導入:「ソシオセマンティクスを創る」

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Transcript 導入:「ソシオセマンティクスを創る」

ソシオセマンティクスを創る
2008.10
深谷研究室・ソシオセマンティクス工房
総合政策学部 深谷昌弘
大学院:ソシオセマンティクス・グループ
2
認知・意味編成モデルと身体スキル・プログラム
に所属している一群の研究グループです
共通認識
・人々にとっての意味を重視
・コミュニケーションと意味の社会的
編成プロセスへの着目
・ネットワーク社会対応の方法
fukaya-rg
ソシオセマンティクス・グループ
3
プロジェクト&教員構成
ソシオセマンティクス工房(深谷昌弘、田中茂範)
ネットワークスタイル(熊坂賢次、加藤文俊)
サイバービジネス・マーケティング(桑原武夫)
シンボルとメディアの認知システム(石崎俊)
fukaya-rg
深谷担当授業
学部授業

ソシオセマンティクス(コミュニケーションダイナミクス)

Web社会調査法(テクスト意味空間分析法)

方法論探究

研究プロジェクト:意味の探索
大学院授業

ソシオセマンティクス特論

先端研究(CB)

ソシオセマンティクス工房(田中と共催)
ソシオセマンティクス
(社会意味論)
ここでは深谷&研究室が推進している
ソシオセマンティクス(狭義)の話をします
担当者
総合政策学部 深谷昌弘
三つの基本的な問い
物事の主観的意味を問うことに学問的価値はない
そうだろうか?
使用の現場でコトバが担う意味は学問対象
たりえない―――ウィトゲンシュタイン
そうだろうか?
ならば分析者によって解釈された他者の言説(コトバ)の
意味解釈もまた学問対象たりえないはずだ
そうだろうか?
(参照)
ソシオセマンティクスを創る
ーIT・ウェブ社会から読み解く人々の意味世界ー
深谷昌弘編著
慶應義塾大学出版会
2008.4
ソシオセマンティクス創りの経緯と活動
先行段階:1996・コトバの意味づけ論(日本言語学・言語教育学会賞)、
2001・Ver.0による世間のスクリプト分析
2003年9月~(株式会社富士ゼロックス・研究本部との協働開始、政策COE参画)
テクスト意味空間分析システムのテストバージョンの開発と実装テスト
2003年12月
実装テスト結果に関するワークショップ
2004年
テクスト意味空間分析システムVer.2の開発
2004年11月
ORF2004(Open Research Forum 2004)発表、慶應義塾賞
2005年
テクスト意味空間分析Ver.3の開発
提携先との事業化の推進(ネット・リサーチ会社:株式会社ゲインとの連携)
2006年~
事業化推進の開始
SFC発ラボの発足
内外での学会発表
書籍刊行
深谷研究室が推進してきたプロジェクトと近年の成果

Web社会調査法開発:ソシオセマンティクス
(政策COE「日本・アジアにおける総合政策学先導拠点」)
http://coe21- policy.sfc.keio.ac.jp/ja/project/p_fukaya.html
深谷昌弘編『ソシオセマンティクスを創るーIT・ウェブ社会
から読み解く人々の意味世界』慶應義塾大学出版会2008


