一日摂取許容量、許容残留量、農薬

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Transcript 一日摂取許容量、許容残留量、農薬

残留問題
2004~
2012年
年平均
件数
細菌
731件
ウイルス 343件
化学物質
14件
自然毒
117件
患者数の推移
年平均
患者数
10,561名
14,708名
251名
343名
2004~2012年の平均
通算
死亡数 で、年間1,314件、27,393
名の食中毒事故があった。
24名 9年間の死亡者は51名
0名 だったが、その内自然毒
0名 が27名を占め、細菌(24
27名 名)を上回った。
件数、患者数とも比較
的少数であるが、自然毒
の致命率は高い。
他方、消費者の関心が
高い農薬や添加物など化
学物質による事故件数は
少なく、死亡者も発生して
いない。
ノロウイルスは患者数
は多いが死亡はない。
事故と事件
「化学物質が怖い」と言うおばあちゃん、それを聞いて育ったお母
さん、そのお母さんに育てられたあなたは・・・
和歌山毒物カレー事件
1998年7月25日夕方、和歌山市で行われた夏祭において、提供さ
れたカレーに毒物が混入された事件。67人が腹痛や吐き気などを訴
えて病院に搬送され、4人(64歳男性、54歳男性、16歳女性、10歳男
児)が死亡した。当初保健所は食中毒事故によるものとして調査した
が、警察庁の科学警察研究所が亜ヒ酸の混入と解明した。
食中毒事故: 調理手順等を誤って有害な料理ができた(過失)。
毒物混入事件: 危害を加える目的を持って作った料理(故意)。
「怖い化学物質がある」のは事実であり、そのため「劇毒物取締
法」や「農薬取締法」等によって有資格者以外の取扱いを禁止してい
る。そうした「怖い化学物質」が調理場に紛れ込むことは、犯罪以外
にあり得ない。台所包丁を用いたバラバラ殺人事件が発生している
が、身の回りには犯罪に利用できるものが無数にある。犯罪を生まな
い社会を作ることは重要であるが、犯罪と食の安全は別問題だ。
農薬散布時事故
ニカメイチュウ防除のためにパラチオンが販売許可された1954年(昭和29年)
には、散布時に1957名が中毒し、307名が死亡した。翌年「特定毒物指定制度」が
導入されたが、散布時事故は収まらず毎年数十名の死亡が続いた。パラチオンが
農薬登録取消しになったのは、米の自給が達成された後の1969年であり、それま
で農業者は犠牲を強いられたのである。
パラチオンを含めて有機リン系殺虫剤は植物体内や環境中での分解速度が速
く、残留問題は発生しにくい。事実、パラチオンの農産物残留による健康被害は記
録されていない。
中国産餃子事件:メタミドホス
2007年12月下旬から2008年1月にかけて中国製冷凍餃子を食べ
た千葉県千葉市、市川市、兵庫県高砂市の3家族計10人が下痢や
嘔吐などの中毒症状を訴え、このうち、市川市の女児が一時意識不
明の重体になった。
このような急性毒性を示す濃度は、通常の「残留」では起こりえず、
製品段階で誰かが意図的に毒物混入したことが明らかだった。
県警が餃子を鑑定したところ、メタミドホスなど有機リン系殺虫剤
が検出され、餃子の皮では3580ppm、具では3160ppmと数個食べ
ただけで死に至る可能性がある量であった。メタミドホスは日本では
農薬として登録されたことがなく、中国では2007年1月から販売と使
用が全面禁止されていた。
混入地点を巡って日中の公安当局の応酬が続いたが、2009年3
月になって毒物を混入させた容疑で天洋食品の元従業員が拘束され
た。このような有害物質の意図的混入は、解雇などのトラブル、増量
による営利目的(粉ミルクへのメラミン添加)、未承認医薬品を用いた
ダイエット食品など中国の食品製造業界のモラルが指摘されている。
用量・反応関係: 食べる量と安全性
に及
よぼ
っす閾
て最値
求 (
め小い
ら濃き
れ度ち
たで)
と
科あは
学り、
的、
動生
数物体
値実に
で験何
あやら
る疫か
。学の
悪
的影
研響
究を
DNAに障害を与えると、 DNA ➔RNA ➔蛋白の増幅回路が働き、代謝異常が
おきて癌などの障害が発生する。閾値がない物質の低濃度領域は、実験できない。
食品に限らず、100%安全なことは世の中にはなく、リスクを下げることしかできない。
日本における食中毒、糖尿病、心疾患による死亡の推移
罹患率、死亡率とも人口10万当り
1960
1970
1980
1990
2000
2010
患者数
37,253
32,516
32,727
37,516
43,307
25,972
食中毒
糖尿病
罹患率 死亡数 死亡率 死亡率
39.5
218
0.231
3.4
31.1
63
0.060
7.4
28.0
23
0.020
7.3
30.4
5
0.004
7.7
34.1
4
0.003
9.8
20.3
0
0
11.4
心疾患
死亡率
73.2
86.7
