物価指数と実質化

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Transcript 物価指数と実質化

経済統計学・現代の経済/経済の
世界
作間逸雄
「物価」とは、様々な財・サービスの価格の動きを総合してあら
わす指標である。財・サービスを価格比を平均することによって、
それは求まられるかもしれない。
最近、家計の平均貯蓄現在高が1,739万円
だったことが、話題となっている。
 どこから得られた数字か?―家計調査。

家計調査報告(貯蓄・負債編)
-平成25年(2013年)平均結果速報-
(二人以上の世帯)

貯蓄現在高とは?―金融資産(現金、預金、
国債、株式等々)。


総務省が16日発表した2013年の家計調査報告(2
人以上の世帯)によると、1世帯当たりの平均貯
蓄残高は前年比4.9%増の1739万円となり、増加
率、金額とも02年の調査開始以来最高となった。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」による株高
で有価証券の評価額が2割以上上昇したことが寄
与した。 (時事通信)
2人以上の世帯の平均負債は499万円で、前年比30
万円増。増加率は6.4%に上り、貯蓄の増加率
(4.9%)を上回った。全体のうち勤労者世帯だけ
でみると、負債は740万円で、前年に比べ45万円、
6.5%の増加。(THE PAGE)
 貯蓄残高の数字には、分布がある。その
中心をあらわすひとつの指標が平均。
 所得額、資産額等々、経済にかかわる
データには、「右に裾を引く」分布が多
い。
 その場合、平均は、けっこう、右のほう
にある。意外に貯蓄残高が高いという印
象をあたえてしまう。
 メディアンを使うのがよいかもしれない。
ヒストグラム
 物価指数は、<価格比>(各品目につい
てk期の価格とk-1期の価格の比を計
算したもの)の平均と考えることができ
るかもしれない。
 平均には3種類ある。
 算術平均
 幾何平均
 調和平均
※それぞれに単純と加重の区別がある。
ケースバイケースで使い分ける。


X Y
2
0.3X  0.7Y
単純算術平均
加重算術平均

XY

X
0.3 0.7
単純
加重
Y
 平均成長率の計算に利用する。

単純調和平均
2
1
1

X
Y

加重調和平均
1
1
1
0.3
 0.7
X
Y
 A市とB市の距離が20kmで前半10kmを時速
50km/hで後半10kmを時速30km/hで走行す
ると平均時速は何km/hか?
20
10 10

50 30
 37.5
 A市とB市の距離が20kmで前半15kmを時速
45km/hで後半5kmを時速80km/hで走行す
ると平均時速は何km/hか?
20
15
5

45 80
算術平均
X G H
幾何平均
調和平均
X Y

2
XY
において
1
1
X  ,Y 
x
y
と置いてみよう!
 物価、すなわち、財・サービスの価格の
総合的なうごきを示す数字は、価格比
(比較年/基準年)の平均として計算でき
るかもしれない。
 平均といってもいろいろあることがわ
かった。
 どの平均が適切か?
 ジェボンズとラスパイレスとの間で行な
われた論争である。
 カカオの価格が
2倍 に
 カーネーションの価格が1/2に
となったとき、物価は?
1
2
2

ジェボンズの主張=物価の変化はなかった。

ラスパイレスの主張=25%の物価上昇があった。
カカオ1単位の値段、カーネーション1単位の値段がともに100
とすると、最初の年にカカオ1単位、カーネーション1単位を購
入するためには200、価格変化後には、250のコストがかかる。
カカオ
カーネーション
100
100
200
200
50
250
幾何平均である!
250
200
200  50
100
200
100
50


100  100 100  100 100 100  100 100
カカオのウェイト
カカオの価格比
カーネーションの
価格比
カーネーションの
ウェイト
ラスパイレス式物価指数を「マーケット・バスケット」という考
え方を使って整理し直してみる。
 ラスパイレスの方法は、カカオ1単位、
カーネーション1単位を買い物かご
(マーケット・バスケット)に入れて、
その合計金額の変化を見ている。
カカオ
100
200
カーネーショ
ン
100
50
合計金額
200
250
 買い物かごの中身をどうするか。
 消費者が平均的にどんな財・サービス項
目に支出しているかを調べてみてはどう
か?
 「家計調査」によってそれがわかる。
 基準となる年の消費量で買い物かごの中
身を決める。⇒ラスパイレス物価指数。
去年の数量
去年の価格
今年の数量
今年の価格
りんご
3個
200円/1個
4個
250円/1個
米
5kg
360円/1kg
6kg
400円/1kg
250  3  400  5 2750
LP 

