Transcript E:ダスト光学
E:ダスト光学
前回CaT線の
積み残し
Armandroff,T.E., DaCosta,G.S. 1991, AJ 101, 1329-1337
球状星団のメタル量とCaII Triplet との関係
47Tuc
M2
N6397
N1851
N6752
M15
星団毎には、光度が上がると
W(CaT)が増加している。
W8542+W8662+0.619(V-V(HB))
これは前に述べた重力効果。
こうして、W(CaT)をメタル量とつなげ
るキャリブレーションができた。
しかし、ラインが上下に分かれ
るのはメタル効果。
はV-V(HB)=0でのW(CaT)である。
しかし、古い種族のみ適用可。
Pont,F., Zinn,R., Gallart,C.,Hardy,E., Winnick,R. 2004 AJ 127, 840-860
Fornax矮小楕円銀河のメタル量分布
Fornax星のメタルは
N1851より多い?
2<[Fe/H]<0 ?
Fornax星はM15と
N1851の間に存在
する。
[Fe/H]<-1.3 ?
MIー(V-I)色等級図
○ Fornax赤色巨星
× M11(0.25 Gyr, [Fe/H]=0.10)
星団
[Fe/H]
47 Tuc
-0.71
NGC1851
ー1.29
M15
ー2.17
明るくて高メタルの星に対するW(CaT)と[Fe/H]の関係。
■ 球状星団
☆ LMC平均
左のキャリブレーションから決めた
Fornax赤色巨星の年齢ーメタル関係
点線=若い種族のキャリブレーション。
点線はSFR=一定でのモデル
D.2.赤色巨星大気の化学組成
恒星大気の温度が低下してくると、まず電離エネルギーの高い原子、例え
ばヘリウムなどが中性化する。O型星で見られるHeIIのラインがB型では
HeIのみになるのはこのためである。温度がさらに低下すると、原子から分
子への移行が始まる。K型からM型の恒星スペクトルは分子の吸収線が
大変強い。
以下では分子平衡が恒星スペクトルに及ぼす影響を調べる。
D.2.1.分子平衡
A,B,Cという物質のあいだに下のような化学反応があるとする。
n・A+m・B=k・C
この反応が化学平衡の状態にある時には、下の関係が成立する。
n・μA+m・μB=k・μC
ここに、 μA、 μB、 μC、はA,B,Cの化学ポテンシャルである。
もう少し一般的に物質A1,A2、...の間に以下の反応が成り立つ時、
a1A1+a2A2+...=0
化学平衡の状態では次の式が成立する。
a1μ1+a2μ2+...=0
n
kT ln
理想気体の化学ポテンシャルμは、
nQ Z
ここに、n=N/V= 数密度(個/cm3)、
nQ=(2πmkT/h2)3/2=量子密度(個/cm3)、
Z=Σexp (-E/kT)=内部状態分配関数
a
a
a
a
a
j
j 0
j
j
ln n j
ln n j
j
ln n Q
j
ln n j
j
nj
aj
aj
に上のμjの式を代入すると、
nj
a j kT ln
n Q , j Z in , j
a ln n Z
ln n
ln n
Z ln n Z
j
Q j
kT a ln n ln n Z 0
j
j
Q , j in , j
(jはj-番目の種類の粒子の意味。)
in j
aj
j
j
in j
ln n Q Z in j
nQ
aj
j
j
Z in j
aj
Q j
aj
j
in j
aj
ln n Q Z in j
j
aj
aj
K T
(質量作用の法則)
K=平衡定数
D.2.2.G-K-M型星の大気組成
恒星大気中では何百という分子が化学反応式で結ばれている。
ここでは最も基本的なH,C,Oの間の反応式が大気温度が低下するに連れて、
どのような分子を生み出すかを調べてみよう。
H,C,Oが全て原子であったと仮定した時の仮想圧力を、
PH0=1000,PC0=0.5, PO0=1 (erg/cm3) とする。
