New Exploration X-ray Telescope (NeXT) - 宇宙線研究室
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Transcript New Exploration X-ray Telescope (NeXT) - 宇宙線研究室
○ ブラックホールの時空構造 〜極限の宇宙ブラックホール〜
アインシュタインの一般相対論が予言したブラックホールは、観測の蓄
積により実在することが確立しつつある。X線は重力ポテンシャルの極
端に深いブラックホール近傍から放射されるため、ブラックホールに特
有な現象を感度よくとらえる最も優れた手段である。我々は、 NeXT衛
星を用いて、以下の問いに答えたい。
・事象の地平線に吸い込まれる直前の物質の信号を捉えられるか?
はじめに:
下)鉄輝線エネルギーの時間変化のシミュレー
ション。物質がブラックホールに落ち込む際に
は太陽表面のように局所的に明るく輝く爆発現
象が起こっていると考えられている(左下図上)。
NeXTはそのような鉄輝線のダイナミックな時
間変化を追いかけ、ブラックホールの時空構造
を探査する。
・観測からブラックホール時空の回転を検証できるか?
NeXT (New Exploration X-ray Telescope)衛星は、ダイナミックに進化
する宇宙の姿をはじめて明らかにする。高精度のX線分光により、高温ガ
スの速度を100 km/sの精度で捉え、超新星、ブラックホール、銀河団の衝
・ジェット形成には時空の回転が本質的か?
それには、NeXT衛星による鉄などの輝線超精密分光と広帯域分光を行
い、極度に強い重力場や時空の回転の効果による赤方偏移を調べること
が最も有効な手段である。
撃波や、ジェットのガスの運動を測定する。この運動は、高温ガスを加熱
する一方で、粒子加速などにより非熱的なエネルギー集中を引き起こす。
鉄輝線の時間変動
左上)右回転するブラックホールへ落
ち込むガスのX線写真(イメージ)。
相対論的効果により右側が明るく観測
され、元のエネルギーから青方偏移し
たX線が観測される
回転ブラックホール
(カー解)
これを解明するために、10-80 keVでの高精度の撮像分光、そして0.3-300
keVまでの広帯域スペクトル観測を新たに行い、天体におけるエネルギー
左下)静止ブラックホールおよび回
転ブラックホールから放射される鉄K
輝線スペクトルのシミュレーション。
一般相対論的効果により、輝線の幅
が広がるが、その形は両者のブラッ
クホールで違う
開放過程を包括的に調べる。10-80 keVの硬X線は最も透過力の高い電磁
波であり、NeXTは塵やガスに隠されたブラックホールなど、これまで手
の届かなかった未知の天体を探ることもできる。NeXTは高エネルギー現
象を引き起こす物理過程に迫り、極限的な宇宙の形成を調べるとともに、
Energy (keV)
宇宙論パラメータの測定や一般相対性理論の検証への道を切り開く。
○ 隠されたブラックホール 〜宇宙天体形成史〜
多くの銀河の中心には、最大で太陽質量の十億倍
にも達する巨大なブラックホールが存在する。落
ち込むガスが解放する重力エネルギーで、ブラッ
クホールは1044erg s-1もの明るさを持つX線と、
細くしぼられ光速に近い速度を持つ、相対論的
ジェットを放出する。この結果、銀河を超えて銀
河間空間を次々と加熱と電離を行う。すなわち、
ブラックホールは単に何でも飲み込む黒い穴では
ない。解放し放射するエネルギーにより、宇宙の
物質状態とその構造をすっかり変えてしまう、宇
宙進化の主役である。
次期X線国際天文衛星
30万光年
High-precision X-ray Spectroscopy
巨大BH
上)ケンタウルスA銀河の中心核
ブラックホールが放出する、X線
ジェット。
巨大ブラックホールと銀河は共進化する。成長期にあるブラックホールの多くは大量のガ
スや塵に埋もれた状態にあり、今までの観測では見逃されてきた。NeXT 衛星は優れた透
過力を持つ硬X線で撮像観測し、星生成銀河の中心領域で誕生する隠された巨大ブラック
ホールを数多く発見し、その進化を探る。
下)「すざく」の発見した「ニュータイ