SFC発:Web社会調査レポート・ラボラトリ
2007年発足 これまで二つの実験的調査を実施
(報告書①&②)
提携企業との事業化推進
ソシオセマンティクス(社会意味論)
人の心の中で展開する意味づけのありようおよび舞台を
私たちは意味世界と呼ぶことにしています
ソシオセマンティクスは
人々の意味世界
および
その社会的編成を取り扱うために
SFCで私たちが開拓している
社会研究の新しい学問です
ソシオセマンティクスにおける
意味とは
何かについての意味
誰かによって意味づけられた意味
その人の行為の産出母胎となる意味
↓
つまり人の心の中にある
何かについての感覚・感情・思考です
意味と社会現象との
ダイナミックな関係を捉えるために
「人々の意味世界」
を
取り扱う新しい学問
それがソシオセマンティクスです
社会研究における意味の重要性
「人々の意味世界」の視点は社会の研究に不可欠
意味と社会現象のダイナミックな関わり
行為
社会現象:人々の行為の複合・集積
人々の行為は心の中の意味世界の所産
意味づけ
(情況編成)
意味世界研究の本格的展開の阻害要因
主体と行為と意味
意味表出データのアベイラビリティ不足
人々にとっての意味の問題を取り扱いうる言語コミュニケーション論の不在
大量の意味表出データから意味を解釈・解析する方法論・技術の未発達
*先行者:現象学的社会学・シンボリック相互作用論・エスノメソドロジー
ネットワーク社会の進展とテクストデータ
インターネットはテクストデータの宝庫
特定の人物から、小集団、大集団、不特定多数の市民に至るまで、幅広い人々の言説の
記録・テクストが採取可能に
つまり、ミクロ、セミ・マクロ、マクロの人々の意味世界に関する実証的研究が可能に
「意味表出データ」としてのテクスト
あらゆる人がコトバで意味表出する
ほとんど全ての人がコトバを用いてありとあらゆる事についてさまざまな
動機で自らの意味づけを語る(書く)
この一般性ゆえに意味世界研究の基軸データ:
ただしテクスト至上主義ではない
コトバは意味連関構造を示す
動詞:図式構成機能(名詞が担う事物を意味的に関係づける)
助詞:操作子機能(意味のまとまり同士の関係を示す)
助動詞などの言い回し:アスペクト・モダリティなどを示す
テクストデータは意味世界研究の基軸データ
大量テクストの利用にあたって2つの基本課題がありました
人々にとってのコトバの意味を取り扱う言語コミュニケーション理論の不在
従来の言語コミュニケーション理論は
客観主義的意味論・情報理論的コミュニケーション論に固執してきました
ソシオセマンティクスはコトバと意味との関係を新しい言語コミュニケーション論:意味づけ論に
よって捉え直しました
このパラダイムでは人の内的営みであるコトバの意味づけとその相互作用;コミュニケーション
を取り扱います
意味づけは「記憶連鎖の引き込み合いによる記憶の編集作業であり、未来に開かれた
不確定性をもつ、しかし、デタラメではない」営みです
大量テクストデータの意味解釈を可能とする分析方法・技術の未発達
人間の解釈の処理にあまる大量のテクストデータ
意味づけ論に立脚したテクスト分析システム: テクスト意味空間分析システムの開発
コンピュータの解析と分析者の解釈とが協働するシステム
ソシオセマンティクスの理論・方法・応用
理論パラダイム:意味づけ論
方法&技術:テクスト意味空間分析
TextImi を用いた意味の解析・解釈
応用:コンテンツ分析とスクリプト分析
Web社会調査、マーケティング調査、文化意味論、
パブリックコメント分析・・・etc.
テクスト意味空間分析システム
テクスト意味空間分析システム:TextImi
人々の意味世界を大量のテクストデータから析出するソシオセマンティクス
のテクスト分析システム
基本設計思想と特徴
コンピュータが解析し人間が解釈する
基礎意味チャンク(意味のまとまり)を解析単位とする分析
テキストマイニングから意味空間のコンストラクティングへ
基礎意味チャンク一覧表とその集計表に基づく、分析者の意味解釈の支援
学問的な調査・分析に耐えうるように分析システムを開発しています
TextImi: テクストデータを読み解くツール
システムの概要
別途紹介します
システム境界
ネットワーク上に蓄
積されたテクスト
データ
出現語頻度表
Output
係り受け一覧表
解釈
Text Data
Request
基礎意味チャンク一覧表
Response
Input
Server
Client
基礎意味チャンク集計表
基礎意味チャンク分類表
TextImi:基礎意味チャンク
(一つの述語がまとめる意味の纏まり)
を抽出するところに特徴がある
■TextImiを適用した
人々の意味世界の実証的研究
意味世界の基本的枠組み
顕現
潜勢
意味
意味知識
(記憶連鎖集合)
意味世界の基本的枠組み
意味づけと記憶連鎖の形成
意 味
↑↓
意味知識
(記憶連鎖集合)
意味づけ経験(コミュニケーション経験を含む)
による記憶連鎖の形成
意味:表層における意味の顕現態
意味知識:深層における意味の潜勢態
テクスト意味空間分析法
大量のテクストデータから抽出した基礎意味チャンク集合に依拠して
人々の意味世界について間主観的妥当性を確保しながら解釈する
ソシオセマンティクスのテクスト分析法
コンテンツ分析(意味内容分析):意味の顕現態
