もったいない - Japanese Language and Culture

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もったいない
日本人の無駄に対する意識と
そのライフスタイルへの影響
ローズ・アレクサンドラ・バックバーグ
2013年の春学期
アドバイザー:関根繁子教授、齋藤-アボット佳子教授
概要
1. アブストラクト
2. 研究の重要性
3. 研究質問項目
4. 研究背景概要
5. 研究背景
6. 研究方法
7. アンケート調査の結果
8. 結論
9. 考察
10. 参考文献
11. 感謝の意
要旨
「もったいない」という表現単語は何百年もの間、日本語の慣用句として
使われており、英語では通常「無駄にしない」と翻訳されている。著者が日本
に留学していた際、日本人が命や自然に対して尊敬の念を持って生活して
おり、「もったいない」という言葉が物質的にも心理的にも様々な場面で使わ
れていることに気づいた。
このキャップストーンでは「もったいない」という言葉の起源を研究し、意
味と使い方を探る。また、100人以上の日本人にアンケート調査を行い、ど
のようにこの「無駄にしない」という考え方が使われているのかということを
明らかにする。そこでこの研究の結果、「もったいない」の使い方には世代に
よって違いがあることがわかった。団塊戦後の世代はモノや食べ物を大切
にし、一方バブル世代の感じ方はそれほど強くないということがわかった。そ
して、今の世代は経済が衰退している時代に生きているため贅沢をしないと
いうこと、また良い機会を逃さないようにしたい、ということを「もったいない」
という言葉で表現していることがわかった。
研究の重要性
• 日本に留学中、日本人の友達から「もったいない」という言葉を
聞いた時、「もったいない」とは何かという疑問を持ち始めた
• 留学前から、日本人は命や自然に対して特別な考え方を持って
生活している事は知っていましたが、それがどのように「もったい
ない」という言葉と関係しているのかは分からなかった
• 私は「もったいない」という概念をもっと深く調べ、その使い方が
どのように年齢によってちがうかを調べたいと思った
研究の質問項目
1. どのような場面で「もったいない」という言葉を使
うか。
2. 「もったいない」という観念が日々の生活にどの
ような影響をもたらしているか。
3. 「もったいない」は異なった世代間においてどの
ように使われているか。
研究背景概要
• 「もったいない」の語源
• 「もったいない」というコンセプトの由来
• 「もったいない」ライフスタイル
• 現在の「もったいない」という言葉の使われ方
• 戦後からバブル、現代にかけての生活様式
「もったいない」の語源
•
森に住む八百万の神様への崇拝の念から「もったいない」という精神は来
ている。
• 「もったい」は自然に存在する物で、日本に住む人々は伝統的にそれを
「神」からの贈り物として崇拝してきた。
(いわつき、2008年)
• 仏教が伝来する以前、日本人の精
神は自然崇拝によって形づくられて
いた。
(まつなが、1996年)
「もったいない」というコンセプトの由来
• 「もったいない」の「ない」は「無い」、「不在」を意味する。
• 「今では「もったいない」の意味は拡大解釈され、単に「無駄にしな
い」という意味となった。
• 現代の日本人はたいていモノを浪費したり、まだ使えるものを捨てて
しまった時「もったいない」という言葉を使う。
(いわつき、2008年)
「もったいない」ライフスタイル
• 農林水産業その他の人の活動により特有の生態系が維持されてきた 里山
(スペースALC, 2013年)
• 日本以外には見られない
• 里山は、長い歴史の中で自然と調和しながら従事してきた一般的な日本人
が、日本列島の特定の地形及び気候に効率的に適合してきた結果である(
いわつき、2008年)
現在の「もったいない」という言葉の使われ方
• 資源ゴミの分別方法(横浜市)
•缶
•ペットボトル
•びん
•紙
•プラスチック
•服
•金属
•スプレー缶
*全ての容器を洗い、種類別に分け、指定さ
れた日に捨てる
現在の「もったいない」という言葉の使われ方