つまり、水素:炭素:酸素の組成比をH:C:O=1000:0.5:1 とする。
組成を数密度でなく分圧で表わすのは計算に便利であるからである。
温度が下がるとH,C,Oの間の反応により様々な分子が形成されるが、ここでは
考慮する分子種を、H, O, C, H2,O2,C2, OH, CH, CO, H2O, CH4の 11種に限定して、
与えられたPH0、PC0、PO0 と T に対し、 PH、PC、PO、PH2、……PH2O、PCH4
を決める方法を考える。
この計算に必要なのは反応の平衡定数K(T)である。
KH2 (T) 、、、、KCH4(T) が分かれば、与えられた、PHO、PCO、POO に対して
PH、PO、PC、PH2 、PO2 、PC2 、POH、PCO、PCH、PH2O、PCH4の11個を結ぶ11個の
化学平衡式を立てることができる。
解くべき方程式は、未知数の数と同じ11個あり、それらは以下の通りである。
(1) PH2=PH2/KH2
(2) PO2=PO2/KO2
(3) PC2=PC2/KC2
(4) POH=POPH/KOH
(5) PCH=PCPH/KCH
(6) PCO=PCPO/KCO
(7) PH2O=POHPH/KH2O
(8) PCH4=PCHPH3/KCH4
(9) POH=PH+2PH2 +POH+PCH+2PH2+4PcH4
(10) POO=PO+2PO2 +POH+PCO+PH2O
(11) POC=PC+2PC2 +PCH+PCO+PCH4
log10Kp(T) をグラフで示す。Kp(T)の単位はCH-3H以外は
dyn/cm2である。KCH-3Hの単位はdyn3/cm6であるが、cgs系で
の数値として同じグラフに描いてある。
解離エネルギー=11eVと大きいCOのラインに注目して欲しい。
解離平衡定数 logK
30
20
H-H
10
log K
O-O
0
C-C
O-H
-10
C-H
-20
C-O
OH-H
-30
CH-3H
-40
-50
1000
2000
3000
4000
温度(K)
5000
6000
解離平衡 Po(H)=1000、Po(O)=1, Po(C)=0.5 (dyn/cm2)
4
H
2
H2
O
0
O2
log P(dyn/cm2)
C
-2
C2
H2
OH
CO
CH
-4
CO
OH
-6
CH4
CH
C2
O2
-8
-10
-12
1000
H2O
H
O
C
H2O
CH4
2000
3000
4000
温度(K)
5000
6000
D.2.3.C型星(炭素星)
低温度星のスペクトルで最も特徴的なことはM型星とC型星の存在である。
両者共に4000K以下の低温の恒星であるが、そのスペクトルは全く異なる。
その原因が大気中のC/O比の違いにあることを指摘したのは藤田良雄であった。
低温大気では安定なCOがCとOの少ない方を食いつくしてしまう。
このため、Oが多いM型星の大気では余ったOがHやFe、Tiと反応してH2OやTiO
を形成する。
一方、C型星では逆にCが余り、それがC2,CH,CNを形成する。
このように
C/O>1ーー>C型星
C/O<1ーー>M型星
となるのである。
C リッチ 組成の分子平衡
解離平衡 Po(H)=1000、Po(O)=1, Po(C)=2 (dyn/cm2)
4
H
2
C
H2
log P(dyn/cm2)
0
O2
-2
OH
CH
CO
-4
CO
CH
OH
H2O
CH4
-6
C2
H
O
-8
O2
CH4
-10
-12
1000
C2
H2
O
2000
3000
H2 O
4000
温度(K)
C
5000
6000
炭素星スペクトル
C/M判別フィルター
78
81
5
4
Fλ
3
2
1
Te3500g1Vt2Zsolar
0
0.5
0.6
0.7
0.8
λ(μm)
0.9
1
E.1. 電気双極子の光吸収
E.1.1. 吸収断面積 σ と吸収係数 k
σ:粒子断面積
dx
N:粒子数密度
I(x)+dI
I(x)
σ
?