テクスト群がどのようなスモール・ステートメント(基礎意味チャンク)から構成されているかや
それらの関係構造などを明らかにする分析
後述のようにマーケティングやパブリックコメント分析など幅広い応用がある
スクリプト分析(文化意味論的分析):意味の潜勢態
人々の記憶に定着・共有されている言語表現型(スクリプト化されている基礎意味
チャンク・パターン)から社会・集団・組織などの構成員に共有されている日常的な常識概念を
明らかにする分析(世間、自然、夫婦、田舎・都市、等々の例)
日常の生活文化を支える潜勢態レベルの意味世界に関する研究ということでこの名称を付す
これらの実証研究は十余年で学会発表やビジネス化などの社会的実践にまで進みました
幅広い応用可能性
社会研究としてだけではなく、実践的な応用可能性として、
例えば以下のようなものが考えられます
・ 政策立案
・ ブランド戦略
・ マーケティング
・ コールセンター、営業日報などを手掛かりとした業務の改善
etc.
今後も実証分析とフィードバックさせながらさまざまな分析手法を
創出し、それらを支援するシステムとして拡充を図ります
ソシオセマンティクス
人々の意味世界を研究するSFC生まれの新学問
特徴
対象者をミクロからセミ・マクロやマクロまで拡張
人々にとってのコトバの意味を取り扱う新しい
言語・コミュニケーションの理論パラダイム:意味づけ論
新理論に基礎づけられたテクスト意味解釈の方法・技術:テクスト意
味空間分析法&日本語意味解釈支援システム(TextImi)
ソシオセマンティクス創り:理論つくり、方法つくり、実証研究つくり
IT・ウェブ社会の進展を背景としてSFCで誕生し
十余年で学会発表やビジネス化などの社会的実践にまで進みました
日本語テクスト解析ツールTextImiの紹介
2008.6
中野智仁
(政策COE:Web社会調査法開発・RA)
テクスト意味空間分析システム 開発作業班
代表者:慶應義塾大学・深谷昌弘
総合政策学とソシオセマンティクス
① 人々の思いを理解する新しい理論・方法・技術の提供
ソシオセマンティクスは「人々の意味世界」を扱う新学問です
② 科学の知・解釈の知を包摂する解釈学的総合化
個別の科学・学問の知を実践に活かすには解釈学的総合化によって問題の全体像を
描くことが必要です
人々の意味世界の解釈学を開拓してきたソシオセマンティクスからのメッセージです
③ 創造性・協働・情報公開・民主主義とコミュニケーション倫理などへの洞察
人間コミュニケーションを生産的・創造的に機能させることが肝要です
ソシオセマンティクスのパラダイムはこれらにきわめて示唆的です
① 人々の思いを理解する新しい理論・方法・技術の提供
実践知の学問・SFC総合政策学―――政策に関わる人々の思いの理解が不可欠です
物事の客観的意味だけでなく主観的意味を理解することが同じように政策実践の
観点からは重要です―――SFCがフィールドワーク・参与観察・参画を重視する理由
ソシオセマンティクスは大量のテクストデータから多数の人々の思いを読み解く
新しい方法をSFC・総合政策学にもたらしつつあります
ソシオセマンティクスは「人々の意味世界」を扱う新学問です
② 科学の知・解釈の知を包摂する解釈学的総合化
総合政策学には科学の知・解釈の知を包摂する解釈学的総合が不可欠
人間・社会・世界は「未来に開いた不確定性をもつ、しかし、デタラメではない」プロセスを
たどります(進化、文化、歴史、意味世界など)。
そのようなプロセスに発生する問題・課題に対処するには、確定論的に扱える局面について
科学の知を適切に援用するとともに、不確定であってもデタラメではない局面を解釈の知で
埋め、全体像を解釈によって描くことが必要になります。
すなわち、科学の知・解釈の知を包摂する解釈学的総合化が不可欠です。
論理とデータに依拠して間主観的妥当性を確保しつつ進める意味の解釈学を開拓してきた
ソシオセマンティクスから総合政策学へのメッセージです
③創造性・協働・情報公開・倫理などへの示唆・洞察
人間コミュニケーションの創造性
未来に開かれた意味の不確定性が人間の創造性の源泉であり、意味の創造は思いがけない
記憶連鎖の引き込み合いから生じます。
だからダイアローグはモノローグよりも創造的になりえます。
しかしその同じ不確定性がコミュニケーションの断絶・不信の元にもなります。
だからこそ、人間コミュニケーションを生産的・創造的に機能させるコミュニケーションの倫理や
制度が重要になります。
人間コミュニケーションを生産的・創造的に機能させることが肝要です
ソシオセマンティクスのパラダイムはこれらにきわめて示唆的です
(関心のある人は研究室HPの諸資料を参照してください)
ソシオセマンティクスは
SFCで私たちが今も開発を続けている
新しい学問です
Web社会調査法
課題レポート 第1回 10・26 出題
11・10 ハード・コピーも教室で提出
「新学問・ソシオセマンティクスについて
ー私の現時点における理解と感想ー」
SFC-SFS(11・9/23:55締切)での提出に加えて
ハード・コピーも提出すること
教科書;深谷昌弘編『ソシオセマンティクスを創る』慶應義塾大学
出版会(2008・4)の第Ⅰ部「ソシオセマンティクスとWeb社会
調査法の開拓的研究」を読み諸君なりにA4用紙2ページに
まとめる