Transcript 建築材料科学
11.建築材料の光特性
光の入射・反射・吸収・透過
材料表面での反射
粒界、気孔、相境界での散乱
粒内欠陥・イオンによる吸収
11.建築材料の光特性
反射
入射角φ1=反射角φ
反射率=反射波の強さ/入射波の強さ
入射角が大きいほど、反射率大
表面が平滑な(吸収が少ない)ほど、反射率大
鏡面反射(正反射):平滑面での反射
乱反射(拡散反射):凹凸面での反射→散乱光
反射率への影響因子
物質の種類
温度
波長
金属の反射率:波長が短いほど小さい
11.建築材料の光特性
屈折
屈折率(媒質1に対する媒質2の屈折率)
n 12
sin 1
sin 2
v1
v2
v1, v2:媒質1および媒質2の光の伝播速度
波長の影響
波長の長い光:屈折率小、波長の短い光:屈折率大
密な物質ほど、光の波長が短く、伝播速度は遅くなる
密度が大きいほど、屈折率大
フリントガラス
鉛含有量が多いほど、屈折率大
真空に対する屈折率(光の波長:5.983Å)
物質
屈折率
物質
屈折率
ソーダ石灰ガラス
1.5171
ダイヤモンド
2.4173
軽クリスタルガラス
1.5803
水(20℃)
1.3330
重クリスタルガラス
1.6555
乾いた空気(15℃)
1.00028
11.建築材料の光特性
吸収・透過
物質中 吸収・散乱→光の強さの減少
速度の減少
I0=Ia+Is+It
I0:入射光の強さ
Ia:tの距離を進む間に吸収された光の強さ
Is:管の側面から散乱により失われた光の強さ
It:透過光の強さ
真の吸収Iaは少なく、ほとんどが散乱光Is
吸収した光の強さIa → 熱エネルギー → 放出
透過率
=It/I0
11.建築材料の光特性
吸収
光の持つエネルギー
E h h
c
h:プランク定数、ν:光の振動数、c:光の速度、λ:光の波長
波長が短いほど光のエネルギーは大きい
光⇔物質中の電子でのエネルギーの授受
物質の電子
特定の波長の光だけからエネルギーを享受
高エネルギー状態(励起状態)
11.建築材料の光特性
吸収
セラミックス
エネルギーバンド構造
バンドギャップエネルギーを持つ光の照射
大部分のセラミックス
400nm以下の波長に対応するバンドギャップエネルギー
可視光は吸収されず透過
小さな結晶粒界面での散乱のため光は透過しない
価電子帯の電子が吸収
電子が伝導帯に励起
12.建築材料の光特性
11.建築材料の光特性
透過光の強さ(ランバート-ベアの法則)
It=I0(1-R)2exp(-βt)
R:表面での反射率
=(n-1)2/(n+1)2
n:屈折率
β:吸収係数
粒内での光吸収
粒界、気孔、相境界での散乱(セラミックスの光透過性低下の原因)
セラミックスが透明になる条件
焼結密度100%(気孔率≒0)
異相が存在しない
結晶の異方性(結晶軸の方向による屈折率の相違)が小さい
11.建築材料の光特性
色の混合
減色混合
着色フィルターを重ね合
わせて透過光を見る場合
暗くなる
黄色+青色→緑色
加色混合
スクリーン上に同時に異
なった色光を当てて混色
を行う場合
明るくなる
青色+黄色→白色
11.建築材料の光特性
建築材料の色
セラミックスの主成分
シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、アルカリ・アルカリ土類イオン
単体では無色
宝石
セラミックスと同じ成分、着色
微量の遷移金属イオンによる光吸収
母体物質の構造にも依存
「結晶場の理論」
水分も吸収
Cr3+
Fe2+,Ti4+
Cr3+
宝石
化学式
色
水晶
SiO2
無色
アメシスト
SiO2
紫色
オパール
SiO2・nH2O
干渉色
ルビー
Al2O3
赤色
サファイア
Al2O3
青色
トパーズ
Al2SiO4(F,OH)
淡黄色
アクアマリン
Be3Al2Si6O18
水色
エメラルド
Be3Al2Si6O18
緑色
12.建築材料の光特性
11.建築材料の光特性
建築材料の色
結晶場の理論
遷移金属イオンによる光の吸収
最外殻軌道の電子が関与
周囲に陰イオンが配位
電子間の静電反発→エネルギー状態の多様な変化
Cr3+イオンの場合
最もエネルギー的に安定な基底状態
緑色(550nm)から紫色(400nm)にかけての光の吸収
→ルビーの赤色
結晶場がルビー中よりも弱い場合
長い波長の光が吸収される、550nmの波長の光吸収なし
→エメラルドの緑色
11.建築材料の光特性
物体色
不透明物体の色
物体の表面から発散した光を色として認識
表面で反射された光(入射光をそのまま反射した光)=無色
内部に入り込んだ光→内部反射や屈折→選択吸収→再び物体外に
出た光=着色
着色ガラス
粉末化→表面積の増大→乱反射の増大→白色化
水で濡らす、透明樹脂を吹き付ける→粒子表面に膜の形成→
乱反射の減少→着色
11.建築材料の光特性
表面色
非常に強い選択吸収を示す物質
反射光に物体色とは異なる色が現出=表面色
アニリン染料の結晶
固体状態
水溶液の透過光
緑色(緑色を選択的に反射)
紫色(緑色を吸収)
白金・銀・金
板状
微粒子
金箔の透過光
金属光沢(表面色)
黒色(可視光線を吸収)
青緑色(表面色と補色関係にある)
12.建築材料の光特性
11.建築材料の光特性
偏光性
普通の光
偏光
進行方向の軸を含む特定方向の平面内で振動する光を分離して
取り出した光
透過する物質の構造・ひずみに関係する
屈折光
光の進行する軸周りに対象に分布した横波
反射面に垂直(入射面に平衡)な振動波を多く含む
反射光
反射面に平行(入射面に垂直)な振動波を多く含む
完全偏光(反射光が全部偏光)
反射角+屈折角=90°となる角度(偏光角)で入射した場合
屈折率1.57のガラスの偏光角=約57.5°
12.建築材料の光特性
12.建築材料の光特性
11.建築材料の光特性
偏光性
光学的異方性結晶
偏光性あり
多くの鉱物、いくつかの有機化合物
電気石
光軸に平行に振動している成分だけを透過、垂直成分を吸収
分子を一方向に配列した有機化合物
ひずみの生じた物質
等方性結晶
応力が作用しひずみが生じると偏光性を有する
旋光性
水晶(分子構造が非対称)
偏光を入射→振動面が回転→入射光と異なる振動面を持つ透過光