第10課 ダスト 10.1. ダストによる輻射吸収

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第12課 星間ダスト
平成17年 1月 24日
講義のファイルは
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html
に置いてあります。
質問は
[email protected]
へ。
最終授業は平成17年1月24日です。レポート提出が遅れる人は1月
末日までに天文学教室事務室桜井敬子さんに届けて下さい。単位が
欲しい人は5つ以上のレポートを提出して下さい。M2、B4で単位認定
を急ぐ人は申し出て下さい。
12.1.ミー理論の復習
E=?
 i 2 z

E  Eo  exp 
 i t 
 

λ=波長
半径=a
屈折率=m=n+ik
σEXT= σABS+ σSCA=減光断面積
σABS=吸収断面積
無次元量
σSCA=散乱断面積
とする。
x=2πa/λ
QEXT=σEXT/πa2
QABS=σABS/πa2
QSCA=σSCA/πa2
を導入すると、Qは xとm(=n+ik)の関数として次ページのように表される。
星間ダストのサイズは0.01~0.1μm程度と考えられている。
例えば、a=0.05μmに対して、λ=0.55μmでx=0.6、
λ=2.2μmでx=0.14 である。
Q EXT 
2
x
2

 2 n  1 Re  a n  b n 
Q SCA 
m  n  mx  n  x   
 x  n  mx 
n
n 1
an 
m
n
2
x
2
 2 n  1 a n

n 1
 bn
2

 n  mx  n  x   m  n  x  n  mx 
bn 
mx   x    n  x   mx 
2
 n  mx  n  x   m  n  x  n  mx 
ここに、ψ、ξはRiccati-Bessel 関数と呼ばれ、以下の漸近式を使って計算される。

x  
n 1
 n  x   

1
2n  1

x
x  
n 1
 x   cos
 x    n 1  x ,
n
n

x
x, 
 x ,
n
0
 x   sin
 n 1  x  
2n  1
x
 n  x    n 1  x  
 n  x    n 1  x 
n
x
 1  x   exp i x ,
x,
 n x 
 0  x    i  exp i x
実際の計算では計算不安定性を避けるために、以下の式がよく用いられる。
 D n  mx 

 n  n  x    n 1  x 
m  D mx   n   x     x 
m
x

an 


 D n  mx 

 n  n  x    n 1  x 
m
x 

ここに、 D n  x  
d ln   x 
dx

  x 
 x 
bn 
n
m  D
n
x
n
n 1
 mx   n x  n  x    n 1  x 
は適当なn(~10)でDn(x)=0として、
次の降冪漸化式で計算される。 D n 1  x   n 
x
1
Dn x  
n
x
ミー計算の例:
屈折率mの実部n=1.55とし、虚部k=0と0.2の場合を下に示す。
m1=(1.55,0)はk=0なので、吸収を起こさず、Qabs=0、Qext=Qsca。
m2=(1.55,0.2)ではQextがQsbsとQscaとに分かれている様子が見える。
Mie計算 m1=(1.55,0)、m2=(1.55,0.2 )
Q1ext
5
Q2ext
Q2sca
Q2abs
Q1ext
Q=σ/πa^2
4
3
Q2ext
2
Q2sca
Q2abs
1
0
0
5
10
x=2πλ/a
15
20
(1) 周期的なピーク
ミー計算のグラフを見ると、Qscaに周期的なピークがあることに気づく。これは減光
曲線の干渉構造と呼ばれるものである。
球の外側を通る波長λoの入射光波と、球の内部を通る波長λi= λo/n の波の位相差
は、Δφ=2π(2a/λiー 2a/λo)= 4πa(n-1)/λo=2x(nー1)である。 Δφ=π、3
π、...で二つの波は打ち消し合い、したがってQscaのピークを生む。
destructive
interference
光
山
谷
n=1.25,1.5,2、k=0の場合の図を示す。前頁の式からは、第1ピークが
x=π/2(n-1)=6.3、3.1、1.6で起こることが期待される。どうなっているか?
m1=(1.25, 0) m2=(1.5, 0) m3=(2, 0)
Q1ext
Q2ext
Q3ext
6
n=2
5
n=1.5
Qext
4
n=1.25
3
2
1
0
0
5
10
15
x=2πa/λ
20
25
30
減光曲線の第2の特徴は、x大でQext2となることである。下図はn=1.5に
対してk=0.25,0.5,1と変えたものだが全てQext2となっている。
m1=(1.5,0.25) m2=(1.5,0.5) m3=(1.5,1)
細線 中線 太線
3
2.5
Q1ext
Q1sca
Q1abs
Q2ext
Q2sca
Q2abs
Q3ext
Q3sca
Q3abs
Q
2
1.5
1
0.5
0
0
5
10
x=2πa/λ
15
(2) Extinction Paradox
x>>1、すなわち球の半径aに比べ波長λが小さいとき、吸収は球の断面積πa2で
おき、球を外れた光線は直進すると考えられる。したがって、Qext=Qabs=1となるこ
とが期待されるが、実際には前頁に見られるようにX>>1でQext2となる。この
現象は減光パラドックス(extinction paradox)として知られる。
しかし、前頁のグラフを良く見ると、x>>1では、Qabs→1、Qsca1 の結果、
Qext2であることがわかる。では Qsca1 は何なのであろうか?
このQscaは球の縁をかすめる光線の回折の効果で説明される。
この回折光の散乱断面積が
丁度πa2となる理由は説明
しにくいが、下の反位相波
が散乱光として計上される
と考えられる。
反位相波
(散乱波)
平面波
(3) a<<λ
x=2πa/λ<<1 すなわち、 a<<λでは Qの近似式は、
  1 
Qext  Qabs  4 x  Im 



