2002年6月 「小田先生を偲ぶシンポジウム」
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Transcript 2002年6月 「小田先生を偲ぶシンポジウム」
小田先生とブラックホール
はくちょう座X-1
(Cyg X-1)
1915:アインシュタインの一般相対論
1930年代:シュワルツシルド解→ブラックホール
しかし理論家の机上の空論にとどまっていた
Swan Song:Cyg X-1 の速いX線変動の発見
ゆっくりスキャンするUhuruの視
野を横切る Cyg X-1
MITによるロケット観測
10秒
Oda et al. ApJL 166, L1 (1971)
Rappaport et al. (1971)
20秒
Cyg X-1 の正体を追い詰める
◆Oda
et al. (1971); Uhuruによる速いX線変動の発見
◆Miyamoto
et al. (1971); すだれコリメータを用いた気球観測で、
Cyg X-1 の位置を数分角に追い込む。
◆Hjellming
& Wade (1971), Braes & Miley (1971); X線で決めた位
置に電波源が出現。その位置にOB型の超巨星 HDE226868が
あった。
◆Webster
& Murdin (1972) ; および Bolton (1972); HDE226868が
5.6d 分光連星であることを発見、ドップラー測定から、X線源は
>9M0であることを示す。
◆Mason
et al. (1974); X線でも 5.6日周期で吸収が増える時期が
ある → 同定は間違いなし。
1975頃には、Cyg X-1 をBHとみなす考えが市民権をえた。
内之浦にて、1975年頃
1977年頃、小田先生の伊豆の別荘にて
小田克郎
牧島
村上
田原
小田夫人
関(鈴木)悦子
小田先生
レビュー論文 Cyg X-1 / A Candidate of the Black Hole
Oda, M., Space Science Reviews 20, 757 (1977)
1. 光学ドップラーからCyg X-1の質量は > 9 M0 でBH と推測される
が、議論の抜け道は残る → Dotani et al. (1997) で解決
2. 主星からの星風がBHに捕獲され、降着円盤が形成される。 → 現
在でも正しい描像
3. スペクトルと強度に、2つの準安定な状態。しかしソフト状態のデー
タが乏しい。→ Dotani et al. (1997) で解決
4. X線強度は秒〜ミリ秒で準周期的に振る舞うようだ。→ 1985年の
QPOの発見や、宮本スクールの仕事を予見
5. 変動はショットの重ね合わせ。ショットの物理的な意味は?ショット
に伴うスペクトル変化は? →根来さんの仕事
6. なぜ Cyg X-1 はランダム変動を示し、それは降着円盤のどんな物
理を反映するのか?→ 未解決
7. 他に似た系は? → Majima et al. (1984) のGX339-4で解決
1月
☆「はくちょう」によ
る GX339-4の観測
→新たなBHC
3–6 keV counts
low/hard state
high/soft state
前島, 牧島, 松岡, 小川原,
小田, 土井, 田原
Hardness ratio
ApJ 285, 712 (1984)
100%
low/hard
state
low/hard state
10%
変動率関数
パワー
スペクトル
1%
high/soft state
0.01
0.1
1
Frequency (Hz)
10
0.01
0.1
1
Bin width (sec)
10
100
その後の発展(〜1990年代半ばまで)
◆ ソフト状態の超軟スペクトル(GX339-4,
LMC X-3,
GS2000+25; 田中、満田、海老沢、堂谷、蓬茨、牧島、..)
標準降着円盤の放射モデルで良く合う。
円盤の内縁半径は一定で、3Rsとみなせるので、X線デー
タからBH質量が推定できる。
◆ X線の速いランダム変動
(Cyg X-1, GX339-4,
GS200+25; 宮本、北本、根来、寺田、嶺重、..)
変動のパワースペクトルは特徴的な形をもつ。
異なるエネルギーバンドの間には、周波数に依存した「位
相遅れ」がある。
変動の様子は、スペクトルの状態と相関する。
BH候補天体の爆発的増加
〜1995以前
108
質
量 6
10
(
太
陽
比 104
)
〜1995以後
銀河中心の巨大BH
銀河中心の巨大BH
(数百〜数千個)
(数百〜数千個)
中質量BH
(数十個)
102
100
恒星質量BH(数十個)
恒星質量BH
天の川銀河 近傍銀河
ガンマ線
バースト?
X線で見た銀河の例。
明るく光る点の多く
はBH候補天体。
遠方宇宙 初期宇宙
さまざまな環境にさまざまなBHが実在するらしい
500
題名に “Black Hole” を含む論文数
400
新しい発展
300
200
100
0
50
30
20
Oda et al. (71)
40
Abstractに“Cyg”
と “black hole”を
含む論文数
論文電子化
10
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
新しい発展 (1990年代後半〜)
◆BHの実在証拠
水メーザーによる巨大BHの確証(三好 et al. 95)
活動銀河核の鉄ラインの広がり(田中、井上、..)
◆BHの形成過程の理解
ガンマ線バーストは初期宇宙でのBH形成を見ている?
銀河中心BHの質量∝銀河バルジ質量(ハッブル望遠鏡)
◆新種のBH候補の発見
M82の中の中質量BH(鶴、松本宏、松下聡、..)
近傍銀河のULX(牧島、水野、久保田、嶺重、渡会.. )
◆BHへの降着とエネルギー放出
ジェットをもつBH連星(マイクロクエーサー)の発見。
標準降着円盤の破れ(久保田、嶺重、渡会、水野、..)
ショットに伴うスペクトルの変化(根来、..)
代表的なBH論文のcitation
200
三好 et al. 95
水メーザー
150
宮本 et al. 91
ランダム変動
100
小田 et al. 71
50
0
田中+
柴崎 (96)
レビュー
1972
1976
1980
牧島 et al. 86
標準降着円盤
1984
1988
1992
牧島et al.
ULX (‘00)
1996
松本+鶴
2000 M82 (‘01)
BHへの物質降着とエネルギー放出
ジェット エネルギー放出
とジェット形成
(hν≫mpc2 )
物質流入 とX線放射
(hν≦mec2 )
X線
エネルギー転換
とガンマ線 放射
( hν~mpc2 )
降着円盤
ガンマ線
事象の地平線
不可視領域
時空の特異点
ブラックホール
重
力
ポ
テ
ン
シ
ャ
ル
まとめ
• 小田先生の想像力に満ちた卓見により、ブラック ホール
の実証的研究が始まった。
• 日本はその中で、つねに中心的な貢献を続けて来た。
• いまブラックホールの研究は第2の黄金時代を迎えてお
り、我々は一層の努力をしたい。
相対論的効果にもとづいたBHの証拠
BHの回転の証拠
銀河中心の巨大BHのできかた
ガンマ線バーストとBHの関係