カイラル相転移の 臨界点近傍におけるクォークの準粒子描像

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KEK研究会『QCDとハドロン物理学の新展開』 2006.2.28
カイラル相転移の臨界点近傍に
おけるクォークの準粒子描像
三ツ谷和也(京大基研)
共同研究者:
北沢正清(京大基研) 国広悌二(京大基研) 根本幸雄(名大)
1.
2.
3.
4.
研究の背景・動機
フォーミュレーション
計算結果・考察
まとめと展望
1.背景・動機
QCD相図
•強結合QGP
カイラル対称性の回復
•RHICにおける完全流体模型の成功
•低い粘性
-クォークグルオンプラズマ(QGP)
•格子QCD計算によるJ/ψスペクトルの計算
CEP •T~1.6-2 Tc まで強度がある。
T
•(Matsufuru et.al, Asakawa et.al, Datta et.al)
•模型計算:ハドロン的励起 at T > Tc
Tc
RHIC
•(Hatsuda, Kunihiro(’85), Shuryak, Zahed (’04))
Tc近傍でのクォーク準粒子描像はどの
ようになっているのだろう?
カイラル対称性の自発的破れ
μ
ソフトモードとクォーク準粒子描像
•カイラルソフトモード
1.背景・動機
•中間子的励起のソフト化
カイラル相転移の次数が二次あるい
は弱い一次の時、秩序変数の揺らぎ
がソフト化し、臨界点近傍で重要とな
る( T.Hatsuda and T.Kunihiro, PRL55, 158(‘85) )
•Tc近傍におけるクォークスペクトル
3ピーク構造が出現
準位反発による理解
NJL模型を用いた計算
mq = 0
(M.Kitazawa, et.al. Phys.Lett. B633 (2006) 269)
研究の動機
1.背景・動機
• Kitazawaらの研究: mq = 0のカイラル極限 → 3ピーク構造
• 現実のクォーク:カレントクォーク質量、構成子質量、熱質量
質量が入ったときにどうなるのか?
•中間子的励起が十分にソフト化しない
•クォークプロパゲーター自身の変容
Yukawa 模型を用いた解析を行う
•準位反発による理解 → ボゾンとの結合が本質的
•中間温度領域での準粒子描像
•フェルミオン質量・温度を変化させて一般的に解析
2.フォーミュレーション
模型および近似
•自己エネルギー(1ループ近似)
P-K
P
スカラー場とフェル
ミオンの湯川結合
K
•スペクトル関数
ImΣが小さい →ω = mf – ReΣ となるところに大きなピーク
正クォーク数成分のみを扱う。
cf:パリティプロパティー
p = 0 のみを扱う
自己エネルギーの虚部の解釈
2.フォーミュレーション
外線がクォーク数正の場合
(I
)(II)
(III
)(IV)
(I)
(III
)
ランダウ
減衰
(II)
(IV)
時間
2.フォーミュレーション
各プロセスがおきるエネルギー領域
-(mb+mf)
mf < mb (IV)
-|mb-mf|
(III 0 (II)
)
mf > mb (IV)
(III
)
|mb-mf|
(II)
(mb+mf)
(I)
(III
)
(I)
(II)
ランダウダンピング
→クォーク・反クォークホール混合
熱励起
3.数値計算の結果
スペクトル関数
正フェルミオン数部分
cf
数値計算の結果は
g = 1 の場合
•T=0では自由粒子に対応するピークが一つ
•温度が上昇 → 新たに2ピーク:3ピーク構造
•さらに温度上昇:2ピークへ
自己エネルギー
3.数値計算の結果
虚部
T
(クラマース・クローニッヒの分散関係)
for
虚部にピーク → 実部にうねり
