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第11回講義
マクロ経済学初級I タイプIIクラス
講義内容
• 投資と利子率の関係: 投資関数
(利子率が投資におよぼす影響)
• 有効需要の原理復習 と投資関数の導入
(有効需要の原理は総生産決定要因として
需要面しかみていない)
• 供給と需要の一致による利子率決定
(第7回講義でみた完全雇用総生産を供給と
有効需要の原理の統合)
投資支出
• 日本の投資支出
– 日本の投資支出の状況はどのようなものか?
• 新古典派の投資理論
– 投資支出の決定はどのように考えられている
か?
日本のGNPと投資
GNP
6割が消費
1割弱が政府最終消費支出
2、3パーセントが純輸出
3割が総固定資本形成
そのうち 2割強が公的総固定資本形成
7割強が民間総固定資本形成
さらに民間総固定資本形成のうち
6割が企業設備投資
1割5分が住宅投資
非常に少ないが在庫品増加がある
生産関数の復習
• 生産者は資本ストックKと労働力Nの
2つの生産要素(投入物)を用いて生
産活動を行うとする。
• 要素投入(Inputs)と生産物
(Outputs)の関係(生産技術)は生産
関数(Production Function)で表さ
れるとしよう。
• Y=F(K,N)
生産関数の性質
• 資本ストックを追加的に一単位投入したときに
増大する生産物の量を資本の限界生産力
(Marginal Product of Capital) という。
• ∂F(K,N)/∂K、ΔF(K,N)/ΔK、 FK(K,N) または、
MPK で表す。
この値は正値である。また資本ストックを横軸
に、生産量を縦軸にとったF(K,L)のグラフの傾
きを示す。
生産関数
F(K,L)
FK(K1,L)=MPK
F(K1,L)
K1
K
資本の限界生産力逓減の仮定
• 資本の限界生産力は逓減する
(decreasing)
• ∂2F(K,L)/∂K<0 FKK(K,L)<0
• 資本ストックの投入が増大するにつれて、
資本の限界生産力は小さくなる。
• 限界生産力を縦軸に、資本ストック投入量
を横軸にとると、次のようなグラフになる
資本の限界生産力曲線
FK(K,L)
FK(K1,L)
F(K1,L)
K1
K
資本の使用者費用
users cost of capital
• 資本を一単位利用するのにかかる費用
を資本の使用者費用という。
• 資本の使用者費用は資本を一単位調
達するのにかかる利子費用(利子率) r
と、資本を一単位生産活動に利用する
ことで資本が減耗する資本減耗率 d
からなる。
• したがって、資本ストックをK単位利用す
ることの(実質)費用は
(r+d)K
である。
生産者の利潤最大化行動と望
ましい資本ストック水準
• 生産者にとって、利潤は以下のようになる。
F(K,L)-(r+d)K-労働費用
• 利潤が最大になるような資本ストックK*が望
ましい資本ストック水準と呼ばれる。
• 資本の限界生産力と資本の使用者費用が
等しいときに利潤は最大化される。
FK(K*,L) = r+d
以下の図を参照。
生産者の利潤
FK(K,L)
F(K*,L) -(r+d)K*
r+d
(r+d)K*
K*
K
生産者の利潤: KがK*より小さい場合
FK(K,L)
F(Ks,L) -(r+d)Ks
r+d
(r+d)Ks
Ks
K*
K
生産者の利潤: KがK*より大きい場合
FK(K,L)
F(Kl,L) -(r+d)Kl
r+d
(r+d)Kl
K*
Kl
K
利子率と
望ましい資本ストック水準の関係
• 利子率が上昇すれば、望ましい資
本ストック水準は減少する
r↑⇒ K*(r)↓
• 利子率が下落すれば、望ましい資
本ストック水準は増大する。
r↓⇒ K*(r)↑
資本ストックと投資の関係
• 一年間の資本ストックの変化量は純投
資(Net Investment)と呼ばれる。それを
NIで表すことにする。Ktはt年の資本ストック
NIt ≡Kt+1- Kt
• 今年の資本ストック水準を来年の資本ス
トック水準にまで増やすには、実際には