 1.1458
200  3  360  5 2400
基準年を100.0として表示するのがふつうなので、ラスパイレ
ス指数は114.6である。
 基準年の数量によって、買い物かごの中
身を決めるとラスパイレス式物価指数が
得られた。
 比較年の数量によって、買い物かごの中
身を決めるとパーシェ式物価指数が得ら
れる。
 (問)前のスライドの数値を使って、
パーシェ式物価指数を計算してみよう。
250  3  400  5 2750
LP 

 1.1458
200  3  360  5 2400
上の式をシグマ(総和)記号を使って書く。
n
LP 
p q
i 1
n
i1 i 0
 pi 0 qi 0
i 1
p q

p q
i1 i 0
i
i0 i0
i
pq


pq
1 0
0 0
pq  p q
p q
p q
1 0
0 0
0 0
0 0
ウェイト
 p1 
 
 p0 
価格比
パーシェ式は、どのような意味で平均になるだろうか?
金額の動き、すなわち、金額比(k期の金額とk-1期の金額と
の比)を数量部分と価格部分に分解することを考えてみよう。こ
の考察は、実質化や経済成長率の測定といった問題と関連する。
 GDPの金額が10%増加したとする。経
済はそれだけ成長したといえるだろう
か?
 金額の動きには、価格の動きが含まれ
ていることに注目する。それを取り除
く必要がある。
 金額の動き=数量の動き+価格の動き
(10%)
(3%) (7%)
経済成長率
GDPの金額そのものを名目GDPという。名目
GDPの変動は、それ自体では経済成長をあ
らわすものではない。その変動が数量の動
き=経済成長をあらわすようにしたものが
実質GDPである。
 経済成長率をあらわすのには実質GDPを用
いる。

k年の実質GDPー(k-1)年の実質GDP
経済成長率=
(k-1)年の実質GDP
 金額の動き=数量の動き+価格の動き
(10%)
(3%)
(7%)
 価格の動きを止めておけば、数量の動き
がわかる。この意味で、実質GDP=不変価
格表示のGDPである。これが第一の方法。
 逆に、数量の動きを固定すれば、価格の
動きがわかる!その方針で物価指数を作
ることができる。



金額の動きから価格の動きを
抜き出す。
数量をどの時点で固定する
か?
基準年(基準期間)で固定す
れば、ラスパイレス式。比較
年(比較期間)で固定すれば、
パーシェ式。
pq

PL 
pq
pq

PP 
pq
1 0
0 0
1 1
0 1
 価格の動きをまず測定して(物価指数を
計算して)、金額の動きから控除する。
これが第二の方法。この役割を果たす物
価指数をデフレーターと呼ぶ。
 物価指数にはいろいろある。たとえば、
総務省統計局の消費者物価指数(CPI)、
日本銀行の企業物価指数(CGPI=旧称は
卸売物価指数)などなど。
 したがって、どの物価指数を選択すべき
かという問題が残される。


ところが、第一の方法と第二の方法とを両立させる物
価指数は、ひとつに決まってしまう。
実際、デフレーターとは実質値を求めるために名目値
を割り算するものとしての物価指数のことであること
に注意して、
実質値=不変価格表示値=
名目値
デフレーター
名目値
デフレーター=
実質値

冒頭のスライドの引き算が割り算になっているが、こ
れは、対数微分の練習問題。
たとえば、実質GDP=不変価格表示のGDP
=名目GDP/物価指数(デフレーター)
 上式から使われるべき物価指数が一義に定
まってしまう。
 その物価指数のことをGDPデフレーター(イ
ンプリシットGDPデフレーター)と呼ぶ。
 ここまでの説明は、固定基準年方式の実質系
列
 「固定基準年不変価格表示」に代わるものと
して、最近、「連鎖方式」と呼ばれる「新方
式」が登場している。

 平成18年版の『国民経済計算年報』より、
2通りの実質系列が平行して公表される
ようになった。
 (1)固定基準年方式
 (2)連鎖方式
 以下では、まず、「固定基準年方式」に
よる説明を行ない、そのあとで、「連鎖
方式」の説明をする。