•温度上昇で新たなピーク
cf : 準分散関係
実部
T
*この解析はすでにKitazawaらによって示されている(M.Kitazawa, et.al. Phys.Lett. B633 (2006) 269)
スペクトル関数
•
•
•
•
3.数値計算の結果
T=0 : 1ピーク
温度上昇がするにつれて ショルダ→分離→2ピーク
さらに温度上昇 → 負エネルギー領域にピーク
高温では2ピーク
自己エネルギー
• 有限質量→準分散関係
を求めるための直線の
y切片が下がる
(T=0のピークが正エネ
ルギーに存在すること
に対応)
準分散関係:
負エネルギー領域にピー
クが現れる温度が高くなる
3.数値計算の結果
虚部
T
実部
T
準位混合による理解
3.数値計算の結果
スペクトル関数
3.数値計算の結果
大きいフェルミオン質量:ω ~ 0 のピークの強度はほとんどなくなる
3.数値計算の結果
虚部
実部
運動学的禁制によって虚部が値を
持つエネルギー領域が狭くなり、そ
れに伴って虚部のピークが鋭くなる。
P0 ~ 0 付近で実部の微係数
が非常に大きくなる。
→p0 ~ 0 のピーク強度は非常に小
さい
高温極限
3.数値計算の結果
高温では高温極限における解析計算の結果 gT/4 に漸近する。
カイラル相転移の臨界点近傍
3.数値計算の結果
NJL模型による計算から質量比を引用
T~220 MeV でのπとの結合を考える
•温度が高いとソフトモードの質量が大きくなる
•温度が低いとクォークの質量が大きくなる
Hatsuda and Kunihiro PRL55(1985)158-161
•ピークが2つに割れ出している
•現実的な模型でも何か複雑な構
造が見えるかもしれない。
まとめ
4.まとめと展望
• 湯川模型における有限温度でのフェルミオンスペクトル
– 1ピーク@T=0 → 2ピーク@高温
– 中間温度における振る舞い
• T=0のピークにつながるピークが2つに割れる。そのうち原点付近の
ピークが消えて代わりに負エネルギー側にピークが現れる
– 準位混合による理解
• カイラル相転移の臨界点近傍:T~220 MeVでピークはT=0の
ときと有意に異なっていた。より現実的な模型では複雑な構造
が見えるかもしれない。
今後の課題・展望
•グリーン関数の極を求める
•mf >mb の場合
•ボゾンの種類を変える(PS,V,AV)
•有限化学ポテンシャル
•相転移を記述できる模型による解析
準位混合による理解
は準フェルミオン
3.数値計算の結果
2.フォーミュレーション
模型および近似
•自己エネルギー(1ループ近似)
P-K
P
K
スカラー場とフェル
ミオンの湯川結合
数値計算
4.数値計算の結果
•p = 0 の場合のみ:ωとTを動かして3次元プロット
•射影(p=0)
射影演算子
正クォーク数成分のみを扱う。
cf:パリティプロパティー
•スペクトル関数
ImΣ+が非常に小さければ ω = mf – ReΣ+ とな
るところに大きなピーク
•準分散関係
自己エネルギーの実部と
直線ω - mf の交点が解
1.背景
QCD相図
•強結合QGP
カイラル対称性の回復
•RHICにおける完全流体模型の成功
•低い粘性
-クォークグルオンプラズマ(QGP)
•格子QCD計算によるJ/ψスペクトルの計算
CEP •T~1.6-2 Tc まで強度がある。
T
•(Matsufuru et.al, Asakawa et.al, Datta et.al)
•模型計算:ハドロン的励起 at T > Tc
Tc
RHIC
•(Hatsuda, Kunihiro(’85), Shuryak, Zahed (’04))
Tc近傍でのクォーク準粒子描像はどの
ようになっているのだろう?
