創造性の教育

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Transcript 創造性の教育

子どもの創造性を育てよう!!
弓野憲一
静岡大学名誉教授/日本創造学会会長
創造性を伸ばすには
▶ 学習には 「学び」 と 「創り」 がある。東洋や日本では、
学びが強調される。しかし、西欧先進国の学習は
学びと創りをくり返す。
▶ 家庭で創造性を伸ばすには、 a)挑戦をほめること、b)創
造的行動をほめること、
c)Howのみでなく、What、Why疑問を増やすこと、
d)正答のみではなく思考の過程を評価すること、
e)データ・事実に基づく議論・ディベートを奨励すること
等が有効であろう。
日本の教育の弱点
山川健次郎
<履歴>
嘉永7年(1954)会津生まれ
慶應4年(1868)戊申戦争に参加
明治4年(1871)アメリカに留学
明治12年(1879)日本初の物理学教授
明治34年(1901)東京帝国大学総長
明治44年(1911)九州帝国大学初代総長
▶ 九州帝国大学が開校した時の学生に対する訓示の中に、
「日本の学生はハウ、どのようにという問いには深く注意するが、
ホワイ、なぜなのかという言葉を発しない」。
100年後も日本の教育の弱点になっている。
学問・科学技術の創発・進展
▶ 現在の日本------科学技術の先進国
しかし、学校教育の中には、科学技術を創発し独自に発展させ
る基礎教育が足りない。
▶ 学問・科学技術の創発・進展には、
「ウォッツ」「ホワイ」「ハウ」疑問が密接に関連する。
「学び」に価値を置く日本の学校や社会では、
もっぱら「ハウ」疑問が優先される。
西欧先進国の創りを重要視する教育には、「ハウ」とともに「ウォ
ッツ」「ホワイ」
が大切にされる。
学びとは何か?
「学び」の語源は「まねる」にあるという。学ぶことの第一
義的な意味がまねるにあるとすれば、
まねる人とまねられる人(対象)が必要になる。その対象
には、言葉、新しい知識、行動、スキル
価値、好み等々が含まれる。人はそれらの諸対象を教
師・親・家族・友人・社会を通じて、さらに
は本・教科書・各種のメディア等を通じて獲得していく。
創りとは何か?
作りと創りの動詞の形は「作るmake」と「創るcreate」である。
作る: モデルや設計書があり、モデルをまねて作品を描いたり
、設計書に従って「もの」を完成する。
創る: 幼児のブロックを用いたタワーづくりであっても、他人の
作品をまねたのではなく、その子独自のイメージによってそれを完
成した場合には、「創る」と言う語が用いられる。このことから、創り
には、他の人のまねではなく作者独自の何かが加わったものであ
ることがわかる。それゆえ創りは、美術・音楽や工作のみでなく、学
校・家庭で奨励できる。
****創りは常に間違いを含んでいる。試行錯誤が要求される。
⇒「創り」を実施することが、「創造性の教育」に有効。
学びと創りの特徴(弓野2012)
学び
創り
内包しない
内包する
② 学習の効率
高い
低い
③ 教材の真偽
全て真
判断必要
④ 知識の範囲
狭い
広い
⑤ 知識の忘却
起きやすい
起きにくい
⑥ 学習に対する責任
低または中
高い
⑦ 知識に対する自信
低い
高い
⑧ 自己の関わり
低い
高い
あまり無し
有り
自信なし
自信有り
期待できない
期待される
厳粛
自由・のびやか
① 新学問・新科学技術創出
⑨ 議論
⑩ 議論に使える知識
⑪ 創造性の伸張
⑫ 場の雰囲気
日本と西欧の学校における創り
▶ 日本の学校における創り
現職教師の意見: 「図画・工作」の中に少しと「総合学習の時間」に少し、
「創り」を意識した授業
▶ 西欧先進国の授業には学びとともに創りが常にある
・ アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フィンランド
例:「創造的作文: creative writing」 「ドラマ: drama」
例:日本の算数では「12-7」。アメリカでは「12は何と何に分けられますか」
フィンランドの合科の授業では、「もてなす」をキーワードにして、一人の
生徒に対する「もてなしのある誕生会」を企画し実施していた。お祝いの
言葉、音楽、飾り付け、料理等、まさしく創りの教育が実践されていた。
英国の小学校 4年生--- 教師は、あなたの意見は、を求めていた。
創造性教育とは?
全教科・諸活動の中で、一人ひとりの子ど
もや集団に合った「創り」を実行する教育
 そして「価値のある何か」を創り出す教育
 学びをベースにしながら、その子らしい