dV=S・dx
正面(面積S)
dx
から見ると
σ
S
σ
σ
S
σ
σ
総断面積 Σ
Σ=σNdV
σ
=σNSdx
被覆率=C
σ
C=Σ/S=σNdx
dx
dI=-I・C
=-I・κ・dx
I
I-Idτ
=-I・σ・N・dx
κ=吸収係数
σ =吸収断面積
κ=N・ σ
吸収係数κは単位体積中の総吸収断面積と考えればよい。
κ=一定の時上の式を解くと、 I=Io・Eexp(-κ・x)
= Io・Eexp(-N・σ・x)
E.1.2.電気双極子
古典電磁気学では、電磁波の吸収は電気双極子によって起きると考える。
双極子は図のように+qとーqの電荷が距離 z 離れた対になっているものである。
+q
この二つの電荷がばねの力 K・zで結ばれていると仮定する。外力
も摩擦も考えないと、zの運動は
2
z
m
d z
dt
2
K z
2
d z
dt
2
K
m
z 0 z
z A cos 0 t B
2
5
-q
例: z 5 cos 3 t
4
3
を右図に示す。
2
1
ω0は、固有角振動数
と呼ばれる。
0
0
-1
-2
-3
-4
-5
1
2
3
4
5
6
7
8
次に、この振動子には摩擦が働いているとする。すると、z は
2
ばねの力 K・z + 摩擦力 g(dz/dt)
d z
dz
m 2 g
K z
の下で揺れる振動子の運動方程式に従う:
dt
dt
2
d z
g dz
K
dz
+q
2
z
z
0
2
dt
m dt
m
dt
z
-q
z A exp i t とおいて、 z i z 0 z
2
2
2
2
z A exp t cos 0
t B
4
2
5
4
摩擦が小さい(γ <2ωo)
時は、zは右の図のよう
に減衰振動を示す。
例: z 5 exp 0 . 5 t cos 3 t
3
2
1
0
0
-1
-2
-3
1
2
3
4
5
6
7
8
外力のない時には、双極子の運動は摩擦力によって減衰する。
しかし、入射電磁波 E=Eo eiωt= Eo ei2πνt が加わると、外力による強制が摩
擦による減衰を丁度補うところで、安定な振動が可能になる。
運動方程式は、前ページ初めの式に外力の項を加え、
E0e
i 2 t
―e
2
d z
m
dt
z
2
g
2
dt
2
dt
2
g
dz
m dt
2
d z
K z e Ee
i 2 t
dt
d z
+e
dz
dz
dt
K
z
m
z
2
0
e E0
e
i 2 t
m
e E0
e
i 2 t
m
定常解は、z=A・e i 2π ν t とおいて求める。上式に代入して、
2 0 Ae
2
z
i 2 t
e E0
4 m
2
i 2 Ae
1
i
2
0
2
i 2 t
2
e
i 2 t
2 0 Ae
2
i 2 t
e E0
m
i 2 t
e
zの形を見ると分かるように、電磁波がなければ減衰したはずの双極子の運動が
安定になっている。これは、電磁波から双極子に運動エネルギーが供給されてい
るためである。
これは、電磁波からは一定の割合でエネルギーが奪われている、つまり、電気双
極子による電磁波の吸収が起きていることを意味する。
E0e
i 2 t
―e
今までの結果をここで整理しよう。、
(1) 双極子モーメント p
z
E=Eo・ei2πνt
(2) 外場 E
(3) 電子のずれ z
+e
p=q・z=-e・z
z
e E0
4 m
2
1
0 i
2
2
i 2 t
2
(4)双極子モーメントpと外場Eの関係 p=α・E
p e z
e
e
2
1
4 m
2
2
4 m
2
0 i
2
2
1
i
2
0
2
2
i 2 t
2
E0e
e
2
4 m
2
1
0 i
2
2
2
E
e
E.1.3.誘電率εと屈折率m
この問題を今度は電磁波の方から考えてみよう。
p
p
p
双極子モーメント p =αE が密度Nで存在している。
空間の誘電率=ε、屈折率=m=m1-i・m2とする。
ε=m2 で、真空のε=1である。(念のため)
εとp、Nの間には εE=E + 4πN・p という関係がある。
ε=m2
ここに上の p =αE を代入すると、
εE=E + 4πN・ αE= (1 + 4πNα) E したがって、
ε=(1 + 4πNα)
つまり、電気双極子pの性質を表すαが空間の誘電率εを決めているのである。
屈折率mは、m=√ε で求められる。
ところで、屈折率の実数部 m1 と虚数部m2はどのような効果を持つのだろう?