2


Qsca 
8
3
x
4
 1
2
 2
a<<λなので、ダストは空間的に一様な電場が時間的に振動するものとして電磁
波を感じる。前回やったように、誘電率εの球は一様な電場Eに対して
3  1
P 

 Eo の分極密度を発生させるから、球全体では体積をかけて
4   2
 1
3
pa 
 E の双極子となる。E=Eo・exp(iωt)の電磁波に対しては、
 2
 1
3
p t   a 
 Eo  exp i  t  の振動双極子となるので、電磁波を発生する。
 2
入射光と散乱光の作る平面を散乱面、角度θを散乱角という。下図のように入射光
が散乱面に垂直な100%の偏光の時、散乱光も同じく散乱面に垂直に100%偏光
する。散乱光の強度は散乱角によらず一定である。
入射光 I 
θ
散乱光 Is 
次に下図のように入射光が散乱面に平行な100%の偏光の時、散乱光も散乱面
に平行に100%偏光する。散乱光の強度は散乱角θに対しcos2θの依存性を示す。
入射光 I II
r
16  a
4
Is  
 r
4
2
6
 1
 2
2
散乱光 Is II
16  a
4
I
Is II 
 r
4
2
6
 1
 2
2
cos   I II
2
誘電率ε=m2が波長にあまり強く依存しない時、Qscaはx4=(2πa/λ)4に比例する。
このようにλ-4に比例する散乱はレーリー散乱(Reyleigh scattering)と呼ばれる。
一方、吸収の式を見ると、Qabsはx=(2πa/λ)に比例する。
したがって、xが十分に小さいと吸収が散乱よりも効くようになる。つまり、波長がある
程度長いと減光は吸収が散乱より支配的になり、かつ減光の強さは大体、波長に反
比例する。この特徴は星間減光曲線にも現れている。
もう一つ興味深いのは、Qabs∝xの場合、原子1個あたりの吸収量は一定である。
(復習)誘電体の球
半径a、誘電率εの球を考え、外から一様な電
場Eをかける。
球の表面に誘導される電荷は、双極子
p=a3[(ε-1 )/(ε+2)] E と同じ電場を作る。
したがってこの球のα=a3[(ε-1 )/(ε+2)]
r=半径
ε=誘電率
E
微小ダストの共鳴吸収
波長λ>>a の時、
σabs=Qabs・πa2
=-(8π2a3/λ)・Im [(ε-1 )/(ε+2)]
したがって、 ε=-2付近でQ>>1となる。
ε=ε1+iε2 とおく。
Im [(ε-1 )/(ε+2)]=3ε2 / [(ε1+2)2 +ε2 2] =A
(ε1 +2) 2 +(ε2-3/2A) 2 = 9/4A 2
A=Im [(ε-1 )/(ε+2)]=一定の軌跡
6
A=1/2
共鳴吸収領域
ε2
4
3/4
2
3/2
弱い吸収領域
3
0
-5
-4
-3
-2
-1
0
ε1
1
2
3
4
σ/N= -πa2(2πa/λ)4 Im [(ε-1 )/(ε+2)] / (4πa3n/3)
= -(6π/nλ) Im [(ε-1 )/(ε+2)]
=半径 a に依らない。
X<<1では原子一個あたりの吸収断面積は一定である。したがって、X0で
Efficincy Factor Q0 は吸収の効率が落ちることを意味しない。
逆にX>>1でQ=2の領域が原子一個あたりの効率は悪くなることに注意。
σ/N
Q
2
1
0
0
1
2
x
3
0
1
2
x
3
12.2. 星間減光
D
F=L / (4πD2)
m=M+5log(D/10pc)
D
F=L exp(-τ)/ (4πD2)
m=M+5log(D/10pc)+A
τ
A=2.5(loge)τ=1.086τ
A=星間減光(Interstellar Extinction)と呼ばれ、星間空間中の微小な
固体微粒子が原因と考えられている。
星間減光の波長による変化
λ
A(λ)/A(V)
λ
A(λ)/A(V)
λ
A(λ)/A(V)
250
0.00042
7
0.020
0.28 1.94
100
0.0012
5
0.027
0.26 2.15
60
0.002
3.4
0.051
0.24 2.54
35
0.0037
2.2
0.108
0.218 3.18
25
0.014
1.65 0.176
0.20 2.84
20
0.021
1.25 0.282
0.18 2.52
18
0.023
0.9
0.479
0.15 2.66
15
0.015
0.7
0.749
0.13 3.12
12
0.028
0.55 1.00
10
0.054
0.44 1.31
9.7
0.059
0.365 1.56
9.0
0.042
0.33 1.65
0.12 3.58
Log(Av/Aλ)
0
星間吸収曲線
星間減光曲線
-1
-2
-3
-1
0
1
log(λ)
2
星間減光曲線の特徴(2)