カイラル対称性の自発的破れ
μ
ソフトモードとクォーク準粒子描像
•カイラルソフトモード
1.背景
•中間子的励起のソフト化
カイラル相転移の次数が二次あるい
は弱い一次の時、秩序変数の揺らぎ
がソフト化し、臨界点近傍で重要とな
る( T.Hatsuda and T.Kunihiro, PRL55, 158(‘85) )
•Tc近傍におけるクォークスペクトル
*)クォーク質量が0の時にはソフト
モードの質量は臨界温度で厳密に0
になる
3ピーク構造が出現
NJL模型を用いた計算
mq = 0
(M.Kitazawa, et.al. Phys.Lett. B633 (2006) 269)
フェルミオンの準粒子(高温極限)
1.背景
• 80年代~90年代、ゲージボゾン(mb=0)と結合するフェルミオンの
有限温度における準粒子描像が調べられた。
• 手法:Hard Thermal Loop Approximation(Braaten, E. and Pisarski, R.D (1990))
• mq, p, ω << T の時に有効
k ~ T 部分が主要
k
soft
p << T
hard
p-k
•温度に比例する熱質量
•2種類の励起
“plasmino”
熱質量
H.A.Weldon, PRD40(1989)2410
•集団モード:クォーク・反クォークホール混合
準位反発による理解
1.背景
(H.A.Weldon, PRD40(1989)2410)
w
r+(w,k)
quark
anti-q hole
quark
k
||
1.背景
準位反発による理解
ボゾンに質量があると準位混合がより複雑になる。
ms
ms
r+(w,k)
quark
anti-q hole
w
quark
k
||
有限温度における散乱過程
熱励起
A.資料
クォーク準位と反フェルミオン
ホール準位間に準位混合が起
きる
⇔
対消滅
準位間遷移
自己エネルギー
A.資料
運動学的禁制の効果
運動学的禁制の効果でピーク
が鋭くなる。
原点付近で自己エネルギーの
実部のうねりが大きくなる。
原点付近のピーク強度が
小さくなる。
T=2.0
カイラル相転移の臨界点近傍
A.資料
NJL模型による計算から質量比を引用
ボゾン質量でスケール
Hatsuda and Kunihiro PRL55(1985)158-161
準位混合による理解
A.資料
フェルミオンの準粒子(高温極限)
1.背景
• 80年代~90年代、ゲージボゾン(mb=0)と結合するフェルミオ
ンの有限温度における準粒子描像が調べられた。
• 手法:Hard Thermal Loop Approximation
• mq, p, ω << T の時に有効
k ~ T 部分が主要
soft
p << T
k
hard
p-k
•温度に比例する熱質量
•2種類の励起
•集団モード:クォーク・反クォークホール混合
“plasmino”
熱質量
H.A.Weldon, PRD40(1989)2410
引算した分散関係
一般の複素関数 | f(z) | の実部と虚部にはクラマース-クロニッヒの分散関係
と呼ばれる関係が成立している
この表式の実部が有限であるためには | f(z)| が無限遠で収束しなくては
ならない。そうでないときには
が用いられる。これらはそれぞれ一回引算した分散関係、二回引算した分散
関係と呼ばれる。
T=0部分のあらわな表式
に代入すると発散
してしまう。
3.フォーミュレーション
T=0部分の繰り込み
• 実部の発散を正則化するために二回引算の分散関係を用いた
一般の複素関数 f(x) の実部と虚部には以下の関係がある。
(クラマース-クローニッヒの分散関係)
この表式が収束しないときでも以下の表式が収束することがある。
この表式は二回引算の分散関係と呼ばれる
T=0 部分の繰り込み
3.フォーミュレーション
(複合:p0 > 0 に対しては上、p0 < 0 に対しては下)
質量殻上繰り込み条件
質量繰り込み
Σに課せられる条件
波動関数繰り込み
(複合:p0 > 0 に対しては上、p0 < 0 に対しては下)
•有限温度部分は発散しないので引算なしの分散関係を用いる。
3.フォーミュレーション
各プロセスがおきるエネルギー領域
-(mb+mf)
mf < mb (IV)
mf > mb (IV)
(III
)
-|mb-mf|
|mb-mf|
(III 0 (II)
)
(II)
(mb+mf)
(I)
(III
)
(I)
(II)
(II)
•ランダウ減衰
•有限温度特有:温度とともに振幅が増大
•クォーク・反クォークホール混合
(III)