第一の方法を、シグマ(Σ)記号を使って表現
する…
n
 pi qi   pi qi   pq
i 1
n
i
p
i 1
比較年
基準年
q   pi 0 qi1   p0 q1
i 0 i1
i
pq
0 1
pq


pq

p
q


1 1


1 
1 1
0
不変価格
表示値
pq


1 1
PP
パーシェ式物価指数

ラスパイレス式指数とパーシェ式指数の折衷案
PF  PL  PP 
pq pq
p q p q
1 0
1 1
0 0
0 1

ラスパイレス式物価指数算式のpとqを入れ替える
とラスパイレス式の数量指数の算式となる。パー
シェ式についても同様。
pq

PL 
pq
qp

QL 
q p
1 0
0 0
1
0
0
0
pとqを入れ替えると
pq
p q
pq
0 1
0 1
と
とを比べてみよう!
0 0
1期の不変価格表示
0期の不変価格表示=
0期の当期価格表示
pq
pq


pq

p q
1 1
  p0 q0
pq


pq
0 1

0 0

0 1 
比較年当期価格表示値
不変価格表示値=
パーシェ式物価指数
=基準年当期価格表示値×ラスパイレス式数量指数
0 1
1 1
デフレーター

ラスパイレス式物価指数とパーシェ式数量指数の積は、
金額指数(金額比)。
pq pq
p q pq
1 0
1 1
0
1 0
0
pq


p q
1 1
0
0

ラスパイレス式数量指数とパーシェ式物価指数の積は、
金額指数(金額比)。

《比較》フィッシャー式物価指数とフィッシャー式数
量指数の積は金額指数(金額比)。

GDP=C+I+G+X-Mであり、C、I、G等の内訳項
目のデフレーターと内訳項目がGDP全体に占
める割合(名目シェア)がわかれば、GDPデ
フレーターを計算することができる。ティル
ド(~)で実質値(不変価格表示値)をあら
わし、GDP全体のデフレーターをPとあらわす。
GDP  C  I  G  X  M
GDP C I G X M

 


P
PC PI PG PX PM
P
1
C 1
I
1
G 1
X
1
M
1




GDP Pc GDP PI GDP PG GDP PX GDP PM
GDPデフレーターは、GDPを構成する各項目のデフ
レーター(パーシェ式物価指数)の加重調和平均で
ある。ウェイトは、各構成項目がGDP中に占める
シェア。
消費者物価指数
1972
第一次石
油ショック
卸売物価指数
GDPデフレーター
5.3
3.3
6.2
16.1
22.6
14.9
1974
21.8
23.4
18.6
1975
10.4
2.0
6.2
1976
9.4
5.5
6.7
6.7
0.4
5.3
3.4
-2.3
4.2
1979
4.8
13.0
2.0
1980
7.8
12.8
3.7
1981
4.0
1.3
2.1
1982
2.4
1.0
1.5
1973
1977
1978
第二次石
油ショック
CPI、とWPIは、1980年基準、デフレーターは、1975年基準
 C,
I, G, X, MがGDP中に占める割合がそ
れぞれ60%、20%、20%、15%、15%、
各項目のパーシェ式の物価指数が120、
105、107、101、175とする。GDPデフ
レーターを計算しなさい。
注)物価指数は基準年を100としてあらわす
ことが多い。
P
1
C 1
I
1
G 1
X
1
M
1




GDP Pc GDP PI GDP PG GDP PX GDP PM
 1.063612
0.6
1.20
物価指数を表示する慣例から、
100倍して、
106.4
米の価 米の数
格
量
(1kg)
にんじ にんじん
んの価 の数量
格
ラスパイレス指数(基準年=0期、比較年=1期)は107.1
(本)
0期
基準 500円
年
5kg
牛肉の 牛肉の
価格
数量
(1kg)
4000
円
1kg
50円
10本
パーシェ指数(基準年=0期、比較年=1期)は102.9
1期
比較 400円
基準
年
年
6kg
4500
円
0.9kg
100円
7本
2期
比較
年
5kg
4000
円
1kg
50円
10本
500円
pq

PL 
pq
1 0
0 0
400  5  4500 1  100 10 7500


 1.071
500  5  4000 1  50 10 7000
物価指数は、基準年の物価水準を100としてあらわす
のが通例であるから、
100倍して、
107.1とする。
pq

PP 
pq
400  6  4500  0.9  100  7
100 
100  102.9
500  6  4000  0.9  50  7
1
1 1
0
直感的説明
pq

PL 
p q
1 0
0 0
pq

 PP 
p q
1 1
0 1
なぜ?消費者の合理的行動が反映されている数
字とそうでない架空の数字の配置に注目してみ
よう!
では、ラスパイレス式数量指数はパーシェ式数量
指数との間には、傾向としてどのような関係があ
るといえるか?

q1
ラスパイレス式物価指数はパーシェ式物価指数より
大きな値を取る傾向がある。経済学的説明。
古いマーケッ
ト・バスケット
を新しい価格
で買うと高く
つく
傾向的に、ラスパイレス指数≧パーシェ指数
(続)