意見・知識・スキル・表現等を奨

励する教育

なぜ今創造性教育が重要か

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




国際競争力向上(鉄鋼、造船、電機、メモリー、自
動車製造 ⇒ 現在 失速)
豊かな社会の継続:(例:年金、医療)
独自な日本文化の継承のため
知識創造社会を牽引できる資質
意味のある人生をつくる(一人ひとり異なる)
有限な地球環境の維持
青色ダイオードの発明(中村博士)
いい社会
、 エネルギー効率の
先進国は創造性教育を大切にしている
学びと知能
▶ 日本の教育では「学び」が強調される。
学びの語源は「まねる」あるという。まねるためには、
まねるためのモデルや手本が必要とされる。
学校教育におけるモデルや手本は、教科書、学説、
教師の行動や価値観等であろう。
▶ 学びの中心にある知的能力は「知能」である。
日本の教育の主流である、教科書の理解・記憶・再生
が中心の学習の高さと速さは、「知能」と密接に関係
することが実証されている。
創りと創造性





創りには「私:自己」が深くかかわる。「私の意
見」「私の考え」「私の表現」「私らしいもの」等
々である。
創りを奨励する中で出現する、その子の最も
優れた所産が、その子の創造性に当たる。
「ほめる」ことで、創りの中でその子のもって
いる創造性を伸ばすことが可能になる。
創りは多くの失敗と試行錯誤を必要とする。
間違いを受け入れて、ねばり強く問題解決を
励ます必要がある。
知能の高い人は創造性も高いか?
・小学校低学年では、
知能が高いと創造性も
高い。しかし、5年生以
後は両者は、-ほとん
ど関係ない。
・本田宗一郎
・安藤忠雄(建築家)
・稲森和夫(キョウセラ)
創造性の発達


創造性の発達は直線
的ではない
日本とカナダの子ども
の創造性発達の比較
日本の子どもの特性(欧米と比べて)
[誇れるもの]
 手先が器用、改良・改善力がある
 色に関する感性が優れている
 協調的(同調的?)
 忍耐強い?
 [足りないもの]
 自分の意見を持たない(議論が苦手)
 創造が苦手(創造性を持った人はいる)
 論理力が弱い
 第三者への表現力が訓練されていない

家庭で育てる創造性(1)
①子どもの小さい時期に、海・山・川等の自
然に手足で直に触れ遊ばせる。
 ②子どもの科学的な目が育ってきたら、関
心を示した事象等について、親子の研究プロ
ジェクトを提唱する。
 ③「ピラミッドの高さはどんなにして測れるだ
ろう?」を親子で解く。
 ④人間の歴史、人間と動物、人間の「創造」
についての本や記録を読んで語り合う。
 ⑤宇宙や天体等を見、またそれについて書

家庭で育てる創造性(2)
⑥読書やラジオ等からの学習を奨励する
 ⑦両親が確かな趣味を持つ。子どもの人生
における最初のモデルは両親である。
 ⑧子どもが発した質問に直ぐに答えない
 ⑨身の周りにあるガラクタの利用方法を子
どもと一緒に考える。
 ⑩部屋で模型組み立て・彫刻・簡単な科学
実験をするための作業BOXを作る。
 ⑪もしインターネットがあれば、それを通し
て、外の世界を見させ、語り合う。

英国の創造性教育
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
2000年より:QCA-Project
2003年1000の小・中学校導
入
教科内、クロスカリキュラム
「創造性のとらえ方」
・想像 ・目的をもった想像 ・
所産の独自性
・所産は目的に照らして価値
があるか
実施例
・Victoria Primary(Leeds)
・Teachers’ Kit より
アメリカ・カナダの創造性教育

大学・大学院
・ハーバード大学 ・NY州立大バッファロー ・ジョ-ジア大
・UCサンタバーバラ ・Northwood Univ(MI) ・Univ of IOWA
・UBC
・Univ. of Alberta ・Univ. of Calgary


小・中・高
無数
・CPSI 等のワークショップで教師は研修する
高才能児教育(Gifted & Talented Education)
・州によって異なるが、小・中・高、7-10%の生徒がうけ
る
フィンランドの起業家・創造性教育
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幼稚園より大学まで起業家教育がある
内的起業家精神と外的起業家精神
・何事にも果敢に挑戦しようとするチャレンジ精神
・リスクを負う勇気とリスクに対する警戒心
・新しいものを生み出そうとする創造性: おみやげ: 木の皮のヨット
・情報を収集し分析するリサーチ力
・アイデアを生み出す発想力
・アイデアを形にしていく企画力
・仲間と協同して取り組むチームワーク力
・投資家の理解を得るためのプレゼンテー
ション能力
・その他、コミュニケーション能力、判断力
実行力、マネジメント力等
フィンランド1
日本の創造性教育
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Full:福島大学教育学部附属中(2002-4)
筑波大付属駒場小
Partly:多数の学校が総合的学習のなかで実施
スーパーサイエンス・スクール
工業高校、高専等で、ロボコンを通した創造性教
育等
スーパーサイエンス・スクール
大学では、理工系を中心とした創造性教育
弓野教育研究所HP
(http://dyumiken.com)
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幼児・小学生の英語学習ソフト
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創造性・問題解決に関する本
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世界の創造性教育 ナカニシヤ
英国初等学校の創造性教育(上・下)静岡学術出版
創造的問題解決
北大路書房
創造的リーダーシップ 北大路書房
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PDF-Book「学びと創りの心理学」
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創造性育成関係の講演・ワークショップPP原稿