D:赤色巨星のスペクトル分類

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Transcript D:赤色巨星のスペクトル分類

D: 赤色巨星のスペクトル分類
D.1.可視スペクトルの概観
6
logλF(λ)
5
Te42000g31600Vt0Zsolar
2
O5V
Te=42000
log g =4.5
1
(AQ:2.5)
4
3
-1.5
-1
-0.5
0
logλ(μ)
0.5
1
1.5
2000000
λ=0.1μmで
のライマン連続
吸収によるフ
ラックスのジャ
ンプに注意。
1800000
1600000
Te4200g31600Vt0Zsolar
1400000
Fλ
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
λ(μm)
0.6
0.7
0.8
0.9
1
B0V
Te=30000K
log g = 4
1
Te30000g10000Vt2Zsolar
logλF(λ)
0
-1
-2
バルマージャンプ
-3
-4
-1.5
-1
-0.5
0
logλ(μ)
0.5
1
1.5
60
3
Te30000g10000Vt2Zsolar
Te30000g10000Vt2Zsolar
45
バルマー
ジャンプ
Fλ
2
Fλ
30
ライマ
ン連
続吸
収
15
Hα線
1
0
0
0
0.1
0.2
λ(μm)
0.3
0.4
0.3
0.4
0.5
0.6
λ(μm)
0.7
0.8
25000
20000
Fλ
15000
Te42000g31600Vt0Zsolar
バルマー連
続吸収
3646
O5V
Hε
Hδ
10000
0
0.36
He I
4026
0.38
He II
He II 4200 44542
0.4
0.42
0.44
λ(μm)
14000
Fλ
8000
0.46
Hβ
0.48
0.5
サブタイプの分類には、
O型では He II 4541/He I 4471
のライン強度比が用いられる。
Te30000g10000Vt2Zsolar
12000
10000
He II
4686
トル線を比較すると
O型で見えたHeIIのライン
がB型では消え、代わりに
HeIのラインが強くなる。
Hγ
5000
O5VとB0Vのスペク
バルマー
連続吸収
B0V
Hε
Hδ
6000
Hγ
4000
He I 4026
2000
0
0.36
HeIのラインはB2Vで最も強
い。
B型の分類にはHeIと他の元
素、Si II, Mg II などのライン強
度が用いられる。
B型からA型にかけてバルマー
線強度が強くなっていく。
He I 4471
C III 4647-4651
0.38
0.4
0.42
0.44
λ(μm)
0.46
0.48
Hβ
0.5
3
A0V
Te=10000K
log g= 4
logλF(λ)
2
1
Lyα
線
0
-1
バルマージャンプ
Te1000g10000Vt2Zsolar
-2
-1.5
-1
-0.5
Lyα線
Lyα1400
線
1200
0
logλ(μm)
1
1.5
バルマー
ジャンプ
ライマン
1000 ジャンプ
Fλ
0.5
Te1000g10000Vt2Zsolar
800
600
Hα
400
Ly
α
200
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
λ(μm)
0.7
0.8
0.9
1
A型星ではHe I のラ
インは見えない。
バルマー線が強いの
が特徴である。A3で
最も強い。
AからFに向かって
金属線が強くなる。
これらの特徴をA型の
分類に使う。
山下、成合、乗本は
CaI4226/MgII4481
などを基準に用いた。
1977, An atlas of
representative stellar
spectra
3
Te8000g10000Vt2Zsolar
logλF(λ)
2
A6-8 V
Te=8000K
log g = 4
1
0
-1
-2
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
logλ(μm)
500
バルマー
バルマーライン
ジャンプ
400
Te8000g10000Vt2Zsolar
Fλ
300
200
パッシェンライン
K線
100
H線
0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
λ(μm)
0.8
0.9
1
バルマー線は依
然強いが、F型の
特長はH線、K線
が強いことであ
る。
2
Te6000g1000Vt2Zsolar
G0V
Te=6000
log g =3
Zsolar
log λF(λ)
1
0
-1
-2
バルマー線は