統計学的説明
ボルトキウィッチ(Bortkiewicz)の関係式を使
う。
s p sq
PP  PL
 rpq
PL
PL QL


spは、価格比の加重標準偏差、sqは、数量比
の加重標準偏差、rpqは、価格比、数量比の加
重相関係数。ウェイトは、基準期支出。
この関係式から( PL  P Q , P Q  PL )がど
のような場合に生じるかがわかる。
証明
x
p1
q
, y  1 , w  p0 q0と書くことにしよう。
p0
q0
そのとき、
PL
wx
wxy
wY




,P 
,Q 
w
 wy
w
P
L
とあらわされることに注意する。
また、
w( x  P )
w( y  Q )



,s 
w
w
w( x  P )( y  Q )


である。
s s w
2
sp2
rpq
L
L
2
q
L
p q
L
2
,




指数算式のちがい
…CPIはラスパイレス、GDPデフレーターはパーシェ
ただし、「固定基準年」方式の場合。「連鎖方式
対象範囲のちがい
の場合は、連鎖パーシェ式。
…CPIは消費のみを対象とするのに対して、GDPデフレーターは資本
形成、政府支出等を含む
輸入の取り扱いのちがい
…輸入品の値上がりは、CPIを上昇させるが、GDPデフレーターは必
ずしもそうでない。
→GDPデフレーターは、ホームメードインフレの尺度
基準年
…CPIは、2010年。5年に1回更新する。GDP統計の基準年(参照年)
は、2005年。基準年と比較年の時間間隔の長さが問題に。 →連鎖
指数の採用へ
 わが国の指数統計では、西暦表示で末尾
が0か5の年が基準年とされ、 5年に1度基
準年の更新が行われる制度が確立されて
いる。
 現在、CPI、CGPIの基準年は2010年であ
る。
 5年に1度基準年が変更されるのは、基準
年と比較年とが離れすぎると、ウェイト
が適切でなくなり、物価指数が過大・過
小なる可能性があるからである。



国民勘定統計におけるGDPデフレーターも西暦表示で末
尾が0か5の年が基準年であるが、産業連関表の完成を
待って基準年の変更を行なうため、CPI、CGPIと比べて
基準年の変更が遅れる。
従来、「デフレーターにバイアスがある」という疑念が
取りざたされていた。「デフレの度合いが深刻に表現さ
れすぎている?」ということである。
そうした問題に対処するために、2004年11月にGDP統計
における実質化、デフレーターの作成に「連鎖方式」が
採用された。
基準年0比較年1
のラスパイレス式
物価指数
pq

PL 
p q
1 0
0 0
基準年0比較年2の連鎖ラス
パイレス式物価指数
pq p q

PLC 

p q pq
1 0
2 1
0 0
1 1
いわば前年を「基準年」とする指数を作り、それ
を鎖のようにつなげてゆく方式が≪連鎖方式≫
である。
04/12/09
日経
04/11/09日経
04/04/19
日経

「物価指数の計算」のスライドで基準年を1期、
比較年を2期として計算されたラスパイレス物
価指数と前に計算した基準年を0期、比較年を1
期として計算されたラスパイレス物価指数とを
かけあわせる。これが基準年0期、比較年2期の
ラスパイレス式連鎖物価指数である。

問 「物価指数の計算」のスライドの数値を
使って、基準年0期、比較年2期のラスパイレス
式連鎖物価指数を計算してみよう。
(問の解答)
1.071×0.972=1.041、
すなわち、104.1
 0期と2期の各財の価格は変わっていな
いことに注目しよう。上記の解答と比較
してみよう。
 連鎖指数のもつこの欠陥は、「ドリフ
ト」(漂流)と呼ばれている。
たとえば、消費Cについて
p q  pq

 
 pq
 p q  pq
pq
pq




 p q  p q PPC
 p q  pq
C
C
0 1
C
1 2
0 0
C
0 0
C
C
2 2
C
1 1
C
2 2
C
0 1
C
1 2
C

p0 q0 QLCC
1 1
C
2 2
C
連鎖方式の
実質値
言い換えれば、
PPCC  QLCC



C
p2 q2
C
p0 q0
連鎖パーシェ物価指数
連鎖ラスパイレス
数量指数
ドリフト(「漂流」)の可能性。あらぬところを
漂っている指数であり、たとえば、物価や数量が基
準時点のものに戻っても連鎖方式の物価指数や数量
指数はもとに戻らない可能性がある。
 加法的整合性の欠如
部分対全体の関係をうまく示せない。足し算のや
り方を変えると実質値がかわってしまう。したがっ
て、実質C+実質 I として実質GDPを定義したとき
と、たとえば、実質C+実質民間 I+実質公的 I と
して実質GDPと定義したときとでは、値が代わって
しまう。公式の実質GDP(連鎖)の数値は、
[C+I+G+X-M]をひとまとめにして連鎖方式で実質
化したもの。
連鎖方式が問題なく使えるのは、単独系列の足元の動きだ
け!

