特許明細書の書き方(2)

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本資料の利用について
本資料は、「平成24年度特許庁大学知財研究推進事業」において、特許庁の委託
を受けた国立大学法人大阪大学 知的財産センターが開発したものであり、著作者
人格権は国立大学法人大阪大学に、著作財産権は特許庁に帰属しています。
本資料は、著作権法上認められる利用のほか、非営利目的に限り、改変・引用・
複製・頒布を行うことができますが、これらの行為及びその内容に関する責任は利
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本資料は、正確を期して開発したものですが、不正確な情報や、古くなった情報を
含んでいる可能性があります。
本資料を利用したことから生じるあらゆる損害・損失について、国立大学法人大阪
大学及び特許庁は、一切の責任を負いません。
営利目的での利用、翻訳の希望その他、不明な点がありましたら、以下へご連絡く
ださい。
特許庁 企画調査課 活用企画班 03-3581-1101 (内線)2165
第11時限
特許明細書の書き方(2)
演習
2
第11時限 目次
11-1 前回のおさらい
11-2 事例
11-3 演習
33
11-1
特
許
出
願
書
類
明
細
書
の
構
成
前回のおさらい
:特許出願書類の内容と明細書の構成
必
要
な
書
類
願書
発明者や出願人の氏名などを記載して、発明者や出願人を特定する。
特許請求の範囲
発明を特定する事項。権利範囲となる
明細書
発明の内容を明確かつ十分に詳細に説明する
要約書
発明の内容理解に役立つ図面を添付する。
発明の内容によっては不要であり、その場合は添付しない
図面
簡潔に発明全体のポイントを表示する
【書類名】
【発明の名称】
【技術分野】
【背景技術】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【課題を解決するための手段】
【発明の効果】
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【産業上の利用可能性】
【図面の簡単な説明】
【図1~・・・】
【符号の説明】
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11-1
研究者と明細書
明細書は発明内容に最も詳しい研究者が作成することが望ましい
明細書の項目
記載すべき内容
研究レポートでの対応する項目
発明の名称
発明の内容を簡単、明瞭に表す。1
0~20字程度
研究の名称
技術分野
対象技術の産業分野、発明を適用
できる装置、物品など
研究の分野
背景技術
特許公報や一般文献のうち内容的
に近いものを挙げ説明する。
従来技術レベル、研究の背景など
発明が解決しようとする課題
従来の技術の問題点
研究のテーマ、目標など
課題を解決するための手段
どんな手段で解決するのか。(通常
は「特許請求の範囲」と同様の起債)
(該当項目なし)
発明の効果
従来技術よりも有利な点を記載。
データ等を用いた説明。
実験結果、研究結果など
発明を実施するための最良の形態およ
び実施例
実際に行った実験、試作の例。それ
らの理論的説明。
(☆理論からの推測で実施可能な
例)
実験例、実験データ、考察など(☆印は該当項目な
し)
図面の簡単な説明
図面ごとに、平面図、断面図、・・・と
説明。主要な符号の説明。
装置図、フロー図などの説明
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11-2
事例:人工衛星の例
A研究員は、人工衛星の研究をしている。現在研究中のものは、ソーラーパネルとカメラとを搭載した人
工衛星であって、前記ソーラーパネルは宇宙空間で人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モー
ターにより角度が調整可能であり、前記カメラはズーム調整用モーターにより倍率が調整可能である。こ
のような人工衛星をシミュレーションした結果、パネル角度調整用モーターとズーム調整用モーターとが
同時に作動した場合、これら2つのモーターの振動によるうなりが発生し、このうなりの周波数にソーラー
パネル全体が共振し、ソーラーパネルが破損する問題があることが判明した。A研究員はこの問題を解
決するため、ソーラーパネルの中心にダンパーマスを設けたところ、このダンパーマスのダンピング効果
によってソーラーパネルの振動を吸収し、ソーラーパネル全体が共振するのを低減でき、ソーラーパネル
の破損を防止できることがわかった。
ダンパーマス
パネル角度調整用モーター
ソーラーパネル
ダンパーマス
ソーラーパネル
ズーム調整用モーター
カメラレンズ
特許ワークブック 書いてみよう特許明細書出してみよう特許出願 特許庁 独立行
政法人 工業所有権情報・研修館発行 2011年 を元に作成
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11-2
事例(人工衛星の例):従来技術
<1>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラーパネ
ル(カメラについての説明はない)
<2>人工衛星に搭載され、ズーム調整用モータにより倍率が調整可能なカメラ(ソーラーパネルにつ
いての説明はない)
<3>風力により振動する部分にダンパーマスを設け、振動を吸収するようにした地上設置用のソー
ラーパネル
<4>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラーパネ
ルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星(パネル角
度調整用モーターとズーム調整用モーターのうなり、またソーラーパネルの共振の説明はない)
<5>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラーパネ
ルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星であって、両
方のモーターが同時に作動した場合、これら2つのモーターの振動がうなりを発生することを説明してい
るもの(ソーラーパネルの共振の説明はない)
<6>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラーパネ
ルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星であって、両
方のモータが同時に作動した場合、これら2つのモーターの振動がうなりを発生し、このうなりの周波数
にソーラーパネルが共振することを説明しているもの
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11-2
事例:出願にあたっての検討のポイント(1/3)
○発明が解決しようとする課題は?
