XMM-Newton衛星による、電波銀河 3C 98 の観測

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XMM-Newton 衛星による電波銀河3C 98の観測
磯部直樹
JAXA
宇宙航空
プロジェクト研究員
MAXIチーム
磯部直樹(NASDA→JAXA; [email protected])
牧島一夫(東大理)、田代信(埼大理)
1. Introduction
我々は、「あすか」やChandraなどによるX線観測により、電波銀河のローブから宇宙マイ
クロ波背景放射(CMB)を種とする逆コンプトン散乱X線を検出してきた。そして、その強度
をシンクロトロン電波と比較することで、ローブ中の電子と磁場のエネルギー密度 ue と um
を精密に測定してきた。すでに ue と um を求めた電波ローブは10個にせまり、世界をリー
ドしている。この結果、ローブでは典型的にue =10 um 程度の電子優勢が実現されてい
ること、ローブ中の電子の全エネルギーは電波銀河中心核のX線光度によく比例してい
ること、磁場がローブの周囲に向けて圧縮されるような兆候があること、などを明らかにし
て悔いた。しかし、サンプル数はいまだ十分とはいえない。
そこで、新たにXMM-Newton衛星によって、電波銀河 3C 98 の観測を行い、そのローブ
から逆コンプトン散乱によると思われる広がったX線を検出した。今回は、この観測結果と
それから求めたローブ中のueとumに関して報告する。
2. Observation
2.1 XMM-Newton
3.2 X-ray Spectra of the host galaxy
図5 母銀河のX線スペクトル。左図が2002年9月の観測、右図が2003年2月の観測。
データの統計を良くするため、MOS1とMOS2のデータは足し合わせて示した。
2002/9/7
2003/2/5
MOS
PN
MOS
PN
2.2 Radio Galaxy 3C 98
XMM-Newtonは、1999年にESAが打ち上げたX線観測
衛星であり、 2種類のX線CCDカメラ EPIC PNとEPIC
MOS (MOSは2台:MOS1と MOS2)を搭載している。有
効面積が非常に大きく、電波ローブのような広がった天
体の観測には、大きな威力を発揮する可能性がある。
さまざまな電波銀河の強度,大きさ,ローブの形
などの調査を行い、今回はXMM-Newtonに適
切な電波銀河として3C 98を選択し観測を行っ
た。 3C 98の電波画像と観測パラメタを以下に
示す。
ホットスポット
X線望遠鏡
ジェット
中心核
熱的な成分(Raymond Smith Model)
kT = 0.8 keV
銀河に付随した
LX(0.5-10 keV)
プラズマ成分
= 9 x 1040 erg s-1
変動なし
吸収を受けたHard な Power Low成分
NH = 1 x 1023 cm-2
吸収を受けた
= 1.4
活動中心核
LX(2-10 keV)
= 8 x 1042 erg s-1 (2002/9/7)
4.6 x 1042 erg s-1 (2003/2/5)
3.3 X-ray Spectra of the lobes
図6 ローブに広がったX線のスペクトル。1.7 keV付近は、InstrumentalなLine構造があ
るため、解析から除いた。(左図)北ローブ。統計を良くするため、MOS1とMOS2のデータ
は足し合わせた。(右図)南ローブ。有為に検出できた、PNのデータのみ示した。統計が
悪いため、Power Law成分のみでフィッティングを行った。
North Lobe
MOS
PN
2分角
67 kpc
2002年9月7日に30 ksec の観測を行った(PI:牧島)。しか
し、MOS2が正しく動作しなかったために、2003年2月5日
に10ksecの追観測が行われた。MOS, PNの観測モードな
どは以下に示す。観測中MOS, PNのバックグラウンドが
大きく変動していたた。広がったX線はバックグラウンドの
影響を受けやすいため、バックグラウンドの高い時間を非
常に厳しく除去した。その結果、有効な観測時間(GTI)は、
以下のとおりとなった。
図2 電波銀河3C 98の電波画像
(VLA 4.86 GHz)
 FR II型の電波銀河
 (Ra, Dec) J2000
= (03h58m54.4s, +10d26m03s )
 FSR = 10 Jy @1.4GHz
 aSR= 0.72
 z = 0.0306
Filter
GTI (ksec)
観測時期 Mode
MOS1 MOS2 PN
MOS PN
2002/9/7 Full Frame Thick Medium 13.7
10.6
2003/2/5 Full Frame Thick Medium 6.65 7.16
3.7
3. Results
熱的な成分(Raymond Smith Model)
kT = 0.2 keV
LX(0.5–10 keV) = 3.6 x 1040 erg s-1
Hard な Power Low成分
 = 1.56 S1keV = 6.9 Jy (北ローブ)
 = 1.7
S1keV = 8.1 Jy (南ローブ)
シンクロトロン電波  = 1.72
逆コンプトンX線
4. Discussion
3.1 X-ray Image
図3 XMM-Newtonによる 0.2 – 12 keVのX線画
像(カラー)。2回の観測で得られたMOSとPNの
データを全て足し合わせて、30秒角でスムージ
ングしてある。Exposure補正を行っていないため、
CCD Gapや Bad Column が画像に浮きでてい
る。黄色で示した等高線は図2のV電波画像を
重ねたものである。点線は、図4の投影図の
データを積分した領域を示す。5つの円は、母銀
河(N)、北ローブ(LN)、南ローブ(LS)、バックグラ
ウンド(BGD1,BGD2)のスペクトルを積分した領
域を示す。
ローブに付随した
広がったX線を検出
電波(4.86Ghz)
広がった成分
X線(MOS)
磁場のエネルギー密度 um [erg cm-3]
2.3 XMM-Newton Observation
電子の全エネルギー [1058 erg]
図1 XMM-Newton衛星の概念図
PN
種光子は CMB である。
3C 98
電子のエネルギー密度 ue [erg cm-3]
3C 98
中心核のX線光度 LX(2-10 keV) [erg s-1]
Point Spread Function
図4 MOSによるX線画像と電波画像の一次元投影図。左が電波銀河の軸方向で
右が垂直方向(右)。MOSの投影図にはMOSのPoint Spread Function も同時に示した。
図7 逆コンプトンX線とシンクロトロ
ン電波の強度比から求めたロー
ブ中のue と um の関係。紫のデー
タ点がこれまでの我々の結果、黒
の点が文献からのデータ。 3C 98
はこれまでの観測結果と非常によ
くあっている。
電波ローブでは ue ≧ 10 um と
なっている様子がよくわかる。
磁場の全エネルギー [1058 erg]
焦点面検出器
EPIC MOS / PN
South Lobe
3C 98
中心核のX線光度 LX(2-10 keV) [erg s-1]
図8 ローブ中の全エネルギーと中心核の活動の関係。電子の全エネルギーは
中心核のX線光度と非常に比例していることがわかる。一方磁場のエネルギーに
特に相関は見られない。中心核が質量降着で輝いているとすれば、 電子のエネ
ルギーと中心核の光度の比例関係はジェットのエネルギー源も質量降着であると
いう一般的な認識を示す観測事実ではないか。