106.2
128.1
116.8
149.8
食の安全性とは? 食品自体の安全性とともに、「安全な食品
であっても<危険な食べ方>をすると健康を害して病気になる」事
態を防ぐことも重要である。
2005年に制定された食育基本法で、食育を「健全な心と身体を培
い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるもの」とし、「食に関する
知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することがで
きる人間を育てる」とされている。
閾値がない化学物質の安全性
日常的に発癌物質を食べており、それは避けられない。「ゼロリス
クはありえない」ことを前提として、リスクを下げる努力をする。
ベンゾピレン 世界最初に日本人が発見した化学発癌物質で、
有機物質の不完全燃焼の過程で生成される様々
な多環芳香族炭化水素➔焼け焦げを食べない
ニトロソアミン 野菜の硝酸が体内で代謝された亜硝酸が魚肉の
二級アミンと胃内で反応して生成する➔日本食で
胃癌が多い理由の一つ
加熱分解物質 アミノ酸の一種であるトリプトファンの加熱分解物
Trip-P1などは、ベンゾピレンより数千倍の突然
変異原性を持っている➔生野菜が突然変異原性
を軽減してくれる
動物を用いた発癌試験では多くの検体をこなせないので、培養細
胞系による突然変異原性試験が行われ、陽性物質は食用から除外さ
れている。これまでに全ての農薬や添加物などが国際的に検査され、
陽性となったものは製造・販売禁止になってきた。
閾値がある化学物質の用量・反応関係
生
態
へ
の
影
響
致
死
量
一日摂取許容量(ADI)とは、一生涯毎日
食べ続けても健康への悪影響が出ない量
個体差
1/10
種差
1/10
中
毒
量
医薬品の用量
無
用量
作
用
量
動物に所定濃度の餌を食べ続けさせ、急性毒性、慢性毒性、発癌
性、催奇形性、繁殖障害、薬理試験(中枢神経、自律神経、呼吸・循
環器、消化器、血液、骨格筋)などを総合して求めた無作用量の
1/100の用量であり、国際機関によって承認されている。
ADI
化学物質の安全性: 規制を具体化する
一日摂取許容量(ADI )
ADIを達成するため、全
ての食品に許容残留量
(MRL)を設定する。
市販食品の喫食による量
は、ADIを大きく下回ってい
る。
許容残留量(MRL)
小麦:
10ppm(mg/kg)
トマト:0.2
大豆:0.2
動物の生涯に亘る投与試験から求め
られた一日摂取許容量(ADI)は、ヒト
が生涯に亘って摂取しても健康に影
響しない量である。
さやいんげん:
0.5
枝豆:0.5
米:0.2
当該の有害物質が含まれ得る全ての
食品について、摂取量を加味しながら、
それぞれの食品について許容残留量
(MRL)が設定される。
実際の残留量
こむぎ
さやいんげん
一過性の超過は健康に影響せず
コムギ
さやいんげん
トマト
トマト
枝豆
大豆
米
農水省がそれぞれの食品の実際の
残留分析値を測定して公表している。
分析値はMRLを大幅に下回っており、
MRLを超える事例はきわめてまれ
(年に数検体)である。
枝豆
大豆
米
仮に、トマトの残留値がMRLを超えても、
総体としてはADIの範囲内にある。しかも、
一過性のことであり、一生涯を通しての
摂取を想定したADIであるから、短期間
の暴露は健康に全く影響しない。
農場から食卓までの安全性確保
A: 細菌、ウイルス、寄生虫、害虫などの 生物学的危害因子
B: 重金属やカビ毒などの 加熱によっても失活しない危害因子
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
A
B
加熱調理
衛生検査
生産過程
処理・加工過程
流通過程
消費過程
危害因子の種類による「農場から食卓まで」を通したリスクの変動
農場から食卓までの安全性確保
リスクが減るのは2箇所だけ
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
薬食動病
剤中物気
耐毒薬
性菌残
菌 留
農
査ににと
基よ畜
づる検
く法査
検律員
的温間増る輸
基度も殖に送
準管長につ距
も理く必れ離
な等な要、
細が
いのるな菌延
。法。時 び
ばをしを調
、室か殺理
菌温し滅時
はで、すの
増の食る加
殖放材。熱
す置や は
るす料 細
。れ理 菌
消費過程
場
食肉センター
流 通 過 程
素 飼 畜 動
畜 料 舎 物
・
飲 環 薬
水 境
食 解 カ 出
肉 体 ッ 荷
ト
検
査
輸 市 問 小
送 場 屋 売
店
調 保 喫
理 存 食
食肉の安全性に関わる社会システム(1)
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
農場における
適正な衛生管理
病原体低減/HACCP
解体処理工程など
食肉センターの
衛生管理
GAP
?