資本減耗分を埋め合わせて投資してい
る。これを粗投資(Gross Investment)と
呼び、 It で表す。
It ≡ Kt+1- Kt+dKt
投資水準の決定と利子率の関係
• 生産者は望ましい資本ストック水準を達成 (利
潤最大化)するように投資水準を決定する。
It(r) = K*(r)-Kt+dKt
• I(r) は投資関数という。
• 利子率の上昇はK*の下落、すなわち、投資水
準の下落をもたらす。 r↑⇒ I(r)↓
• 利子率の下落K*の上昇、すなわち、投資水準
の上昇をもたらす。 r↓⇒ I(r)↑
有効需要の原理での総生産決定復習1
• 総需要が総生産を決定する YDは可処分所得
AD ≡ C(YD) +I + G =Y
(1)
• 消費関数がケインズ型ならば
C(YD)= A + c・YD
YD =Y+TR-T かつ GがTと独立 のときには
(1)式は次のようにYについて解くことができる。
Y=[A + I + c・TR+G]/(1-c)
(2-a)
1/(1-c) は独立支出乗数
有効需要の原理での総生産決定復習2
• 税収Tが所得に依存する場合
• 特に税率 t の所得税の場合
T=t・Y
YD =Y+TR-T=Y+TR- t・Y=(1-t)・Y+TR
となって、 (1)式をYについて解くと
Y=[A + I+c・TR+ G]/(1-(1-t)・c)
(2-b)
独立支出乗数は 1/(1-(1-t)・c) に変化
有効需要の原理での総生産決定復習3
• 均衡財政 G+TR=T の場合
(1)式 C(YD) + I + G = Y は
A + c・(Y-G) + I + T = Y になる。
この式をYについて解くと、
Y=[{A + I}/(1-c)] + G
になる。
政府購入Gを1単位増やしてもYは1単位しか
増えない。
つまり均衡財政乗数は 1 である。
有効需要の原理への投資関数の導入
• 投資関数 I(r) を考慮すると(2-a)式は
Y=[A + I(r) + G]/(1-c)
(3) になる。
つまり有効需要の原理による生産量は利子率 r
に依存する。
• r ↑ ならば I(r) ↓ そして Y ↓
• 利子率の上昇は有効需要の原理による生産量を
低下させることになる。
• 有効需要の原理によって決まる生産量を YD と
して、利子率 r との関係をグラフ化すると、
利子率 r
YD=[A + I(r) + G]/(1-c)
有効需要の原理によって
きまる総生産量 YD
完全雇用生産水準を思い出そう
• 第7回講義の最後
実質賃金
総労働供給曲線
均衡実質
賃金 w*
総労働需要曲線
Lf
完全雇用雇用水準
完全雇用生産水準
Yf = F( K, Lf )
• 完全雇用労働量が投入されているときの
総生産量を完全雇用生産水準という。
( Yf であらわす)
• 完全雇用生産水準は利子率には依存して
いない。
• 完全雇用生産水準は供給面からみた生産
量
利子率 r
完全雇用生産水準と利子率
総生産量
Yf
需要と供給の一致:利子率の決定
• 有効需要の原理は総需要の決定
(総需要が決まればそれが総生産量を決める)
• 労働市場の需給均衡で完全雇用量がきまり、
それが完全雇用生産水準(生産量)を決める。こ
れは総供給を決める。
• 総需要と総供給を一致するように利子率がき
まる。
総需要と総供給の一致が利子率を決める
利子率 r
r*
YD=[A + I(r) + G]/(1-c)
総生産量
Yf
需要と供給の一致:利子率の決定
• 式でみると、
需要=供給
YD ≡ [A + I(r) + G]/(1-c) = Yf
が成立するようにrが決まる。
•
•
•
需要と供給の一致:利子率の決定
もう一つの見方
投資関数を導入した総需要は
C(Y) + I(r) + G
この総需要と総供給(完全雇用生産量Yf)を一
致させるようにrがきまる、つまり
Yf = C(Y) + I(r) + G
Yf = C(Yf) + I(r) + G
Yf - C(Yf) -G = I(r)
S(Yf) = I(r)
つまり、貯蓄と投資が等しくなるように利子率が
決まる。