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激動の宇宙
-X線天文学入門-
第一日目
松本浩典
京都大学理学部物理第二教室宇宙線研究室
2003年8月18日
西大和学園第一日目
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人間をX線で見ると...
キン骨マンbyゆでたまご
2003年8月18日
全く違う世界が見えてきます
西大和学園第一日目
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宇宙も全く違った姿を見せます
かに星雲=中性子星のいる超新星残骸
普通の光
2003年8月18日
X線
西大和学園第一日目
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銀河団:巨大な火の玉
普通の光
X線
銀河の集まり
数千万度の高温ガスの塊
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西大和学園第一日目
注意:「ガス」とは単に「気体」という意味です。
話の内容

X線とは何でしょう?(予備知識解説)
 X線で見た宇宙
– ブラックホール:光の監獄
– 宇宙の化学進化:人間は星の子供
– ダークマター:宇宙の運命を握る見えない物体
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西大和学園第一日目
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講義にあたってのお願い
講義中不明な点は、話途中で
も構わないので、いつでも遠
慮なく質問してください。
僕もみなさんがどんなことを不思議に
思うのか知りたいです。
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X線とはなんでしょう?
X線といえば… レントゲン写真!!
体が透けて見える!
ちなみにこれは、
X線を発見した
レントゲンさんの
奥さんの写真です
結婚指輪
レントゲンさんは、1901年第1回目の
ノーベル物理学賞を受賞しました。
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西大和学園第一日目
X線は光の一種!
光とは電磁波と呼ばれる波動の一種です。
電場と磁場が
振動しながら
空間を伝わります。
では、目に見える光(可視光)とX線
は何が違うのでしょう?
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X線は波長の短い光
光の種類
波長
普通の光=可視光 0.00005cm程度
X線
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原子一個分
0.00000001cm程度
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我々の目について
どうして我々の目は可視光を捕らえるので
しょうか?
なぜX線や赤外線じゃないのでしょうか?
鍵は、太陽の「スペクトル」にあります。
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スペクトルについて
スペクトル
色んな波長の光が、
どのくらいずつ混
ざっているか。
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我々の目=可視光専用カメラ
←
太陽スペクトル
=どの波長をどれだけ出すか
沈む夕日。
光
の
量
可視光
赤外線
←短い
波長
長い→
太陽は可視光線をたくさん出すので、
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我々の目はそれを受けられるように進化した
波長とエネルギーの関係
光のエネルギー(E)は、波長(L)に逆比例します。
E∝1/L
可視光:波長 L=5x10-7 mぐらい
X線 :波長 L=10-10 mぐらい
X線の波長は可視光の5000分の1ぐらい。
だからエネルギーは5000倍くらい。
それほどエネルギーが高いので、人体も
通過します。 西大和学園第一日目
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波長と温度の関係
短
高
波長
長
エネルギー
低
色
ガスの炎(2000度)
たばこの火(600度)
温度が高い物体ほど波長の短い光を出す。
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X線を出す物体の温度は?
温度はエネルギーの尺度のひとつです。
物体の温度(T)はその物体が出す光の波長(L)
に逆比例。
T∝1/L
可視光を出す星: 太陽 6000度
X線の波長は可視光の5000分の1くらい。
だから、X線を出すには、温度は5000倍、
すなわち、5000 X 6000度 = 3000万
度!!!
X線は数千万度以上の超高温物体から
しか出ない! 西大和学園第一日目
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X線を出す天体は存在するか?
•太陽=宇宙の中では平均点の星(6000 度)
•一番青い星(高温度)でも数万度
1960年代の普通の科学者
「宇宙にX線を出す星なんてあるわけないよ」
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物理学者ブルーノ・ロッシ
「自然は人間よりもはるかに
想像力豊かである!」
1962年ロケットを打ち上げ、
初めて「X線星」を発見
ここ!
(1905-1994)
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この実験を一緒に行ったのが…
リカルド・ジャコーニー
(1931年~現在)
X線天文を切り開いた業績で、
小柴昌俊(日本)、
レイモンドデービス(米国)
と共に、
2002年ノーベル物理学賞受賞!
(小柴、デービス両氏は
ニュートリノ天文学の開拓)
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一見不思議ですが…
可視光
X線
地球大気
X線は地球大気を貫通できません。
観測には人工衛星を使います
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現在活躍中のX線天文衛星
アメリカ
ヨーロッパ諸国連合
チャンドラX線衛星
XMMニュートン衛星
細かい構造まで
暗いものまで
くっきり見える西大和学園第一日目はっきり見える 20
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日本の衛星
日本は継続的に衛星を打ち上げ続け、
世界をリードしてきました。
一番最近の衛星:あすか(1993-2001)
世界初の高エネルギー
X線写真撮影装置
などの特徴
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日本次期X線天文衛星ASTRO-E2
日本は2005年に次の衛星を打ち上げる
計画です。
ASTRO-E2
世界一詳しいX線スペ
クトルをとることが出
来る!
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観測装置は手作り!
どこにも売ってないから…
京都大学、大阪大学、
宇宙科学研究所
マサチューセッツ工科大学
共同でASTRO-E2搭載用
X線CCDカメラを
開発中です。
精密なスペクトルを取れる
のが特徴
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実験風景図
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X線で観測する意義
•可視光=普通の宇宙の姿
•X線=エネルギーが高い!
発生場所のエネルギーも高い
何千万度の高温のような、
地上ではまずお目にかかれない世界、
宇宙の極限の姿を観測出来る!
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ブラックホ-ルからのX線
ブラックホールとは?