真空中(屈折率)=1)を伝わる振動数νの電磁波 E=Eo ・exp[ 2πi(νt – kx)]
が屈折率=m=m1-i・m2 の媒質に入射するとどうなるか考えよう。
すると、ν ν、 k m・k =m1 ・k-i・m2 ・k
なので、
Eo ・ exp[2πi(νt-kx)] Eo ・ exp[2πi(νt-m1kx)] ・ exp( -2πm2kx)
m=1
m=m1-i・m2
I(x)=Io
I(x)=Io・exp(-4πm2kx)
x=0
光の強度 I(x) ∝ |E(x)|2 なので、
x<0
真空
m=1
I(x)=Io
x>0
媒質
m=m1-i・m2
I(x)=Io・exp(-4πm2kx)
つまり、屈折率mの虚数部m2は光の吸収を表している。
E.1.4.電気双極子の吸収断面積
E.1.1.節を思い出すと、 I=Io・exp(-κ・x)= Io・exp(-N・σ・x)
であった。 I(x)=Io・exp(-4πm2kx) と比べると、
κ= N・σ=4πm2k= -4πIm(√ε)/λ
εをもう一度見直してみよう。
ε=(1 + 4πNα) 1 4 N R i 4 N I を書きなおして
1
Ne
0
2
2
m
( 0
2
2
2 2
)
2
2
i
2
Ne
m
2
( 0
2
2 2
)
2
2
したがって、
1 2 N R i 2 N I
1
1 Ne
0
2
2
2 m
( 0
2
2
2 2
)
2
2
i
1 Ne
2 m
これで、σを計算できる準備ができた。
4
N
Im
8
2
I
e
2
cm
2
4
2
( 0 )
4
2
2
( 0
2
2 2
)
2
2
E.2. 固体球形微粒子の光散乱・吸収・減光(Mie Theory)
E.2.1.ミー理論
入射フラックス=F(W/m2)の平面波を考える。
半径aの球が単位時間当たりK(W)のエネルギーを吸収し、H(W)を散乱する時、
σABS=K/F =吸収断面積
σSCA=H/F=散乱断面積
σEXT= σABS+ σSCA=減光断面積
減光断面積
2a
吸収
Q=
散乱A
σ/πa2=Efficiency
Factor
散乱B
E=?