• 「マイ箸」
– レストランに自分の箸を持ってくる
(マンガー、2009年)
• 東京にあるおもちゃ病院
– 子供たちのお気に入りのおもちゃを直す
(千葉、2002年)
現在の「もったいない」という言葉の使われ方
• 「もったいないばあさん」
– 子供に食べ物やモノを無駄にしないことを教える本
• 「もったいないお化け」
– 80年代、公共広告機構のテレビCMに登場した
国際語としての「もったいない」
ワンガリ・マータイ(1940年〜2011年)
• 日本に旅行した時「もったいない」というコンセプトを発見した。
• アフリカで持続可能性を促進した。
• 3Rを表現できる:Reduce (分類)、
Reuse(再利用)とrecycle(リサイクル)
である。
• マータイはもうひとつのR、Repair
(直す)を付け加えた。
• 2005年の京都議定書の後で
を始めた
「もったいない」活動
戦後からバブル、現代にかけての生活様式
終戦直後(50〜70年代)
• 生活は貧しく乏しい食料しかなかった。
• 60年代には、車、カラーテレビやエアコンなどが大衆消費財
となった。
(ハロースクール)
戦後(80〜90年代)
• 質素倹約と財政緊縮から浪費と派手な
消費に移行した。(ジョンストン、2009年)
– 5万円のコーヒー
– ナイトクラブで大金を使った。
現代(2000年〜)
• 日本の出生率は低く、新卒者の就職は困難である。そのため皆お金を節
約することに執着している。(ドリスコール、2007年)
研究方法
• 研究参加者(112人)
• 日本人大学生:46名
• 35歳以下の社会人:45名
• 35歳以上の社会人:21名
• 研究調査手段
– グーグルドライブアンケート
– フェイスブック、ライン
調査結果: 背景 1
「もったいない」という言葉をはじめて聞いたのはいつですか?
幼稚園の時
71%
小学生の時
17%
中学生の時
3%
高校生の時
0%
10%
その他
0
20
40
60
80
100
調査によると「もったいない」という言葉は幼稚園時代に学
ぶ。
•
調査結果: 背景 2
「もったいない」という言葉を最後に聞いたのはいつですか?
今日
22%
3日以内
35%
1週間以内
26%
1ヶ月以内
15%
その他
2%
0
20
40
60
80
• 調査によると、回答者はよく「もったいない」という言葉を聞く
100
調査結果: 背景 3
あなたは1日のうち、何回「もったいない」と言いますか?
1%
1% 4%
29%
1〜3回
65%

10回以上
7〜10回
4〜6回
1〜3回
0回
• 70%以上の回答者は毎日「もったいない」という言葉を使う。
調査結果: 研究質問1
研究質問1:どのような場面で「もったいない」
という言葉を使うか。
次にあげるストーリーは具体的な状況を提
示するためのものである。
調査の結果: 研究ストーリー1
小林晃(40歳)
• ハーバード大学で留学した
• 英語が流暢になって、表彰状をもらった
• 日本に戻り、大学を卒業し、北海道に引っ越した。
• その後、英語忘れてしまった
調査結果: 研究質問1a
一日中勉強していい想い出を作らなかったのは「もったいない」
と思います。
強く同意する
57%
ある程度同意する
21%
どちらとも言えない
16%
あまり同意できない
5%
全く同意できない
1%
0
20
40
60
• 78%以上の回答者は「もったいない」と思う
80
100
調査結果: 研究質問1b
晃は今幸せに暮らしています。ハーバードに留学したことは
「もったいない」と思います。
強く同意する
3%
ある程度同意する
4%
どちらとも言えない
9%
あまり同意できない
21%
全く同意できない
63%
0
20
40
60
80
100
• 晃の留学経験は「もったいない」と思わない人は83%以上
を占めている
調査結果: 研究1ストーリー2
淳也と典子
• 淳也は26歳のお金持ち、ださくてギトギトなサラリーマン。でも
性格はいい
•典子は23歳の優しく可愛いい独身の女の人。あるとき、典子は
迷子の男の子を助けた
•それを見た淳也は典子をデートに誘った
•典子はそれを断った
調査結果: 研究質問1c
淳也はお金持ちなのに典子が断ったのは「もったいない」と