非常に弱くな
り、金属線が強
度、本数共に
増す。分類には
バルマー線と
金属線の強度
比例えば、
Fe I 4143/Hδ,
Ca I 4226/Hδ
などが使われ
る。
-3
-1
-0.5
0
log λ(μm)
0.5
1
1.5
100
80
Te6000g1000Vt2Zsolar
60
Fλ
Ca I
Na I D線
Hβ
Mg I b1,b2, b3
40
4300 CH
G band
Hα
CaII H線
20
CaII
Triplet
CaII K線
Pε
H Paschen
0
0.3
0.4
0.5
0.6
λ(μm)
0.7
0.8
0.9
1
低温度星では外殻にs電子が一個だけの原子、イオンの基底状態からの吸収線
(共鳴線)が特徴的である。
Na D線
Na I の電子配列=(1s)2(2s)2(2p) 6 (3s)
第1励起状態
3p電子 ――> L=1, S=1/2, J=1/2,  2P1/2
――> L=1, S=1/2, J=3/2,  2P3/2
基底状態
2P
項(term)
S=1/2, L=1
3s電子 ――> L=0, S=1/2, J=1/2  2S1/2
(3p) 2P3/ 2 準 位 (level) S=1/2,L=1,J=3/2
g=4
(3p) 2P1/ 2 準 位 (level) S=1/2,L=1,J=1/2
g=2
D line (multiplet)
2S
D1 line
5889 A
項(term)
S=1/2, L=0
(3s) 2S1/2準 位 (level) S=1/2,L=0,J=1/2
D2 line
5895 A
g=2
Ca II
Ca II の電子配列 = (1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s)
励起状態
外殻に4p電子
(1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4p) 2P
3d電子
(1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (3d) 2D
基底状態
外殻に4s電子
(1s)2(2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s) 2S
(4p) 2P3/2
(4p) 2P1/2
CaII triplet
8498
8542
8662
3933
3968
K線
H線
(4s) 2S1/2
(3d) 2D5/2
(3d) 2D3/2
7291
7323
Te5000g10Vt2Zsolar
log λFλ
1
G5III
Te=5000
log g =1
Zsolar
0
-1
-2
-3
-1
-0.5
0
40
log λ(μm)
0.5
1
1.5
Te5000g10Vt2Zsolar
30
Fλ
Hβ
D線
Mg 5167/5173
(b線)
20
Hα
Ca I
Fe I, Ti I, Ti II
Fe I 4383
4300 CH (G band)
CN (B2∑+-X2∑+)
10
Ca II Triplet
Ca II 3968 (H線)
Mg
0 triplet
0.3
Ca II 3934 (K線)
0.4
0.5
0.6
0.7
λ(μm)
0.8
0.9
1
1
K5III
Te=4000
log g =1
Zsolar
log λFλ
0
-1
-2
Te4000g10Vt2Zsolar
-3
-4
10
-1
-0.5
0
log λ(μm)
0.5
1
1.5
K5型では
TiOバンドが
現れてくる。
長波長側に
はCaIIトリプ
レットが強い
吸収線を示
す。
TiO
4954
8
6
LaO
7910
Fλ
Ca I
TiO
7054
CaII Triplet
4
Na I D 線
Hβ
2
TiO
5167
Te4000g10Vt2Zsolar
Mg I b + Mg H
G band
0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
λ(μm)
0.8
0.9
1
1
M2III
Te=3500
log g =0
Zsolar
log λF(λ)
0
-1
-2
Te3500g1Vt2Zsolar
-3
-4
-1
-0.5
0
0.5
1
M型星は
強いTiOバ
ンドが特徴
である。
1.5
log λ(μm)
5
TiO
7054
Te3500g1Vt2Zsolar
4
TiO
5847
3
Fλ
TiO TiO
4954 5448
2
Ca I
TiO
6158
TiO
6648
CaII Triplet
TiO
7589
TiO TiO
8433 8859
TiO
4761
1
NaI D線
MgI b線
0
0.3
0.4
0.5
0.6
λ(μm)
0.7
0.8