i 2 z
E Eo exp
i t
λ=波長
半径=a
屈折率=m=n+ik
σEXT= σABS+ σSCA=減光断面積
σABS=吸収断面積
無次元量
σSCA=散乱断面積
とします。
x=2πa/λ
QEXT=σEXT/πa2
QABS=σABS/πa2
QSCA=σSCA/πa2
を導入すると、Qは xとm(=n+ik)の関数として次ページのように表される。
星間ダストのサイズは0.01~0.1μm程度と考えられている。
例えば、a=0.05μmに対して、λ=0.55μmでx=0.6、
λ=2.2μmでx=0.14 である。
波長λの平面電磁波の中に、半径a、屈折率mの球を置いたときの断面積σは厳密に
解くことが出来る。x=2πa/λとすると、Q=σ/πa2 は xとmで決まる。
EXT Q EXT a
Q EXT
2
x
2
SCA Q SCA a
2
2 n 1 Re a
n
bn
Q SCA
n 1
an
x
2 n 1 a
2
2
2
n
bn
2
n 1
mx n x n x n mx
m n mx x n x mx
m
2
bn
n
n mx n x m n x n mx
n mx n x m n x n mx
ここに、ψ、ξはRiccati-Bessel 関数と呼ばれ、以下の漸近式を使って計算される。
x
n 1
n x
1
2n 1
x
x
n 1
x cos
x n 1 x ,
n
n
x
x,
x ,
n
0
x sin
n 1 x
2n 1
x
n x n 1 x
x,
n x n 1 x
n
x
1 x exp i x ,
n x
0 x i exp i x
実際の計算では計算不安定性を避けるために、以下の式がよく用いられる。
D n mx
n n x n 1 x
m
x
an
D n mx
n n x n 1 x
m
x
bn
m D mx n x
m D mx n x
n
n
n
x n 1 x
n
x n 1 x
ここに、 D n x d ln x x
x
dx
は適当な次数でDn(x)=0として、
次の降冪漸化式で計算される。
D n 1 x
n
x
1
Dn x
n
x
参考のため Bohren/Huffman1983”bsorption and Scattering of Light by Small
Particles” に載っているFortranプログラムを簡略化したサブルーチンを示す。これ
は、xとm(=ref)を入力すると、Qext,Qsca,Qabsを返すようになっているプログ
ラムである。
subroutine qmie(x,ref,qext,qsca,qabs)
do 100 n=1, nn
c
rn=nmx-n+1
complex ref,y,d(3000),xi,xi0,xi1,an,bn
double precision psi0,psi1,psi,dn,dx
c
dx=x
100 d(nmx-n)=(rn/y)-(1./(d(nmx-n+1)+rn/y))
c
riccati-bessel functtions with real argument x
c
caluculate by upward recurrence psi0=dcos(dx)
y=x*ref
psi1=dsin(dx)
xstop=x+4*x**0.333+2.
chi0=-sin(x)
nstop=xstop
chi1=cos(x)
ymod=cabs(y)
apsi0=psi0
nmx=amax1(xstop,ymod)+15
apsi1=psi1
c
logarithmic derivative d(j) calculated by downward
xi0=cmplx(apsi0,-chi0)
c
recurrence beginning with initial value 0+i*0 at
xi1=cmplx(apsi1,-chi1)
c
j=nmx
qsca=0.0
d(nmx)=cmplx(0.0,0.0)
qext=0.0
nn=nmx-1
n=1
200 dn=n
psi0=psi1
rn=n
psi1=psi
psi=(2.*dn-1.)*psi1/dx-psi0
apsi1=psi1
apsi=psi
chi0=chi1
chi=(2.*rn-1)*chi1/x-chi0
chi1=chi
xi=cmplx(apsi,-chi)
xi1=cmplx(apsi1,-chi1)
an=(d(n)/ref+rn/x)*apsi-apsi1
n=n+1
an=an/((d(n)/ref+rn/x)*xi-xi1)
rn=n
bn=(ref*d(n)+rn/x)*apsi-apsi1
if (n-1-nstop) 200,300,300
bn=bn/((ref*d(n)+rn/x)*xi-xi1)
qsca=qsca+(2.*rn+1.)*(cabs(an)*cabs(an)
+ cabs(bn)*cabs(bn))
qext=qext+(2.*rn+1.)*(real(an)+real(bn))
300 continue
qsca=(2./(x*x))*qsca
qext=(2./(x*x))*qext
qabs=qext-qsca
return
end
ミー計算のグラフを見ると、x0でQ0、x∞でQext2という特徴に気づく。