思います。
強く同意する
7%
ある程度同意する
15%
どちらとも言えない
21%
あまり同意できない
24%
全く同意できない
32%
0
20
40
60
80
• 50%以上は典子が断ったのは「もったいない」と思わない
100
調査結果: 研究質問1d
美人で性格がいい典子が独身でいるのは「もったいない」と思います。
強く同意する
15%
ある程度同意する
26%
どちらとも言えない
28%
あまり同意できない
20%
全く同意できない
12%
0
20
40
60
80
• 典子が独身でいるのは「もったいない」と思う人が思わ
ない人をわずかに上回った
100
調査結果: 研究ストーリー3
新宿にある小さな神社
•東京の新宿の小さな公園に小さな神社がある
•有名ではないけれど美しい
•区役所はその神社を取り壊し、駐車場を作ろうとしている
•近隣住民が反対している
調査結果: 研究質問1e
歴史的価値は低いが美しい神社を取り壊してしまうのは
「もったいない」と思います。
強く同意する
50%
ある程度同意する
37%
どちらとも言えない
9%
あまり同意できない
2%
全く同意できない
2%
0
20
40
60
80
100
• 美しい神社を取り壊してしまうのは「もったいない」と考える
人は87%以上を占めています
調査結果: 研究質問1f
近隣住民はそのような小さなことに時間を使うのは
「もったいない」と思います。
強く同意する
8%
ある程度同意する
5%
どちらとも言えない
22%
あまり同意できない
34%
30%
全く同意できない
0
20
40
60
80
100
• そのような小さなことに時間を使うのは「もったいない」と思わな
い人が64%を占めている
結果まとめ1
• 一生懸命頑張ったことを忘れてしまうのは無駄である
• 個人の幸せが大事
• 全ての経験が大事である
• お金が大切ではあるが、それが全てではない
• 見た目が大切
• 美しさを大切にする
– 美しさを保護するために時間を費やすのは無駄ではない
調査結果: 研究質問2
研究質問2:「もったいない」という観念が日々の
生活にどのような影響をもたらしているか
調査結果: 研究質問2a
私は次のような場面で「もったいない」と思う。
モノ
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
86%
86%
ある程度同意する
どちらとも同意する
あまり同意できない
7%
7%
6%
8%
• 86%はモノを捨てるのは「もったいない」と思う
調査結果: 研究質問2b
私は次のような場面で「もったいない」と思う。
お金(必需品)
100
90
80
56%
70
53%
60
50
40
26%
23% 24%
30
18%
20
10
0
• 50%以上は必需品を買う時「もったいない」と思う
ある程度同意する
どちらとも言えない
あまり同意できない
調査結果: 研究質問2c
私は次のような場面で「もったいない」と思う。
贅沢
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
65%
46%
45%
35%
16% 20%
21%
27% 28%
ある程度同意する
どちらとも言えない
あまり同意できない
•お金の観点から、タクシーを使うのは「もったいない」と思う
•しかし、時間の観点から、タクシーを使うのは「もったいない」と思わない
•旅行をすることは「もったいない」と思わない
調査結果: 研究質問2d
私は次のような場面で「もったいない」と思う。
心理的
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
88%
67%
18% 15%
ある程度同意する
6%
5%
どちらとも言えない
あまり同意できない
• ベストを尽くさないことやチャンスをあきらめるのは本当に「もっ
たいない」と思う
結果まとめ2
• 日本人は理由なくモノを消費しない。 日用品も大切にする
– ものを買う時、どのように使うかを考慮する
• お金を大切にし、何を買うかを考慮する(旅行以外)
• 時は金なり
• 一生懸命頑張ることや機会を利用することは大切だ。才能