比較年名目値
基準年名目値
pq
0 1
pq

 ( p q )
pq
0 1
0 0
0 0
固定基準年方式
不変価格表示値
pq


pq

p q
1 1
0
ラスパイレス式数量
指数


1 
1 1
パーシェ式物
価指数

固定基準年方式不変価格表示値
=基準年名目値×ラスパイレス式数量指数
=比較年名目値÷パーシェ式物価指数

連鎖方式「不変価格表示値」
=基準年名目値×連鎖ラスパイレス式数量指
数
=比較年名目値÷連鎖パーシェ式物価指数


ダブル・デフレーション法
付加価値=産出額 ー 中間消費
だから、産出額を実質化し(適切なデフレーターでわる)、中間
消費を実質化し(〃)、両者の差をとることにより、不変価格表示
の付加価値を得ることができる。この方法はダブル・デフレーショ
ン法と呼ばれ、名目付加価値を単一のデフレーターでデフレーショ
ンするシングル・デフレーション法と対比される。
実質二面等価(支出側と生産側の実質国内総生産の等価)が固定基
準年方式の場合、ダブル・デフレーション法により、実現される。
(*)GDPデフレーターの計算(5~7)のスライドを参照せよ。連
鎖方式の場合に、加法性がないので、実質二面等価は一般には成立
しない。(財・サービス分類の細かさが支出側と生産側で異なれば、実質二面等
価は崩壊する。)
GDPの内訳項目、たとえば、Cについて
連鎖方式の
実質値
p q  pq

   p q  QLC
 pq
 p q  pq
pq
pq




 p q  p q PPC
基準年名目値  p q  p q
連鎖ラスパイレス
C
C
0 1
C
1 2
0 0
C
C
0 0
C
2 2
C
1 1
C
2 2
C
0 1
C
1 2
C
0 0
C
1 1
C
2 2
C
数量指数QLC
比較年名目値
連鎖パーシェ物価指数
連鎖方式成長率の寄与度分解(1)
前のスライドから、
PPCC  QLCC



C
p2 q2
C
p0 q0
あるいは
PPC C (Cの連鎖実質値)= C p2 q2
あるいは
pq

前期のPPC (Cの連鎖実質値)=
 pq
 pq
 pq
pq  p q
pq


PPC 
, 前期のPPC 
 p q  pq
 pq
C
2 2
C
C
C
1 1
C
C
2 2
C
1 2
2 2
C
1 2
C
1 1
C
0 1
C
C
0 1
C
1 2
連鎖方式成長率の寄与度分解(2)
今期のGDP連鎖実質値
1
前期のGDP連鎖実質値
p0 q0 QLC


1
p
q
(
前期
QLC
)
 00
GDPの成長率=

pq
pq
1 2
1
1 1
GDP構成項目をCとIとすると、前のスライドで見たように、
(前期のPPC C )
 (Cの連鎖実質値)+(前期のPPC I )
 ( Iの連鎖実質値)
=
1
(前期のPPC C )
 (Cの前期連鎖実質値)+(前期のPPC I )
 ( Iの前期連鎖実質値)

(前期のPPC C )
 (Cの前期連鎖実質値) (Cの連鎖実質値)


1


〃
 (Cの前期連鎖実質値) 

(前期のPPC I )
 ( Iの前期連鎖実質値) ( Iの連鎖実質値)


1


〃
 ( Iの前期連鎖実質値) 




連鎖方式の実質値には加法性はないが、対前期成長率に
は、加法性があり、寄与度を計算することができる。
しかし、あくまで対前期であり、たとえば、2000年から
2005年までの累積成長率を寄与度分解することはできな
い。
QEでは、前暦年固定基準の実質値が4四半期=1年間使
われる。したがって、(固定基準年方式のようなものだ
から)対前期寄与度を計算することには原理的な困難は
ない。(QEにおける特殊な取扱いのため、現実には、正
確な寄与度分解はできない。)
しかし、「連鎖」が複数回行なわれるような状況では、
正確な寄与度分解はできなくなる。たとえば、対前年同
期寄与度は近似としてしか計算できない。同様に、対
「前年度」寄与度も近似である。