0.9
1
5
低メタル星と
の比較
Te3500g10Vt2Zm15
4
Fλ
3
M2III
Te=3500
log g =1
2
Z=(1/30)Zsolar
1
0
0.3
0.4
0.5
5
0.6 λ(μm)0.7
Fλ
3
2
Ca I
TiO TiO
4954 5448
TiO
4761
TiO
TiO
5847
TiO 6648
6158
TiO
7589
1
CaII Triplet
TiO TiO
8433 8859
Z=Zsolar
1
NaI D線
MgI b線
0
0.3
0.9
TiO
7054
Te3500g1Vt2Zsolar
4
0.8
0.4
0.5
0.6
λ(μm)
0.7
0.8
0.9
1
6
矮星と巨
星との比
較
Te3500g3000Vt2Zsolar
5
Fλ
4
Ca I
3
CaII Triplet
2
log g = 3.5 矮星
1
0
0.3
0.4
0.6 λ(μm)0.7
0.5
0.8
0.9
1
M2
Te=3500
Zsolar
5
TiO
7054
Te3500g10Vt2Zsolar
4
TiO
5847
3
Fλ
TiO TiO
4954 5448
CaII Triplet
TiO
6158
TiO
7589
TiO
4761
2
CaII Triplet
の強度が、
巨星で強く、
矮星で弱い
ことに注意
TiO TiO
8433 8859
Ca I
log g = 1 巨星
1
NaI D線
MgI b線
0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
λ(μm)
0.8
0.9
1
Ca II Triplet を使ったメタル量決定: 過去20年間の進歩と問題点
Jones,J.T., Alloin,D.M.,Jones,B.J.T. 1984 ApJ 283, 457-465
CaII triplet が巨星と矮星を区別するのに使える。
W(CaT)=W(8542)+W(8662)
矮星
卵:A型、 ◇:F型、 △:G型、
○:K型、□:M型
巨星
▲:G型、●:K型、■:M型
右図の直線からの残差はメタルと
相関することも注意された。
Armandroff,T.E., DaCosta,G.S. 1991, AJ 101, 1329-1337
球状星団のメタル量とCaII Triplet との関係
星団毎には、光度が上がると
W(CaT)が増加している。
W8542+W8662+0.619(V-V(HB))
これは前に述べた重力効果。
こうして、W(CaT)をメタル量とつなげ
るキャリブレーションができた。
しかし、ラインが上下に分かれ
るのはメタル効果。
はV-V(HB)=0でのW(CaT)である。
しかし、古い種族のみ適用可。
Pont,F., Zinn,R., Gallart,C.,Hardy,E., Winnick,R. 2004 AJ 127, 840-860
Fornax矮小楕円銀河のメタル量分布
MIー(V-I)色等級図
○ Fornax赤色巨星
× M11(0.25 Gyr, [Fe/H]=0.10)
星団
[Fe/H]
47 Tuc
-0.71
NGC1851
ー1.29
M15
ー2.17
明るくて高メタルの星に対するW(CaT)と[Fe/H]の関係。
■ 球状星団
☆ LMC平均
左のキャリブレーションから決めた
Fornax赤色巨星の年齢ーメタル関係
点線=若い種族のキャリブレーション。
点線はSFR=一定でのモデル
D.2.赤色巨星大気の化学組成
恒星大気の温度が低下してくると、まず電離エネルギーの高い原子、例え
ばヘリウムなどが中性化する。O型星で見られるHeIIのラインがB型では
HeIのみになるのはこのためである。温度がさらに低下すると、原子から分
子への移行が始まる。K型からM型の恒星スペクトルは分子の吸収線が
大変強い。
以下では分子平衡が恒星スペクトルに及ぼす影響を調べる。
D.2.1.分子平衡
A,B,Cという物質のあいだに下のような化学反応があるとする。
n・A+m・B=k・C
この反応が化学平衡の状態にある時には、下の関係が成立する。
n・μA+m・μB=k・μC
ここに、 μA、 μB、 μC、はA,B,Cの化学ポテンシャルである。
もう少し一般的に物質A1,A2、...の間に以下の反応が成り立つ時、
a1A1+a2A2+...=0
化学平衡の状態では次の式が成立する。
a1μ1+a2μ2+...=0
n
  kT ln
理想気体の化学ポテンシャルμは、
nQ Z
ここに、n=N/V= 数密度(個/cm3)、
nQ=(2πmkT/h2)3/2=量子密度(個/cm3)、
Z=Σexp (-E/kT)=内部状態分配関数
a
a
a
a
a
j
j 0
j 
j
ln n j 
ln n j
j
ln n Q
j
ln  n j