やチャンスを無駄にするのは恥ずべきことだ。
調査結果: 研究質問3
研究質問3:「もったいない」は異なった世代
間においてどのように使われているか
調査結果: 研究質問3a
次のような場面で実際に「もったいない」という言葉を口に出す
スーパーで買い物をする時、服を買うとき
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
64%
52%
23%
6% 6%
17% 13% 19%
両親
祖父母
兄弟・姉妹
友人
• スーパーで買い物をする時や服を買う時、全体の約6割の人が
両親が一番「もったいない」という言葉を口に出すと答えた。
調査結果: 研究質問3b
まだ使えるものを捨てる時、食べ残しがある時
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
54%
46%
35%
29%
両親
20%
5%
3%
9%
祖父母
兄弟・姉妹
友人
*まだ使えるものを捨てる時や食べ残しがある時、両親と祖父母が一番
「もったいない」という言葉を口に出すと思う。
調査結果: 研究質問3c
旅行する時、ベストを尽くさなかった時、チャンスをあきらめる時
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
49%
39%
36%
30%
16%18%
46%
42%
両親
5% 6%
5% 6%
祖父母
兄弟・姉妹
友人
*旅行、ベストを尽くさない時やチャンスをあきらめる時、両親と友人が
一番「もったいない」という言葉を口に出すと思う。
調査結果: 研究質問3d
私は次のような場面で「もったいない」と思う
学生
1
2
3
35歳以下
の社会人
35歳以上
の社会人
タクシー(お
金)
まだ使える物を
捨てる
まだ使える物を
捨てる
チャンスを
あきらめて
しまう
チャンスを
あきらめて
しまう
チャンスをあき
らめてしまう、
食べ残しがある
まだ使える物を
捨てる、 食べ残
しがある
ベスを尽くさな
い、食べ残しが
ある
タクシー(お
金) 、ベストを尽
くさない
結果まとめ3
• 誰が一番「もったいない」という言葉を口に出すと思うかと聞いたと
き、回答者は次のように答えた
*両親:お金
*祖父母:モノ
*友人: 心理的なモノ
• 各世代は別なことを大切にする
*戦後:モノを無駄にしない
*バブル:モノを無駄にしない
*現在:お金を無駄にしない
• 私がいつ「もったいない」と思うかと聞いたとき、回答者は一様に次
の3つの回答をした
*まだ使えるものを捨ててしまうとき
* チャンスをあきらめてしまったとき
*食べ残しがあるとき
結論
• 「もったいない」という言葉は様々な場面で使える。例えば恋愛や見た目
や自己達成やモノ
• モノを買う時や使う時、日本人はモノの価値と使い方を考える。
• 生活するとき日本人は全てのチャンスを得ようとし、精いっぱいに知識を
使う
• その一方で、幸福感はもっとも重要なものであり、全ての経験はその結
果によらず価値がある。
•
世代は異なるものを大切にします。
*戦後:物理的なモノ
* バブル:物理的なモノ、心理的なモノ
* 現在の世代:心理的なモノ
考察と将来の課題
私の定義
• 生活の中にあるささいなことでも感謝し大切にする
• 日々の生活や愛情を当たり前のものと思ってはいけない
• 自然やこの世界の美しさ、純真さを当たり前のものと思ってはいけない
研究の制約
• 世代間の回答者が均等ではないこと
• 大多数の回答者は東京に居住していること
将来の課題
• 都道府県で違いが見られるか
• 外国の影響
• 欧米の国々と比べる
参考文献
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http://www.japantimes.co.jp/text/ek20090408a1.html
"Hello School 社会科 公民(ハロ民) No.1戦後の経済と国民生活." Hello-school.net, n.d.
感謝の意
• 関根繁子教授、齋藤-アボット佳子教授
• 岩井政樹
• 加藤加那子
• 東京のロックスの友達
• 両親
皆さん、お疲れさまです!