広辞苑より
高密度で重力があまりに強いために物質も光
も放出できない天体。質量の大きな星が一生
の最後に自らの重力で崩壊することで生ずる。
そのものは観測できないが、周囲のガスが落
ち込むときに放出するX線によってその存在
がわかる。
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ブラックホール=光の監獄
物
体
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重力弱
光
光
脱
出
脱
出
物
体
西大和学園第一日目
重力中
物
体
光
重力極大
=ブラックホール
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脱出速度について
ある星から脱出するにはどのくらいの速度
で飛び上がったらよいか?
質量M
速度v
質量m
星の半径 R
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西大和学園第一日目 = 無限遠
飛び上がれる限界
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万有引力
全ての質量をもつ物体は、お互いに引き
付けあっている。
質量M
質量m
距離R
力 F = GMm/R2
-11 N m2 /kg2
万有引力定数
G=6.67x10
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エネルギー保存則を使います
速度v
質量m
重力加速度g
高さh
運動エネルギー = ½ mv2
位置エネルギー = mgh
合計 1/2 mv2+mgh は、
運動中常に一定
万有引力の時は、位置エネルギーとして、
mgh の変わりに、-GMm/r を使います。
G: 万有引力定数
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運動エネルギー=1/2mv2
位置エネルギー=-GMm/R
質量M
運動エネルギー=0
位置エネルギー=-GMm/=0
速度v
質量m
星の半径 R
合計が保存するので、mv2/2 – GMm/R = 0
これを解いて、v=(2GM/R)
従って v = (2GM/R)
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西大和学園第一日目
この速度以上で飛び立てば脱出できる。
地球の脱出速度
地球の場合、
質量M = 6x1024kg
半径R=6000km
脱出速度は
v = (2GM/R)=11 km/s = 時速40000km
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光速を超えることは不可能
どんな物体も光速を超えて動くことは不可能。
自然はそういうふうに出来ている。
アルバートアインシュタイン
(1879 – 1955) が相対性理論を
作って、初めてこのことに気
が付いた。
その後、数限りない実験で
この事は証明されている。
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脱出速度が光速だったら…
脱出速度: v = (2GM/R) が光速 c だったら、
c = (2GM/R)
これを解いて、R=2GM/c2
もし質量Mの星の半径が、2GM/c2 より小
さかったら、脱出速度が光速以上になる
ので、何物も星から脱出できない!光す
ら出てこないので、黒く見えるはず。
こういう星をブラックホールといいます。
注意:本当はここの計算には相対性理論を用いなければいけません。
でも結果は同じです。
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ブラックホールになるには
R = 2GM/c2 : ブラックホール半径
•太陽の場合、
M = 2x1030 kg
従って R = 3000 m = 3km
•地球の場合
M = 6x1024kg
従って R = 0.009m = 0.9cm
もし太陽や地球がこのくらいの大きさまで
縮んだらブラックホールになります。
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なぜ X 線が出てくるのか
どんなものも中から出てこられないのに、
なぜ ブラックホールはX線で光るので
しょうか?
答:周囲の物質がブラックホールに落下
するときにX線を出すから。
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X線連星系
ブラックホール
X線
伴星
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落下する物質
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ブラックホール近傍拡大図
X線
ブラックホール
ほぼ光速で物質が落ち込む。やがて、自
分自身の摩擦で熱が発生し、数千万度以
上になってX線を出す。
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どのくらいの温度になる?
落ち込む物質はほとんど水素。
運動エネルギー E = ½ mv2 = ½ mc2 = 7.7x10-11J
ここで、m = 1.7x10-27 kg, c = 3x108 m/s
エネルギーと温度の変換:E = kT
ボルツマン定数 k = 1.4x10-23 J/度
kT = ½ mc2
従って、T = ½ mc2 / k = 5.5x1012度 = 5.5兆度!
現実世界はもっと複雑で、数千万度くらい。
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ブラックホールの種類
つい最近まで、ブラックホールには次の
二種類しかないと思われてきました。
小質量ブラックホール
太陽の10倍くらいの質量
大質量ブラックホール
太陽の百万倍から10億倍の質量
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小質量ブラックホール
太陽の10倍くらいの質量のブラックホール
X線写真
白鳥座X-1
もっとも有名な
小質量ブラック
ホール
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白鳥座X-1
想像図
太陽の15倍程度の質量
のブラックホール
太陽の33倍の質量の星
一番最初に発見されたブラックホール(候補)。
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1971年、日本の小田稔博士による。
大質量ブラックホール
ほとんどの銀河の中心にある、太陽の百万倍
以上もの質量を持つブラックホール
M87銀河
X線写真
乙女座銀河団の
ジェット
中心の巨大銀河
可視光写真
10光年
巨大ブラックホール
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我々の住む天の川銀河にもいる!
天の川銀河を横から見た図
銀河中心X線写真
30光年
大質量ブラックホール
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ブラックホール誕生の謎
•小質量ブラックホール(太陽の10倍)
星が寿命を終える時に起こす大爆発、
超新星爆発でできる。(アニメーション)
•大質量ブラックホール(太陽の100万倍以上)
どうやって出来るの?成長する?
中間の奴が
見つからない
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中質量ブラックホールを発見
M82銀河
中間のサイズの
ものがいた!
太陽質量の1万倍ぐらい ブラックホール
の中質量ブラックホール は成長する!
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ニューヨークタイムズ2000年9月13日
ちなみに…
手前味噌ですが…..
我々が中質量ブラックホールを
発見しました。
朝日新聞2000年9月13日
2003年8月18日
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一日目のまとめ
•X線は、可視光と同じ光の仲間。ただし、
波長が極めて短くエネルギーが高い。従っ
て、X線で宇宙を見ると、高エネルギーの
世界ばかりが選択的に見える。
•ブラックホールでは、落ち込む物質が数
千万度の高温度になり、X線を出す。
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