プ」ブラックホール Swift J0601.9-8636 の
想像図。分厚いトーラスに深く埋もれてお
り、10 keV 以上の硬X線により初めて発見
することができた。
宇宙科学シンポジウム 2008.1.8-9
下)左のSwift J0601.9-8636の「すざく」に
よるスペクトル。NeXTでは過去最高の感度
で硬X線の透過光をとらえつつ、鉄輝線の精
密分光によりブラックホール周囲の環境を
詳しく探査することができる。
NeXTのX線カロリメーターは、DE=10eV (FWHM)以下という
驚異的な分光能力 (E/DE=700以上) を持つ。分散系ではなく直
接分光型なので、広がった天体に対しても分光能力を発揮でき、
撮像能力も同時に備えている。NeXTは、従来の衛星がなし得
なかった超精密分光撮像観測を初めて実現する。
〜主量子数から量子力学微細構造へ〜
従来のX線CCDは主量子数に関わるスペクトル構造の分離に留
まっていた。NeXTは、軌道角運動量およびスピン角運動量に
よる微細構造を分離し、X線放射に関わる物理相互作用を直接
に知る。これにより例えば放射領域の温度、密度、結晶などの
物理状態をモデルによらずに知ることができる。。
〜X線プラズマの衝撃波をはじめて分解〜
広がったX線放射の分光による速度計測は、これまで5000km/s
が限界であった。NeXTは500km/sより高い精度を実現し、X線
プラズマの音速による広がり(数100km/s相当)や、衝撃波の速度
(1000-2000 km/s)を、はじめて輝線ドップラーで検出する。
〜輝度の低い広がった輝線天体の発見〜
X線CCDでは検出不可能な弱い輝線の測定が可能となる。輝線
だけで輝く天体や暗く広がった天体の発見に威力を発揮する。
ヘリウム状
電離鉄イオン
1P
プラズマ鉄輝線
K殻→L殻遷移
1
L殻
3P
0,1,2
カロリメーター
3S
CCD
水素状電離
鉄イオン
○ 宇宙から生命の起源をとらえる ~宇宙化学~
我々の素である酸素や炭素、鉄といった元素は、宇宙創成後作られた。しかし、どこで、どの
ように元素が作られたかは、はっきりとは分かっていない。つまり、我々生命の起源は、大き
な謎のままである。
K殻
上)CCD(赤)およびカロリメーター
(黒)で得た、プラズマからの電離鉄輝
線スペクトル。輝線の青、緑、赤の印
は右の各微細構造の遷移に対応する。
NeXT衛星は、これまで検出が困難であった重元素を
はじめてはっきりとらえる。重元素不安定核は、よ
り安定な核への崩壊時に、核ガンマ線とよばれる光
「すざく」により、銀河団ガスに含まれる酸
子を、硬X線から軟ガンマ線で放射する。この過程の
素の量も測定され始めた。酸素は鉄と違って
特徴は、ガンマ線強度が重元素の存在するプラズマ
ほとんどがII型超新星により合成されるため、
の温度や電離状態にほとんど依らないことである、
酸素の量は過去に形成された、II型超新星を
つまり、我々は検出した核ガンマ線の強度から直接
超新星残骸カシオペアAのX線イメ
上)超新星残骸Velaージ(Chandra衛星)
Jr 1Msec
起こす大質量星の数を反映する。NeXT-SXS
元素存在量を決定できる。この帯域での観測は比較
の観測からHXIで期待されるTi
により、銀河系からの放射を赤方偏移で分離
的難しく、現在までに報告された確かな検出例は非
の核γ線
し、酸素輝線強度を正確に求められる。
常に限られている。NeXT衛星は世界最高感度を誇り、
さらに、NeXTでは、銀河団ガスや楕円銀
若い超新星残骸などから重元素の起源を発見するこ
河に含まれる炭素や窒素の量も求めることが
とが予想される。
できるようになる。それらの主な供給源はII
一方、銀河団ガスには大量の重元素が存在している。
型超新星を起こさない中間質量の星であり、
例えば、銀河団に存在する鉄の数割は銀河団ガスの
NASA
こうした星の過去の存在量をはじめて調べる
中に存在することがわかっている。重元素は超新星
ISAS/JAXA ことが可能になる。すなわちNeXTは我々の
爆発によって合成されるため、重元素の存在量を知
宇宙のレシピを明らかにするといえよう。
ることは、超新星を起こす星の過去の存在量、つま
り、宇宙の星形成史を知ることにつながる。銀河団
ガス中の鉄の量の進化を観測すれば、鉄の起源を直
