
財務省は、
既に対象者の拡大を
しようと話し始めてい
るよ!
(2015年4月)
出典:中央社保協資料
介護保険制度 の構造的改悪
●施設の費用負担軽減制度(補足給付)の縮小
※
●
●
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出典:中央社保協資料
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2.介護保険制度の改悪
○介護報酬の改定
・報酬改定の基本的な考え方
→「中重度・認知症対応の強化」、「人材確保対策」、
「サービス評価の適正化」
→賃金・物価の状況、介護事業者の経営状況等を勘案
・2.27%の引き下げ改定
→うち、在宅▲1.42%、施設分▲0.85%
→処遇改善分1.65%、認知症・中重度者対応分0.56%、
その他部分▲4.48%
病院サービスから在宅へと
いう社会保障制度改革の流れの中で、老健の
在宅復帰機能は重要視されているわ。でも、働
いている人の労働環境については何も
話し合われていないみたい。
いくらサービスを利用し
ても、報酬額が一定の包括報酬サービス
を普及させて、全体の費用を抑制につなげ
ようとしているんだ。
処遇改善加算は、これまでの一人
平均15,000円相当の加算に加え、新たな評価(一人
平均27,000円相当)が創設されたけど、基本報酬が大幅
にマイナスされて、賃金・労働条件の引き下げ提案がされて
いるところも出ているよ。
「適正化」という言葉は
行政用語で「縮小」とか「削減」という
意味で使われるんだ。
「人員配置の見直し」
で効率的な運用をと言ってるけど、利用者
の安全やサービスの質、労働者の労働環境などに
影響が出るわよね。現に、看護師が事業所を掛
け持ちさせられて大変っていう事
態も起きているわ。
介護報酬とは?
 ○介護事業所が提供したサービスに対して介護保険から毎月支払われる報
酬で、介護給付とも呼ばれます。
 ○それぞれのサービス(デイ・訪問介護・特別養護老人ホームなど)の単
価は介護報酬によってきめられています(公定価格)。
 ○介護報酬は主に基本報酬と加算から構成されます。サービスごとに加算
があり(体制強化、機能強化、認知症対応など)、要件を満たした場合
にのみ算定されます。
 ○介護事業所にとっては、利用料と合せて唯一と言える収入源となります。
事業所は介護報酬から人件費や事業所の経費などを捻出しています。
各種加算
介護報酬は、介護サービス
の水準や内容を事実上決定づけるこ
とになります。
【例】要介護3の利用者が通所介護(通所規模)を1日8時間、月10利用した場合
基本報酬9,440単位+各種加算730単位=10,170単位
10,170単位×10円(標準単価は1単位10円)=101,700円
介護報酬(9割給付) :91,530円
利用料負担(1割負担):10,170円
居宅介護(ケア
マネ)はプラスと思いきや、
加算が基本報酬に包含された
ので実質はマイナスに近い
よね。
ほぼ、全ての事業
で基本報酬はマイナス改定になっ
たよ。特養やデイでは特にそ
の幅が大きくて、事業の存続
にも影響があるよ。
独居高齢者加算
認知症加算
○【例1】ケアマネジャー(居宅介護支援サービス)
(改定前)
・ 要介護1又は2の人のマネジメントに対するひと月当たりの基本
報酬は増えました。
・ 認知症加算・独居高齢者加算は基本報酬に包括化。
(改定後)
○【例2】デイサービス(通常規模デイ、7h以上9h未満サービス)
・要介護3の人が月10回利用した場合の報酬
処遇改善加算
個別機能訓練加算Ⅰ
基準の人数に加え、2人
以上の職員の配置など
の要件のクリアが必要。
(改定前)
基本報酬
4.9%マイナス
(改定後)
中重度者ケア体制加
算
サービス提供体制強化加
算
13.7%マイナス
・要介護1の人の一日当たりの基本報酬
(改定前)634単位
→
594単位
→
加算を取るため
には、人を増やし
たり職員に認知症
の研修を受けさせ
たりなどハードル
が高く、コストも
かかるため費用対
効果の面でも難が
あります。
認知症加算
○【例3】特別養護老人ホーム(多床室)
(2015年8月まで)
基本報酬に
包括化
(2015年8月以降)
547単位
6.3%マイナス
差額470円は自己負担に
ひと月で
14,100円
一年で、なんと
169,200円も
の
負担増!