ε1
1
0
ωp
-1
-2
-3
表面プラズモン
0
ω
ωp
グラファイト(やメタル)では固体内自由電子によって、
ε=1- (ωp/ω)2となり。 ε=-2で吸収のピークが生まれる。
星間減光曲線の特徴(3)
3: R=Av/(AB-Av) (the total to selective absorption )
R=3.1 場所より 2.7~5
4: 可視域では Av ~ 1/λ
5: 9.7μ、18μ吸収帯
9.7μ: Si-O のStretching Mode
18μ : Si-O-Si のBending Mode
吸収帯には細かい構造が欠けている。
鉱物種を特定できない。
6: 星間ダスト成分
以上から炭素系とシリケイト系のダストが存在する
ことが分かる。
13.3. 赤化
カラーエクセス
E(B-V)=AB-Av=0.31Av
E(U-B)=AU-AB=0.25Av
=0.81E(B-V)
0
V
色等級図
0
Av=0
1
Av=0
(U-
V)
0.5
二色図
2.0
1
1.0
4.0
1.5
2
0
(B-V)
0.5
1
2
0
(B-V)
1
2
赤化 (reddening) = E(X-Y) = AX-AY
E(B-V)=AB - Av は最もよく使われる。
減光と赤化により、色等級図は平行移動を受ける。
0
(B-V,V)図での移動
の方向は、
AB/Av=1.31より、
Av/E(B-V)
V
5
=1/0.31=3.2
で決まる。
10
Av=2 の減光を受
けたHR図の変化
15
-0.5
0
0.5
1
B-V
1.5
2
2.5
例:銀河系中心方向の吸収I)
銀河中心(Sgr A*)の座標
銀経=l=-0.054°
銀緯=b=-0.046°
(l,b)=(0,0) :赤経=α=17時45分37.2秒 赤緯=δ=-28°56′10″.2
(分点2000)は、銀河中心ではない。
l=90°
Sagittarius arm
l=180°
l=0°
太陽
銀河中心
星間雲
アンタレス
GC方向
銀河中心3°四方Bバンド
銀河系中心方向の吸収(I
I)
銀河中心30′四方Bバンド
銀河中心30′四方
銀河中心30′四方 Hバンド
Jバンド
銀河中心
H
6
AK/(AH-AK)=0.108/(0.176-0.108)=1.64
Av=14
K
銀河中心方向領域17の
星間減光
8
10
12
吸収の少ないバーデウィンドウで
決めた赤色巨星枝
Reddening Free Parameter
Q1=(U-B)/ 0.25 -(B-V)/0.31
Q2=(U-V)/ 0.56 -(V-I)/0.521 1
Sp(V) U-B
B-V U-V V-I
Q1
Q2
O5
-1.19 -0.33 -1.52 -0.47 -3.70 -5.51
B0
-1.08 -0.30 -1.38 -0.42 -3.35 -1.66
A0
-0.02 -0.02 -0.04 0.00 -0.02 -0.07
A5
0.10 0.15
0.25
F0
0.03
0.33 0.47 -0.85 -0.31
G0
0.06 0.58
0.64 0.81
-1.63 -0.41
G5
0.20 0.68
0.88 0.89
-1.39 -0.14
K0
0.45 0.81
1.26 1.06
-0.65 0.22
M0
1.22
1.40
2.62
2.19 0.36 0.48
M5
1.24
1.64
2.88
3.47 -0.33 -1.52
0.30
0.22 -0.08 0.02
0
-2
-4
-6
-4
-2
0
Reddening Free Parameter
QJHK=(J-H)/ 0.108 -(H-K)/0.068
QHKL=(H-K)/0.068-(K-L)/0.057
4
M0
Sp(V) J-H H-K K-L QJHK QHKL
O9
-0.14
-0.04 -0.06 -0.71 0.46
B5
-0.06
-0.01
A0
0.00
0.00
0.00
0.0
F0
0.13
0.03
0.03
0.76 -0.09
G0
0.31
0.05
0.05
2.14 -0.14
G4
0.33
0.06
0.05
2.17 0.01
K0
0.45
0.08
0.06
2.99 0.29
3
-0.04 -0.41 0.55
0.0
K7
0.66
0.15
0.11
3.91 0.28
M0
0.67
0.17
0.14
3.70 0.04
M1
0.66
0.18
0.15 3.46 0.02
M3
0.64
0.23
0.20
2.54 -0.13
M6
0.66
0.38
0.36
0.52 -0.73
K0
QJHK
2
G0
1
M6
0
-1
-0.8
A0
O9
-0.4
0
QHKL
0.4