接調べることができる。NeXT-SXSでは鉄の輝線の強
度を赤方偏移z ~ 1まで求めることができる。
上)NeXT-SXSで遠方銀河を観
測した時のHe-like 鉄輝線のカ
ウント数と赤方偏移の関係
1
右)楕円銀河 NGC 4636をNeXT-SXSで観測し
たときの予想スペクトル。黒は中心、赤は少し
外側の領域。炭素や窒素も観測が可能となる。
上)ヘリウム状電離鉄輝線の遷移図。
K殻(n=1)とL殻(n=1)の各電子軌道が
示されている。
銀河系内の放射
NeXTは、「すざく」の技術と経験を活かし、かつ全く
新しい技術を取り込むことで、これまでのX線天文衛星
上)A1060銀河団のオフ
セット領域をNeXTで観測
した予想スペクトル。銀
河系内の放射と区別する
ことが可能。
とは大きく異なる、次世代の観測装置を実現する。同軸
を向いた4種5台の観測装置が搭載される。
・軟X線精密分光システム(+軟X線望遠鏡) : SXS x1
・軟X線撮像分光システム(+軟X線望遠鏡): SXI x1
・硬X線撮像分光システム(+硬X線望遠鏡): HXI x2
・軟ガンマ線検出器(同軸にコリメート): SGD x1
NeXT
○ 銀河団のガスダイナミクス、粒子加速、硬X線
Main Cluster
Roettgering et al. 1997
Briel et al. 2004
北西の電波源
0.075
0.07
0.07
0.065
0.065
0.06
0.06
0.055
0.055
0.05
0.05
0.045
0.045
宇宙には、我々人類の持つ巨大加速器でも到底作り得
ない超高エネルギーにまで加速された粒子が飛び交っ
ている。「宇宙線」と呼ばれるこれらの粒子は、今も
我々の指先に毎秒1粒子程度降り注いでいるほど多く、
我々の宇宙の基本構成要素と言っても過言ではない。
しかし、宇宙のどこで、どのように宇宙線を加速して
いるのかは、発見以来100年経った現在も大きな謎のま
まになっている。宇宙線は星間磁場中でぐるぐるジャ
イロ運動をしてしまうため方向が変わり、宇宙線の到
来方向を調べてもどの天体が加速源なのか分からない
からだ。一方、宇宙線が磁場や背景光子と相互作用し
た時に出す光子放射は宇宙空間を直進するため、宇宙
線加速源を直接とらえることができる。
上)「すざく」XISでA2256のメイン
ピークとサブピークから観測された鉄
ラインのエネルギーシフト (~1600 km
s-1; Hayashida et al. 2007)。
上)X線が捉えたA3667銀河団
プラズマの温度分布
A2256銀河団
広帯域スペクトル
Abell3667 銀河団:1000万光年四方のX
線イメージ(等高線)に、電波イメージ
(グレースケール)を重ねた
Sub Cluster
0.075
optical
青=5000万度
赤=1億度
南東の電波源
○ 超新星残骸からの硬X線 ~人類未踏の最高エネルギー加速器~
A2256 「すざく」
A2256銀河団
精密分光系(SXS)
予想観測結果
4-10 keV
日本は、「あすか」衛星で世界で初めて超新星残骸
SN1006衝撃波面からシンクロトロンX線を発見し、
「すざく」衛星では超新星残骸での加速が極度に効率良
く行なわれていることを発見した。他の衛星や他の波長
の望遠鏡を使った研究も含め、日本は常に世界の宇宙線
加速研究を牽引してきた。
NeXT衛星は、「最高エネルギーの決定」と「加速効
率の決定」を目標としている。硬X線撮像検出器で超新
星残骸衝撃波面のどの部分が粒子を最高エネルギーまで
加速しているのかを明らかにし、X線分光器で超新星残
骸のプラズマを詳細に調べることで、爆発エネルギーの
どの程度が宇宙線へ注入されているかを突き止める。
SXIイメージ
30-80 keV
右)硬X線観測の予想結果。非熱
的な成分を80 keVまで撮像し、
300 keVまで捉えることが可能。
HXIイメージ
上) NeXTは銀河団の中心付近を観
測し、ガスの運動を分離できる。
Aharonian et al. 2007
銀河団は、300万光年のスケールに数千の銀河が集まる
宇宙最大の天体である。全質量の7割をダークマターが
占め、その重力で大量の高温プラズマも閉じ込めて、X