j

nj
aj
aj

に上のμjの式を代入すると、

nj
a j  kT ln

n Q , j Z in , j

 a ln n Z 
  ln n
 ln  n
Z    ln n Z
j
Q j

  kT  a ln n  ln n Z   0
j
j
Q , j in , j



(jはj-番目の種類の粒子の意味。)
in j
aj
j
j
in j

 ln  n Q Z in j

nQ
aj
j
j
Z in j
aj

Q j

aj
j
in j

aj

 ln  n Q Z in j
j

aj
aj
 K T

(質量作用の法則)
K=平衡定数
分子雲や晩期型星大気では分子の形成を考慮する必要がある。
A + B ⇔ C という分子形成を考えよう。 注意すべきは、この反応式は実際
には起きていなくても構わない。
平衡を考える際には A, B, C の持つエネルギーの高さだけが問題となる。
化学平衡での A, B, C の数密度 nA, nB, nC は質量作用の法則で決まる。
nA  nB

n Q, A  n Q, B Z in, A  Z in, B
nC
n Q, C
2
m A kT
h


2
PC

n A kT  n B kT
n C kT
m C kT
h
3
2
  kT
m B kT



3
2
3

3
Z in, A  Z in, B
Z in, C
2
3
 3 2 Z in, A  Z in, B
 

Z in, C

 2  m A m B kT
 kT 
2
h
mC

 2 M 


2
 h

2
h
数密度 n から圧力 P =nkTの表示に変えると、
PA  PB

3
2
Z in, C
3
5
2

Z in, A  Z in, B
Z in, C
 K P (T )
D.2.2.G-K-M型星の大気組成
恒星大気中では何百という分子が化学反応式で結ばれている。
ここでは最も基本的なH,C,Oの間の反応式が大気温度が低下するに連れて、
どのような分子を生み出すかを調べてみよう。
H,C,Oが全て原子であったと仮定した時の仮想圧力を、
PH0=1000,PC0=0.5, PO0=1 (erg/cm3) とする。
つまり、水素:炭素:酸素の組成比をH:C:O=1000:0.5:1 とする。
組成を数密度でなく分圧で表わすのは計算に便利であるからである。
温度が下がるとH,C,Oの間の反応により様々な分子が形成されるが、ここでは
考慮する分子種を、H, O, C, H2,O2,C2, OH, CH, CO, H2O, CH4の 11種に限定し
て、与えられたPH0、PC0、PO0 と T に対し、 PH、PC、PO、PH2、……PH2O、P
CH4 を決める方法を考える。
この計算に必要なのは反応の平衡定数K(T)である。
KH2 (T) 、、、、KCH4(T) が分かれば、与えられた、PHO、PCO、POO に対して
PH、PO、PC、PH2 、PO2 、PC2 、POH、PCO、PCH、PH2O、PCH4の11個を結ぶ11個の
化学平衡式を立てることができる。
解くべき方程式は、未知数の数と同じ11個あり、それらは以下の通りである。
(1) PH2=PH2/KH2
(2) PO2=PO2/KO2
(3) PC2=PC2/KC2
(4) POH=POPH/KOH
(5) PCH=PCPH/KCH
(6) PCO=PCPO/KCO
(7) PH2O=POHPH/KH2O
(8) PCH4=PCHPH3/KCH4
(9) POH=PH+2PH2 +POH+PCH+2PH2+4PcH4
(10) POO=PO+2PO2 +POH+PCO+PH2O
(11) POC=PC+2PC2 +PCH+PCO+PCH4
11変数の非線形連立方程式なので、逐次近似による解法が必要となる。
下に解法の1例を紹介する。
A: (1)-(8)式を使うと、PH、PO、PC から残りの分子分圧PH2、PO2、、、PH4
が決まる。独立変数としては他の組み合わせも可である。
B: (9)-(11)の右辺からH,O,Cに対する仮想圧力PH,PO,PCを計算する。
PH(PH,PO,PC)=(PH+2PH2 +POH+PCH+2PH2+4PcH4 )
PO(PH,PO,PC)=(PO+2PO2 +POH+PCO+PH2O)
PC(PH,PO,PC)=POCー(PC+2PC2 +PCH+PCO+PCH4)
C: Y1(PH,PO,PC)=POHーPH(PH, PO, Pc )
Y2(PH,PO,PC)=POOーPO(PH, PO, )
Y3(PH,PO,PC)=POCーPC(PH, PO, PC) が全てゼロになれば終了。
D: 普通はゼロでないので、Y1,Y2,Y30になるようPH,PO,PCを少し動かす。