HACCP
流通過程が
変わらなければ
農
場
食肉センター
流 通 過 程
素 飼 畜 動
畜 料 舎 物
・
飲 環 薬
水 境
食 解 カ 出
肉 体 ッ 荷
ト
検
査
輸 市 問 小
送 場 屋 売
店
消費者は
?
リスクは
残る!
消費過程
調 保 喫
理 存 食
食肉の安全性に関わる社会システム(2)
食品輸送衛生法 (米国、1990)
適正取扱い規範
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
流通過程の
衛生基準
?
GAP
台所のHACCP
消費者
教育
?
HACCP
農
場
食肉センター
流 通 過 程
消費過程
素 飼 畜 動 食 解 カ 出
輸 市 問 小
調 保 喫
「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実
ッ
畜 料 舎 物 肉 体
荷
送 場 屋 売
理 存 食
ト
環
薬
検
店
・
施することによって、初めてリスクが小さくなる。
飲 境
査
水
食肉の安全性に関わる社会システム(3)
農業生産工程管理(GAP: Good Agricultural Practice)
農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検
項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行
うことによる持続的な改善活動のこと。
GAPの共通基盤に関するガイドライン(農林水産省)
ガイドラインにおける取組事項(野菜)
1 食品安全を主な目的とする取組
ほ場環境の確認と衛生管理、農薬の使用、水の使用、肥料・培養液の使用、作
業者等の衛生管理、機械・施設・容器等の衛生管理、収穫以降の農産物の管理
2 環境保全を主な目的とする取組
農薬による環境負荷の低減対策、肥料による環境負荷の低減対策、土壌の管理、
廃棄物の適正な処理・利用、エネルギーの節減対策、特定外来生物の適正利用、
生物多様性に配慮した鳥獣被害対策
3 労働安全を主な目的とする取組
危険作業等の把握、農作業従事者の制限、服装及び保護具の着用等、作業環
境への対応、機械等の導入・点検・整備・管理、機械等の利用、農薬・燃料等の
管理、事故後の備え
4 農業生産工程管理の全般に係る取組
技術・ノウハウ(知的財産)の保護・活用、情報の記録・保管、生産工程管理の実
施、記録の保存期間
永続的改善システム
衛生標準作業手順
SSOP
再吟味
検証
記録
衛生標準作業手順
SSOP
危害解析
再吟味
必須管理点
検証
記録
衛生標準作業手順
SSOP
危害解析
標準作業手順
SOP
一般的衛生管理
PP
加工手順
食品衛生法
必須管理点
HACCPは定まった衛生水準を規定
するものではなく、衛生水準を向上さ
せる永続的システムであり、そのシス
テムの可否を認証するものである。
HACCPと衛生水準
食品の安全性: 科学に基づく合理的判断
安心: 食料生産提供網に対する信頼感
相互理解と協力に基づく信頼性構築が基礎となる
なぜ安心できるのか?
1.FAO、WHO、Codex委員会、OIEなどの国際機関が、世界的科学者
を集めた委員会で農場から食卓までの安全性確保に関する基準
を策定している。これらの国際基準を満たさない食料は、輸入検
疫によって排除されている。
2.ISO、Global GAP、SQFなどの民間機関による第三者認証システ
ムが国際展開しており、多くの食品産業がそれらの認証を取得し
ている。貿易に参入する食品産業は、取引相手から認証取得の
証明書の提示を求められる。
3.国内農産物については、農水省および県の主導によるGAP認証
が推進されている。
4. 上記の基準や認証の基礎となっているHACCPやGAPは、農場か
ら食卓までの食品の安全性を確保するための最新の科学的方法
である。