また、Qscaに周期的なピークがあることも興味深い。
誘電率の虚数部=0で、実数部=1.25,1.5,2と変えたときの図を示す。粒子は
吸収を起こさないので、Qext=Qsca、Qabs=0である。
ε1=(1.25, 0) ε2=(1.5, 0) ε3=(2, 0)
Q1ext
Q2ext
Q3ext
6
5
Qext
4
3
2
1
0
0
5
10
15
x=2πa/λ
20
25
30
屈折率mの実部n=1.55とし、虚部k=0と0.2の場合を下に示す。
m1=(1.55,0)はk=0なので、吸収を起こさず、Qabs=0、Qext=Qsca。
m2=(1.55,0.2)ではQextがQsbsとQscaとに分かれる様子が見える。
Mie計算 m1=(1.55,0)、m2=(1.55,0.2 )
Q1ext
5
Q2sca
Q2abs
Q1ex
t
4
Q=σ/πa^2
Q2ext
3
Q2ex
t
Q2s
ca
Q2
abs
2
1
0
0
5
10
x=2πλ/a
15
20
(1) 周期的なピーク
ミー計算のグラフを見ると、Qscaに周期的なピークがあることに気づく。これは減光
曲線の干渉構造と呼ばれるものである。
球の外側を通る波長λoの入射光波と、球の内部を通る波長λi= λo/n の波の位相差
は、Δφ=2π(2a/λiー 2a/λo)= 4πa(n-1)/λo=2x(nー1)。 Δφ=π、3π、...で
二つの波は打ち消し合い、したがってQscaのピークを生む。
destructiv
e
interferen
ce
光
山
谷
n=1.25,1.5,2、k=0の場合の図を示す。前頁の式からは、
第1ピークがx=π/2(n-1)=6.3、3.1、1.6で起こることが期待される。
m1=(1.25, 0) m2=(1.5, 0) m3=(2, 0)
Q1ext
Q2ext
Q3ext
6
n=2
5
n=1.5
Qext
4
n=1.25
3
2
1
0
0
5
10
15
x=2πa/λ
20
25
30
減光曲線の第2の特徴は、x大でQext2となることである。下図はn=1.5に
対してk=0.25,0.5,1と変えたものだが全てQext2となっている。
m1=(1.5,0.25) m2=(1.5,0.5) m3=(1.5,1)
細線 中線 太線
3
2.5
Q1ext
Q1sca
Q1abs
Q2ext
Q2sca
Q2abs
Q3ext
Q3sca
Q3abs
Q
2
1.5
1
0.5
0
0
5
10
x=2πa/λ
15
分極した誘電体球を、一様に正に帯電した球と負に帯電した球が r だけずれて重
なっていると考える。
正電荷球の内部、中心からRでの電場EはE=4π(4πR3ρ+/3)/(4πR2)= 4πRρ+/3
電位は中心でゼロとして、
R
4
RR
6
4 Nq
RR
R
6
4
6
4 Nq
6
r R r R
R R 2 R r r r
全体の電位φは、φ+とφーの和であるから、
R
R R
4 Nq
R r
したがって、
E
3
4 Nq r 4 P
R
R
3
3
板の時はE=-4πPであったが、球では 1/3 が
かかることに注意。
球の外側の電場は球の中心にお
いたモーメントの大きさ
P
E=-4πP/3
Po=(4πRo3P/3)
の双極子による電場に等しい。
E.3. 微小( a<<λ )粒子の光吸収
粒子半径が光の波長に比べ小さい時には、ミー解の初項のみが支配的となり、
1
1
Qabs 4 x Im
x
2
Qsca
8
3
x
4
1
2
2
x
4
1
4
この解は粒子を一つの電気双極子と見なしたことに相当している。これは、粒子の各
部分が一様な電場を感じていると考えると、以下に述べるように自然に理解できる。
E.3.1.一様に分極した誘電体球
ρ+=N・q
+
=
r
ρ-=-N・q
P N p N q r
一様な外部電場中の誘電体球
ー - - - - - - -
球内部では、外場Eoと球の分極Pにより
生じる電場(-4πP/3)の和として、
E=Eo-4πP/3 の電場が生じている。
Eo
P
Eo
-4πP/3
+
=
E
+ + + + + + + +
Eo
εE=E+4πP から、
P=(ε-1)E/4π なので、上式に代入して、
E=Eo- (ε-1)E/3
結局、球内部の電場Eと球が作る分極密度Pは、
E
3
2
Eo
P
1
4
E
3
4
1
2
Eo
E.1.でやったように、電気双極子P=αEの吸収断面積は、
8
2
I
で与えられる。微粒子の分極モーメントPoは、
Po
なので、
4
a P
3
3
4
3
8
a
3
3
4
1
2
Eo a
1
3
2
a Im
a 4
2
2
2 a
3
1
Eo
2
1
Im
2
1
Q 4 x Im
2
E.3.2.光吸収の効率
やかんの口から出る蒸気は口のすぐ傍では透明であるが、口から数cm離
れ、細かい水滴が生じると不透明な湯気となる。また、空気中の水分の量が
変わらなくても、水蒸気が雲や霧になると空気の透明度は大きく減少する。
天体の例として、AGN、分子雲、質量放出星など低温(T<1500K)のガス
はそこに含まれるダストにより強い減光を受ける。この様に気体から個体・液
体の微粒子になると強い吸収を示すことは良く知られている。
それでは微粒子の光吸収が強いのはなぜだろうか?