こうして決めた新しいPH,PO,PCで A: へ戻る。
この解法では、D: の「PH,PO,PCを少し動かす」部分がポイントである。
以下にPH,PO,PCの増分をどう求めるかの方法を説明する。
説明の都合上、X1=PH, X2=PO, X3=PC とおく。すると、
Y1(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)
=Y1(X1,X2,X3)+(∂Y1/∂X1) ・ΔX1 +(∂Y1/∂X2) ・ΔX2 +(∂Y1/∂X3) ・ΔX3
Y2(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)
=Y2(X1,X2,X3)+(∂Y2/∂X1) ・ΔX1 +(∂Y2/∂X2) ・ΔX2 +(∂Y2/∂X3) ・ΔX3
Y3(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)
=Y3(X1,X2,X3)+(∂Y3/∂X1) ・ΔX1 +(∂Y3/∂X2) ・ΔX2 +(∂Y3/∂X3) ・ΔX3
と1次の展開式が書ける。
Y1(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)=0
Y2(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)=0
Y3(X1+ΔX1,X2+ ΔX2, X3+ΔX1)=0
はΔX1, ΔX2, ΔX3に対する1次の連立方程式なのですぐに解ける。
次の問題は、 (∂Y1/∂X1)、 (∂Y1/∂X2)、... (∂Y3/∂X3)をどう計算する
かである。
(1)-(8)式を使えば、 ∂Yi/∂Xj (I,j=1,2,3) を直接書き下すこともできるし、
適当に小さなΔXに対し、
[Y1(X1+ΔX1,X2,X3)ーY1(X1,X2,X3)]/ΔX1= (∂Y1/∂X1)等を数値的に
計算してもよい。
こうして、任意の温度での分子平衡を解く準備ができた。
温度が高い場合は分子の数は少なくPH=PoH、PO=PoO、PC=PoC とみなして
他の分子の圧力を計算して構わない。
低温度での計算では初期値の取り方が悪いと逐次近似がうまくいかない場合が
あるが、高温度から出発して、その収束値を次の温度での初期値とし、
徐々に温度を下げていく手法が有効である。
log10Kp(T) を下の表に示す。Kp(T)はcgs単位表示である
T=1000
-11.09
-13.32
-18.54
-11.05
-6.53
-42.98
-13.61
-31.52
1500
-3.56
-4.79
-8.48
-3.65
-0.67
-24.74
-5.05
-8.74
2000
0.42
-0.13
-2.87
0.21
2.26
-14.33
-0.53
4.50
2500
2.82
2.35
-0.04
2.61
4.31
-9.43
2.17
10.58
3000
4000
5000
6000
4.40
6.36
7.70
8.48
4.11
6.27
7.71
8.59
2.04
4.61
6.31
7.29
3.95
5.94
6.44
8.16
5.55
7.06
8.14
8.76
-5.67 -0.89
2.12
3.92
3.95
6.13
7.62
8.46
14.90 20.98 24.70 26.85
!
!
!
!
!
!
!
!
H-H
O-O
C-C
O-H
C-H
C-O
OH-H
CH-3H
こうして、求めた分子圧 log P(dyn/cm2) を下の表に示す。
T
H2
O2
C2
6000 -2.48 -8.59 -7.89
5000 -1.70 -7.71 -6.91
4000 -0.36 -6.73 -6.70
3000 1.53 -4.80 -13.28
2500 2.45 -4.38 -17.38
2000 2.68 -7.32 -18.93
1500 2.69 -11.49 -25.31
1000 2.69 -19.82 -34.87
OH
-5.16
-3.44
-3.17
-1.33
-0.98
-2.38
-4.92
-9.71
CH
-6.06
-5.44
-5.10
-8.20
-10.38
-11.61
-16.66
-24.37
CO
H2O
CH4
H
O
C
-4.22 -10.62 -23.91 3.00
0.00 -0.30
-2.42 -8.06 -21.14 3.00 -0.00 -0.30
-0.38 -6.30 -17.08 2.99 -0.23 -1.04
-0.30 -2.31 -14.19 2.96 -0.34 -5.62
-0.29 -0.52 -13.05 2.63 -1.01 -8.71