介護報酬のマイナス改定の影響
介護労働者
介護事業者
介護事業者
介護労働者
経営悪化で運営
が困難に。
介護職の
人材不足。
利用者
処遇悪化でます
ます人材離れ。
介護労働者
職員不足が、介
護の質に悪影響。
利用者
介護事業者
社会保障の削減
事業悪化と人材
不足で事業所の
閉鎖。
介護を受けたく
ても、受けられ
ない。介護難民。
利用者
○介護保険制度の改善(社会保障制度の改善)
・国庫負担割合の引き上げ
→人権原理の強化
・介護従事者の処遇改善
→賃金の引き上げ
→労働実態の改善
・税制度の改善
→お金の使い方の改善
→お金の集め方の改善
人権原理とは
生存権を背後に持った社会保険
の原理とされ、保険料額やリスク
の高さに関わらず一定の給付を保
障する原理⇔保険原理
○ 介護保険制度の国庫負担を大幅に引き上げ、介護を必要とするすべての人
が必要なサービスを受けられるようにすること。
○
保険料・利用料負担が多くてサービスが利用できない人がいなくなります。
○
介護報酬を引き上げても、保険料負担が大きく引き上がらなくてすみます。
○
サービスの充実=負担の増加ということが解消され、負担の心配なく介護保険制度を
充実させることができます。
○ 介護従事者の処遇改善を実施すること。
○ 介護従事者が働きつづけられる労働環境に改善すること。
(全職種の正職員の平均年齢38.4歳、平均勤続6.8年)
処遇の悪さが離職
につながり、人員不足がや
り甲斐の喪失につながっ
ています。
不現
安在
の
生
活
の
不将
安来
の
生
活
の
健
康
面
の
不
安
ケ
ア
事
故
雇
用
不
安
実医
施療
行
為
の
感
染
症
の
不
安
不介
安護
定制
度
が
そ
の
他
○ 全産業平均より9万円も低い介護従事者の賃金を改善すれば「生活の不安」が解消し、
離職防止、人材確保につながります。
○ 人材確保がすすみ、人員配置が増えれば、利用者のニーズにあった専門職としてやり
がいのある介護が提供できます。
○「戦争する国づくり」ではなく、医療・介護・社会保障の充実を
○お金の使い方、税金の集め方を考えれば社会保障は充実できます
介護保険財政(約10兆円)の内訳
(2015年度)
国庫負担は国家予
算(96.3兆円)の
2.59%
オスプレイ5機
分があれば、報酬
引き下げの国負担
分を賄えます
介護保険引き下げの費用
軍事費負担は
介護保険費用の国の
負担額の2倍!
防衛省「平成27年度予算の概要」より
○
国はお金がないと言って社会保障・医療・介護を削減しつづける一方で、軍事費には
多額の予算を付けています。
○
「戦争する国づくり」ではなく「国民生活・福祉優先」でお金の使い方を変えれば、
私たちの安心した暮らしは実現できます。
○「戦争する国づくり」ではなく、医療・介護・社会保障の充実を
○お金の使い方、税金の集め方を考えれば社会保障は充実できます
消費税の行方は法人減税!?
○
税金は所得税・法人税を基幹税に
○
思いやる相手の第一は国民に
4. 労働組合の役割
○運動の方向性と課題
・実態の告発
→介護労働、制度の実態・問題点を明らかに
・職場の改善
→職場闘争と制度闘争を両輪で
・世論の形成
→宣伝、記者発表など世論に訴える取り組み
・組合拡大
→介護分野の組織率を上げ数を力に
4. 労働組合の役割
・実態の告発と改善
4. 労働組合の役割
・職場での要求闘争
4. 労働組合の役割
・世論の形成
4. 労働組合の役割
・組合拡大
何よりも!
一緒に取り組む
仲間を増やせば
運動の広がり
は何十倍!
可能性は無限大!

さあ、今こそ労働組合の出番で
す!
みんなで一歩を踏み出そ
う!
私たちは、社会保障の現
場で患者や利用者に一番近いと
ころで働いています。だからこそ、今
の社会保障改革は何が問題なのか、本
来、社会保障がどうあるべきか、国民
に対して説得力を持って訴え、呼び
かけることができます。