この問題を調べるために、前ページのQabsに戻ろう。
abs Q abs a
n i 2 1
1 8 a
Qabs 4 x Im
Im
2
n
i
2
2
2
左の式は吸収断面積σが幾何学断面積 πa2 のQ倍であることを示す。
すると左式は、粒子半径 a が小さくなると Q0、 つまり吸収効率が低下するこ
とをのべているのであろうか?
それは誤解である。
粒子の中にはNT=(4πa3/3)N個の原子が含まれている。原子1個当たりの吸
収断面積σatom= σ/NT を求めてみよう。
atom
Q abs a
NT
2
8 a
2
3
n i 2 1 6
n i 2 1
Im
Im
2
2
3
4 a N
N
n
i
2
n
i
2
3
この式は、a<<λの時に原子1個当たりの吸収断面積は一定値を取ることを示
している。
これに対し、aが大きい時のQ=2ではダスト粒子内の原子1個当たりの吸収断
面積σatomは、
atom
Q abs a
NT
2
n i 2 1
n i 2 1
3
Im
Im
2
2
3
4 a N
2
aN
n
i
2
n
i
2
6 a
2
で、半径aが大きくなるとσatomは小さくなる、つまり大きい粒子は原子1個当たり
の光吸収効率が悪くなることが分かる。
これは、物理的には期待される効果である。
a<<λ
小さい粒子では粒の中のどの原
子も入射光と同じ強さの電場を感
じ、したがって吸収効率は減じな
い。大きい粒子では背面の原子
は弱まった電場しか感じず吸収に
寄与できない。
a>=λ
このように、ダスト微粒子が小さい時にはダストの原子一個当たりの吸収断面積
は一定になることがわかった。その値はいくらになるのだろうか?
個体を電気双極子の集まりと考えるローレンツモデルを採用しよう。すると、
ダスト内の分極密度は、外場=Eoとして
2
3 1
N e
P Np
1
2
4
N e
2
3 m
2
E0
0 i
0 i
2
2
2
3
2
2
2
2 a
1 8 a
1
Im
Im
2
2
2
8 a
Ne
f
Im
3 m 2 2 i
0
2
2
2
E0
1
a Qabs a 4
2
4 m
2
1
2
3
2
3
e 4 a N
f
Im
3
mc
i
0
4
atom
4 a
3
3
N
e
2
mc
f
4
0 2
4
2
e
2
f
4
mc 0
2
これを見ると、ダストの場合も原子1個当たりの吸収断面積に直してみると、気体
原子の吸収と同じ形になることがわかる。したがって、ダストが形成されると減光
が強まるのは、個体になると気体よりγか、f-値が大きくなると考えるのが妥当
である。個体では一般に紫外域の吸収バンドのウイングが可視光の屈折率を
規定していると考えられる。個体の紫外バンドの寿命が短く、気体にくらべγが
大きいのであろう。そしてそれが個体のσatomを大きくしている原因であろう。