→2つのモーターのうなりに起因するソーラーパネル自身の共振により生じるソーラーパネルの破損を
防止すること。
○「ソーラーパネル破損の原因のメカニズム」は?
①2つのモーターが同時に作動、振動する。
②2つのモーターの振動がうなりを発生する。(2つのモーターの
作動時の振動周波数がうなりを発生する範囲内にある。)
③うなりがソーラーパネルに伝達される。
④ソーラーパネルが共振し、破損するまでの疲労を生じる。
(ソーラーパネル固有振動周波数がモーターのうなりの周波数に
共振する範囲にある。)
○課題を解決するための手段と、「ソーラーパネル破損の原因のメカニズム」との関係は?
→「ソーラーパネルの共振」をダンパーマスのダンピング効果によって抑制する関係。
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11-2
事例:出願にあたっての検討のポイント(2/3)
○「ソーラーパネル破損の原因のメカニズム」から、ダンパーマスを設ける以外の課題
を解決するための手段は?
①2つのモーターを同時に作動させないように制御する。
②モーターを1つにして、クラッチを介してソーラーパネルとズームの両方を切換駆動する。
③少なくとも一方のモーターにモーターの振動を吸収するダンパーマスを設ける。
④少なくとも一方のモーターに振動を相殺する加振器(スピーカー等)を設ける。
⑤2つのモーターの振動周波数をうなりが生じない範囲に設定する。
⑥2つのモーターのうなりを相殺する加振器(スピーカー等)を設ける。
⑦モーターのうなりの伝達経路に振動の伝達を減衰する柔軟部を設ける。
⑧ソーラーパネルの固有振動数をモーターのうなりに共振しない範囲に設定する。
⑨ソーラーパネルの共振を相殺する加振器(スピーカー等)を設ける。
⑩ソーラーパネルの共振によって疲労を受けやすい部分を補強する。
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11-2
事例:出願にあたっての検討のポイント(3/3)
○本発明の本質は?(=特許請求の範囲の例)
→人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラーパネルと、ズー
ム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラとを搭載した人工衛星であって、前記両モーターの作動時
のうなりに前記ソーラーパネルが共振してソーラーパネルが破損するのを防止する破損防止手段を備えた
人工衛星。
※(注1)先の例では、②、③、④、⑥、⑦、⑨が権利範囲として含まれる。
※(注2)下線部を「ソーラーパネルの共振を防止する共振防止手段」とした場合、先の
例では③、④、⑥、⑦、⑨が権利範囲として含まれる。
→必要に応じて、請求項を追加し多面的な権利取得を目指す。
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11-2
事例:従来技術との関係
【請求項】人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能な
ソーラーパネルと、ズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラとを搭載した人工衛
星であって、前記両モーターの作動時のうなりに前記ソーラーパネルが共振してソーラーパネ
ルが破損するのを防止する破損防止手段を備えた人工衛星。
(1)従来技術が1、2、3であるとき進歩性は?
→
(2)従来技術が3、4であるとき進歩性は?
→
(3)従来技術が3、5であるとき進歩性は?
→
(4)従来技術が3、6であるとき進歩性は?
→
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11-2
事例:演習
ソーラーパネルの事例で
①を権利範囲とする特許請求の範囲を書いてみよう。
②を権利範囲とする特許請求の範囲を書いてみよう。
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11-3
演習1
特許請求の範囲を書いてみよう!
調節部
注湯管
お湯を調節部で分岐させて、
コーヒーの濃度調節を行うドリッ
プ式コーヒーメーカー
お湯
ペーパーフィルタ
注:「コーヒー容器と、抽出容器とを備え
るコーヒーメーカにおいて、抽出容器と
コーヒー容器にそれぞれ注湯する供給
管を設け、それぞれから供給する湯の量
を調節するようにしたコーヒーメーカ」は
すでに知られていた。
湯供給管
バイパス管
抽出容器
コーヒー豆
把持部
抽出されたコー
ヒー
コーヒー容器
(耐熱ガラス製)
ヒーター
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11-3
演習1
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11-3
演習2
特許請求の範囲を書いてみよう!
発明
従来
石鹸の入れ物
従来の石鹸の入れ物は、底面の中央部に水はけのための貫通孔があったため、
時々石鹸自体がこの貫通孔を塞ぎ水はけが悪くなるときがあった。さらに、底面が直
接、風呂場の床面に接していたので、床面にお湯が流れると、石鹸が濡れることが
あった。→ 貫通孔を入れ物の周囲に設け、水はけを良くするとともに、入れ物の底
面に足を設け、風呂場の床面に接しないようにした。
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11-3
演習2
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