線で明るく輝く。宇宙大規模構造の「節」であり、現
在も衝突、合体を繰り返しているが、あまりにも巨大
なためその成長の様子を見るのは難しい。合体のとき
に解放されるエネルギーは1057Jに達し、プラズマを激
しくかき乱して加熱や大規模乱流を起こす(宇宙最大の
加熱源)とともに、その中でGeVを超える高エネルギー
粒子を大量に生成する(宇宙最大の加速器)と考えられる。
「あすか」衛星やNewton衛星が捉えた複雑な温度構造
や、いくつかの銀河団中に大きく広がる相対論的な電
子からの電波放射は、これらの銀河団の活発な活動の
直接の証拠である。NeXTは精密分光により、銀河サイ
ズの乱流の速度分布とそのエネルギーを初めて明らか
にし、硬X線を用いて高エネルギー電子のエネルギー総
量を測定する。これにより、宇宙最大の天体の成長の
様子を明確に捉えることができる。
上)NeXT衛星HXIでみたSN1006衝撃波部分の予想図。
超新星残骸のどの部分で粒子が加速されているか、
はっきりと決めることができる。
上)NeXT 衛星 SXS でみたSN1006プラズマか
らの熱的放射の予想スペクトル。爆発エネル
ギーのうちどれだけが加熱に回るかを抑える。
○ 構造形成と宇宙論
「NeXT」のサイエンス
NeXT衛星プリプロジェクトチーム
Extremely Wide Energy Band
宇宙最大の天体である銀河団の進化は、宇宙の密度ゆらぎの成長と結び付いているため、宇宙論
パラメータの決定に大きな役割を果たす。これまでROSAT衛星などにより、WMAPの結果と矛盾
ないことが報告されているが、ダークエネルギーの性質に迫るためには、より精度の高い銀河団質
量測定(温度測定)が不可欠である。
しかし銀河団は現在もなお衝突合体により成長を続けているダイナミックな系であり、シミュ
レーション計算からも、銀河団中に含まれる高温ガスの乱流運動に伴う非熱的効果が質量測定にお
ける系統誤差を生むことが指摘されている。NeXTはX線精密分光から銀河団ガスの運動速度を実測
し、かつ鉄輝線を用いた温度決定を実現する。マイクロ波背景放射の観測とは独立に宇宙の構造進
化やダークエネルギーの性質に迫る。
NeXTは、0.3-300 keV以上という3桁にわたる帯域をカ
バーし、「すざく」衛星の特徴を引き継いでいる。しかも
その感度は一段と向上し、特に10-80 keVでは2桁以上、
80-300 keVでは1桁の感度向上が図られている。 NeXTは、
未開拓の硬X線バンドで最高レベルの感度を備え、新時代
の電波、赤外、可視光、γ線の天文台とともに、宇宙の謎
に迫る新しい「窓」となる。
「あすか」, Chandra, Newton等、過去のX線衛星
keV
宇宙背景放射の明るさ
CMB eV
MeV
GeV
上)衝突銀河団のシミュ
上)様々な手法による宇宙論パラ
レーション。銀河団高温ガ
スの大規模運動を予想して
メータの決定。今後は、全く異なる
いる(Norman & Bryan1999)。
測定方法に含まれる系統的な精度の
評価がカギを握る (Allen et al. 2007 )、 NeXTは分光により運動を分
離できる。
赤: 銀河団ガス質量比、緑: SNIa、青:
CMB、黄色:上記3つを同時に用いた
もの)。
TeV
NeXTの広帯域
CIB COB
GLAST衛星(2008-)
CXB
上)NeXT衛星SXSによる鉄輝線強度
比の決定精度の予想。z=1 の 10 keV
の銀河団の温度が30%で決まる。
TeV望遠鏡
電波 赤外 可視光
1E10
ガンマ線
X線
1E15
1E20
1E25
[Hz]
keV
SXI
SXS 2桁
MeV
1桁
SGD
HXI
高感度
NeXT
(上) 多波長の宇宙背景放射と
比較したNeXTの観測帯域。高
温ガスの信号に加え、そこか
ら生まれる非熱的な粒子の信
号をも同時にとらえる広い帯
域を持つ。
(左) 10-80 keVでの精密な
イメージング観測の実現
に加え、NeXTは10-300
keV帯域において天体の
検出感度を1 - 2桁向上さ
せる。
NeXTベースラインデザイン
硬X線撮像システム(HXI+HXT)
有効面積
330 cm2 (30 keV)
エネルギー帯域 5-80 keV
空間分解能
1分角以下