-0.30 -0.30 -11.45 1.55 -3.72 -10.90
-0.30 -0.30 -9.21 -0.43 -8.14 -16.89
-0.29 -0.30 -5.44 -4.19 -16.57 -26.70
log10Kp(T) をグラフで示す。Kp(T)の単位はCH-3H以外は
dyn/cm2である。KCH-3Hの単位はdyn3/cm6であるが、cgs系で
の数値として同じグラフに描いてある。
解離エネルギー=11eVと大きいCOのラインに注目して欲しい。
解離平衡定数 logK
30
20
H-H
10
log K
O-O
0
C-C
O-H
-10
C-H
-20
C-O
OH-H
-30
CH-3H
-40
-50
1000
2000
3000
4000
温度(K)
5000
6000
解離平衡 Po(H)=1000、Po(O)=1, Po(C)=0.5 (dyn/cm2)
4
H
2
H2
O
0
O2
log P(dyn/cm2)
C
-2
C2
H2
OH
CO
CH
-4
CO
OH
-6
CH4
CH
C2
O2
-8
-10
-12
1000
H2O
H
O
C
H2O
CH4
2000
3000
4000
温度(K)
5000
6000
D.2.3.C型星(炭素星)
低温度星のスペクトルで最も特徴的なことはM型星とC型星の存在である。
両者共に4000K以下の低温の恒星であるが、そのスペクトルは全く異なる。
その原因が大気中のC/O比の違いにあることを指摘したのは藤田良雄であった。
低温大気では安定なCOがCとOの少ない方を食いつくしてしまう。
このため、Oが多いM型星の大気では余ったOがHやFe、Tiと反応してH2OやTiO
を形成する。
一方、C型星では逆にCが余り、それがC2,CH,CNを形成する。
このように
C/O>1ーー>C型星
C/O<1ーー>M型星
となるのである。
T
6000.
5000.
4000.
3000.
2500.
2000.
1500.
1000.
H2
-2.4801
-1.7000
-0.3608
1.5379
2.4527
2.6832
2.6971
2.6973
O2
C2
-8.5902 -6.6901
-7.7232 -5.7164
-8.2291 -4.5272
-15.4283 -2.0616
-20.5723 -0.5976
-25.3402 -0.3197
-29.3176 -6.8924
-30.1069 -23.9930
T
H2O
6000. -10.6202
5000. -8.0666
4000. -7.0503
3000. -7.6212
2500. -8.6185
2000. -9.3119
1500. -9.2167
1000. -5.4462
CH4
-23.3102
-20.5433
-16.0001
-8.5850
-4.6635
-2.1484
-0.0020
-0.0020
OH
-5.1601
-3.4466
-3.9199
-6.6402
-9.0848
-11.3935
-13.8352
-14.8598
CH
-5.4601
-4.8432
-4.0190
-2.5919
-1.9925
-2.3033
-7.4476
-18.9329
CO
-3.6202
-1.8298
-0.0481
0.0000
0.0000
0.0000
0.0000
0.0000
H
3.0000
3.0000
2.9996
2.9689
2.6363
1.5516
-0.4315
-4.1964
O
-0.0001
-0.0066
-0.9795
-5.6591
-9.1112
-12.7351
-17.0538
-21.7135
C
0.2999
0.2968
0.0414
-0.0108
-0.3188
-1.5949
-7.6862
-21.2665
C リッチ 組成の分子平衡
解離平衡 Po(H)=1000、Po(O)=1, Po(C)=2 (dyn/cm2)
4
H
2
C
H2
log P(dyn/cm2)
0
O2
-2
OH
CH
CO
-4
CO
CH
OH
H2O
CH4
-6
C2
H
O
-8
O2
CH4
-10
-12
1000
C2
H2
O
2000
3000
H2 O
4000
温度(K)
C
5000
6000
炭素星スペクトル
C/M比較
5
4
Fλ
3
2
Te3500g1Vt2Zsolar
1
0
50.5
1
1.5
λ(μm)
2
4
比較用M型星
Fλ
3
2
1
γ Hya (炭素星)
0
0.5
λ(μm)
2
2.5
C/M判別フィルター
78
81
5
4
Fλ
3
2
1
Te3500g1Vt2Zsolar
0
0.5
0.6
0.7
0.8
λ(μm)
0.9
1