エネルギー分解能 <1.5 keV(FWHM, 60keV)
New Exploration
X-ray Telescope (NeXT)
X線精密分光、硬X線撮像分光、軟γ線ま
での広帯域観測を手段として、動的な宇
宙と非熱的な宇宙の形成プロセスを明ら
かにし、宇宙の根本問題に肉迫する
On behalf of the NeXT Collaboration
宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部、同/総合技
術研究本部、筑波大学、物質材料研究機構、埼玉大学、理
化学研究所、東京大学、立教大学、工学院大学、首都大学
東京、東京工業大学、青山学院大学、名古屋大学、金沢大
学、京都大学、大阪大学、愛媛大学、広島大学、宮崎大学、
東京理科大学、岩手大学、芝浦工大、中央大、神戸大、日
本福祉大、中部大、日大、U. of Wisconsin、MIT、
NASA/GSFC、SLAC
軟X線撮像システム(SXI+SXT-I)
有効面積
530 cm2 (6 keV)
エネルギー帯域 0.5-12 keV
空間分解能
1分角以下
エネルギー分解能 130 eV(6 keV)
軟X線精密分光撮像システム(SXS+SXT-S)
有効面積
550 cm2 (6 keV)
空間分解能
1分角以下
エネルギー帯域 0.3-10 keV
エネルギー分解能 <10 eV(7 keV)
軟ガンマ線検出器(SGD)
有効面積
(100 keV)
開口角
>120 cm2 (光電吸収モード)
>15 cm2 (コンプトンモード)
0.55度2(<150 keV)
10度2(>150 keV)
バックグラウンド <1-3x10-6 cts/s/cm2/keV
上)ROSAT X線サーベイによる銀河
団質量関数とWMAPによる宇宙論パ
ラメータでの予想との比較 (Reiprich
2006)。
上)銀河団質量推定の系統誤差
の現状 (Jeltema et al. 2007)。系
統誤差を抑えるためには、NeXT
衛星の高精度分光が鍵となる。
上)NeXT衛星SXSによる鉄輝線スペ
クトルの予想。プラズマ温度によっ
て輝線強度比が大きく異なる。
〜銀河間X線星雲、電荷交換星雲、
○ 新種天体の発見
ダークアクセラレーター、隠された天体〜
質的に異なる観測装置の実現は、新種天体の発見を常にもたらしてきた。それは昔も今も同じである。
「あすか」など最近のX線衛星も、褐色矮星、彗星、銀河中心のX線反射星雲など、新種天体を続々と見つけてい
る。NeXTは広帯域で、これまでにない高感度撮像観測と超精密分光がもたらす微弱な輝線検出能力を備え、 今は
想像もできない、新種天体を数多く発見すると考えられる。「すざく」衛星の結果を元に敢えて予測してみる。
・「すざく」衛星は、M82銀河の連鎖的な超新星爆発が作り出した高温プラズマの塊を確認した。これは全て
の銀河が経験する現象である。銀河の周囲に淡く広がる「銀河間X線星雲」を見つけるのではないか?
・彗星や地球/惑星大気は惑星間プラズマとの衝突によりX線輝線のみで輝くこ
とがわかってきた(電荷交換プロセス)。太陽系の外でも、このプロセスが働く状
況が予測できる。NeXTは多くの「電荷交換星雲」を見つけるのではないか?
・TeV望遠鏡HESSは天の川銀河面観測から超高エネルギー粒子加速天体を発見
し、「すざく」は迅速な高感度観測によりこれらがX線で暗い「Dark Particle
Accelerator」であることを見つけた。塵に遮られない硬X線帯域で高感度の撮像
が可能なNeXTは、その正体を続々と明らかにすることが可能だ。
上)M82銀河の大爆発が放出する
高温プラズマの塊「M82の帽子」。
小さな銀河サイズの大きさを持つ。
・銀河の中心領域は、冷たいガスで厚く覆われた未知の天体の宝庫である。巨大
ブラックホールも、進化の過程で厚い塵で覆われた時代が存在すると考えられて
いる。NeXTは「隠された天体」を続々と発見するのではないか?
下)H.E.S.S.で発見されたTeVガンマ線
本資料作成
大橋隆哉(首都大)、上田佳宏(京大)、寺島雄一(愛媛大)、松下恭子(東京理科大)、
中澤知洋(東大)、山崎典子、太田直美、馬場彩、内山泰伸(ISAS/JAXA)、ほか
新種天体「ダークアクセラレーター」